アナボリック・ステロイド

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アナボリックステロイドの化学構造、17β-hydroxy-4-androsten-3-one.

アナボリック・ステロイド (anabolic steroid)は、テストステロンに関連するステロイドホルモンの一種である。細胞内のタンパク質合成を促進し、結果的に細胞内の組織構築(蛋白同化)をもたらす。特に筋肉組織で顕著である。アンドロゲン様作用と男性化作用も有しており、声帯体毛の成長など男性的形質発現とその維持作用を有する。「アナボリック(anabolic)」の語源はギリシャ語で「構築する(to build up)」を意味するanaboleinである。

「アナボリック・ステロイド」は1930年代に初めて単離、同定、合成され、現在では医療的に骨成長促進、食欲促進、男性思春期導入、そして慢性消耗状態(エイズなど)の治療に用いられる。米国スポーツ医学会は、数名の個体において、「アナボリックステロイド」が適切な食事摂取の下で脂肪を付けること無く体重を増加させることに寄与し、また、強度の運動と適切な食事の下で達せられる筋力増加が「アナボリック・ステロイド」の使用によってより促進されることを認めている[1]

「アナボリック・ステロイド」を長期間使用または過剰使用した場合、いくつかの健康上のリスクが高まる可能性がある。このリスクとは、コレステロール値の上昇(低比重リポプロテインコレステロールの増加と高比重リポプロテインコレステロールの減少)、アクネ高血圧肝障害、そして左心室構造の危険な変化である。

スポーツボディビルディングにおける「アナボリック・ステロイド」の補助的使用については、その有害性と、一般的に不正行為と考えられる利益性のゆえに、賛否の分かれるところである。すべての主なスポーツ団体において、その使用はドーピングとみなされ禁止されている。「アナボリック・ステロイド」は、IOCが認定する検査機関において、長年に亘り最も多く検出されているドーピング薬物となっている[2] [3]。「アナボリックステロイド」が規制されている国々には、しばしば使用者への販売を目的とする密輸品、偽造品の闇市場がある。

一般的に、医薬品として使用される糖質コルチコイド成分のステロイド(副腎皮質ホルモンなど)とは区別する。

目次

[編集] 効果

男性ホルモン類似物質で、蛋白同化作用を強める働きがある。蛋白同化とは摂取したタンパクを細胞内組織に変える働き(主に筋肉において)のことである。医薬品(製品)としては、下垂体性小人症や、骨粗鬆症、病後などからの回復を適応症として、これを薬効主成分として含有する製品の国内市販承認が得られている。

[編集] 種類

ステロイドアナボリックホルモン
  • テストステロンプロドラッグ
    • テストステロンシピオナート-Testola・Testo(経口)、Depo-Testosterone(注射) CAS:58-20-8
    • テストステロンエナント酸エステル-Delatestryl(注射) CAS:315-37-7
    • テストステロンエステル-混合物-Sustanon 250(注射)
    • テストステロンニコチン酸-Bolfortan(注射)
  • メチルテストステロン(methyltestosterone)-Android(経口) CAS:58-18-4
  • デヒドロクロルメチルテストステロン(dehydrochlormethyl-testosterone)-Turnibol(経口)
  • エチルエストレノール(ethlestrenol)-Maxibolin(経口) CAS:965-90-2
  • オキシメステロン(oxymetholone)-Anadrol(経口) CAS:145-12-0
  • ステンボロン-Anatrofin(注射) CAS:5197-58-0
  • トレンボロン(trenbolone acetate、19-nortestosterone)-Finajet(経口)(注射) CAS:10161-33-8
  • メステロロン(mesterolone)-Proviron(経口) CAS:1424-00-6
  • メタンドロステノロン(methandrostenolone)-Dianabol(経口) CAS:72-63-9
  • ヘキソキシメストローラム-Enoltestovis(注射)
  • メテノロン-プリモボラン(経口) CAS:153-00-4
    • メテノロンエナント酸塩-プリモボランデポー(注射) CAS:303-42-4
  • ナンドロロン(経口)
    • ナンドロロンデカン酸エステル-Deca-Durabolin(注射) CAS:360-70-3
    • ナンドロロンフェンプロピオン酸エステル-Durabolin(注射) CAS:62-90-8
  • ボルデノン(boldenone undecylonate)-Boldenon QV 200(経口)、Equipoise(注射) CAS:13103-34-9
非ステロイドアナボリックホルモン
  • オキサンドロロン(oxandrolone)-Oxandrin・Anavar(経口) CAS:53-39-4
  • スタノゾロール(stanozolol)-Winstrol・Cetabon(経口)、Winstrol-V(注射) CAS:10418-03-8

