無限軌道

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ブルドーザーの無限軌道

無限軌道(むげんきどう)とは、起動輪、転輪、誘導輪を囲むように一帯に接続された履板(りばん)の環であり、起動輪でそれを動かす事によって不整地での車両の移動を可能にするもので、この種の車両を装軌車両(Tracked Vehicle)と呼称する。対して通常のタイヤ車輪を備えた車両を装輪車両(Wheeled Vehicle,Car etc,)と呼称する。

20世紀初頭に開発され、2度の世界大戦戦車などの軍用装軌車両の実用化と主流化により発達した技術である。他にも不整地走破能力を要求される農業機械建設機械雪上車などで用いられている。

無限軌道には、クローラーCrawler)、トラックベルトTrackbelt)、履帯キャタピラーなど、複数の呼び名がある。一般用途では、無限軌道と呼ばれる。軍事用語では、履帯(りたい)と呼ばれる。日本の法律条文(道路交通法施行規則等)ではキャタピラの変化したカタピラという用語が用いられている(以前は履帯という用語が用いられていた)。一般によく用いられる「キャタピラー」は米国キャタピラー社 (Caterpillar Inc.) の登録商標である。

目次

[編集] 概要

工事現場や農地、砂漠などの不整地や雪上などでは、通常の車輪では凹凸に阻まれたり重量で地面にめり込んだりして走行が困難である。対して無限軌道では車輌の重量が履帯全体にかかるために接地面積辺りの圧力(接地圧)が小さくなり、柔らかい地面や雪上でも沈み込みにくくなる。また多少の起伏や穴なども履帯越しに転輪が通るためにスムーズに通行する事ができる。

方向転換はスキッドステアと呼ばれる方式で行う。これは車体左右の履帯の回転差により横滑りさせて進行方向を変える物で、曲がる側の履帯を完全に停止させる信地旋回、(トランスミッションがそれに対応していれば)履帯を左右逆回転させてその場で旋回する超信地旋回が行える。昔は左右の履帯の回転量をレバーで直接操作して操縦する物が多かったが、近年は自動車ステアリングの様なハンドル操作で操縦が容易になっている物も多い。

履帯の接地長が長いほど接地圧が小さくなり不整地走破能力は増すが、左右の履帯間隔に対して接地長が長すぎると横方向のグリップ力が強すぎて方向転換が困難になるため、両者の比率は1.1~1.8程度に抑えられている。

難点としては、走行装置そのもののが重くなるためにエンジンなどに負荷が大きく、騒音や振動も大きく高速・長距離走行は一般的に困難である。ゴムを用いた特殊な履帯を用いない場合、舗装路では路面を破壊する恐れもある。また履帯が一か所でも切断されると走行不能になり、交換修理や整備にも多大な手間を要する。特に軍用車輌では、近年の市街戦対テロ戦争において戦車などの装軌車輌が地雷即席爆発装置(IED)により行動不能になるケースが多い。

[編集] 種類

ゴムクローラを用いたトラクター
第三世代戦車の履帯(ゴム付き)。
履板同士をピンで連接させる事により形成される。

材質、接合方式、構造により分類される。走行性能においてはダブルブロックダブルピン構造の物が最も良好であるが、部品点数が多くなるため、現在の第三世代戦車では主にシングルブロックダブルピンが用いられている。

[編集] 材質

通常、合金が用いられるが、ミニショベルなどの小型の建設機械やトラクターコンバイン等では、履帯が一体化したゴムクローラが用いられる。

ゴムクローラは近年は材質の改善により一部の軍用車輌でも使われており、静寂性・高速性・路面保護などに優れている反面、一か所の破断でも履帯全体を交換する必要があり、交換作業も転輪を外す必要がある。

[編集] 接合方式

シングルピン
長い1本のピンで片方から接合する。部品点数が少ないため耐久性は高いが履帯が取り付けにくい欠点を持つ。
ダブルピン
短い2本のピンで両方から接合する。シングルピンとは逆の性質を持つ。

[編集] 構造

シングルブロック
クローラを構成するピースどうしを直接ピンで接合する方式。部品点数が少なく安価であるが柔軟性に欠け、外れやすいという欠点を持つ。
ダブルブロック
クローラを構成するピースを接合部品を介してピンで接合する方式。部品点数が多く高価でその分信頼性に劣るが、柔軟性に優れ、外れにくいという利点を持つ。
蛇腹方式
クローラのピンを左右にも折れ曲がるように接合した方式。イギリス装甲車に一部使用された。ステアリング型の装甲車にも巻けるクローラとして開発され、前輪を左右に振る車輪に同期させるため、履帯自体も左右に折れ曲がるように設計されている。

