アマチュア無線

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無線局の一例
無線局の一例
食卓に小さな無線機を一台置いただけでも立派な無線局である。
アンテナの一例
同じことが好きな者同士、話もはずむ。それもアマチュア無線の楽しみのひとつ。

アマチュア無線(アマチュアむせん)とは、通信技術への興味を満たしたり、同好の仲間との対話を楽しむために、事業ではなく趣味として行う無線通信である。

目次

[編集] 概説

アマチュア無線は、その免許に年齢制限はなく、世代を問わずに楽しめる趣味である。

かつて無線通信技術の商業利用が始まる前の時代では、個人の研究者が興味を満たすために無線機を自作して通信を行っていたのであり、すべての通信がアマチュア無線であった。日本でのアマチュア無線の歴史は、大正末期に「私設無線電信無線電話実験局」として認可された事から始まる(→歴史)。

国際法・国内法ともにアマチュア無線は「個人的な無線技術の興味によって行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務」と定義がされている(→条約・法律上の定義

アマチュア無線の運用を希望する場合は当該国の免許を受ける必要がある。日本のアマチュア無線技士は第四級~第一級の4つに区分されている。アマチュア無線局も、他の放送局同様に、コールサインを与えられる。(→免許制度)。

アマチュア無線の代表的な通信方式には電話方式電信方式がある。(→通信方式

アマチュア無線の楽しみ方としては、「ラグチュー」と呼ばれる雑談や、「DX」と呼ばれる遠距離通信、「コンテスト」と呼ばれる通信の競技会、「アワード」と呼ばれる条件を満たした通信を行うことで賞を得ることを目指すこと、などがある。他にも「QSLカード」と呼ばれる交信の記録となるカードを愛好家同士で交換・収集することも大きな楽しみのひとつである。(→楽しみ方

アマチュア無線は非常通信として用いられて社会貢献することもあるが、これについては賛否両論がある。(→社会貢献

アマチュア無線は電波障害を引き起こすことがある。また健康に悪影響をもたらす可能性も指摘されている。(→アマチュア無線が引き起こす問題

電気工事、電話工事関係など、特にアマチュア無線家人口の多い職種も存在する。アマチュア無線愛好家は「ハム」と呼ばれている。(→アマチュア無線家

アマチュア無線においては、無線通信用語が特にアマチュア無線に適した形で変化したものが用いられており、Q符号通話表などの無線用語が定められている。(→雑学

[編集] 歴史

無線通信技術の商業利用が始まる前の時代では、グリエルモ・マルコーニに代表される個人の研究者が技術的興味を満たすために無線機器を作って無線通信を行っていた。つまり、すべての無線がアマチュア無線だったのである。商業利用が始まってからも、無線通信技術の進歩にアマチュア無線家が果たした役割は絶大であった。特に当時は全く利用価値がないと思われていた短波帯を、低電力で全世界と通信可能な周波数帯であると確認したことは、全世界の研究家たちの業績に他ならない。そのため、タイタニック号事件を契機として国際的な電波管理の枠組みが構築され、電波の国家管理が始まった後の時代においても、アマチュア無線の保護には格別の配慮が図られ、幅広い周波数帯の利用が認められた。現在でも、中波からマイクロ波までの様々な周波数帯がアマチュア無線に割り当てられている。

携帯電話に象徴されるように高度化した現代の無線通信技術においては、アマチュア無線家の果たす役割は相対的に減少しているが、しばしば争奪戦が繰り広げられるほど貴重な資源である周波数帯の利用が現代でも許されているのは、科学技術に従事する人材の育成に絶大な役割を果たしてきたためである。事実、電気・情報分野の第一線で活躍している科学者技術者には、現役・元アマチュア無線家が多い。

日本でのアマチュア無線の歴史は、無線の実用化たる東京放送局(JOAK, NHKの前身)のラジオ放送開始に先駆けること数年、大正末期に「私設無線電信無線電話実験局」として認可されたときから始まる。当時の電波は国家に管理されており、JOAKと言えども私設局に過ぎなかった。昭和に入ると国家総動員体制に組み込まれていき、各地で「無線義勇団」「国防無線隊」が結成される。しかし1941年12月8日太平洋戦争開戦に伴い、同日、私設実験局の運用は禁止された。再開されたのは、戦後独立を回復した後の1952年のことであった。その後は、高度経済成長と、科学技術に対する国民の高い関心を背景として、日本のアマチュア無線は大いに発展し、1970年代には「趣味の王様」と呼ばれるブームとなり、1980年代にはアメリカ合衆国を抜いて世界最大のアマチュア無線人口を擁するに至った。

アメリカでは、公共サービスとして地域パレードの通信などを行うなど、趣味の範囲を超えて運用されることがある。アメリカでは開拓時代から現代までボランティアが大きな役割を果たしており、ボランティア活動にアマチュア無線が貢献してきたことから、国際法でのアマチュア無線の定義の範囲を超える運用を国内法で認めている。ちなみにアメリカのアマチュア無線家の全国団体はアメリカ無線中継連盟 (ARRL: American Radio Relay League) というが、これはボランティア活動のための通信を中継して広い国土に伝えるために、アマチュア無線家を組織化したことに由来する。

かつては外国の武力侵入があった際に、放送・商業通信が全て統制された中で、政府当局の厳しい監視をかいくぐり、スパイさながらに事件を世界中に伝えたこともあった(チェコ事件)。

近年、日本国内ではアマチュア無線家は減少傾向にある。原因として以下のような理由が挙げられる。

  • 特定の相手との実用的な通信をしたい人は、資格や手続きの必要がない携帯電話特定小電力無線などを利用するようになった。
  • 見知らぬ相手や外国と交流したい人は、インターネット掲示板チャット機能を利用するようになった。
  • 秋葉原を中心に日本各地に存在したアマチュア無線関連の専門店が多数閉店し、家電販売店も収益の良くないアマチュア無線部門から撤退し(あるいは開店当初から扱わず)機器を購入したり、目にする場が減ってきている。
  • アマチュア無線用機器の販売数低下により、価格が上昇し、購入しにくくなっている。
  • 都市化により自宅に大きなアンテナを設置できない。
  • いわゆる「理科離れ」が影響している。

[編集] 条約・法律上の定義

無線通信技術への貢献が評価されて周波数帯の利用を許されたことから、国際法・国内法ともにアマチュア無線は「個人的な無線技術の興味によって行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務」と定義がされている。

国際電気通信連合憲章に規定する『無線通信規則』」における定義

アマチュア業務 
金銭上の利益のためでなく、もっぱら個人的に無線技術に興味を持ち、正当に許可された者が行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務(第1条第78項)

