ウェハー

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エッチング加工されたシリコン・ウェーハ。虹色に光っているのは構造色由来で、CDなどと同じ原理

ウェハーあるいはウェーハ(wafer)とは、半導体素子製造の材料である。高度に組成を管理した単結晶シリコンのような素材で作られた円柱状のインゴットを、薄くスライスした円盤状の板である。

目次

[編集] 形状

ウェハーの直径は50mm-300mmまでいくつかあり、この口径が大きいと1枚のウェハーから多くのICチップを切り出すことができるため、年と共に口径は大きくなっている。2000年頃から直径300mmのシリコンウェハーが実用とされはじめ、2004年にはシリコンウェハ生産数量の20%程を占めた。

ウェハーの厚さは、製造工程での取り扱いの簡便さから0.5mm-1mm程度に作られており、一般のシリコンウェハーの場合、外寸はSEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)等の業界団体で標準化されており、直径150mm(6インチ)の場合は厚さ0.625mm、200mm(8インチ)では厚さ0.725mm、300mm(12インチ)では厚さ0.775mmとされている。厚み公差は±0.025mmである。

工程中でウェーハの向きを合わせるために、オリフラまたはノッチとよばれる切り欠きがある。また、結晶構造が製造する半導体素子の動作に最も適した方向となるように、ウェーハは特定の結晶方位に沿ってスライスされていて、導電型と結晶方位によってオリフラを切り欠く位置が決まっている。

[編集] 製造工程

ここではシリコンウェハーの一般的な製造工程を記す。 シリコンウェハーの製造に用いられる高純度ケイ素の製法はケイ素#製法に記述がある。

[編集] シリコン精製

ノルウェーやブラジルで産出した純度の比較的高い石英を還元して、純度98%程度の金属シリコンを作る。これを粉砕して塩素ガス、次いで水素ガスと反応させて、モノシラン(SiH4)やトリクロロシラン(SiHCl3)を作る。この過程で金属性の不純物はAlCl3やFeCl3のような塩化物として蒸発させトリクロロシランと分離することで金属性の不純物を1ppba(parts per billion atomic)以下まで取り除く。トリクロロシランは高純度の水素とCVD装置中に導入することで単体のシリコンを析出させ、高純度の多結晶シリコン・ロッドを得る[出典 1][出典 2]

[編集] 単結晶成長

高純度多結晶シリコン・ロッドは砕いて粗い粒状とし、一度洗浄した後、チョクラルスキー法(Cz法)、又は、フローティングゾーン法(FZ法)によって単結晶のインゴットが作成される。

  • チョコラルスキー法(Czochralski法、CZ法
材料となる粗く砕かれた高純度多結晶シリコンは、石英るつぼに詰められる。この段階で最終的な半導体の特性を決める微量の導電型不純物である、P型ならホウ素(B)を、N型ならリン(P)やアンチモン(Sb)を加えておく。石英るつぼは不活性ガスで満たされた炉内に納められると、周囲からカーボンヒーターで加熱されて多結晶シリコンはやがて溶融する。溶けたシリコン液相表面の温度は溶解温度となるように厳密に管理され、その表面中心にピアノ線で吊るされた種結晶を接触させた後、ゆっくりと回転させながら引き上げていく。種結晶が接触した下部ではわずかに冷やされたシリコンが固体となって析出し種結晶の結晶配列を引き継いで溶解シリコン表面との間に成長してゆく[1]
種結晶はそれまでに作ったシリコン単結晶の残余であるが、内部に原子配列の転位が含まれている可能性があるため、下に成長してゆくシリコンへこの乱れが引き継がれないように「種しぼり」(ネッキング)と呼ばれる意図的に3-5mm程度まで細くした部分を作る。この種しぼりによって結晶に転位が存在していても熱拡散によって転移が上方に移動するので無転位となる。また、結晶欠陥は転位が表面に移動することで結晶界面のエネルギーを減じることも欠陥が排除されることになる。種しぼり後は、るつぼの温度を下げて溶解シリコンを過冷却状態にする。望む口径のインゴット[2]となるように、溶解シリコンの温度、引き上げ速度、回転数を調整しながらゆっくりと回転させて引き上げていく。
石英製るつぼの表面から溶解シリコン中に酸素が混入するが、多くがSiOとして融解シリコン表面からガスとなって蒸発し炉壁などに付着して微粒子となる。この微粒子が再び融解シリコン表面に落下して結晶内に取り込まれると転位結晶となるため、炉の上部からアルゴンガスを導入して真空ポンプで吸引しSiOガスを排除することでこの影響を小さくする。また、炉壁から対流によって直接、結晶中に取り込まれる酸素を少なくするために、超伝導電磁石による静磁場を炉内に印加して溶解シリコン内の対流を抑制するMCZ法(Magnetic CZ法)が使われる[出典 1]。また、融解シリコンから出たSiOガスが炉内のヒーターとして使われるグラファイトと反応してCOやCO2が発生している。これを放置すると融解シリコンに溶け込み結晶中に取り込まれて炭素濃度を高めることになるのでこのためにもアルゴンガスで排気されている[3][出典 2]
CZ法は大口径の単結晶が作りやすく、21世紀現在では量産半導体で使用される[100]方位の大口径ウェハー用の単結晶インゴットは、すべてこの方法により作られている。例外として結晶の成長方向にそって抵抗率の変化が大きいという問題により、パワーデバイスにはあまり用いられない。
  • フローティングゾーン法(Floating Zone法、FZ法
多結晶シリコンのインゴットを部分的に溶融しながら単結晶化を行う方法でゾーンメルト法の一種。結晶の成長方向の不純物分布が一定であり、また酸素濃度が非常に少ないという利点があるが、結晶の半径方向の抵抗率分布にばらつきがあるため、中性子照射により抵抗率の均一化が図られる。

