イモガイ

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イモガイ

いろいろなイモガイ
分類
: 動物界 Animalia
: 軟体動物門 Mollusca
: 腹足綱 Gastropoda
: 新腹足目 Neogastropoda
: イモガイ科 Conidae
: イモガイ属 Conus
: 本項参照
学名
Conus
英名
Cone shell
Cone snail

イモガイ芋貝)またはミナシガイ(身無貝)は、海産貝類のひとつで、全世界に約500種を数える。単独でイモガイ科を構成するが、の分類は混乱しており、多くの一般向け図鑑では旧来のイモガイ属Conusに全種を納めている。

熱帯域のサンゴ礁が主産地で、日本では黒潮に接する太平洋岸の千葉県和歌山県高知県に見られるが、種数が多いのは南西諸島を抱える沖縄県鹿児島県で、特に沖縄県では約110種を数える。

殻は円錐形で、ほとんどの種で螺塔が低く殻口が狭い。殻長は最大で23cm程度までになる。英語の cone shell (円錐形の貝)も円錐形をした殻に由来する。和名のイモガイは殻の形がサトイモの芋に似るからといわれており、俗名のミナシガイも狭い殻口から見え隠れするわずかな身に由来する。

目次

[編集] 生態

全種が肉食性で、食性により魚食性(小魚などの脊椎動物)、虫食性(ゴカイなど環形動物)、貝食性(貝類を主とした軟体動物)に分けられる。なかにはタガヤサンミナシ Conus textile のように巻貝専門で、他のイモガイまで食べてしまう種もある。捕食法も魚食性の種は積極的に出歩いて獲物を狩る探索型と、待ち伏せて捕らえる待ち伏せ型とに大別される。

イモガイは動作が緩慢なので、魚のような俊敏な動きの獲物に対しては、歯舌を発達させた毒銛(矢舌とも呼ばれる)を撃ち、その体内に毒液を注入し麻痺させて捕まえる。また身に危険を感じたときも、外敵に対してこの毒銛を撃つ。特に魚食性や一部の貝食性のイモガイは、その毒性が人を殺すのに十分なまでに発達したものがいる。もっとも種数が多い虫食性のイモガイの毒は人間に対してさほど効かないが、そうはいっても取扱には十分に注意すべきである。

[編集] 銛と毒液

イモガイの毒銛は、歯舌(舌と歯の働きをする軟体動物の器官)が発達したものである。毒銛の先端は鋭くとがっていて容易に抜けないように逆トゲまで備わっている。銛の内部は中空で、発射時には毒液で満たされる。根元は綱に相当する伸縮性のある細い管につながっており、そのさらに根元には毒腺がついている。

毒銛は、通常は鉾先を出した状態で、と呼ばれる柔軟性のある管の先端内部に隠されている。獲物に気付くと、貝は吻をそちらへ向け、それと同時に銛の内部に毒液が充填され、筋収縮を用いて獲物に向けて発射される。毒は瞬時に獲物の全身にまわり、小魚であれば即死する。貝はそれを見計らって綱をたぐり寄せ、麻痺した獲物を軟体部で覆って消化に取りかかる。毒銛は消化後、背骨や鱗といった獲物の消化できない部分とともに吐き出される。コノトキシンと呼ばれるイモガイの毒は神経毒で、何百もの異なる成分からなる混合物である。その成分構成や成分比は種により様々に変化する。

[編集] 人間との関わり

イモガイは食用に供されることはほとんどないが、刺されると死に至る猛毒を有する危険生物であり、ヒョウモンダコとともに磯遊びやダイビング時における要注意生物の筆頭に挙げられている。しかし、その一方で近年その毒が医療分野で画期的な新薬として期待されている。またその殻が美麗であり、かつ希少とされる種も多いので、コレクションの対象とされる。

[編集] 危険な生き物

イモガイはその貝殻の色や模様が美しく、また美しいサンゴ礁の周辺や砂浜など人目につく場所にいることが多いのでよく素手で拾い上げられるが、その後皮膚に密着させていたりすると外敵とみなされて毒銛で刺され、死に至るケースがある。イモガイ1個体に含まれる毒は、およそ30人分の致死量に相当する。アンボイナ Conus geographus は俗に英語で cigarette snail と呼ばれているが、これは、タバコを一服する間に死を迎えるという意味である。同種は沖縄県でもハブガイ、ハマナカーといった俗名があるが、前者はその毒性を毒蛇のハブに喩えたもの、後者は刺されたら浜の真中まで歩いた時点で死ぬ、といった意味を持つ。毒銛は、ときに軍手ウエットスーツさえ突き抜ける。