日本国電波法における定義

アマチュア業務 
金銭上の利益のためでなく、もつぱら個人的な無線技術の興味によつて行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務をいう。(施行規則第3条第1項第15号)
アマチュア局 
金銭上の利益のためでなく、専ら個人的な無線技術の興味によつて自己訓練、通信及び技術的研究の業務を行う無線局をいう。(施行規則第4条第1項第24号)

[編集] 免許制度

アマチュア無線を開局するには免許を受ける必要があるが、免許の制度は各国によって異なる。

[編集] 日本の制度

アマチュア無線に限らず、日本で無線の免許と言われているものには、

  • 必要な技術・技能・法律知識を持っている人に与えられる資格である無線従事者免許
  • 技術基準を満たす無線設備に与えられる免許である無線局免許

の2種類があり、無線局免許を与えられた無線設備を、無線従事者が運用することが求められる。詳細はアマチュア局の開局手続きを参照。

無線局免許状が付与されると、一般の放送局同様にアマチュア無線局にも呼出符号(コールサイン)が与えられる。

日本のアマチュア無線技士の資格は、下位資格から次の種類に分かれている。

  • 第四級(旧・電話級)アマチュア無線技士
  • 第三級(旧・電信級)アマチュア無線技士
  • 第二級アマチュア無線技士
  • 第一級アマチュア無線技士

従来、第三級以上はモールス信号解読の技能試験が課されていたが、国際電気通信条約との整合性の問題から、2005年10月1日から第三級では廃止されて符号及び通信略号に関する知識を問う筆記設問に変わり、また第二級・第一級にあってもその聴き取り速度が軽減された(ノーコード・ライセンスを参照)。これに伴い、申し出により、二級免許を取得した者は一級の電気通信術が、また電気通信術試験の廃止前に実施された国家試験に合格または養成課程修了により三級免許を取得した者は二級・一級の電気通信術が、それぞれ免除される。

なお総合無線通信士など一部の職業(プロ)無線従事者の資格取得者は、アマチュア無線技士と同等の資格を持つとみなされる(無線従事者を参照)。

日本においては、アマチュア無線に限らず無線従事者資格に年齢制限は設けられていない。そのため小学生の合格者もしばしば見受けられる。だが仮に試験に合格しても、開局までにはある程度の日数と手続き費用(無線機などの機材代は除く)がかかる。このような手続きは公共財としての性格が強い電波を公正に利用し、混信を防ぐためのものであるが、アマチュア無線の敷居を高くする要因にもなっている。

このように厳格な国家試験が行われる一方で、アマチュア無線機自体は免許がなくても購入できるため、不法開局が後を絶たない。これら不法局に対しては、無線局から徴収された電波利用料を元に、各地区の総務省総合通信局が取り締まりに当たっている。また購入の際“アマチュア無線機を使用する場合は免許が必要”などと注意する「指定無線設備の販売における告知」が販売店において行なわれている。

[編集] ノーコード・ライセンス

日本のアマチュア無線の免許制度の特徴として、入門級である第四級(旧電話級)はモールス符号の技能試験がないノーコード・ライセンスであることが挙げられる。かつて国際電気通信条約では短波帯を運用する無線従事者にはモールス符号の技能を求められていたにもかかわらず、空中線電力が小さいことを理由に、日本では短波帯の運用を電話級にも認めた。上級資格を取得すると、扱える空中線電力が大きくなるが、そもそも日本では住宅事情からして大出力無線の運用が難しい。

後述する米国の資格などに比べると、資格取得が容易でアマチュア無線人口の拡大に貢献し、通信機産業の育成に役立った反面、アマチュア無線家の質が低くなり違法な運用が増えた、上級資格を取得するモチベーションに乏しいので科学技術の発展に貢献しなくなった、という批判もある。

なお、現在ではアマチュア無線を除いてモールス符号が廃止され、その重要度が低下したため、国際電気通信連合憲章に規定する無線通信規則からモールス符号の技能要求は削除されている。そのため、日本と同様のノーコード・ライセンスを導入する動きが各国に広がっている。

[編集] 個人局と社団局

日本のアマチュア局の無線局免許には

  • 個人が開設するアマチュア局に与えられる個人局
  • 団体が開設するアマチュア局に与えられる社団局

の2種類がある。社団局は、学校や職場、地域などのアマチュア無線クラブが開設する。博物館などの科学教育施設や、福祉施設などにも社団局が設置されていることがある。アマチュア無線クラブのすべてが社団局を開設しているというわけではなく、むしろ社団局を持たないクラブの方が多い。

[編集] 呼出符号(コールサイン)

識別信号#アマチュア局」および「世界のコールサイン割り当て一覧」も参照

アマチュア無線局は、他の放送局同様に呼出符号(コールサイン)を与えられる。世界中の全ての(許可された)無線局は識別信号を有しており、それにより、国、地域、及び運用者が判別できる。アマチュア無線局も同様である。

日本のアマチュア無線局の識別信号/呼出符号(コールサイン)は、基本的には「JA1AAA」のように、JA+(地域番号)+Aから始まる2または3文字のアルファベットから構成される。JA1の部分をプリフィックス、AAAの部分をサフィックスと呼ぶ。ただしSOSやXXX、Qから始まるものでQ符号に当てはまるものは除かれる。発音の仕方は「ジェイエイワン・エイエイエイ」であるが、個性的に発音する利用者も多い。交信の際には、アルファベットのみでの聞き間違い(ジーかジェーか、など)を防ぐため一般にフォネティックコード(通話表)で再確認する。また場所や指名についても同様に確認する。

JAにあたる部分は、JA-JSまでのうちJB、JCを除くもの、また関東では7K-7N(小笠原はJD1)が割り当てられている。7Jは相互運用協定に基づく外国人有資格者へ割り当てられていたが、現在はJA-JSのプリフィックスが割り振られている。特別局(記念運用)に8J-8Nが使われる。記念局以外は、希望の文字列の付与はしない。記念局の例として、ハムフェアなどでJARLが運用する 8J1A、最近(2007年)では、月面反射通信 (EME)を目的とした 8N1EME、FISノルディックスキー世界選手権札幌大会・特別記念局 8J8WSC、8N8WSE などがある。日本初の記念局は大阪万博会場に設置されたJA3XPOである。

地域番号は、無線局の所在地である、北海道(8)、東北(7)、関東(1)、信越(0)、北陸(9)、東海(2)、近畿(3)、中国(4)、四国(5)、九州(6)の10の各地方総合通信局及び沖縄総合通信事務所の管轄により指定される。ただし、関東総合通信局管内においては変則的・例外的に地域番号が使用され、7K-7Nのプリフィックスについては1から4までが使われている。

