グレート・ウェスタン鉄道2900型蒸気機関車

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グレート・ウェスタン鉄道2900型蒸気機関車 (2900 Class) はイギリスのグレート・ウェスタン鉄道 (Great Western Railway : GWR) が製造した旅客用テンダー式蒸気機関車の1形式である。各車の固有名から、セイント型 (Saint Class) とも呼ばれる。軸配置はテンホイラー(4-6-0または2C)。

目次

[編集] 概要

グレート・ウェスタン鉄道の技師長(Chief Mechanic Engineer : CME)であった、ジョージ・チャーチウォード(George Jackson Churchward:在任期間:1902年 - 1922年)によって設計された。

チャーチウォードはGWRの蒸気機関車製造と保守を一手に担っていたスウィンドン工場の工場長時代に本形式の原型となる機関車の設計を始めており、CME就任直後の1902年より1903年にかけて、将来の機関車設計の標準化を念頭に置いて2両の重量級旅客列車牽引用テンホイラー(100・98(後の2900・2998))および1両のアトランティック(171(後の2998))形飽和式2気筒テンダー式蒸気機関車を試作している。

これらは、フランスのアルザス機械製造会社(Société Alsacienne de Constructions Mécaniques:SACM)から購入された、同社技師のアルフレッド・ドゥ・グレーン(Alfred De Glehn)によって1890年代に開発されたドゥ・グレーン(De Glehn)式複式4気筒機関車との比較試験を通じて弁装置の改良が行われ、特に171号機は当初テンホイラーとして新造されたものの、購入されたドゥ・グレーン式機関車の軸配置がアトランティックであったことから、これと条件を揃えて性能比較を行う目的で新造後まもなくアトランティックに改造されている。

本形式は、これらの試作機で各種設計の評価を行い、基本的な方針を固めた上で量産設計を実施しており、これら3両の試作車を量産化改造したものを含め、合計77両が製造されている。

[編集] 設計

鬼才ダニエル・グーチ (Daniel Gooch) の残した超広軌用シングルドライバーの影響から逃れられず[1]、またその任期の大半をGWR路線網の改軌工事に奔走する羽目に陥った、ウィリアム・ディーン (William Dean) ら2人の先任CME時代のものとは全く異なる、当時のアメリカの最新型蒸気機関車を参考にした完全新規設計が採用されている。

こうして設計された本形式の成功により、初代CMEであるイザムバード・キングダム・ブルネル (Isambard Kingdom Brunel) が創始した2140mm(7フィート1/4インチ)軌間を捨てて標準軌間へ全面改軌[2]された、新生GWRによる以後の蒸気機関車設計の基礎が確立されることとなった。

本形式や同時期設計の貨物機であるコンソリデーション形軸配置(2-8-0または1D)の2800型 (2800 Class) ではその設計について標準化・規格化が強く意識されており、これらはいずれも同一基本構造を備える板台枠を採用し、これにあらかじめ複数種類が用意された鋳鋼製シリンダブロックや動輪の中から適切な仕様のものを組み合わせて搭載、さらに同型のボイラーを搭載することでそれぞれの要求性能を充足しつつ機関車設計の標準化や搭載機器・部材の共通化を実現し、メンテナンスコストの低減が図られた。

なお、前述の通りチャーチウォードは本形式の量産設計の前に合計3両の試作車を製造しているが、それらは燃焼効率の改善のためにボイラーの仕様の変更を頻繁に行っており、これら3両による各種評価試験の結果、本形式の量産車ではアメリカ流のベルペア式の火室が印象的な円錐形ワゴントップボイラーが採用されている[3]。このボイラーは後にNo.1形 (Type No.1) と呼ばれ、続く単式4気筒機であるスター型 (Star Class) に採用されたほか、チャーチウォードの後任CMEであるチャールズ・コレット (Charles Benjamin Collett : 在任期間 : 1922年 - 1941年) が本形式の設計を改良した単式2気筒機であるホール型 (Hall Class) や、更にその後任となったGWR最後のCMEであるフレデリック・ホークスワース(Frederick W. Hawksworth : 在任期間 : 1941年 - 1947年)がホール型を改良したホール改型 (Modified Hall Class) などに採用され続け、GWRの標準型蒸気機関車用ボイラーとして大きな成功を収めた。また、このNo.1形は前述の通り貨物機である2800型にもそのまま搭載された他、各種目的に応じたスケールダウン版としてNo.2形 (Type No.2) [4]やNo.3形 (Type No.3) [5]、あるいはNo.4形 (Type No.4) [6]などがNo.1形を基本として彼の在任期間中に集中的に設計されている。また、スター型の強化版であるキャッスル型 (Castle Class) のために設計されたNo.8形やキング型 (King Class) のNo.12形、それにGWRとして最後の新規設計された蒸気機関車用ボイラーであるNo.15形(カウンティ型 (County Class) 用)なども全てNo.1形の設計を基に拡張・改良されており、このNo.1形は名実ともに改軌以降のGWRを代表する傑作ボイラーであったと言える。