イモガイの刺した直後は全く痛みを感じず、自覚がないことがほとんどであるが、その後しばらくして患部に激痛が生じ、続いて痺れ、腫れ、疼き、めまい嘔吐発熱といった症状が出る。ひどい場合は、視力や血圧の低下、全身麻痺、さらには呼吸不全により死に至る。イモガイの毒には抗毒血清がないので、毒が被害者の体内で代謝され抜けきるまで、なんとか生命を持ちこたえさせることが唯一の救命策である。

[編集] 毒素の医療応用

ヤキイモ Conus magusの毒には、モルヒネの1,000倍強力な鎮痛作用を示す成分が含まれている。この成分に由来した初のイモガイ毒由来の鎮痛剤ジコノタイド(Ziconotide)は、2004年12月にアメリカ合衆国連邦食品医薬品局(FDA)により医薬品として承認されており、その劇的な鎮痛効果から、将来的にはモルヒネに取って代わることが期待されている。

イモガイの毒に含まれる他のペプチドにも、強力な医薬品になりうる可能性があるものがある。例えばオーストラリア産のビクトリアジョオウイモ Conus victoriae から分離された AVC1 は、手術後の神経痛を抑えるのに非常に効果的であり、神経細胞の回復速度を速める効果すらあることが確認されている。

その他臨床試験中のものには、例えばアルツハイマー病パーキンソン病癲癇の治療において使える可能性のある成分がある。

[編集] コレクションの対象

イモガイの中にはその殻表面に精緻で複雑な模様を施すものがあり、大きさも手ごろなため、タカラガイなどとともに収集対象として人気のある貝類となっている。なかでもウミノサカエイモConus gloriamaris は、近年になって多産地が発見されるまで、何世紀もの間発見された標本数が10個に満たなかったので、その希少性と法外な高値が収集家の間で非常に有名であった。

多少欠けた貝殻もプカシェルといった装身具を作るのに利用される。また古代の遺跡から出土する貝殻でできた腕輪には、大型のイモガイの殻を利用したものがある。

[編集] イモガイ関連の作品

  • 『貝を集める人』 アンソニー ドーア(Anthony Doerr)(原作)・岩本正恵 (翻訳) 『シェル・コレクター』所収の短編小説(新潮クレスト・ブックス 2003年 ISBN 978-4105900359):ケニアの孤島でひっそりと暮らす盲目の貝類学者。そこへ迷い込んで来たアメリカ人女性。彼女のマラリアがイモガイの毒で偶然治癒してしまったことで、それまでの彼の静謐な生活は一転してしまう。
  • 『南海幻想』 石沢英太郎作の長編推理小説(光文社文庫 1984年 ISBN 978-4334700171):八重干瀬の貝類収集ツアー中に男性が死亡した。彼はイモガイに刺されたのか。

[編集] 類似種

西太平洋の暖流域にはイモガイとともに、イモガイと外見が良く似たマガキガイも生息する。マガキガイはイモガイとは全く異なるソデボラ科(スイショウガイ科)に属しており無毒なので、外見が似ているのはベイツ型擬態ではないかと言われている。マガキガイはソデボラ科特有のギザギザのある爪のような蓋とギョロ目をもち、成貝の貝殻は殻口内唇が黒く口内が濃いオレンジ色になるので同じような場所にいるイモガイ類と区別できる。