サフィックスが2文字の場合は、個人であればOT(オーティー、Old Timerの略で、戦後アマチュア無線が再解放された直後の時期に開局した超ベテラン)であり、JRの2文字局はレピータに割り振られている。沖縄総合通信事務所管内では、米国統治下でのKR8 2文字局が復帰時にJR6に振り替えられたため異なる。またY、Zで始まる3文字局は社団局であるが、JPプリフィックスはレピータに割り振られている。

今までは、一度使用された呼出符号を別の申請局には付与しなかったが、特に関東、東海、近畿、九州では不足となり、閉局された呼出符号が再交付されている。また逆に、何かの事情でコールサインが変わった場合や失効した場合でも、旧コールサインが使用されていなければ、元に戻すこともできるようになった。

移動する局の場合は「JA1AAA/3」(ジェイエイワン・エイエイエイ・ポータブルスリー)のように、運用中の地域の番号を末尾に付けて呼ぶ。

「A○A」のように、最初と最後が同じ文字の場合「サンドイッチコール」、同じ文字が連続して3つ割り当てられると「トリプルコール」と呼ばれる。同じ文字2つで割り当てを受けた場合の「ダブルコール」は2文字局に対してのみ云われる。

[編集] 日本以外の国の免許制度

免許制度の内容は国によってまちまちだが、例えばアメリカ合衆国では、下位資格から順に次の種類に分かれている。所管は連邦通信委員会 (Federal Communications Commission, FCC)。

  • ノビス級(廃止)
  • テクニシャン級
  • ゼネラル級
  • アドバンスト級(廃止)
  • アマチュア・エクストラ級

ノビス級、アドバンスト級の区分は廃止されたが、すでにこの資格を持つ者の運用・更新は可能である。かつてはすべての区分にモールス符号の試験が課されたが、現在ではいずれの区分もノーコード・ライセンスとなっている。日本では自信があれば初めから最上級資格に挑戦できるが、アメリカでは最下位資格から受験し、順にステップアップする制度となっている。

試験はElementと呼ばれる単位に分かれており、それぞれの対応は以下のようになっている。

  • Element 1(モールス)(廃止)5語/分の速度で送信されるモールスを聞き取り、その内容に関する質問に10問中8問の正解、または25文字連続の正確な聴き取りで合格。
  • Element 2(テクニシャン級)35問中26問で合格。
  • Element 3(ゼネラル級)35問中26問で合格。
  • Element 4(エキストラ級)50問中37問で合格。

テクニシャン級を取得するのにはElement 2のみに合格すればよい。ゼネラル級以上を取得する場合には対応するElementの合格が必要となる。つまりいきなりエクストラ級を取得したい場合は、Element 2からElement 4のすべての試験に合格せねばならない。また、Element 2に合格し、かつElement 1に合格した場合には限定的に上位資格で許可される帯域の一部において運用できた。この資格を以前はテクニシャン・プラス級と呼称していたが正式な名称はなくなり、「Technician with HF」などと呼称された。

試験問題約1700問は全てインターネット上に公開されていて、新問の出題はないので、これらを勉強して受験すれば合格は比較的容易である。

日本と比べて初級資格でも比較的大電力の空中線電力を扱える(級問わず最大1.5kW)一方、周波数帯の制限は厳しく、日本の局がFCCの監視局から郵政省(当時)を通じて周波数逸脱を警告された例もある。資格区分によってコールサインが変わり、また資格者の情報はデータベース化されていて誰にでも参照できるので、資格外運用を容易に判別できる。そのため、上級資格を取得するモチベーションを刺激される制度である。ただし、資格区分によるコールサインの変更は資格保持者の任意であるため、コールサインのみでの資格の判断が困難な場合がある。

また、日本でいう無線従事者免許証と無線局免許状が一体となった包括免許方式であるため、資格内での運用である限り無線機の登録などは必要なく、しかも資格の取得の定義が「FCCデータベースに入力された時点」なので、無線機が手元にあれば、登録を確認し次第すぐに運用を開始することができる。

[編集] 免許取得

一般にアマチュア無線を行うためには、運用しようとする国の免許を取得する必要がある。

[編集] 相互運用協定

[編集] 日本が相互運用協定を結んでいる国

日本は以下の国と相互運用協定を締結している。日本は相手国のアマチュア無線資格を持つ者に日本での運用を認め、相手国は日本のアマチュア無線資格を持つ者に相手国での運用を認めている。

日本のアマチュア無線局は、上記の国の中でアメリカとフランスにはそのまま日本の無線機を持ち込み、日本での免許条件の範囲内で運用できる。他の国については手続きが必要である。

[編集] 通信方式

アマチュア無線で使われる通信方式には以下のようなものがある。

[編集] 電話通信

音声による通信(電話
短波帯では占有帯域幅が狭く遠くまで電波の届くSSBが、VHF以上では音質の良いFMが使われることが多い。また自作が容易なことから、周波数に余裕のある50 MHz帯や28 MHz帯ではAMも愛好者を中心に使用される。デジタル方式による音声通信も一部で行われているが、まだ主流ではない。

[編集] 電信通信

電信方式の通信で、モールス信号を打つためのキーの一例。接点が2つある高速入力用。
符号による通信(電信
手送りのモールス符号 (CW)
モールス符号による通信は、すでにデジタル技術に取って代わられ、業務用無線では一部の海事や軍事用途を除いて廃止された。しかしモールス符号による通信により、またアマチュア無線家によって短波帯を開拓した歴史がある。また、以下のような利点があるため、アマチュア無線では熱心な愛好者が多い。
  • 最大占有周波数が500 Hz程度しか必要としないため、混信に非常に強い。
  • 同じ理由で、電波が弱くても明瞭に通信ができる。
  • 欧文モールスでは限られた略符号やQ符号を並べて打電するだけで交信が成立し、喋る必要がないので、外国語が苦手でも外国人との通信に困らない。無線の世界で「ラバースタンプ」(ゴム印)と呼ばれる。
  • 和文モールスは日本語なので種類は多いものの符号を覚えれば普通の会話と同じである。特に大戦中の軍隊や業務通信上がりのベテラン層に和文モールス通信の愛好者が多く、国内との通信が主体となる3.5・7・144・430 MHzに多く出ている。しかし、アマチュア無線の場合、内容的には通常の「ですます体」の会話をそのままモールス符号に置き換えており、さらに符号そのものが欧文のそれより長い傾向があって通信効率が著しく落ちる問題があり、モールス通信の敷居を高くする原因の一つになっている。
  • 狼煙による情報伝達に通じる原始的手法への郷愁
印刷または画面表示によるラジオテレタイプ (RTTY)
古くは機械式のテレタイプ端末と、これを無線機に接続する変復調器によって運用され、ある程度の知識がないと機材を揃えるのが困難だった。加えてテレタイプライターの発する騒音がしばしば愛好家の悩みの種となり、座布団の上に端末を載せ、その上から毛布をかぶせるという試みまであったという。しかし、現在ではパソコンのサウンド入出力端子に簡単なインターフェースを介して無線機を接続し、ソフトウェア(MMTTYなど)でRTTYの送受信ができるシステムが開発され参入が容易となったことと、欧数記号のみしか扱えなかった従来のRTTYと違って日本語の文字通信も可能なPSK31といった通信方式も現れたことにより、文字通信がより運用しやすくなり利用も増えている。現在RTTYを運用している局の設備の多くは、パソコンとソフトウエアによるものになっている。