[編集] 副作用

アナボリックステロイドは多くの副作用を伴う可能性がある。その副作用は用量依存性で、最も一般的な副作用は血圧上昇とコレステロール値上昇である。また、空腹時血糖値耐糖能検査の変化も見られている。テストステロンなどのアナボリックステロイドは、循環器疾患や冠動脈疾患リスクを増大させる。にきびはアナボリックステロイド使用者によく見られ、多くの場合はテストステロン濃度増加に伴い皮脂腺が刺激されて起きる。

高用量のアナボリックステロイドを経口使用すると、アナボリックステロイドが消化管で代謝(C-17α位のアルキル化)され、その生物学的利用率および安定性が増すため、肝障害を起こすことがある。

高血圧、血中LDLコレステロールの増加、血中HDLコレステロールの低下により、心血管系の病気を誘発する原因ともなる。特に「心臓の運動」となる有酸素運動と組み合わせると、顕著な心肥大を起こさせるので絶対に組み合わせてはいけない。有名ランナーや自転車競技の選手が数多く心疾患で死亡している。

精神障害も度々起こる。具体的には攻撃性の上昇・いらいら感・うつ病・依存症による心理的不安作用により、しばしば家族によって気づかれる。

ニキビの発生も度々起こる。また、女性が使用すると男性化兆候もみられる。

また、国際がん研究機関 (IARC) はアナボリックステロイドはヒトに対する発癌性がおそらくある(Group2A)と評価している。

筋肉増強剤としてステロイドを使用することは大変危険な行為であり、また筋肉増強剤に「正しい使い方」というものは存在しない。ステロイドをきちんと理解して使えば危険はないという情報は何ら科学的根拠が示されていない。使用することで健康に深刻なダメージを受けるリスクがあるから一般にドーピングとして禁止されているのであり、「こう使えば安全」「この薬なら危険が少ない」という情報で、使用する事は危険である。法に触れないということと、健康上問題がないということは必ずしも一致しない。

[編集] 診断

蛋白同化ステロイド使用の検出は尿検査で行う。使用を中断して6ヶ月たっても検出される。

[編集] ステロイドと社会

スポーツ選手が自分達の競技パフォーマンス向上のため、特に筋力を向上させることを目的にステロイドを使用する事は意外に古くから行われていた。競技の公平性や選手の健康のために、様々な検査方法でドーピングの蔓延を防ごうと努力され、オリンピックをはじめとする大会では各種の厳重な検査を実施している。しかし、規制対象外の薬品を新たな増強剤として採用したり、増強剤の使用痕跡が出ないような薬品が開発されたりと、あの手この手で検査をすり抜ける試みが後を絶たない。中には国家が中心になってドーピングを行っている場合もあり、近年では検査をごまかす能力に長けた大国のドーピング違反者が減り、逆にドーピング歴の浅い小国が検査に引っかかる機会が多いという現象も起きている。

アメリカ合衆国においては、著名なメジャーリーガーらにステロイド使用の疑惑が持たれたり、「見栄えを良くしたい」といった理由でステロイドを使う青少年が出現して社会問題となった。カリフォルニア州などの一部の州は未成年のステロイド購買を法で規制しているが、インターネットを介して簡単に購入することが可能という状況にある。セントラル・ミシガン大学のトレイシー・オルリッチ博士の調査によると、アメリカ合衆国における10代のステロイド使用者の数は2003年に30万人に達したという。[4]

日本においては個人での所有・使用に関しては合法とされているが、オリンピック種目を中心としたほとんどのスポーツではルールで使用を禁じている。法的に所有が禁止されていないため、インターネット販売を通じて入手し使用している者が一部に存在し、また具体的な薬のプロフィールやステロイドサイクルを掲載した情報もネットを中心に出回っているが、その内容の正確性は当然のことながら何の保証もされていない。

[編集] 参考文献

  1. ^ Michael Powers, "Performance-Enhancing Drugs" in Joel Houglum, in Gary L. Harrelson, Deidre Leaver-Dunn, "Principles of Pharmacology for Athletic Trainers", SLACK Incorporated, 2005, ISBN 1556425945, p. 330
  2. ^ Hartgens and Kuipers (2004), p. 515
  3. ^ Kicman AT, Gower DB (July 2003) "Anabolic steroids in sport: biochemical, clinical and analytical perspectives.". Annals of clinical biochemistry 40 (Pt 4): 321–56. doi:10.1258/000456303766476977. PMID 12880534.
  4. ^USAスポーツ狂騒曲 アメリカは今日もステロイドを打つ』 P.16 町山智浩 ISBN 9784087805161

最終更新 2009年11月10日 (火) 03:58 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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