[編集] 日本周辺に生息する種

  • アカシマミナシ Conus (Leptoconus) generalis (Linnaeus, 1767)
  • アケボノイモ Conus (Puncticulis) stercusmuscarum (Linnaeus, 1758)
  • アコメガイ Conus (Endemoconus) sieboldii (Reeve, 1848)
  • アサナギミナシ Conus (Endemoconus) articulatus Sowerby, 1873
  • アジロイモ Conus (Darioconus) pennaceus (Born, 1778)
  • アラレイモ Conus (Chelyconus) catus (Hwass in Bruguiére, 1792)
アンボイナ
  • アンボイナ Geography Cone; Cigarette Snail, Conus (Gastridium) geographus (Linnaeus, 1758)
魚食性。刺されたら致死率50%を超える猛毒種。ただし国内の個体数はさほど多くない。
  • アンボンクロザメ Conus (Lithoconus) litteratus (Linnaeus, 1758)
  • イタチイモ Conus (Rhizoconus) mustelinus (Hwass in Bruguiére, 1792)
  • イトマキイモ Conus (Hermes) terebra (Born, 1778)
  • イナズマアコメ Conus (Endemoconus) ione (Fulton, 1938)
  • イボカバイモ Conus (Virgiconus) distans (Hwass in Bruguiére, 1792)
  • イボシマイモ Conus (Virgiconus) lividus (Hwass in Bruguiére, 1792)
  • ウスムラサキイモ Conus (Virgiconus) floridulus (Adams & Reeve, 1848)
  • ウラシマイモ Conus (Rhizoconus) urashimanus Kuroda & Ito, 1961
  • オカモトイモ Conus (Rhizoconus) okamotoi Kuroda & Ito
  • オゴクダイモ Conus (Virgiconus) moreleti (Crosse, 1858)
  • オトヒメイモ Conus (Endemoconus) otohimeae Kuroda & Ito, 1961
  • オトメイモ Conus (Virgiconus) virgo (Linnaeus, 1758)
  • オルビニイモ Conus (Asprella) orbignyi (Audouin, 1831)
  • ガクフイモ Conus (Virroconus) musicus (Hwass in Bruguiére, 1792)
  • カスミサヤガタイモ Conus (Virroconus) berbadensis (Hwass in Bruguiére)
  • カバミナシ Conus (Rhizoconus) vexillum Gmelin, 1789
  • カラクサイモ Conus (Lithoconus) caracteristicus (G. Fischer, 1807)
  • キキョウイモ Conus (Virgiconus) parvulus (Link, 1807)
  • キシュウイモ Conus (Conasprella) praecellens (A. Adams, 1854)
  • キヌカツギイモ Conus (Virgiconus) flavidus (Lamarck, 1810)
  • キノシタイモ Conus (Floraconus) kinoshitai (Kuroda, 1956)
  • キンランイモ Conus (Darioconus) legatus (Lamarck, 1810)
  • クサズリイモ Conus (Asprella) kuroharai Habe, 1965
  • クリイロイモ Conus (Phasmoconus) radiatus (Gmelin, 1791)
  • クロザメモドキ Conus (Lithoconus) eburneus (Hwass in Bruguiére, 1792)
  • クロフモドキ Conus (Lithoconus) leopardus (Röding, 1798)
  • クロミナシ Conus bandanus Hwass in Bruguiére, 1792
  • コガネイモ Conus (Darioconus) aureus (Hwass in Bruguiére, 1792)
  • コマダライモ Conus (Virroconus) chaldaeus (Röding, 1798)
  • ゴマフイモ Conus (Puncticulis) puliearius Hwass in Bruguiére, 1792
  • コモンイモ Conus (Puncticulis) arenatus Hwass in Bruguiére, 1792
  • サオトメイモ Conus (Virgiconus) coelinae (Crosse, 1858)
  • サザンカイモ Conus (Rhizoconus) sazanka Shikama, 1970
  • サヤガタイモ Conus (Virroconus) fulgetrum Sowerby I in Sowerby II, 1834
  • サラサミナシ Conus (Rhizoconus) capitaneus (Linnaeus, 1758)
  • サラサミナシモドキ Conus (Dauciconus) vitulinus (Hwass in Bruguiére, 1792)
  • ジュズカケサヤガタイモ Conus (Virroconus) coronatus Gmelin, 1791
  • シロアンボイナ Conus (Gastridium) tulipa (Linnaeus, 1758)
  • シロセイロンイモ Conus (Virroconus) sponsalis (Sowerby)
  • シロマダライモ Conus (Hermes) nussatella (Linnaeus, 1758)
  • スギモトイモ Conus (Endemoconus) sugimotonis (Kuroda, 1928)
  • スジイモ Conus (Cleobula) figulinus Linnaeus, 1758