[編集] 特殊モード通信

コンピュータによるデータ通信(パケット通信
パソコン通信インターネットが利用されている。商用のものと比較して安定度や速度といった実用性では劣るが、技術を理解する楽しさがある。定額制接続の、いわゆるブロードバンドの開始以前は、ダイヤルアップ接続のような通信料のかからないアマチュア無線のパケット通信が多く使われていたこともある。
アマチュアテレビ (ATV)
テレビ放送と同一規格の映像をやり取りする形式と、SSTV(低速度走査=スロースキャンテレビ)と呼ばれる形式がある。前者は周波数を広く取る(最大占有周波数6 MHz)ため、バンド幅の広い1200 MHz以上の周波数で行われる。後者は「テレビ」という名称が付いてはいるが、実際には1枚の静止画像を30秒かけて送信するものである。これは低速なダイヤルアップ接続で大きな画像を表示する状態に似ている。使用する周波数幅は音声と同程度(2.5 kHz程度)であるため、短波帯でも通信ができ、海外局とのやり取りも楽しめる。最近ではパソコンのサウンド入出力端子に無線機を接続することで、ソフトウェアのみでSSTVを実現するシステムがある。
アマチュアFAX
古くから存在するが、実際の事例は少ない。市販FAXとアマチュア無線機とのインターフェース製作の問題がある。旧電電公社のミニファクスの払い下げ品が、ジャンク品市場に大量に出回った1985年頃には、ミニファクスをアマチュア無線に使用する改造が流行した。最近ではパソコンのサウンド入出力端子に無線機を接続することで、ソフトウェアのみでアマチュアFAXを実現するシステムがある。
PSK31

[編集] 楽しみ方

ただ交信して雑談をするだけでなく、アマチュア無線には多様な楽しみ方がある。主なものを以下に紹介する。

[編集] 交信を楽しむ

[編集] ラグチュー

ラグチューとは、いわゆる雑談のことである。本来アマチュア無線は見知らぬ友人を求める趣味であることから、ラグチューはアマチュア無線の基本のひとつということになる。その一方で、アマチュア無線家による技術研究と社会貢献が、今日のアマチュア無線の社会的地位と割り当て周波数帯に反映されていることも確かであり、ただ雑談をするだけではアマチュア無線技士の名に値しないという批判もある。また、携帯電話が普及する前は、友人たちとのラグチューが目的でアマチュア無線を始める者も少なくなかった。

[編集] 遠距離通信 (DX)

DXとは、短波帯においては海外、VHF以上では見通し距離外の局との通信を目指す、遠距離通信のことをいう。単純に無線機の出力を上げることで通信距離を伸ばすこともできるが、敢えて小電力で遠距離との通信に挑むこともある。

安定に交信を行うためにはアンテナの整備に力を入れる必要があり、熱心なDX愛好家は20 m以上の大型タワー(一般に言う無線鉄塔)に素子数の多い八木・宇田アンテナなどを設置している。また、日本のように狭い国土でも地域によって電波伝播特性が異なるため、目指す地域との交信をするには、設備だけでは望みの成果が得られず、自ら通信に適した場所への移動運用を試みることもある。

海外のアマチュア無線家とのお喋りを楽しみ、近況報告などし合う間柄になると、相手と直接面会する例もある。アマチュア無線家が民間外交官と呼ばれる所以である。

普段は無線を通じて話している友人が、直接面会して話すことをアイボールQSOという。直訳すると「目玉交信」という意味で、目と目を合わせて話すことから、このように呼ばれる。インターネットのオフラインミーティングと同じものであるが、アマチュア無線のアイボールQSOは国境を越えること珍しくない。なお、「QSO」は一対一で会う場合で、複数が集まる場合はやはり「ミーティング」となる。

最近はパケット・クラスターという極超短波帯 (VHF, UHF) でのネットワークが構築され「珍局」(定住者が少ない、また政治的に不安定で許可が滅多に下りない地域からの、八方手を尽くして許可を取っての電波発射)などが出現すると、周波数やロケーションがリアルタイムで入手できるようになったので、従来のようにコツコツと自分で周波数帯をくまなく聴き続ける(ワッチする)ことが減少しつつある。また「珍局」と交信するために、免許された以上の高出力で、交信を成立される者も以前から現れている。さらに「珍局」自体が偽物という場合もある。

このようにして海外の100カントリー以上と交信が成立した場合、DXCCという世界的に権威のあるアワード(賞)を受けることができる。この審査は極めて厳しい。

時に(特に極超短波帯以上で)仲介の役目をするホスト局が登場し、A局とB局の交信の橋渡しをすることがある。ホスト局は2局の信号を十分に受信できる場所にあり、A局が呼びかけている状況をB局に伝えてアシストするものであるが、これについては賛否両論ある。

[編集] コンテスト

コンテストとは、主催者が定めるルールに従い、参加者同士で規定の時間内に、より多く、より遠くとの交信を行って得点を競い合う競技である。交信局数×交信地域数を得点とするルールが多い。日本アマチュア無線連盟 (JARL) が主催する主なものとして、より多くの市町村に位置する無線局との通信を目指す全市全郡コンテストなどがある。また、全世界の参加者を対象とする大規模なコンテストも年に何回か開催され、DX愛好家が腕を試すチャンスとなっている。国内で行なわれるコンテストは24時間が普通(2時間~半日のスプリント、1週間・1か月かけるマラソンもあり)だが、世界的に行われるものは時差の関係から48時間となる。コンテストでは普通、交信証明としてコンテストナンバーを交換する。

一般的に「CQ」をかけて呼び出されるのを待つ局(ホストなどと称される)となるか、「CQ」を追いかけてコールするか、のどちらかになる。前者には後者が呼びかける「コールサイン」が重なる状態となり、これをパイルアップと呼ぶ。ホストは、パイルの中からコールサインを瞬時に聞き取り、交信を交わす。お互いの交信が確認できた場合「QSL」(交信成立)を交換する。したがって短波帯CW, SSB, AMの場合は、パイル状態でも音声が重なって聞こえるため、一度呼び出されたときに多くのコールサインを聞き取り、スタンバイしている局を呼び出すことで交信局数を増やせる。FM変調では、弱い電波は強い電波に消されてしまうが、ここでも時間差でコールサインを素早く多数聞き取ることがポイントとなる。ホスト局の方は、弱い局から拾って行くのが一般的である。また呼びかける局にとっては、自局の電波出力が弱いか、あるいはコンディションやホストの耳が弱い(=受信感度が悪い)ため、何度呼びかけても応答されないことがある。その場合は、呼出している局を探すこととなる。