[編集] ブロック切断・外周研削

インゴットの両端部(トップとテール)を切断し外周を研削して、長い物は適切な長さで切断され所定の直径を持った長さ30cm-50cmの円柱状の「ブロック」を作る。

[編集] 方位加工

オリフラの位置の分類

X線方位測定によって結晶方位を測定し、後の工程で方位が判るように所定の位置に「オリエンテーションフラット」(OF)又は「ノッチ」を刻み込む[出典 1]

[編集] スライシング

ブロックをカーボン台に接着してから、ダイシングソー、ワイヤーソー、又は内周刃ブレード[出典 1](ID-Saw)でウエハー状に切り出す。直径300mmのブロックは、通常、マルチ・ワイヤーソーによって1度に最大200枚の切断が行なわれる[出典 2]

[編集] ベベリング

シリコンは固くてもろく、ウエハーの端面がスライシング時の鋭利なままでは、続く処理工程での搬送や位置合わせなどの取り扱い時に容易に割れたり欠けたりして、断片がウエハー表面を傷つけたり汚染したりする。これを防ぐため、ベベリング工程では切り出されたウエハーの端面をダイヤモンドでコートされた「面取り砥石」で面取りする。

ラッピング工程の後に行なわれることもある[出典 1]

この時、バラツキのある外周の直径を合わせ、オリエンテーションフラット(OF)の幅の長さを合わせる事も含まれる。[4]

[編集] ラッピング

ラッピング工程では、鋳物製の上下2枚の定盤間にウエハーとステンレス製キャリアを挟み込み、そこにアルミナかシリコンカーバイドの砥粒を含んだラップ液を流し込みながら擦り合わせて、スライシング工程で時にできた表面の凹凸を除去しながら厚さ揃え、また表裏面の平行度も高める。

キャリアは、求めるウエハー厚よりやや薄い、外周にギアを持つドーナツ状のステンレス板であり、ギアによって周囲から回転が与えられドーナツ内に収まったウエハーに回転運動を伝える[出典 1]

[編集] エッチング

エッチング工程ではそれまでに残ったウエハー表面の微細な凹凸を化学研磨によってさらに平滑にする。フッ酸(HF)と硝酸(HNO3)を純水酢酸(CH3COOH)で薄めた酸性エッチング液を使うものと、水酸化カリウム(KOH)と水酸化ナトリウム(NaOH)を純水で薄めたアルカリ性エッチング液を使うものとがある。アルカリ性の方が主体となる[出典 1]

[編集] ドナーキラーアニーリング

CZ法やMCZ法によって単結晶を製造するとに石英るつぼから溶け込んだ酸素原子[5]が高温状態によって互いに集合する。この酸素原子のかたまりは電子を放出するドナーとなることで、局所的に電子の通過を阻害し電気的には抵抗となる。これによりドーパントで制御された抵抗値からずれるため、このドナーとなった酸素原子を分散させるための熱処理がドナーキラーアニーリング加工である。この工程ではウエハーを不活性ガス中で600-700℃に短時間加熱する。この処理は加工応力の緩和や結晶欠陥の低減等も兼ねる[出典 1]

[編集] エッジポリッシュ

ベベリング工程による機械的な研磨だけではウエハー端部のベベル面がまだ粗く、プロセスルールの微細化やウエハーの大口径化によって端部が治具等との接触で生じるわずかな塵の発生も見逃せなくなっている。エッジポリッシュ工程ではウエハーの端部(エッジ)を機械的化学的研磨(CMP)によって鏡のように滑らかにする[出典 1]

[編集] ポリッシング

ポリッシング工程では最終的なプロセス加工面[6]を作るために、200mmウエハーまでは多くが片面のみに対して機械的化学的研磨(CMP)によって極めて平滑な鏡面状態とする。300mmウエハーからは国際標準で片面だけでなく裏面も表面の80-100%程度の精度にまで平滑な鏡面状態となるように研磨して、表面への平滑度の影響を最小にしている。

