えびす
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えびす(ゑびす)
- 日本の神。七福神の一柱。本項で詳述。
- 外来の神や渡来の神。客神や門客神や蕃神といわれる神の一柱。本項で詳述。
- 神格化された漁業の神としてのクジラのこと。古くは勇魚(いさな)ともいい、クジラを含む大きな魚全般をさした。本項で詳述。
- 寄り神。海からたどり着いたクジラを含む、漂着物を信仰したもの。寄り神信仰や漂着神ともいう。本項で詳述。
- 蝦夷(えぞ、えみし)の別称。未開の民や東国の武士をさし、または外国人の蔑称。
えびすは日本の神で古来から漁業の神である。夷、戎、胡、蛭子、恵比須、恵比寿、恵美須などとも表記し、えびっさん、えべっさん、おべっさんなどとも呼称される。
目次 |
[編集] 多様な神格とその由来
- 日本古来の神(漁業の神・市神・福神)としての変遷
- 現在では一般に七福神の一員として日本古来の唯一(その他はインドや中国由来)の福の神であるが、それは中世以降の信仰で、由来をたどると非常に複雑な経緯を持つ。「えびす」を称する神は複数あって、イザナギ、イザナミの子である蛭子命(ひるこのみこと)か、もしくは大国主命(大黒さん)の子である事代主神(ことしろぬしかみ)とされることが多い。そのため、えびすを祀る神社でも祀られる神は必ずしも同一ではない。また少数であるが、えびすを少彦名神や彦火火出見尊とすることもある。
- 留守神という神格も後に与えられた。詳しくは神無月を参照。
- 外来の神(客神・門客神・蕃神)としての変遷
- 様々な記紀神話の神に当てられるえびすだが、いずれの神も後世の付会であって、元来の姿ではない。えびすの漢字に戎や夷などが当てられている事は、中央政府が地方のまつろわぬ民や東国の者を「えみし」や「えびす」と呼んで、戎や夷の字を当てたのと同じことで、いずれも異邦の者を意味する。「えびす」という神名の文献における初見は平安時代後期の『伊呂波字類抄』であるが、そこには「夷 エビス 毘沙門」と記されている。少し時代が下った『諸社禁忌』には「衣毘須 不動」とある。古い時代、えびすは毘沙門天や不動明王を本地仏とする神格として信仰されていたことがわかる。えびすの神像も古い時代のものほど威厳に満ちたものとなっており、この時代のえびすは「荒々しい神」として信仰されていたものとみられる。端的にいえば記紀神話以外の外来神・蕃神である。
- クジラ(海神・漁業の神)としての変遷
- 本来の神格は異邦より村に時たま訪れる外来物に対する信仰(神)であり、海の向こうからやってくる海神である。日本各地の漁村では近年までイルカやクジラやジンベエザメなど(これらをまとめてクジラの意味である「いさな」と呼ぶ)を「えびす」とも呼んで、現在でも漁業神として祀っている地域も多数ある。クジラなどの海洋生物をえびすと呼んだ理由としては、それらの生物は餌となる小魚群やプランクトン群を追うところ、人間の漁獲対象であるカツオなどの魚もしばしば同じ餌を追って行動を共にしている点にあるのではないかと推測される。つまり、クジラなどが出現すると漁獲対象魚も一緒に出現する相関関係があるため[1]、クジラが豊漁をもたらしてくれると理解されていたのではないかと考えられる。
- 寄り神信仰(漂着神)
- 特殊な例として、海外からの漂着物や人(日本人以外の場合もある)や動物の遺骸のことをえびすと呼ぶ地域もあり、漁のときに漂着物や遺骸を拾うと大漁になるという信仰もあるという。漁業に使う網の浮きに神が宿り正月などに祀る地域があるが、四国の宇和島周辺や隠岐などでは、その浮きのことを「えびすあば」(あばとは浮きのこと)と呼んでおり、えびすが漁業神であることを示す好例である。九州南部には、漁期の初めに海中からえびすの御神体とするための石を拾ってくるという風習があるという。これらの民俗信仰は、えびすの本来の性格を比較的とどめているものと考えられる。
[編集] 他の神との習合
えびすが蛭子命や事代主に結び付けられたのは両神とも水に関連していたためである。
えびすを蛭子命と結びつける説は鎌倉時代頃に現われたものである。記紀神話において、蛭子命は3歳になっても足が立たなかったため流し捨てられたとされる。その神話を受けて、流された蛭子命はどこかの地に漂着したという信仰が生まれ、その海からやってくる姿が海の神であるえびすの姿と一致したため、2つの神は同じ神だとされるようになった。その漂着した地の伝承は各地にあるが、その代表が兵庫県西宮市の浜で、そこには蛭子命系のえびす神社の総本社である西宮神社がある。また、えびすのことを夷三郎と呼ぶのは、『日本書紀』において3番目に生まれたことに由来するとされる。
