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平仮名
文字
字源 為の草書体
JIS X 0213 1-4-80
Unicode U+3090
片仮名
文字
字源 井の変形
JIS X 0213 1-5-80
Unicode U+30F0
言語
言語 ja, ain
ローマ字
ヘボン式 I(WI)
訓令式 I
JIS X 4063 wyi
アイヌ語 WI
発音
IPA [i]
種別
清音
「ゐ」の筆順
「ヰ」の筆順

は、日本語音節のひとつであり、仮名のひとつである。1モーラを形成する。五十音図において第10行第2段(わ行い段)に位置する。現代ではと同じ発音である。現代仮名遣いでは「ゐ」は使われず、代わりに「い」と書かれる。

目次

[編集] 歴史

[編集] 奈良時代

奈良時代には、ヰは [wi] と発音され、イは [i] と発音されて区別されていた。万葉仮名では、ヰを表すための万葉仮名として「井」「位」「為」「猪」「謂」「藍」などが用いられた。イは万葉仮名では「已」「五」「以」「伊」「怡」「射」「移」「異」などが用いられ、ヰと混用されることはなかった。

漢字音では、合拗音の「ク」「グ」(当時は小書きはされていない)という字音があり、それぞれ [kʷi][ɡʷi] と発音され、「キ」「ギ」とは区別されていた。

[編集] 平安時代

平安時代には、まだ「ゐ」と「い」は別個の発音の文字として認識されていた。11世紀中期から後期頃の成立と考えられる手習い歌いろは歌には、

いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそ つねならむ うゐのおくやま けふこえて あさきゆめみし ゑひもせす
色は匂へど 散りぬるを 我が世誰ぞ 常ならむ 有為の奥山 今日越えて 浅き夢見じ 酔ひもせず

とあり、ア行のイ、エ、オとワ行のヰ、ヱ、ヲは区別されている。寛智による『悉曇要集記』(1075年成立)には、

アカサタナハマヤラワ一韻
イキシチニヒミリヰ一韻
ウクスツヌフムユル一韻
オコソトノホモヨロ一韻
エケセテネヘメレヱ一韻

とあり、ヤ行のイ、ヤ行のエ、ワ行のウ、ワ行のヲが省かれている。このことから、当時の音韻状態は、ア行のオとワ行のヲは区別を失い同音になっていた一方、ア行のイとワ行のヰ、ア行のエとワ行のヱは依然として区別されていたという状態だったことが分かる。

青谿書屋本『土左日記』(原本は935年頃成立、書写は1236年)には「海賊報いせむ」が「かいそくむくゐせむ」と書かれ、「い」と書くべきところが「ゐ」となっている。このように、徐々にヰとイを混同する例も出てきてはいたが、平安時代中は混同はあまり多くなかった。

語中のハ行音がワ行に発音される現象(ハ行転呼)が奈良時代から散発的に見られ、11世紀初頭には一般化した。この現象により、語中・語尾のヒの発音が [ɸi] から [wi] に変化し、ヰと同音になった。このため、語中の「ひ」と「ゐ」の使い分けに混乱が見られるようになった。

12世紀末には、『三教指帰注』(中山法華経寺蔵、院政時代末期の加点)に「率て」(ゐて)を「イテ」とする例があるなど、ヰとイの区別を失うものが散見されるようになってきた。

なお、平安時代の文献では、漢字音として「クヰヤウ」「ヰヤウ」のような特殊な表記も見られたが、長く定着はしなかった。

[編集] 鎌倉時代

鎌倉時代に入るとヰとイの混同が顕著になり、13世紀に入るとイとヰは統合した。ヰが [wi] から [i] に変化することによって イと合流したと考えられている。また、漢字音の「ク」「グ」もそれぞれ [ki][ɡi] と発音されるようになり「キ」「ギ」に合流した。

