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こゝろ』(こころ)は、夏目漱石の代表作となる長編小説。友情恋愛の板ばさみになりながらも結局は友人より、恋人を取ったために罪悪感に苛まれた「先生」からの遺書を通して、明治高等遊民の利己を書く。

目次

[編集] 概要

1914年大正3年)4月20日から8月11日まで、「朝日新聞」で「心 先生の遺書」として連載。同年に岩波書店より漱石自身の装丁で刊行された。なお、自費出版という形式ではあるが、この作品が岩波書店にとって出版社として発刊した最初の出版物である。日本近代文学館による復刻版もある。

漱石が乃木希典殉死に影響を受け執筆した作品である。後期三部作とされる前作『彼岸過迄』『行人』と同様に、人間の深いところにあるエゴイズムと、人間としての倫理観との葛藤が表現されている。明治天皇崩御、乃木大将の殉死に象徴される時代の変化によって、「明治の精神」が批判されることを予測した漱石は、大正という新しい時代を生きるために「先生」を「明治の精神」に殉死させる。

もともと、漱石はいろいろな短編を書き、それらを『心』という題で統一するつもりだった。しかし、第一話であるはずの短編「先生の遺書」が長引きそうになったため、その一編だけを三部構成にして出版することにし、題名は『心』と元のままにしておいたのである。このことは単行本に書かれた序文から明らかである[1]


注意以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。


[編集] あらすじ

[編集] 上 先生と私

時は明治末期。夏休みに鎌倉へ旅行をしていた「私」は、避暑のために同じく鎌倉に来ていた「先生」と出会い交流を始め、鎌倉を引き上げ東京に帰った後も先生の家に出入りするようになる。先生は奥さん(「下」におけるお嬢さん)と静かに暮らしており、世間との交渉は薄い。先生は私に向って何度も謎めいた、そして教訓めいたことを言うが、私には不得要領に終ってしまう。とうとう私はこらえきれずに、先生に過去を打ち明けるように迫った。先生は来るべき時に過去を話すことを約束した。

[編集] 中 両親と私

私は大学を卒業後、実家に帰省した。以前から病気が重かった父親は、明治天皇の病勢の衰えと共にますます健康を損ない、私は東京へ帰る日を伸ばした。その間に明治天皇は崩御、天皇に殉ずるように乃木希典が自殺した。父親がいよいよ危篤状態に陥ると、私は呼び寄せた兄らとともに父の死を待ち受けた。

すると、そこへ先生から分厚い手紙が私のもとへ届く。その中の一文、「此手紙があなたの手に落ちる頃には、私はもう此世には居ないでせう。とくに死んでゐるでせう」を見て私は驚かされる。私は死が間近に迫った父を置いて家を飛び出し、電車に飛び乗って先生の過去が書かれた遺書を読んだ。

[編集] 下 先生と遺書

先生は幼いころに、両親をほぼ同時に失ってしまった。両親の死後、遺産の管理を叔父に一任して、先生は東京の学校に通い始める。三度目の夏に帰省した折、ふいに先生は叔父たちの態度が急変した印象を受ける。叔父は、先生の家の遺産を不正にだまし取っていたのであった。先生は叔父の裏切りにショックを受け、二度と故郷に帰らない決意をして東京に戻った。

先生は、軍人の未亡人(奥さん)とその娘・お嬢さん(「上」「中」における奥さん)の住む下宿に暮らし始める。しだいに先生は、お嬢さんに恋心を寄せるようになる。同時期、先生の友人・Kが養家を欺き実家から勘当され、先生はKを同じ下宿に済ませるように取り計らった。Kは勉学に熱心で、女性を遠ざけていたため最初は頑なだったが、奥さんとお嬢さんのおかげでだんだん柔らかくなっていった。

ある日、Kは先生にこっそりとお嬢さんへの恋心を打ち明ける。Kに先を越されると恐れた先生は、「お嬢さんを私に下さい」と奥さんに迫り了承を得る。それを知ったKは平静を装っていたが、一週間たたずに自殺してしまう。先生はKに対する罪悪感、しまいにKと同じ道を自分もたどっているのではないかという予感に至り、明治天皇の崩御、乃木希典の殉死を契機に、奥さんを残して「明治の精神」への殉死を決行するのであった。

[編集] 登場人物

「上 先生と私」「中 両親と私」の語り手。田舎に両親を持つ学生。父が大病を患っている。
先生
仕事に就かず、東京に妻とひっそり暮らしている。「下 先生と遺書」で“私”として自分の生き様を語っている。
先生の妻
先生から”静”と呼ばれている。「下」の前半部分では“お嬢さん”と書かれている。
先生の妻の母
物語では既に物故者。「下」の前半部分では“奥さん”と書かれている。
K
「下」に登場する、先生と同じ大学の学生。故郷も先生と同じで、同じ下宿にいる。Kのモデルには、幸徳秋水石川啄木清沢満之らの名が挙がっている。

[編集] 関連作品

[編集] 映像化

[編集] 漫画化

[編集] 脚注

  1. ^ なお、序文では『心』と表記されているが、それ以外は全て「こゝろ」という表記で統一されている。序文の内容は、外部リンク『心』自序を参照。

[編集] 外部リンク

最終更新 2009年12月2日 (水) 19:25 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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