アルタイ諸語
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アルタイ諸語(Altai しょご,Altaic Languages)は、言語の言語学の分類単位の一種で、主に西アジア・中央アジアから北アジア(中央ユーラシア)の諸民族によって話される諸言語である。
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[編集] 言語グループ
アルタイ諸語とされる言語グループには以下の5つがあるが、これらそれぞれの中での系統関係は実証されているが、これらの間の系統関係については言語学内では決着していない。
[1] これらの諸語は北東アジアから中央アジア、アナトリアから東欧にかけての広い範囲で話されている。[2]アルタイ諸語という名は中央アジアの山脈のアルタイ山脈が元となっている。
日本語・朝鮮語以外の3つの言語グループは
などの共通の特徴をもつ。
日本語・朝鮮語も含めた5つのグループでは、母音調和以外の特徴を共通にする(ただし日本語は記紀や万葉集の時代に8種の母音を以って母音調和を行っていたと言われている)。しかし日本語・朝鮮語関連の近縁関係は証明されておらず、この2言語をアルタイ諸語(アルタイ語族)に含めない場合もある。
[編集] アルタイ語族
アルタイ諸語を共通の祖語をもつアルタイ語族があるとする説は古くからあるが、母音調和を共通に行う3グループですら数詞などの基礎語彙が全く違うため、少なくとも伝統的な比較言語学の手法によってアルタイ祖語を復元し、アルタイ語族の存在を証明することは困難である。
[編集] 研究史
アルタイ諸語の研究は18世紀の北欧において開始され、のち20世紀前半にいたるまで北欧はアルタイ言語学の中心地のひとつであった。1730年、スウェーデンの外交官であり地理学者であったPhilip Johan von Strahlenberg (1676–1747) が大北方戦争の際にロシア帝国の捕虜となりユーラシア大陸を移動した経験をもとに刊行した本で、ツングース諸語・モンゴル諸語・テュルク諸語に関する記述がある。それより一世紀経つと、フィンランドの語源学者・文献学者 Matthias Alexander Castrén (1813–1853) は1854年の著作でアルタイ諸語にチュルク、モンゴル、満州・ツングースだけでなくフィン・ウゴル語派、サモエード諸語などのウラル語族までを含めた。
19世紀から20世紀にかけてツングース諸語・モンゴル諸語・テュルク諸語を研究する学者の多くはこれらを共通するウラル・アルタイ語族をフィン・ウゴル語派、サモエード諸語などのウラル語族とあわせて考えたが、ロシアの歴史言語学者 Sergei Anatolyevich Starostin (1953–2005)がいうようにこれらの考え方は現在では棄却されている。
1857年オーストリアの Anton Boller が日本語をウラル-アルタイ語族に位置づけ、1920年代にはフィンランドの言語学者グスターフ・ラムステッドやエフゲニー・ポリワーノフは朝鮮語を同語族に分類した。以降、 ニコラス・ポッペ、Karl H. Menges、Vladislav Illich-Svitych、Vera Cincius のツングース研究などがある。
ポッペは朝鮮語について、
- アルタイ諸語のモンゴル語・テュルク諸語・ツングース語群との系統関係はないが、アルタイ系語族からの影響が見られる。
- 朝鮮語は上記3語族と分岐する以前に文字体系の構築があったのではないか。
との仮説を提出している。
ロイ・アンドリュー・ミラーは多くのアルタイ言語学者は日本語をアルタイ語族に帰属すると考えているし、またミラー自身も同様に考えるとの見解を提出し[3]、以降、日本語もアルタイ語族にあらためて再分類された。
John C. Street はチュルクーモンゴルーツングース語族から朝鮮-日本-アイヌ語族集団と北東アジア語族集団が分岐したとする説を提起した。
ジョーゼフ・グリーンバーグはユーラジア語派 (Eurasiatic languages) を提唱したさいに、朝鮮‐日本‐アイヌ言語集団と他のギリヤーク語、エスキモー-アリュート語、シベリアのチュコト‐カムチャツカ諸語 (Chukotko‐Kamchatkan languages) と区分した。
いずれにせよ、このアルタイ語族という分類の理論的な問題としてまず、それが語族なのか、言語連合(独: Sprachbund)なのか、という問題がある。
[編集] 同根語による比較対象と内的再構
Sergei Anatolyevich Starostin の語彙比較分析によれば、潜在的な類縁関係を持つ同根語が15%から20%の割合で対応関係が認められた。
- チュルクとモンゴル語: 20%
- チュルクとツングース語:18%
- チュルクと朝鮮語:17%,
- モンゴル語とツングース語:22%
- モンゴル語と朝鮮語:16%
- ツングース語と朝鮮語: 21%
Starostin は結論として、アルタイ諸語はインドーヨーロッパ語族やフィンーウゴル語派といった他のユーラジア語族よりも古く、それが後世のアルタイ諸語同士における対応関係の少なさを説明する、とした。
2003年には Claus Schönig はアルタイ諸語は発生的・遺伝的 (genetic) 関係において共通する基礎語彙をもっていないとした。
Starostinを代表とする辞典 Etymological Dictionary of the Altaic Languages[4]の編纂過程でのAnna V. Dybo、Oleg A. Mudrak、Ilya Gruntov、Martine Robbeetsらの研究では2800個の同根語集団を抽出し、この同根語集団を基礎に音韻的対応関係、文法的対応関係、アルタイ祖語の内的再構を試みたが、他の研究者との間で議論が継続中である。
[編集] 子音対応表
Starostinらの研究(2003)における子音対応表は、同研究におけるアルタイ祖語の内的構成を踏まえて作られた[5]。