ハ行転呼やいくつかの音節の統合により、同じ発音になった仮名が多数生じ、仮名遣に混乱が見られるようになった。藤原定家1162年 - 1241年)は『下官集』の「嫌文字事」で60語ほどの語について「を・お」「え・へ・ゑ」「ひ・ゐ・い」の仮名遣の基準を示した。藤原定家の仮名遣いは11世紀後半から12世紀にかけての物語類を基準としたものと見られ、「え・へ・ゑ」「ひ・ゐ・い」は音韻が混乱する前の発音を基準にしている。これにより混乱した仮名遣に規範が示されたが、藤原定家が基準にした書物には既にハ行転呼が生じて仮名遣が混乱した状態のものも含まれていたらしく、本来は「ひ」である「遂」(つひ)、「宵」(よひ)が「ゐ」とされ、歴史的仮名遣いで「い」である「老い」(おい)が「ひ」や「ゐ」とされるなど、元々の発音とは異なる表記が採用されたものもあった。定家仮名遣は特に和歌連歌など歌道の世界で広く使われたが、それ以外の分野では「ゐ」「い」および語中・語尾の「ひ」の書き分けが混乱したものがしばしば見られた。

[編集] 室町時代

南北朝時代になると、行阿が『仮名文字遣』(1363年以降成立)を著し、対象語数を1000語以上に大幅に増やした。一般には『仮名文字遣』の仮名遣が「定家仮名遣」として広く受け入れられたが、実際にはこれに合致しない仮名遣も行われた。

16世紀(室町時代後期)のキリシタン資料におけるローマ字表記では、ヰとイはいずれも ijy で書かれており、発音がいずれも [i] だったことが分かる。

[編集] 江戸時代

江戸時代の契沖1640年 - 1701年)は、『万葉集』、『日本書紀』などの上代文献の仮名遣が定家仮名遣と異なることに気付き、源順の『和名類聚抄』(承平年間、931年 - 938年頃成立)以前の文献では仮名遣の混乱が見られないことを発見した。そこで、契沖は『和字正濫鈔』(1695年刊)を著し、上代文献の具体例を挙げながら約3000語の仮名遣を明らかにして、仮名遣の乱れが生じる前の上代文献に基づく仮名遣へ回帰することを主張した。契沖の仮名遣は契沖の没後に次第に一般に受け入れられていき、定家仮名遣での誤りの多くが正された。

本居宣長は、漢字の仮名遣を研究し、『字音仮字用格』(1776年刊行)で字音仮名遣を完成させたが、この中で合拗音のうち直音との発音の区別が当時まだ残っていた「クヮ」「グヮ」のみを残し、「ク」「グ」「ク」「グ」はそれぞれ現実の発音に従って直音の「キ」「ギ」「ケ」「ゲ」に統合させた。一方、本居宣長はこの書の中で、「スヰ」「ズヰ」「ツヰ」「ユヰ」「ルヰ」という字音を規定した。

[編集] 明治時代以降

1873年明治6年)には、契沖の仮名遣を基礎に、古文献を基準とした歴史的仮名遣が『小学教科書』に採用され、これ以降学校教育によって普及し一般に広く用いられた。字音仮名遣は本居宣長のものを基本としたものが使われた。しかし1946年(昭和21年)には表音式を基本とした『現代かなづかい』が公布され、現代の発音を反映した仮名遣いが採用された。これにより、歴史的仮名遣における「ゐ」は全て「い」に書き換えられ、「ゐ」は一般には使われなくなった。現代仮名遣いの制定以降、古い資料に基づく歴史的仮名遣いの訂正も進み、それまで長らく一般に「用ひる」と書かれていた仮名遣が「用ゐる」が正しいと判明したり、本居宣長が定めた「スヰ」「ズヰ」「ツヰ」「ユヰ」「ルヰ」は誤っていて「スイ」「ズイ」「ツイ」「ユイ」「ルイ」が正しいと判明するなどの進展があった。

