ガヴァネス
ガヴァネスの最新ニュースをまとめて検索!
ガヴァネス(英語: governess)は、個人の家庭内で子供たちを教育し、訓練するために雇われる女性のこと。女家庭教師。
ドイツ語ではグヴェルナンテ(ドイツ語: Gouvernante)、フランス語ではグーヴェルナント(フランス語: gouvernantes)という。本項では英語にもとづいてガヴァネスという語を用いるが、英米以外での例については「女家庭教師」または「家庭教師」の訳語を充てる。
目次 |
[編集] 概要
ナニー(当初はナースと呼ばれた)やベビーシッターと異なり、子供たちの身の回りの世話をするのでなく、専ら教育に従事する。その対象は乳幼児でなく、学齢期の児童である[1]。
今日ではガヴァネスの存在はまれで、サウジアラビアの王族のような大きく裕福な家庭[2]や、オーストラリア奥地のような辺境で見られる程度である[3]。しかし第一次世界大戦前には、ヨーロッパの裕福な家庭、特に適当な学校が近くに存在しない田園地方の場合には、一般的な存在であった。親が、遠くの寄宿制学校に何ヶ月も子女をやるより、手元で教育する方を選ぶかどうかは、時代や文化によって異なっている。ガヴァネスが担当するのは通常は女の子で、男の子の場合は幼少期に限られた。男の子はある程度成長するとガヴァネスを離れ、家庭教師(チューター(tutor))の手に移るか、学校に通った。
[編集] 役割
ガヴァネスは児童に「3つのR」(読み(reading)、書き(writing)、算術(arithmetic)[4])を教えた[5]。彼女らはまた、中流婦人に期待される「教養」もその生徒たる若いレディに教えた。それは例えばフランス語その他の外国語であり、ピアノなどの楽器であり、また絵画(通常、油彩よりもより上品な水彩画)などであった。もっともそれらは専門の知識や技能を持った男性の教師(図画教師など)による場合もあった。
ガヴァネスはヴィクトリア朝時代の家庭において、使用人でもなく家族の一員でもない、微妙なポジションにいた。このどっちつかずの社会的地位の現れとして、彼女らはしばしば一人で食事をした。ガヴァネスは中流の出自と教育を持っていたが、給金を受ける身であり、決して家族の一員ではなかった。当時の社会においては、ガヴァネスは、結婚していない中流の女性が自立するための数少ない方法の1つであった。そのポジションはしばしば憐憫の対象となるものであり、そこから抜け出すほぼ唯一の手段は結婚であった。生徒が成長してしまうとガヴァネスは新しい働き口を見つけなければならなかったが、まれに、成長した娘のコンパニオンとして引き続き雇われることもあった。
[編集] フィクションに登場するガヴァネス
特に19世紀において、ガヴァネスの登場する有名な小説がいくつも発表されている[6]。
- シャーロット・ブロンテの『ジェーン・エア』。
- アン・ブロンテの『アグネス・グレイ』。
- ウィリアム・サッカレーの小説『虚栄の市』の主人公レベッカ・シャープ。ガヴァネスとして雇われる。
- ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』に登場するガヴァネス。神経過敏でヒステリックな人物。
- レフ・トルストイの小説『アンナ・カレーニナ』の主人公の兄ステパンは、子の女家庭教師と関係を持つ。
- ジェーン・オースティンの小説『エマ』は、主人公が自分のガヴァネスであるミス・テーラーを失う場面で始まる。ミス・テーラーは家族のコンパニオンとなっていたが、ウエストン氏と結婚して辞めるのである。また、ジェーン・フェアファクスは、上品ぶった不毛で従属的な生活から逃れるためガヴァネスとなる契約を結ぶ。
- 『サウンド・オブ・ミュージック』の主人公マリアは、修道院を辞めて家庭教師となり、後に雇い主であるゲオルク・フォン・トラップと結婚する。
- テリー・プラチェットのSF小説『ディスクワールド』シリーズの第20巻『Hogfather』は、スーザン・ストー・ヘリットという名のガヴァネスが主人公である。
- 森薫のコミック『エマ』では、主人公のエマとウィリアム・ジョーンズが、ウィリアムの幼少期のガヴァネスであったケリー・ストウナーの家で出会う。(エマはケリーのメイドである。)
[編集] 著名なガヴァネス
- キャサリン・スウィンフォード - ジョン・オブ・ゴーントの子供たちのガヴァネスで、後に愛人となり、最終的には3番目の夫人となった。ジョンとの間にできた子はボーフォート家を興した。イングランド王ヘンリー7世はその母マーガレット・ボーフォートを通してキャサリンの子孫に当たる。
- キャサリン・アシュリー(Catherine Ashley) - イングランド女王エリザベス1世のガヴァネス。