このように、短時間でより多くの局と交信すること、その中で珍しい局と交信ができること、刻々と変化する伝播状況によって交信可能エリアも変化し、短時間でAJD, WAJA, JCC-100(後述)などが達成できることがコンテストの醍醐味である。ただ、DX通信と同様、交信を成立させるために免許された以上の高出力で運用する者もいる。

[編集] アワード

アマチュア無線のアワード(賞)は、積み重ねた交信が決められた条件を満たしたときに与えられる賞である。ただ漫然と交信するのではなく、ある目的を持って通信するための方法を模索するきっかけや、長期的なハムライフの目標として愛好されている。アワードの取得のために交信が難しい地域と交信するために設備を増強したり、あるいは自ら交信を達成しやすい場所に行って移動運用することもある。

発行団体は、各国のアマチュア無線家の団体のほか、企業や公共団体などが記念事業として発行する場合もある。以下に、JARLが発行するアワードを紹介する。

  • AJD (All Japan Districts Award):日本国内の10コールエリアと交信する。
  • WAJA (Worked All Japan Prefectures Award):日本国内の1都1道2府43県と交信する。
  • JCC-100~700, JCG-100~500:日本国内の異なる市ないし郡と交信した数を、100刻みに表彰する。JCC, JCGはそれぞれ日本の市、郡を示すコードの名称(市郡区番号を参照)。

また、アメリカARRLが発行するアワードにDXCC (DX Century Club) がある。これは、全世界の陸地を「エンティティ」(主権国家及びその海外領土、独立地域、帰属国未定地。1980年代まではカントリーと呼ばれていた)と言われる約300(2009年現在330)の地域に分け、100エンティティ以上と交信すると取得できるアワードである。賞状はこのクラブの会員証を兼ねている。以降、交信エンティティ数が増すごとに上位の認定を受けることができる。現存エンティティ完全制覇まで残り10地域を切るとオナーロールメンバー(名誉会員)登録がされる。交信エンティティの多さはDX愛好者のステータスシンボルでもあり、一生をかけて追いかける目標として愛好されている。

[編集] QSLカード

アマチュア無線家には、交信をすると、その記念となるQSLカード(交信証)を交換する習慣がある。QSLカードを収集すること自体がアマチュア無線家にとって大きな楽しみのひとつであるほか、アワードの申請に必要な証明書類としてQSLカードの提出を求められることが多い。また、QSLカードがいっぱいある時は送料がかさんでしまうが、JARLの窓口を通すと送料が安くなる。

[編集] 外に出ることを楽しむ

アマチュア無線とは無線機を通して他者と対話するものであるため、ともすれば自室のシャック(無線室)に引き込もりがちである。しかし街や野山に無線機やアンテナを連れ出す移動運用にも格別の楽しさがある。最近は日本各地の「道の駅」で 移動運用する局が多い。国内の移動ばかりでなく、海外に設備とキャンプ装備一式を担いで行き、無人島や定住アマチュア無線家のいない地域から電波を発射して全世界からの交信リクエストに応える「DXペディション」(DX+Expedition、冒険)という運用法も存在する。

[編集] モービル

モービルとは、自動車オートバイに小型の無線機とヘッドセットやマイクシステムを組み込み、移動して通信実験を行うことを指す。長い歴史のあるモービルハムは、安全運転のために様々な技術的研究を積み重ねており、運転中の携帯電話のような事故とは無縁であったが、運転中の携帯電話が法規制されると共に使用方法によっては法規制の対象となった。

[編集] フォックスハンティング

アマチュア無線家が用いるアンテナには指向性を持つものも多く、2点以上の場所から電波の方向を調査することで、無線局の場所を推定できる。実際、沿岸地域にある複数のアマチュア無線局が、海難信号を送出している船の位置を協力して探索し、救助に協力することはしばしばある。

こうした空中線の特性を利用した遊びとして、古くからフォックスハンティングが行われてきた。これをオリエンテーリングに似たルールで競技化したものがARDF (Amateur Radio Direction Finding) であり、信号を発しているポールを求めて、小型の空中線と受信機を持ち、全部を発見するまでの速さを競う。

ARDFは自分の足で野山を走り回るハードなスポーツであるという点で、他のアマチュア無線の楽しみ方と大きく異なる。ARDFは旧共産圏の諸国を中心に盛んに行われてきたが、西側諸国にも広まり、世界大会が開かれている。日本でも毎年全国大会が開催されている。

[編集] 自然物・自然現象を利用する

短波帯の電波伝搬は電離層での反射が前提となるので、それ自体が自然現象を利用していることになる。このような自然物・自然現象を利用した通信は不安定であるため、商用通信では嫌われる傾向にあるが、アマチュア無線ではどこが聞こえるか・どこから呼ばれるか分からないという不安定さが、逆にチャンスを掴み取る面白さになっている。

[編集] 電離層

無線通信は必ずしも直接電波が届くものとは限らない。短波帯では上空の電離層と地表との間で反射を繰り返しながら、地球の裏側まで電波が届く。直線距離で最も近い経路とは別に、地球を逆に回ってきた電波(ロングパス)が一緒に届くと、エコーがかかったように聞こえることもある。電離層には下層から順にD層、E層、F層という名前がついており、これらの電離層は中波から短波帯までの電波を反射する。

[編集] スポラディックE層

初夏から夏にかけて(が多いがそれ以外にも発生しうる)E層付近にスポラディックE層(Eスポ)と呼ばれる強力な電離層が局地的に発生することがある。EスポはVHFまでの電波を反射するため、ラジオやテレビにとっては混信の発生源となる迷惑者だが、アマチュア無線家にとっては普段交信できない地域と交信するチャンスである。Eスポが発生するかどうかはある程度予測可能であり、また太陽活動の変動に伴い「当たり年」となることもあるため、これを狙って通常その周波数帯では不可能な遠距離通信を試みることができる。SSN(Sun Spot Number, 太陽黒点指数)、「サイクル」という活動期・停滞期の繰り返しが太陽活動の状況を調べる手がかりとして重視されている。

[編集] 月面反射通信 (EME)

電波を反射させる相手としてより遠いを選ぶのが、月面反射通信 (EME=Earth-Moon-Earth) である。スタック化した八木アンテナ、またはパラボラアンテナを月に向け、電波を反射させて相手局が受信する。反射する電波は微弱であり、かつ月は移動するため、通信をしない電波天文に比べて大がかりな設備(大出力の送信機、高感度の受信機、指向性の高いアンテナ)を必要とし、またモールスによる、交信用の特別な単文字符号が用いられる。