さらに、このNo.1形の設計はGWRからロンドン・ミッドランド・アンド・スコティッシュ鉄道 (London, Midland and Scottish Railway : LMS) へ移籍して同社CMEとなったウィリアム・ステニアー (Sir William Arthur Stanier F.R.S.) が手がけた、ターボモーティブ (Turbomotive) をはじめとする、同社が国有化されるまでの間に製造された一連の同社向け蒸気機関車のためのボイラーの設計にも大きな影響を与えている。

[編集] 製造

本形式の量産車は、172 - 190(後の2972 - 2990)・2901 - 2955がスウィンドン工場で1905年から1913年にかけて製造された。

この内172号機 Quicksilver(1907年にThe Abbotへ改名)は試作車であった171号機 Albionと同様、比較試験を目的として当初アトランティック形軸配置(4-4-2または2B1)で新造されたが、1912年に他の量産車と共通のテンホイラーに改造されたものである。

なお、3両の試作車は量産開始後もデータ収集のために様々な種類のボイラー構造を試用したが、全車とも1913年までに量産化改造を実施の上、本形式に編入されている。

本形式そのものの量産は通算77両を数えたところで打ち止めとなったが、前述の通り本形式の2925号機 Saint Martin1924年に改造[7]してテストの上で、貨客機であるホール型が1928年より1943年にかけて258両製造され、更にこのホール型を改良したホール改型が1944年から1950年にかけて71両製造されており、いずれもその主要部分の設計は一切変更されていない。

つまり、多少の仕様変更はあったものの、45年間に合計406両が同一基本設計のままで製造が続けられたということになる。4気筒の同系機を含め、いかに保守的なイギリスの鉄道でもここまで長期間にわたって同じ基本設計で量産が続いた例は他になく、その先駆けとなった本形式の設計の優秀性とGWRにおける標準化の徹底ぶりがうかがい知れよう。

[編集] 運用

本形式はGWRの主力機関車の一つとして大量導入され、シンプルで扱いやすく、しかも規格化された構造故に運転・保守の双方から好評を博した。

廃車は1931年の2985号機 Peveril of the Peakを皮切りに順次進められ、1954年までに全車廃車解体処分された。

[編集] 諸元

  • 全長 mm
  • 全高 mm
  • 軸配置 2C(テンホイラー)
  • 動輪直径 2,044.7mm
  • 弁装置:内側スティーブンソン式弁装置(ピストン弁使用)
  • シリンダー(直径×行程) 469mm×760mm
  • ボイラー圧力 15.82kg/cm² (= 225lbs/in2 = 1.55MPa))
  • 火格子面積 2.52m²
  • 機関車重量 72t
  • 最大軸重 20t
  • 炭水車重量 48t

[編集] 保存車

前述の通り、本形式はGWRを代表する重要な形式であったにもかかわらず、全車スウィンドン工場で解体処分済みであり、現存しない。

ただし、現在ホール型の保存車の1両を改造し、本形式の仕様とするという、ホール型の開発プロセスを逆行する方法で、本形式の復元を図る計画が進められている。

[編集] 脚注

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  1. ^ これはCMEの座から退いた彼が、1865年にGWRの会長に就任し、後任CMEに対する影響力を保持し続けたことに一因があった。
  2. ^ 1892年5月20日のパディントン発スウィンドン行き最終列車をもって超広軌によるGWRの旅客輸送サービスは全て終了し、超広軌のみであったエクセター以西の区間の標準軌間への改軌工事が、翌21日と22日の2日を費やして実施された。
  3. ^ たとえば100→2900は竣工直後は通常の缶胴部が同一断面積で真っ直ぐな外観形状のストレートボイラーが搭載されていたが、1903年に半円錐形に改造、1910年にはGWR初のシュミット式過熱装置の搭載試験車となるなど、GWRのボイラー改良のテストベッドとして重要な役割を果たした。
  4. ^ アメリカン形軸配置(4-4-0または2B)のブルドッグ型 (3300 Class) やバード型 (3441 Class) 、あるいはタンク機関車の5101型 (5101 Class) や5600型 (5600 Class) などに多用された。
  5. ^ タンク機関車のバードケージ型 (3600 Class) などに採用された
  6. ^ アメリカン形軸配置(4-4-0または2B)の軽量列車用テンダー式機関車であるシティ型 (3700 Class) やカウンティ型 (3800 Class) あるいは大型タンク機関車の4200型 (4200 Class) や7200型 (7200 Class) などに採用された。
  7. ^ 動輪径を6フィート (1,828mm) に縮小し、4900号機へ改番した。


最終更新 2009年10月27日 (火) 23:36 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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