- マントノン夫人 - ルイ14世の庶子(モンテスパン夫人との間の子供たち)の家庭教師として王の宮廷に入り、のちにルイ14世の最後の愛人となった。
- ルイーゼ・レーツェン(Louise Lehzen) - ヴィクトリア女王のガヴァネス。
- アン・サリヴァン - 著名な三重苦の少女ヘレン・ケラーを教育した。「奇跡の人」で知られる。
- アンナ・レオノーウェンズ(Anna Leonowens) - シャム(現タイ)王室のガヴァネス。回想録を元にしたマーガレット・ランドンの小説『アンナとシャム王』が「王様と私」として舞台化された。
- マリオン・クロフォード(Marion Crawford) - エリザベス2世女王とマーガレット王女のガヴァネス。愛称「クローフィー(Crawfie)」。
- マリ・キュリー - 父親の縁戚である弁護士の家庭の家庭教師を務め、後に史上最も有名な女性科学者の一人となった。
[編集] 他の用法
ガヴァネス(governess)はガヴァナー(governor)の女性名詞であり、知事(governor)が女性である場合には女性知事(governess)となる。しかし女性の場合でも知事(governor)とも呼ばれる。
[編集] 関連項目
[編集] 脚注
- ^ A Governess's Duties, Outback House (オーストラリア放送協会)
- ^ Ellis, Phyllis (2000). Desert Governess: An Inside View on the Saudi Arabian Royal Family. London: Eye Books. ISBN 1903070015.
- ^ Harris, Julia: A career as a Governess? What skills do you need?, Australian Broadcasting Corporation, 15 October 2004.
- ^ 頭文字がRなのはreadingのみだが、いずれもアクセントの有る音節の子音がRである。
- ^ McDonald, James Joseph, and J. A. C. Chandler (1907). Life in Old Virginia; A Description of Virginia More Particularly the Tidewater Section, Narrating Many Incidents Relating to the Manners and Customs of Old Virginia so Fast Disappearing As a Result of the War between the States, Together with Many Humorous Stories. Norfold, Va: Old Virginia Pub. Co..
- ^ Lecaros, Cecilia Wadsö: ヴィクトリア朝のガヴァネス小説, Lund University, 2000.
[編集] 参考文献
- Broughton, Trev and Ruth Symes: The Governess: An Anthology. Stroud: Sutton, 1997. ISBN 0-7509-1503-X
- Hughes, Kathryn: The Victorian Governess, London: Hambledon, 1993. ISBN 1-8528-5002-7
- Peterson, M. Jeanne: "The Victorian Governess: Status Incongruence in Family and Society, in Suffer and Be Still: Women In the Victorian Age, ed. Martha Vicinus. Bloomington: Indiana University Press, 1972.
[編集] 外部リンク
- The Victorian Governess
- The Victorian Governess, a bibliography, at Victorian Web
- [1] Richard Redgrave's 'The Governess' discussed at the V&A Museum.
最終更新 2009年8月14日 (金) 05:24 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
【ガヴァネス】変更履歴


