インピーダンス

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インピーダンス(impedance)は、流れを表す単語である。圧と流れの仕事率である。英語の impedance という単語の意味は多岐にわたるが、en:Impedance を参照。

目次

[編集] 電気回路におけるインピーダンス

電気回路におけるインピーダンス(electrical impedance)は、交流回路におけるフェーザ表示された電圧電流の比である。単位としてはオーム(表記は[Ω])が用いられる。 インピーダンスは、直流におけるオームの法則電気抵抗の概念を複素数に拡張し、交流に適用したものである。 複素数であるインピーダンスにおいてその実部(Re)をレジスタンス(resistance)または抵抗成分、虚部(Im)をリアクタンス(reactance)と呼ぶ。

以下では、電気電子工学の慣例に従い、虚数単位として j を用いる。ω = 2πf交流角周波数とする。

[編集] 抵抗のインピーダンス

直流における電気抵抗Rであるとき、そのインピーダンスは単にRである。これはインピーダンスの実部がレジスタンスであることに他ならず、複素平面で右に向いたベクトルであることを示している。

[編集] インダクタのインピーダンス

インダクタンスLであるインダクタコイル)によるインピーダンスを特に誘導リアクタンスXLといい、次のように表される。

\bold{}X_{\rm L} = {\rm j}\omega L

これは誘導リアクタンスが複素平面で上に向いたベクトルであることを示している。

[編集] キャパシタのインピーダンス

キャパシタンス静電容量)がCであるキャパシタ(=コンデンサ)によるインピーダンスを特に容量リアクタンスXCといい、次のように表される。

\bold{}X_{\rm C} = \frac{1}{{\rm j} \omega C}

\bold{}=-{\rm j}\frac{1}{\omega C}

これは容量リアクタンスが複素平面で下に向いたベクトルであることを示している。

[編集] RLC直列回路

RLC直列回路の合成インピーダンスをZ、リアクタンス成分をX、加える電圧の複素数表示(フェーザ表示)をV実効値Ve、流れる電流の複素数表示をI、実効値をIeとすると次のようになる。

\bold{}Z = R + {\rm j}\omega L + \frac{1}{{\rm j}\omega C}

\bold{} = R + {\rm j}\omega L - {\rm j} \frac{1}{\omega C}
\bold{} = R + {\rm j}\left(\omega L - \frac{1}{\omega C}\right)
\bold{} = R + {\rm j}X

\bold{}X = \omega L - \frac{1}{\omega C}
\bold{}V = I Z
\bold{}V_{\rm e} = |V| = I_{\rm e} |Z|
\bold{}V_{\rm e} = I_{\rm e} \sqrt{R^2 + X^2}

また、電圧に対する電流の位相差φは次式で表される。

\phi = \tan^{-1}{\frac{X}{R}}

特に X = 0 のとき、すなわち \omega = \frac{1}{\sqrt{LC}} あるいは f = \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}} のとき Z = R でインピーダンス最小(共振)となる。

[編集] 分布定数線路の特性インピーダンス

上記の R, L, C 集中定数素子のインピーダンスに対して分布定数回路、特に分布定数線路にも電圧電流の比としてのインピーダンスがある。これは特性インピーダンスと呼ばれ、交流、特に高周波の伝送に用いられる同軸ケーブルあるいは平行線路等において重要な特性値である。 単位長あたりのインダクタンスLの導体、単位長あたりのキャパシタンスC絶縁体による損失のない均一な伝送路の特性インピーダンスZ0は次式で表される。

Z_0=\sqrt{\frac{L}{C}}

詳細は「特性インピーダンス」を参照

[編集] エネルギー変換を伴う素子のインピーダンス

電気回路の範疇・領域を逸脱して電気エネルギーが他のエネルギーへの変換を伴う素子・機器では特別な考察が必要である。

[編集] 熱エネルギーへの変換

工業製品としてニクロム線ヒーターなどがあるが、これは単にジュール熱を発生する電気抵抗として議論できる。 電気抵抗 R [Ω] で P = IE = I2R = E2 / R[W] の電力が t [秒]間消費されたときに発生する熱量、すなわちジュール熱の量 Q は、Q=Pt\, [J]である。

[編集] 電磁波エネルギーへの変換

高周波電流を電磁波に変換する素子は空中線あるいはアンテナと呼ばれる。電気回路としてのアンテナは LC 直列回路であり、導線中に微量の抵抗成分 R がある。通常のアンテナは共振状態にあることを考慮すると、上記のRLC回路での議論に基づき、インピーダンスはその微量の抵抗成分 R のみとなってしまうがこれは誤りである。アンテナは高周波エネルギーの伝播媒体である同軸ケーブルあるいは平行線路と、電磁波の伝播媒体である空中(誘電体)のインピーダンス変換器である。同軸ケーブル等で伝送された高周波エネルギーが電磁波エネルギーに変換される際に、電気回路側ではそれが単にエネルギー消費されたと見える。この見かけのエネルギー消費に対応する実数成分としての電気抵抗 Ri放射抵抗または輻射抵抗という)を擬似的に考えるとアンテナのインピーダンスは Z = R + Ri である。通常は R \ll R_i, R \approx 0 とみなせる。アンテナの代表的なインピーダンスは 50, 73Ω等である。アンテナのインピーダンスは周波数によって変化するものであるものの、アンテナは通常、共振周波数に十分近い周波数の範囲で使用されるため、インピーダンスは一定とみなすことができる。または、インピーダンスが一定とみなせる周波数の範囲が、アンテナが動作する周波数の範囲の定格として表示されているともいえる。