[編集] 流星散乱通信 (MS)

宇宙空間の微細な塵が大気に突入する際に大気中の原子を電離させると、一時的に微小な電離層が発生したようになり、そこで電波を反射することがある。通常の電離層と異なり存在する場所が限定されるため、反射された電波を受信できるのは短時間であるが、テキスト通信として実用化もされている。年に何度かある流星群の時期にはある程度連続して現象が発生するためこの時期を狙ってアマチュア無線の交信を試みることもある。通信手法の確保の観点から流星バースト通信 (Meteor Burst Communication, MBC) と呼ばれることも多い。

[編集] 中継設備を利用する

個人が開設しているものから、日本アマチュア無線連盟が開設しているものまで、様々な中継設備が運用されている。これにより電波の届く範囲が広がる。

[編集] アマチュア衛星通信

宇宙空間にはアマチュア無線家によって製作された、アマチュア無線のための通信衛星であるアマチュア衛星が打ち上げられている。現在ではアマチュア通信用の衛星は常時10基以上運用されているので、アマチュア無線家にとっては身近なものとなっている[1]。衛星には通信を中継する機能や、地上から送信された信号を一定時間記憶し再送出する機能が搭載されており、電話・電信で直接交信するほか、コンピュータをアマチュア無線機に接続し文章をやりとりしたりする。ただしアマチュア衛星は静止軌道には投入されておらず、通信中はアンテナで衛星を追尾する必要があるため、これもある程度の慣れまたは設備を必要とする。

[編集] レピータ

アマチュア無線のための中継設備は地上にもある。見晴らしのいい山頂やビルなどにレピータ(レピーター、リピーター)と呼ばれる中継局が設置されており、その中継局を介して通話をすることができる。レピータを使用すると、見通し距離を大きく超える遠距離通信を安定的に実現できる。レピータは多数のアマチュア無線家が使用するため、短時間で要領よく通信を行うことが求められる。いわばアマチュア無線用の“無料公衆電話"。主にUHF(430・1200 MHz)帯で運用されている。

[編集] ホーンパッチ

中継に有線通信を用いるのがホーンパッチ(フォーンパッチ)である。通信の途中に電話回線インターネットによる中継を挟むことで、直接電波が届かない地域との通信を実現する。有線用の電話機から公衆回線を通じてアマチュア無線に接続する形態、つまり電話機側の人が無線家でないこともあり得るタイプ。欧米では古くから実用化されており、特にアメリカでは普及していたが、日本においても法律が改正されて、一定の範囲内であればアマチュア無線機と商用通信網の接続が認められるようになった。有線回線を中継して互いが無線機を用いるD-STARケンウッドアイコムとJARLで推奨)やWiRES(バーテックススタンダードで提唱)、Echolink、eQSO、IRLP(いずれもフリーソフト)がある。しかし利用者は少なく、機材(パッチャー)も少ない。

[編集] パケット通信

詳細は「パケット通信 (アマチュア無線)」を参照

アマチュア無線を用いたデータ通信である。OSI参照モデルに基づき、各階層でのプロトコルやサービスが開発されている。データリンク層プロトコルとしてはパケット交換方式であるAX.25が事実上の標準規格であり、このことからパケット通信と呼ばれるようになった。上位層では、RBBS (Radio BBS) が運用されているほか、TCP/IPを実装してインターネットと接続することも行われている。

[編集] 小電力通信 (QRP)

詳細は「QRP」を参照

QRPとはQ符号の一つで、空中線電力を下げることを意味する。転じてアマチュア無線家の間では、あえて小電力の無線機で遠距離との通信に挑む遊び方を指す。通常QRPとは空中線電力5ワット以下での運用のことをいうが、下限はないので、0.1ワット以下での通信に挑戦することもある。大電力に負けない成果を出すには、指向性が強くて実効輻射電力を稼げる大型アンテナの使用や、微小な信号を聞き分ける高度な通信技術、そしてEスポなどの自然現象を味方につけることが要求される。

小電力にすると、

  • 無線機の自作が容易になる
  • ラジオ・テレビや、他のアマチュア無線局に妨害を与える可能性が小さくなる
  • 指向性の強いアンテナを使うので、自分も妨害を受けにくくなる
  • 一部のバンド・モードを除き、上級資格が必要ない

といった利点もある。免許制度や住宅事情の影響もあり、日本のアマチュア無線家には特にQRPの愛好者が多い。

[編集] アパマンハム

アパートマンションなどの共同住宅のベランダや屋上にアンテナを設置するアマチュア無線家のことを「アパマンハム」と呼ぶ。むろんアパマンハムには他の住人の迷惑にならないよう格別の配慮が必要である。小型・高性能・安全なアンテナが要求されるため、その技術的研究が盛んに行われている。この造語は日本では便利で一般的である一方、海外でも同様のアパマンハムがいる。例えば、Hidden Stealthなどの形容詞、Apartment Dweller, Antenna Restriction, CC&Rなどの規制、制限条件などから具体的なカテゴリーや表現を用いるが、「限られたスペースでいかにアンテナを動作させるか」という同義での研究が盛んである。また、日本のマンションと海外のマンションの定義も異なり、むしろ日本でいうところのマンションもアパートのカテゴリーと定義できる。更には、アパートでの接地条件が垂直系アンテナの効率に大きく影響するため、接地条件が不良なケースでの研究対象やアンテナの展開の仕方、材料なども論議されている。このように広義なアパマンハムにとり、技術的には車や移動運用で使用するアンテナを応用、活用できるという共通部分も少なくない。また、戸建所有者にあっても、地面がなく、密集地であったり、ベランダのみでの運用を余儀なくされるなどの住宅事情から、その研究テーマや条件はアパマンハムと共通であることが多く、アパマンハムを広義に捉えて相互の情報交換がなされている。

[編集] 自作

詳細は「自作 (アマチュア無線)」を参照

上に挙げた通信の中には、市販の無線機器のみでは実現が難しいものもあり、必要な機器を自作する必要に迫られることもある。一方で、もともとアマチュア無線は技術研究を楽しむ遊び(趣味)であるため、市販の無線機器を買えば済むことであっても、敢えて自作に挑戦するアマチュア無線家も多い。これは、市販のパソコンを買えば用が足りるのに、あえてパソコンを自作するパワーユーザーに似ている。

