カイラル対称性

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カイラル対称性 ( - たいしょうせい、:chiral symmetry) とは、量子色力学 (QCD) において、クォークフレーバーを右巻きスピン成分と左巻きスピン成分で独立に変換する近似的な対称性である。この対称性はQCDのダイナミクスにより自発的に破れ、ハドロンに質量を与える。物質に質量を与える機構は、他にヒッグス場との相互作用[1]があるが、陽子中性子(質量は1GeV程度)を構成するアップクォークダウンクォークがヒッグス場との湯川相互作用により与えられる質量は数MeV程度であり、全体の2%程度に過ぎない。残りの98%はカイラル対称性の破れによるものである。

目次

[編集] 解説

QCDには、クォークのフレーバーを入れ替える対称性が存在するが、クォークの質量がゼロである場合は、クォークの右巻きスピン成分と左巻きスピン成分の間の転換を表す項が理論のラグランジアンに含まれず、右巻きと左巻きで別々にフレーバーを入れ替える変換でラグランジアンが不変となる。これがカイラル対称性である。例えば、アップクォークとダウンクォークのみの理論を考える場合、カイラル対称性は SU(2)L×SU(2)R となる。 (ここでは U(1) 部分は考えない)

実際は、クォークの質量は完全にゼロではなく、アップクォークは 1.5~3.3 MeV、ダウンクォークは 3.5~6.0 MeV[2] とわずかながら質量を持つ。このため現実のQCDのカイラル対称性は厳密な対称性ではなく近似的な対称性である。

このカイラル対称性はQCDのダイナミクスにより自発的に破れ、クォーク・反クォーク対(超伝導BCS理論におけるクーパー対に相当する)が凝縮し、真空期待値を持つ(自発的対称性の破れ)。 これにより、理論が元々持っていた対称性 SU(2)L×SU(2)R は破れ、右巻きと左巻きを同時に変換する対称性 SU(2)V のみが残る。この破れにともなう南部・ゴールドストンボゾンがパイ中間子である。カイラル対称性は近似的な対称性であるため、パイ中間子の質量は完全にゼロではないが、他の中間子に比べて小さな質量しか持たない。

陽子や中性子などのハドロンが、構成要素であるクォークの質量の和よりもはるかに大きな質量を持つのは、ハドロンの内部では、クォークが凝縮したクォーク・反クォーク対との相互作用により大きな質量を得るためである。

[編集] 脚注

  1. ^ 標準模型では、ヒッグス場と物質場との間に湯川相互作用を導入することにより、クォークやレプトンに質量を与えている。同じヒッグス場が元になっているが、ゲージ対称性を破り(ヒッグス機構)、W, Zボゾンに質量を与える相互作用とは異なり、湯川相互作用はゲージ対称性によって要請される相互作用ではない。
  2. ^ Particle Data Group: C. Amsler et al., "Review of Particle Physics," Physics Letters B667 (2008) 1.

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

最終更新 2009年8月12日 (水) 22:23 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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