| Proto-Altaic | Proto-Turkic | Proto-Mongolic | Proto-Tungusic | Proto-Korean | Proto-Japonic |
|---|---|---|---|---|---|
| [/pʰ/] | [0-¹, /j/-, /p/] | [/h/-]²[, /j/-, -/b/-, -/h/-]²[, -/b/] | [/p/] | [/p/] | [/p/] |
| [/tʰ/] | [/t/-, /d/-]³[, /t/] | [/t/, /tʃ/]4[, -/d/] | [/t/] | [/t/] | [/t/] |
| [/kʰ/] | [/k/] | [/k/-, -/k/-, -/ɡ/-5, -/ɡ/] | [/x/-, /k/, /x/] | [/k/, /h/] | [/k/] |
| [/p/] | [/b/] | [/b/-]6, [/h/-]², [/b/] | [/p/-, /b/] | [/p/] | [/p/] |
| [/t/] | [/d/-, /t/] | [/t/, /tʃ/]4 | [/d/-, /dʒ/-]7[, /t/] | [/t/, -/r/-] | [/t/-, /d/-, /t/] |
| [/k/] | [/k/-, /k/, /ɡ/]8 | [/k/-, /ɡ/] | [/k/-, /ɡ/-, /ɡ/] | [/k/-, -/h/-, -0-, -/k/] | [/k/] |
| [/b/] | [/b/] | [/b/-, -/h/-, -/b/-9, -/b/] | [/b/] | [/p/, -/b/-] | [/p/-, /w/, /b/10, /p/11] |
| [/d/] | [/j/-, /d/] | [/d/, /dʒ/]4 | [/d/] | [/t/, -/r/-] | [/d/-, /t/-, /t/, /j/] |
| [/ɡ/] | [/ɡ/] | [/ɡ/-, -/h/-, -/ɡ/-5, -/ɡ/] | [/ɡ/] | [/k/, -/h/-, -0-] | [/k/-, /k/, 012] |
| [/tʃʰ/] | [/tʃ/] | [/tʃ/] | [/tʃ/] | [/tʃ/] | [/t/] |
| [/tʃ/] | [/d/-, /tʃ/] | [/d/-, /dʒ/-]4[, /tʃ/] | [/s/-, -/dʒ/-, -/s/-] | [/tʃ/] | [/t/-, -/s/-] |
| [/dʒ/] | [/j/] | [/dʒ/] | [/dʒ/] | [/tʃ/] | [/d/-, /j/] |
| [/s/] | [/s/] | [/s/] | [/s/] | [/s/-, /h/-, /s/] | [/s/] |
| [/ʃ/] | [/s/-, /tʃ/-13, /s/] | [/s/-, /tʃ/-13, /s/] | [/ʃ/] | [/s/] | [/s/] |
| [/z/] | [/j/] | [/s/] | [/s/] | [/s/] | [/s/] |
| [/m/] | [/b/-, -/m/-] | [/m/] | [/m/] | [/m/] | [/m/] |
| [/n/] | [/j/-, -/n/-] | [/n/] | [/n/] | [/n/] | [/n/] |
| [/nʲ/] | [/j/-, /nʲ/] | [/dʒ/-, /j/, /n/] | [/nʲ/] | [/n/-, /nʲ/]14 | [/m/-, /n/, /m/] |
| [/ŋ/] | [0-, /j/-, /ŋ/] | [0-, /j/-, /ɡ/-15, /n/-16, /ŋ/, /n/, /m/, /h/] | [/ŋ/] | [/n/-, /ŋ/, 0] | [0-, /n/-, /m/-7, /m/, /n/] |
| [/r/] | [/r/] | [/r/] | [/r/] | [/r/] | [/r/, /t/17] |
| [/rʲ/] | [/rʲ/] | [/r/] | [/r/] | [/r/] | [/r/, /t/] |
| [/l/] | [/j/-, /l/] | [/n/-, /l/-, /l/] | [/l/] | [/n/-, /r/] | [/n/-, /r/] |
| [/lʲ/] | [/j/-, /lʲ/] | [/d/-, /dʒ/-]4[, /l/] | [/l/] | [/n/-, /r/] | [/n/-, /s/] |
| [/j/] | [/j/] | [/j/, /h/] | [/j/] | [/j/, 0] | [/j/, 0] |
他、母音対応表、韻律対応表、形態対応表、同根語表、基礎語彙表も作られ、各表の対応関係を見ると、各諸語の対応関係が成立している。しかし、それはアルタイ語族の存在の証明とはいまだなっていない。
他、突厥文字の代表的史料であるモンゴルの8世紀のオルホン碑文の対照研究からも様々な研究がなされている。
詳細は「突厥文字」を参照
[編集] 脚注
- ^ (Georg et al. 1999:73-74).[1]
- ^ (Turks, Kalmyks).[2]
- ^ Roy Andrew Miller:ロイ・アンドリュー・ミラー『日本語 歴史と構造』小黒昌一訳、三省堂、1972年(原著は1967年)。R.A.ミラー『日本語とアルタイ諸語』西田龍雄監訳、近藤達生、庄垣内正弘、橋本勝、樋口康一共訳、大修館書店、1981(原著は1971年)
- ^ 3 vols.(Brill,2003)
- ^ 詳細や注釈は英語版wikipedia項目en::Altaic Languagesを参照
[編集] 関連項目
最終更新 2009年11月9日 (月) 09:05 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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