[編集] 音響エネルギーへの変換

ヘッドフォンスピーカーなどは低周波電流を空気振動に変換する素子である。電気回路としてのスピーカーなどはインダクタンス L からなる回路(電磁石を想像されたい)であり、導線中の微量の抵抗成分 R がある。上記のアンテナと同様、単なる RL 直列回路としての議論は間違いである。低周波電気エネルギーが「電磁石」によって空気振動すなわち音響エネルギーに変換され、ここで電気回路側としては単にエネルギー消費されたと見える。この見かけのエネルギー消費に対応する実数成分としての電気抵抗 Ri を擬似的に考え、Z = R + Ri + jωL がそこでのインピーダンスとなる。普通は絶対値表示を行い、スピーカー等の代表的な表示インピーダンスは8Ωである。ただし本来、このインピーダンスは周波数によって変化する。

[編集] その他の分野におけるインピーダンス

交流電気回路における電圧と電流の比であるインピーダンス(明確な区別のため以下、電気インピーダンスという)は、圧力と流量の比という一般化により、交流電気回路に限らず電磁波、光、音響、震動、地震、津波など全ての波動現象に適用されうる。多くの分野で電気インピーダンスとアナロジが見いだせる。

  • 電磁波のインピーダンスcharacteristic impedance特性インピーダンス)は、真空を含む誘電体(通常は大気等)における電磁波の伝播に関する概念である。電気回路における電圧と電流の比という電気インピーダンスの定義を電磁波に準用すれば、特性インピーダンスは電界 E磁界Hの比である。詳細は特性インピーダンスを参照せよ。
  • 光学インピーダンスoptical impedance)は、光とその伝播媒体における伝播に関する概念である。光を電磁波の一部と捉えれば前項の電磁波の特性インピーダンスの議論と一致する。屈折、反射、回折など光学現象の多くでこの光学インピーダンスの概念が用いられる。
  • 音響インピーダンスAcoustic impedance)は、弾性体における弾性波の伝わりにくさのことである。また、流体における流れにくさを表す言葉として用いられることがある。
  • 機械インピーダンスMechanical impedance)という言葉は、物体の質量/力/速度/動きやすさ等の関係を、インピーダンスの概念に当てはめたものである。

[編集] 数式を用いない説明

(この項は、初学者のインピーダンスの概念への誤解を防止するために正確な定量的議論をあえて避け、多少の理論的矛盾は許容してインビーダンスの理解を助けるために設置されたものである)

本来の電気インピーダンスは電気回路交流特性を示す尺度である。抵抗の電位差は電流と同相でありその比は一定であるのでスカラー量あるいは絶対値のみの単純な議論で足りる。それに対し、L, C を含む回路では電圧と電流に位相差が生じる。また、抵抗は電圧・電流の積に由来してエネルギー消費が生じるが、交流RLC回路では電圧・電流に位相差があるため、その積は一定ではない。このため各値を複素平面でベクトル表現することが便利なのである。

交流回路における電圧と電流の比という電気インピーダンスの定義は、波動の圧力と流量の比として一般の波動・振動現象に拡張することができる。この場合の振動は電気振動に限らず、電磁波、機械振動、音波、音響、光、地震、水面の波などの多くの波動・振動現象に適用できると考えられる。電気インピーダンスの概念は電気振動以外のこれらの波動・振動現象の説明にも便利なために今では様々な分野で流用されている。

例えば、音波は空気の振動であるが、木、コンクリート、金属では音の伝わり方が異なる。医学で用いられる超音波エコー装置は生体組織界面のインピーダンスの差による反射波を観測している。

しばしばあるインピーダンスへの誤解として「インピーダンス = 伝わりにくさの指標」というものがある。値が低いから波動が伝わりやすい、あるいは高いから伝わりにくい、ということはエネルギー消費を伴う抵抗(実数成分としてのレジスタンス)では正しくてもインピーダンスでは正しくない。高周波伝送に用いられる600Ω平行線路よりも52Ω同軸ケーブルが伝わりやすい、というのは全くの間違いである。例えば真空、純水、アクリル(ガラスよりはるかに透明度が高く沖縄美ら海水族館の大水槽で使用されている)は光の伝播において透明という点では同じであり、理想的には減衰はないがそれらの界面では反射・屈折が生じる。高校物理ではこれを屈折率の違いによるものと説明しているが、別の観点ではインピーダンスの相違による反射波と透過波と表現することができる。 海岸線付近での波の進行も同様である。津波の進行速度は水深が深いほど速く、浅いほど遅く、波は海岸線にほぼ平行に到達する。これもインピーダンスの概念で説明することができる。


[編集] 関連項目

最終更新 2009年10月15日 (木) 05:42 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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