[編集] 現代の用法

現代仮名遣いでは、歴史的仮名遣における「ゐ」を全て「い」に書き換えるため、「ゐ」が用いられることはない。

発音が「い」と同じである上、字形が「」によく似ているため、自動車用ナンバープレートには用いられない。

固有名詞では、井関農機のブランド名・略称の表記「ヰセキ」のように、古いブランド名に使われていることがある。優駿牝馬を制した競走馬のスウヰイスー号の発音は「スウィイスー」である。

また、俗語的用法として、よゐこ(お笑い)のように面白半分で「い」を置き換えて使う場合に使用されることがある。この場合、歴史的仮名遣で「ゐ」でないものでも「ゐ」に置き換えられることがある(例えば「良い」の「い」は「良き」のイ音便であるため、歴史的仮名遣でも「い」である)。

外国での土産物等での日本語表記では、本来では「」のはずの部分に「ゐ」がしばしば誤用される。

[編集] 歴史的仮名遣で 「ゐ」が含まれる語

歴史的仮名遣いに基づいた五十音順に示す。以下に示した語の「ゐ」は、現代仮名遣いでは全て「い」に書き換える。発音は標準語や東京方言では語頭・語中・語尾に関わらず全て [i] である。また、漢字音における「ク」「グ」は江戸時代以降の字音仮名遣、および現代仮名遣いではそれぞれ「キ」「ギ」に書き換え、発音は [kʲi][ɡʲi] である。「ヰャウ」は鎌倉時代以降は「ヤウ」と書かれ、現代仮名遣いでは「ヨウ」と書き [joː] と発音する。

[編集] 和語

紫陽花(あぢさゐ)、藍(あゐ)、乾(いぬゐ)、位(くらゐ)、~ぐらい(ぐらゐ)、紅(くれなゐ)、慈姑(くわゐ)、敷居(しきゐ)、芝居(しばゐ)、潮騒(しほさゐ)、所為(せゐ)、鳥居(とりゐ)、率いる(ひきゐる)、参る(まゐる)、用いる(もちゐる)、基(もとゐ)、井・堰(ゐ)、猪(ゐ)、亥(ゐ)、居(ゐ)、藺(ゐ)、藺草(ゐぐさ)、居丈高(ゐたけだか)、田舎(ゐなか)、威張る(ゐばる)、井守(ゐもり)、居る(ゐる)、率る・将る(ゐる)

[編集] 漢字音

[編集] 呉音

軌・鬼・貴・毀・喟・詭・愧・暉・戯・麾・燬・虧・瞶・燹(ク)、兄・礦(クャウ)、掴・硅・幗・膕・馘・钁(クャク)、危・偽・馗・逵・跪・匱・櫃・簣・餽・饋・巍(グ)、位・委・威・胃・倭・韋・尉・萎・帷・偉・為・渭・逶・違・葦・痿・幃・彙・痿・蔚・慰・熨・蝟・緯・謂・鮪・鰄(ヰ)、域・閾(ヰキ)、郁・囿・墺・澳・燠・礇(ヰク)、永・泳・咏・詠(ヰャウ)、隕・殞(ヰン)

[編集] 漢音

卉・虫・軌・皈・鬼・帰・逵・貴・毀・喟・揮・詭・愧・暉・跪・戯・輝・麾・匱・燬・虧・瞶・徽・燹・櫃・簣・餽・饋(ク)、匡・况・狂・況・筐・筺(クャウ)、矍・攫(クャク)、洫(クョク)、危・偽・魏・巍(グ)、囗・位・囲・委・威・胃・畏・倭・韋・尉・萎・帷・唯・惟・偉・為・渭・逶・違・葦・痿・幃・彙・痿・蔚・維・慰・熨・蝟・緯・謂・鮪・鰄(ヰ)、郁・囿・奥・墺・澳・燠・礇(ヰク)、員・隕・殞・贇(ヰン)

[編集] 慣用音

痿(ヰ)、均・院・韵・韻(ヰン)

[編集] 出典

[編集] 関連項目

ウィクショナリー
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  • 人名一覧 ゐ

最終更新 2009年11月29日 (日) 01:37 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
【ゐ】変更履歴

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