[編集] 社会貢献

科学技術の発展に対して、アマチュア無線が果たしてきた役割は大きい。だがアマチュア無線の社会貢献はそれだけではない。

[編集] 非常通信

アマチュア無線の通信が報道などで報じられる一例として、非常通信が挙げられる。非常通信を行った際は、総務大臣へ報告をしなくてはならない。

地震、台風、水害等で他に利用できる公衆通信手段の利用が困難な場合に限り、電波法の規定によりアマチュア無線局であっても非常通信を行うことが認められている。非常通信の発動時は法定符号(電信通信においては「OSO」、電話通信においては「ひじょう」)を前置することでその交信が最優先扱いとなり、他の無線局は応答する場合を除き、混信妨害となる電波の発射をしてはならない。ただし通信設備を有していても、無線局の免許を得ずに運用した場合は電波法に基づき罰せられる(勘違いされるが、免許を持たない者が“山岳遭難に備えてアマチュア無線を持って行って”はならない)。また、無線局免許状の記載事項(無線設備の設置場所、識別信号、電波型式及び周波数、空中線電力)の範囲を逸脱してはならない(電波法第53~54条)。

電波法では総務大臣命令により免許人に行なわせる「非常の場合の無線通信」(法第74条。ただし発動された例は今のところなく、また要した経費は請求により補償される)、また無線局免許人の判断責任で行なう「非常通信」(法第52条第4号。ボランティアであるから経費は免許人の自己負担)に分かれる。これらはアマチュア無線の社会的存在意義の中核を占めるものである。

その一例として、平成20年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震では、中山間地で孤立した集落や山中の行楽客からのアマチュア無線を活用した通報により、多数の孤立者が迅速に救助され、人的被害の拡大を防いだ事例がある。携帯電話やインターネットが広く普及した今日にあっても、アマチュア無線の災害時対応に対しては社会から大きな期待が寄せられている。日本アマチュア無線の総会における、開催地の知事・市長・総合通信局長をはじめとする来賓からの祝辞にも、過去の災害時におけるアマチュア無線ならびにアマチュア無線家の社会貢献への感謝と、今後とも変わらぬ活動への期待が織り込まれることが多い。

国際的にもアマチュア無線による災害時対応には大きな期待がかけられており、2004年に発生したインド洋大津波を契機に国際条約の整備を目指した国際会議が発足し、関係主管庁への働きかけが進行している。先進的な法整備がなされているアメリカにおいては、国際条例で規定されるアマチュア業務に加え、特に非常通信を主目的とするアマチュア無線による非営利の公共業務 (public service) をアマチュア無線業務と定義し、その推進を主目的とするよう関連法規が整備されている。日本においても、近年の国土防災への意識の高まりとともに、各地にアマチュア無線家による自主的な防災活動が組織されてきている。これは近年の衰退傾向にあっても、依然としてアマチュア無線が社会的に存在する意義の中核をなすものである。しかしながら日本の法律では、アマチュア無線によるpublic serviceに対する明示的な法文は整備されていない。

なお、「非常通信」と同様に認められている「遭難通信」「緊急通信」「安全通信」も電波法第52条第1・2・3号で規定されているが、いずれも「船舶又は航空機が……」とあり、船舶・航空機に搭載されたアマチュア海上・航空移動局からの運用がこの規定にあたるが、アマチュア陸上移動局の「山岳遭難」などはこの規定に当たらないと解釈されている。このうち「遭難通信」に関しては、アマチュア無線局に指定された電波型式および周波数以外での運用も認められているため、アマチュアバンド外である国際遭難周波数(2182 KHz, 156.8 MHzなど)での運用が可能である。しかし、非常通信列びに遭難通信の取り扱いを目的としたアマチュア無線局の開設は、アマチュア局における無線局の目的並びに無線局開設事由に該当しないため行うことができない。こうした業務を行うには、監査指導員同様 「特殊な目的の局」 として、非常通信の取り扱いを目的としたアマチュア局ではない無線局を開設し、アマチュア無線上で行われる遭難通信並びに非常の場合の通信の取り扱い、または取り次ぎをおこなう必要がある。しかしながら、2009年3月現在では日本における当該制度がなく、現状は既設のアマチュア局による偶発的な取り扱いに期待するしかない。

[編集] 社会福祉

障害者、特に視覚障害者にとっては、アマチュア無線は社会参加の有力な手段の一つである。そのため、各地域の社会福祉施設にクラブ局が設置され、アマチュア無線の交信を通じて社会参加を図る場面が見受けられる。

[編集] 特殊な場所のアマチュア無線局

特殊な環境下で観測などの業務を行っている科学者や技術者の中にはアマチュア無線の資格を持つ者もおり、業務時間外の余暇を当ててアマチュア無線局を運用することがある。運用に当たる者にとっても過酷な環境下で精神衛生上役立つほか、通信の機会の少ない場所との通信に価値があると考えるアマチュア無線家にとっても魅力的な運用となる。

[編集] 国際宇宙ステーション

国際宇宙ステーションでは、アマチュア無線局ARISS (Amateur Radio on the ISS) が運用されている。各宇宙飛行士が余暇時間を用いて運用を行う。通常の通信の他に教育を目的として、あらかじめ特定の学校と日時を決めて通信を行う、スクールコンタクトと呼ばれる運用も行われている。上級資格を持つアマチュア無線家の監督の下、特例として児童生徒が送信ボタン操作のみの無資格運用を許される。コールサインにはNA1SSとRS0ISSが用いられている。他にスペースシャトルミールでも同様の運用実績があり、それぞれSAREX, MIREXと呼んだ。

[編集] 昭和基地

南極にある日本の昭和基地では、観測隊員によるアマチュア無線局8J1RLが開局している。また、ドームふじ観測拠点には2003年に8J1RFが開局した。

[編集] 南鳥島

南鳥島には一般人は上陸できない。海上自衛隊・海上保安庁・気象庁の職員が駐在している。社団局JD1YAA気象庁HAMクラブが開設されている。アマチュア無線の大陸区分においては、南鳥島はオセアニア (OC) に含まれる。

[編集] 富士山測候所

富士山測候所2004年夏を以って観測員常駐が廃止され、アメダス測候に切り替えられたが、測候所職員によるアマチュア無線社団局が運用されていた。

[編集] イベント(博覧会など)

大きなイベント、特に国際的なイベントの際には記念局が開設されることがあり、来訪するアマチュア無線家が運用する。局はアマチュア無線連盟直轄の社団局として扱われ、連盟会員であれば会員証と免許証を提示の上で誰でも運用できる。アマチュア無線の交信は最もわかりやすい民間レベルの国際交流であるため、地球が狭くなった現代でも国際的なイベントには記念局が積極的に開設される。記念局の運用はもちろん、記念局との交信も、アマチュア無線家にとって文字通り記念になる。日本初の記念局は、1970年大阪万博会場に設置されたJA3XPOであり、万博開催期間中に運用された。愛知万博でも8J2AIのコールサインで記念局が開設された。