  • ソウジョウイモ Conus (Darioconus) episcopatus (Hwass in Bruguiére, 1792)
  • ダイミョウイモ Conus (Cleobula) betulinus (Linnaeus, 1758)
タガヤサンミナシ
  • タガヤサンミナシ Textile Cone, Conus (Darioconus) textile (Linnaeus, 1758)
貝食性。アンボイナと並んで非常に強い毒をもち、沖縄県では本種の咬傷による死者が出ている。
  • チノイモ Conus (Virgiconus) chinoi (Shikama)
  • チュウカイモ(カンダイモ) Conus (Endemoconus) recluzianus (Bernardi, 1853)
  • ツボイモ Conus (Darioconus) aulicus (Linnaeus, 1758)
  • ツヤイモ Conus (Stephanoconus) boeticus Reeve, 1844
  • テラマチイモ Conus (Endemoconus) teramachii (Kuroda, 1956)
  • ナガアジロイモ Conus (Darioconus) magnificus (Reeve, 1843)
  • ナガイモ Conus (Asprella) australis (Holten, 1802)
  • ナガサラサミナシ Conus (Dauciconus) litoglyphus Hwass in Bruguiére, 1792
  • ナガシマイモ Conus (Virgiconus) sugillatus (Reeve, 1844)
  • ナツメイモ Conus (Textillia) bullatus (Linnaeus, 1758)
  • ナンヨウクロミナシ Conus marmoreus (Linnaeus, 1758)
  • ニシキミナシ Conus (Dendroconus) striatus (Linnaeus, 1758)
  • ハイイロイモ Conus (Phasmoconus) cinereus (Hwass in Bruguiére, 1792)
  • ハイイロミナシ Conus (Rhizoconus) rattus (Hwass in Bruguiére, 1792)
  • ハナイモ Conus (Darioconus) retifer Menke, 1829
  • ハナガサイモ Conus (Stephanoconus) hamamotoi (Yoshida & Koyama)
  • ハナワイモ Conus (Virroconus) sponsalis Hwass in Bruguiére, 1792
  • バラフイモ Conus (Rhizoconus) pertusus (Hwass in Bruguiére, 1792)
  • ハルシャガイ Conus (Lithoconus) tessulatus Born, 1778
  • ヒシイモ Conus (Conasprella) cancellatus (Hwass, 1792)
  • ヒメタガヤサンミナシ Conus (Darioconus) canonicus (Hwass in Bruguiére, 1792)
  • ヒラマキイモ Conus (Dauciconus) planorbis Born, 1778
  • ヒロクチイモ Conus (Textillia) spectrum (Linnaeus, 1758)
  • フクラキヌカツギイモ Conus frigidus (Reeve, 1848)
  • ベッコウイモ Conus (Chelyconus) fulmen (Reeve, 1843)
キラベッコウイモ C. f. kirai Kurodaという亜種が存在する。
  • ベニイタダキイモ Conus (Virgiconus) balteatus (Sowerby I in Sowerby II, 1833)
  • ベニイモ Conus (Stephanoconus) pauperculus Sowerby
  • マダライモ Conus (Virroconus) ebraeus (Linnaeus, 1758)
  • ミウライモ Conus (Parviconus) tuberculosus (Tomlin)
  • ミカドミナシ Conus (Rhombus) imperialis (Linnaeus, 1758)
  • ムラクモイモ Conus (Stephanoconus) varius (Linnaeus, 1758)
別名サメハダイモ。薄い肌色地に褐色斑があり、表面には顆粒が並ぶ。
  • ムラサキアンボイナ Conus (Gastridium) obscurus (Sowerby I in Sowerby II, 1833)
  • メノウイモ Conus (Chelyconus) achatinus Gmelin, 1791
ヤキイモ
  • ヤキイモ Magician's Corn, Conus (Pionoconus) magus (Linnaeus, 1758)
  • ヤセイモ Conus (Virgiconus) emaciatus (Reeve, 1849)
  • ヤナギシボリイモ Conus (Rhizoconus) miles (Linnaeus, 1758)
  • ユウナギミナシ Conus (Rhizoconus) capitanellus (Fulton, 1938)
  • ユゲキイモ Conus (Dauciconus) stratellus Link, 1807
  • ユメイモ Conus (Asprella) comatosa (Pilsbry, 1904)
  • リュウオウイモ Conus (Asprella) ichinoseana Kuroda, 1956
  • レンガマキイモ Conus (Endemoconus) kimioi Habe, 1965
  • ロウソクガイ Conus (Cleobula) quercinus (Lightfoot, 1786)
  • ワカヤマイモ Conus (Conasprella) wakayamaensis Kuroda, 1956

[編集] 出典

最終更新 2009年10月6日 (火) 12:30 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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