一方、事代主神は託宣の神といわれ、記紀神話においても直接に水との関連はない。しかし、記紀神話の中の国譲りの項で、天津神からの国譲りの要請を受諾するかどうかを大国主神の使者が事代主に聞きに訪ねたとき、事代主は釣りをしていたとされ、その海で釣りをする姿とえびすの海の神であることが結びつき、同一の神とされるようになったといわれる。七福神の絵図でえびすが釣竿を持ち鯛を釣り上げた姿で描かれるのは、この事代主神の話に基づくものである。また、えびすと大黒は親子とも言われるのも、事代主の父親である大国主命が大黒天と習合した事による。
なお、えびす信仰が生まれる以前から事代主神を祀っていた神社で、後にえびすを祀るという形にしたものも多数ある。逆に、明治維新の際に国学の神道理念によりえびすや蛭子といった神格を軽視し、祭神名を事代主神に改め、由緒も書き換えた神社も存在する。
[編集] 市神、福神としてのえびす
平安時代後期には、えびすを市場の神(市神)として祀ったという記録が有り、鎌倉時代にも鶴岡八幡宮内に市神としてえびすを祀ったという。このため、中世に商業が発展するにつれ商売繁盛の神としての性格も現れる。それは同時に福神としても信仰されるようになり、やがて七福神の1柱として数えられるようになる。福神としてのえびすは、ふくよかで「えびす顔」の言葉どおりの笑顔で描写されている。
なお、えびす神は一般的に耳が遠いとされており、そのため神社本殿の正面だけでを参拝するのではなく、本殿の裏側にまわり、そこにあるドラを叩いて願い事をしなくてはならないとされる。したがって今宮戎神社などえびす神を祀る本殿の裏にはドラが用意されている。
[編集] えびす講
民間信仰として一般の民衆に広く知られるのが、えびす講における「えびす」である。古くはえびす講の日に日本各地では市が立ち、魚や根菜など(青物)が売られた。
[編集] えびすを祀る主な神社
[編集] 蛭子命
- 蛭子神系のえびす神社の総本社。
[編集] 事代主神
- 事代主神系のえびす神社の総本社。
- 大前神社(栃木県真岡市)
- 恵比寿神社(東京都渋谷区)
- 京都ゑびす神社(京都府東山区)
- 今宮戎神社(大阪府大阪市浪速区)
- 菅原神社(大阪府堺市堺区) - 摂社の堺戎神社
- 石津神社(大阪府堺市西区)
- 石津太神社(大阪府堺市西区)
- 石津神社と石津太神社はともに論社として最古の戎社とされる。
このうち西宮神社・今宮戎神社・京都ゑびす神社が三大えびすと数えられる。
[編集] 十日戎
えびすを祀る神社の多くでは、毎年1月10日を中心とする数日間、十日戎(とおかえびす)と呼ばれる祭が行われ、商売繁盛に御利益のある福笹・熊手などの授与が行われる。
- 西宮神社
- 鎌倉時代の正元年間(1259年-1260年)には十日戎祭の潔斎として忌籠祭(いごもりさい)がこの神社で行われていた。忌籠祭とは戸締まりし静寂を守り灯火も消し、籠もって夜明けを待つ神事。室町時代の『重編応仁記』によれば、中世の西宮市中の家々でも1月9日の夕方から忌籠祭がおこなわれていた。現在では禁忌の明けた10日午前6時に正門が開けられ、最初の参拝を競う開門神事福男選びが行われる。
- 今宮戎神社
- 京都ゑびす神社
- 堀川戎神社
- 柳原蛭子神社
- 歴史は浅い。先々代宮司の井上四郎が西柳原町内や柳原商店街や福海寺(柳原大黒天を安置)の協力をえて、西宮神社などの十日戎の盛り上がりを参考にして始めた。
- 大阪天満宮(大阪府大阪市北区)
[編集] 関連項目
信仰・宗教
名称
- 恵比寿駅
- 恵比須運河
- えびす通り商店街 - 広島県広島市中区にある商店街。
- 撫養駅 - 駅近くの事代主神社に因み、「ゑびす前駅」「蛭子前駅」と呼ばれていた時期がある。
- 恵比須流 - 福岡県福岡市のかつての町人町である博多の一地区の名称
商業・キャラクター
- ヱビスビール
- エヴィスジーンズ
- エビス (足袋メーカー)
- えべっさん (プロレスラー)
- 大阪エヴェッサ
- コダイゴンジアザー - ウルトラマンメビウスに登場する怪獣。恵比寿様の木像が巨大化・怪獣化したもの。
その他
[編集] 脚注
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