[編集] アマチュア無線が引き起こす問題

[編集] 一般放送や無線LANなどに与える影響等の問題

時としてテレビ・ラジオ・パソコン・無線LAN[2]、医療機器[3]あるいは他の無線装置などにアマチュア無線の電波が妨害を与えること、つまり電波障害を引き起こすことがあり、これがアマチュア無線家の周囲に住む人々などから問題視されることもある。これはアマチュア無線家の間では「I(アイ)が出た」などと表現される(I=インターフェア=電波障害の意)。アマチュア無線局は、自局の発射する電波が他の無線局の運用または放送の受信に支障を与え、または与えるおそれがあるときは、すみやかに当該周波数による電波の発射を中止しなければならない。[4]局側はそのような状態を避けるため細心の注意を払うよう法令により定められており、良識あるアマチュア無線技士はそれらを回避する対策を取っている。しかしそうではないアマチュア無線家もあり、実際に電波障害を引き起こす事態が発生してしまっている。上記の違法局や違法運用局(オーバーパワー)が発生させるほどの頻度ではないが、皆無ではない。これは主に送信機とアンテナのマッチングが何らかの影響で不整合を起こしたり、AC電源に同調してしまうこと、高調波などによるものである。

[編集] 健康への悪影響の可能性

無線機やアンテナの選択や設置状況によっては、電磁波が運用しているアマチュア無線家のみならず、周囲の人々の健康に悪影響を及ぼしている可能性があるとされることもある。

ICNIRPの一般公衆に対する参考レベルとしては、電界強度27.5 V/m、磁界強度0.073 A/mとされている。また総務省の電波防護指針では59 V/mとされる。これらの値を基準とし磁界強度だけでなく電界強度まで考慮すると、例えば磁界放出型のループアンテナ(周波数14 MHz、送信電力10 Wと想定)などは、人体から2 m以上の距離は確保しなければならない[5]

[編集] 法を守らない運用の問題

日本国内におけるアマチュア無線の運用には、上述のように「無線従事者」の免許および「無線局の免許」の2種類が必要となるが、スカイレジャー(パラグライダーハンググライダー熱気球など)、猟友会狩猟において、これらを取得せずにアマチュア無線機を用いて電波を出す例がある(不法無線局)。また、無線局の免許を受けた局であっても、指定された周波数帯以外の周波数で運用したり、指定された空中線電力を超えて運用する者もいる(オーバーパワー)。さらに、アマチュア無線をアマチュア業務以外の用途に用いることは電波法によって禁止されているが、現在でも、アマチュア無線を仕事やイベント業務の業者などによる法規を逸脱した業務利用も問題となっている。その他に用いる例は多々見られる(目的外通信)。その他に、電波の型式及び周波数の使用区別(いわゆる「バンドプラン」)を逸脱した運用、コールサインの不送出、長時間にわたる周波数の独占など、運用上の解決しなければならない課題も山積している。そのため総務省、各総合通信局および日本アマチュア無線連盟は各種指導や啓蒙活動などに励んでいる[6]

[編集] アマチュア無線家

電気工事、電話工事関係など、特にハム(アマチュア無線家)人口の多い職種も存在する。

[編集] アマチュア・コード

アマチュア無線はあくまで趣味であるため、本業がおろそかにされてはならない。アマチュアたちがのめりこむことへの戒めとして、日本アマチュア無線連盟1959年に法人化された際、アマチュア無線家が社会人市民として守るべき以下の5つの徳目を定めた。これが「アマチュアコ-ド」であり、年次通常総会で唱和される。

  • アマチュアは善き社会人であること
  • アマチュアは健全であること
  • アマチュアは親切であること
  • アマチュアは進歩的であること
  • アマチュアは国際的であること

[編集] 「ハム」の由来

アマチュア無線家 (radio amateur) をハム (HAM) と呼ぶが、この言葉の由来には諸説ある。

  • amateurの最初の2文字をとり発音しやすいようにhをつけたもの
  • いわゆる“大根役者”のことを英語でhamと言うことから
  • アマチュア無線の黎明期に有名だったアマチュア無線局のコールサインから

日本では「アマチュア無線」のことをハムということもあるが、これは誤用。英語圏では、アマチュア無線のことは、"amateur radio" または "ham radio" といい、"ham" とだけ言うことはない。海外(英語圏)では、"hammy"(ハミー)と呼ぶこともある。

[編集] 雑学

[編集] アマチュア無線に用いられる用語

アマチュア無線においては、電話、電信ともに無線通信用語が特にアマチュア無線に適した形で変化したものが用いられている。無線通信では音声が不明瞭であったり、不安定な通信状態で簡潔に内容を伝達する必要からQ符号通話表などの無線用語が定められている。アマチュア無線ではこれらの無線用語の他に、雑談などに用いる略語や俗語もある。

[編集] アマチュア無線を題材にした映画

アマチュア無線を題材、あるいは物語の重要な要素に取り上げた映画として、『復活の日』(1980年・日本])、『コンタクト』(1997年・アメリカ)、『オーロラの彼方へ』(2000年・アメリカ)、『リメンバー・ミー』(2000年韓国)など多くの作品がある。またスキーヤーに一時的にアマチュア無線が普及した契機として、邦画『私をスキーに連れてって』(1987年)があった。しかし免許を受けずに使用され、地元のアマチュア無線の運用に影響を与えた事例もあった。『ミッドナイトイーグル』で登場したリアルな無線室を作り上げたのはバーテックススタンダードである。

[編集] その他

アマチュア無線は法律上、発信者の身元保証や通信内容について厳格に規定されており(虚偽の通信の禁止と罰則規定―電波法第106条)、法的には通信内容の正確性が担保されている、ともされる。

[編集] 参考文献

  • 日本アマチュア無線連盟編『アマチュア無線のあゆみ ―日本アマチュア無線連盟50年史―』(CQ出版社) 

[編集] 脚注・出典

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  1. ^ 『電波伝播ハンドブック』Realize SE, 1999, ISBN 489808012X, p.384
  2. ^ ブルース・ポッター『802.11セキュリティ』O'Reilly Japan, 2003, ISBN 4873111285 p.25
  3. ^ 野島俊雄「電磁波障害の実際」(医器学 vol.69, No.2, 1999)http://ci.nii.ac.jp/naid/110002515749/
  4. ^ 無線局運用規則第 528 条。
  5. ^ 三浦正悦『電磁界の健康影響 工学的・科学的アプローチの必要性』東京電機大学出版局、2004, ISBN 4501324007 p.236
  6. ^ 日本アマチュア無線連盟 (JARL)「電波環境・不法局関連」

[編集] 関連団体

[編集] 関連項目

[編集] 電波関連

[編集] 外部リンク

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最終更新 2009年10月18日 (日) 01:21 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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