この研磨工程ではウエハーを回転する円盤状の大きな研磨テーブルに何枚か並べて接着し、これらのウエハーの上面を小さめの回転円盤である研磨定盤に付けられた研磨クロスで上から研磨する。同時にコロイダルシリカが含まれるアルカリ性研磨液をこれらの間に流動するように流し込み、機械的研磨と化学的研磨を同時に行なう[出典 1]

主にポリッシング工程によって表面でも使用できない端面除外領域(Edge Exclusive Area, EEA)とよばれる外周端近く2mm程度のボーナッツ状の領域が生まれる。これは研磨が外周部でより進む結果、最外周で数百μm程度まで過度に研磨されこの領域が傾斜をもって薄くなるためである。このEEAの内側がFQA(Fixed Quality Area)と呼ばれる使用が可能な領域である[出典 2]

[編集] 高品質加工

より表面欠陥密度の低い高品質のウエハーを求める要求に応じてさらに加工が行なわれ、エピタキシャル・ウエハー(Epitazial wafer)とアニール・ウエハー(Annealed wafer)、そして特殊な要求に応じたものとしてSOIウエハー(Semiconductor On Insulator wafer, Silicon On Insulator wafer)が作られる。これらの加工を行なわないものはポリッシュッド・ウエハー(Polished wafer, PW)と呼ばれる。

エピタキシャル・ウエハーはシリコン単結晶層を気相成長で数μm堆積したものである。この過程でボロンを1019cm-3程度添加するP+ウエハーというものがある。 アニール・ウエハーはアルゴン雰囲気中で1150-1200度程度に加熱して表面近くの酸素を追い出す。窒素を加えるアニールもある[出典 2]

[編集] 洗浄

洗浄工程ではこれまでの工程でウエハーに付いた汚れを洗浄する。米RCA社(Radio of Corporation of America Corp.)で開発された「RCA洗浄法」という化学的洗浄法を基本にしている。RCA洗浄法では次の2段階の洗浄を行なう。

SC1で有機物汚染を除き、SC2でアルカリイオンやAl3+やFe3+といった陽イオンの除去を行なう[出典 1]

[編集] 検査・梱包

結晶特性と外観を検査した後、梱包されて出荷される。結晶特性の検査には、結晶方位、導電型、抵抗率、結晶欠陥、炭素と酸素の濃度があり、外観の検査では、反り、平坦度、汚れ、傷といった項目が検査される。

梱包のケースは、従来多種類だったウエハーの格納ジャーが、FOUP(Front Opening Unified Pod)という国際規格の制定後は、共通のウエハー用格納ポッドで扱えるようになっている[出典 1]

[編集] 注記

  1. ^ 溶解シリコンから引き上げて成長させる過程で、引き上げ速度を少し上げたり溶解シリコンの温度を少し上げると結晶径が減少し、その逆は結晶径が拡大する。
  2. ^ 2000年代後半現在最新の直径300mmインゴットは重さ350kgにもなる。
  3. ^ 偏析係数が1より小さい炭素(0.07)や窒素(7×10-4)、ボロン(0.8)、リン(0.35)といった不純物の濃度は結晶の成長に従って石英るつぼ中の融解シリコン液の減少により徐々に濃くなるため、結晶成長初期より終期の方が結晶中に取り込まれる不純物の濃度は高くなる。偏析係数が1より大きい不純物はこの逆の効果が起きる。酸素の偏析係数が1より大きいか小さいかは結論が出ていない。ドーパントとしてリンよりボロンが選ばれるのは偏析による偏りが比較的小さいためである。
  4. ^ ベベリング工程で使用される装置はベベリングマシンと言われ、日本メーカーのEMTEC.co.ltdの装置がシェアを多くを占めている。
  5. ^ CZ法では酸素原子が1018個/cm3程も溶け込む。
  6. ^ 例えば、100nmのプロセスルールではステッパによる露光に精度が求められるために、100nm以下のローカルサイト平坦度が求められる。

[編集] 出典

  1. ^ 半導体LSIができるまで編集委員会編著 『半導体LSIができるまで』 日刊工業新聞社 2001年12月5日初版1刷発行 ISBN 4-526-04856-9
  2. ^ 福田哲生著 『はじめての半導体シリコン』工業調査会 2006年9月15日初版第1刷発行 ISBN 4769312547

[編集] 主なメーカー

  • 信越半導体(日本) 世界一位
  • SUMCO(日本・三菱住友シリコン) 世界二位
  • MEMC(アメリカ) 世界三位
  • SILTRONIC(ドイツ・旧Wacker Siltronic AG) 世界四位
  • SUMCO TECHXIV(日本、旧・コマツ電子金属)
  • コバレントマテリアル(日本、旧・東芝セラミックス)
  • Siltron(韓国・旧LG-Siltron)
ウィキメディア・コモンズ

最終更新 2009年10月26日 (月) 04:18 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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