[編集] 転輪

大型転輪
BT戦車T-34T-54/55T-62など第二次世界大戦中から戦後しばらくのソ連戦車によく見られる転輪。イギリスのカヴェナンタークルセーダークロムウェルなどの巡航戦車陸上自衛隊74式戦車でも採用された。転輪上部で上側の履帯を支える。高速走行時に有効とされるが、転輪の装着数が必然的に少なくなり、転輪間の幅が大きくなるため不整地走行性能に難がでる。履帯幅の延長などで改善が可能。また高速走行時に上側の履帯が振動で破損しやすい。なお古い資料ではこの転輪形式を「クリスティー方式」と呼ぶこともあったが、正確にはサスペンションの形式を指すもので、転綸のサイズや上部支持転綸の有無は無関係である。
小型転輪
戦車の登場初期より存在した転輪方式。小さな転輪を数多く装着することで、転輪間の隙間を小さくでき、不整地走行性能が向上する。しかし速度性能に限界が生じ、高速度を求める車両には向かない。イギリスのマチルダII歩兵戦車チャーチル歩兵戦車が代表的な例。
中型転輪
大型と小型の良いところを妥協してとった大きさの転輪。上側の履帯を支える為の小さな上部支持転輪を持つ。両者の中間程度の可もなく不可もない性能で、現在主流の戦闘車両用転輪形態として落ち着いている。
挟み込み転輪・千鳥足転輪
大型転輪と小型転輪の良いところをすべて盛り込もうとして開発された。大型転輪を交互に左右半重ねにして配置したり、一個と二個を交互にはさみ重ね合わせるようにした形態の転輪である。これにより転輪の間隔を小型転輪並にし、不整地性能の向上を期待することができる上、高速高機動かつ大型の車体が製造可能な特徴を持たせようとした。しかし破損した奥の転輪を交換する際に手前の無傷の転輪も外さなければないこと、加えてトーションバーに損傷を受けた場合交換にはさらに煩雑さが増すこと、細かく入り組んだ転輪の隙間に泥などが入り込みやすく冬季には凍結しやすくなるなど、メンテナンス上重大な問題があり、なおかつ接地圧の解消にはそれほどの結果を出せなかった。第二次世界大戦後期にドイツが生産したパンター中戦車ティーガー重戦車や各種ハーフトラックで挟み込み転輪、パンターIIやEシリーズで千鳥足転輪が採用されたが、大戦終結以後この形式を使う車両はほとんど存在しない。

[編集] 動輪

起動輪(スプロケット・ホイール)
前後いずれかの端に位置し(エンジン配置などに依存)、動力軸と繋がっている。歯車状になっていて履帯と噛みあって動力を伝達する。
遊動輪(アイドラー・ホイール)
起動輪と反対側の端に位置し、位置を前後させて履帯の張り具合を調整する。金属履帯は使用と共に接続ピンと周辺の磨耗により伸びて来るため調整が必要になる。

[編集] 舗装路への影響

歩兵戦闘車の履帯。
黒く見える部分がゴムパッド。

ゴムクローラでは問題とはならないが、従来型の鉄製クローラで舗装路を走ると、舗装を傷める恐れがある。そのため、建設機械が移動する際は、単車トラック又は低床式トレーラー型の重機キャリアに載せて運ぶことになる。

戦車等の装軌式装甲戦闘車両もトレーラー(戦車トランスポーター)に搭載して移送することが多いが、日本を含む先進国が装備している戦車等の装軌式装甲戦闘車両の多くは、路面を傷めないようゴム製の肉球(ゴムパッド)を着脱できる履帯(履板)を使用することが多い。履板の形状が違えば着脱可能なゴムパッドの形状も当然異なり、種類は色々あるが、日本の90式戦車では横長のゴムパッドが使われている。路面にゴム跡が付くものの、接地面がゴムなので舗装路をあまり傷めず、騒音も軽減出来るため、公道などを走行する際はゴムパッドの装着が必須となっている。また、戦車が配備されている陸上自衛隊の一部駐屯地近くの道路では、アスファルトの舗装を完全に撤去し、コンクリートで舗装した公道を戦車が走行するといった例もある。

[編集] ギャラリー

最終更新 2009年11月18日 (水) 07:57 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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