グローバル資本主義

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グローバル資本主義(グローバルしほんしゅぎ)は、国家間の障壁を取り除き、自由化を推し進めた資本主義グローバル化のこと。新自由主義を世界規模へ適用したとも言われる。

目次

[編集] 概要

米ソ冷戦終結後、特にソ連が死滅した直後の1992年以後に、一強と化したアメリカ合衆国市場原理主義新自由主義が、世界各国へ導入された。それは、世界の市場経済の一極化と単一化を計り、国際通貨基金 (IMF) などを通じて推し進められた。

特徴の一つは、財やサービスの取引とは無関係な巨額な投機的資金(ヘッジファンド)の存在である。瞬間的利益を求めて世界中を駆け巡り、一国の経済を左右するまでになっている。

もう一つは、国民国家の国内総生産 (GDP) を軽く超える多国籍企業の存在である。非先進国を含めて世界中で生産を展開する事により、「使い捨て」と呼ばれる位に雇用を不安定化し、市場を獲得するために国境を越えて資金と物資を自由に動かしている。

[編集] グローバル資本主義への反発

反発する者は、新自由主義(無規制で弱肉強食市場原理)の経済が、非正規雇用労働者(プレカリアート)を世界的・爆発的に増大させ、挙げ句の果てには主権国家をも従属させながら世界を席巻している点を覇権主義的であり缺陥として非難している(→反グローバリゼーション)。

米国は、コンピューターOS (Microsoft Windows) やWeb検索システム (Google)、金融業(ゴールドマン・サックス)、鉱工業、農業、技術標準など、あらゆる面で世界の市場の支配と一極化を目指している。そのため、アメリカ風の政治・経済・社会を他国に無理やり強制し、結果的に貧富の拡大や環境破壊など様々な問題を惹き起こしたのではないかと言われている。

世界中どこでもマクドナルドケンタッキーコカコーラウィンドウズが見られる光景は結局アメリカ国内で見られる文化を他国に輸出しているに過ぎず、「グローバリズム」ならぬ「アメリカニズム」であり、「グローバルスタンダード」ならぬ「アメリカンスタンダード」でしかないと考えられている。地域固有の文化を淘汰する傾向が多いため、左派(社会主義者)のみならず、右派(ナショナリスト)からも批判されている。

近年は、世界のグローバル資本主義化の反動で、南米では反新自由主義の左派政権の誕生が相次いでいる。また、技術面でも非アメリカとオープン・リベラルへの志向が高まり、欧州やアジア・南米各国での相次ぐ政府のLinuxOSの推進や、ESA(欧州宇宙機関)と日本を含む各国による新GPS「ガリレオ計画」の推進などがある。

しかし、グローバル資本主義化は資本の本性から出てきたもので必然的であり、これに対する対案はグローバル社会主義しかないという主張がマルクス主義者の側からなされる。

[編集] 肯定する意見

グローバル経済・グローバル資本主義には唯一的な理論や形態があるわけではなく、理論的には個々の国の経済的統治に対する考え方や産業の発展・普及の差異により、多種多様な経済の形態が共存可能である。これには、国内経済の事業者の参入・活動と消費者の選択の自由度、対外経済の事業者の貿易・投資と消費者の選択の自由度、個人と法人の所得・財産・経済活動に対する課税率の高低、政府による福祉・社会保障の質量の豊富度・貧弱度などである。多種多様な形態の実態としては、北米自由貿易協定(NAFTA)、欧州連合(EU)、イスラム国家が実施しているイラスム経済、米州ボリバル代替統合機構、東アジア共同体、その他、世界各国・地域のFTAなどがある。

WTOおよびIMFの加盟国やFTAの締結、世界の貿易・投資の増加の事実は、世界各国が、グローバル経済・グローバル資本主義に参加することが国家と国民の利益になると判断した結果であり、経済大国が参加していない二国間・多国間のFTAも多数存在している。

統計資料に基づいてグローバル資本主義の影響と社会指標の変化を包括的に検証すると、グローバル経済・グローバル資本主義の進行は、経済大国が開発途上国から搾取し、一方的な貧困化をもたらすという認識は現代においては適当ではないこともある。詳細はグローバル資本主義の影響と社会指標の変化を参照。開発途上国後発開発途上国であっても、過去の日本、韓国、台湾、シンガポール、現在の中国、インド、インドネシア、タイ、ベトナムのように、自国の経済・産業の発展段階と性質に適合した経済政策の採用が可能であれば、グローバル経済に参加することは、自国の経済を発展させ、国民の生活水準を向上などの結果を生み出す。経済・産業の発展段階と性質に適合する経済政策の採用は政治等の国内事情や利害関係国との力関係等の対外事情に左右されるため、必ずしも可能ではないことにも注意する必要がある。

[編集] グローバル資本主義の進行がアメリカにもたらした影響

グローバル経済はアメリカの貿易赤字、ドルの外貨保有、アメリカとその他の国の相互の資本投資の増大を生み出した。1980年代にはアメリカ議会が、アメリカとの貿易不均衡が著しい国に対する経済制裁法案を制定したこともあった。

経済のグローバル化が進行した結果として、世界の市場において、売上・利益が大きい、利益率が高い、競争力が強い企業が、それらの点で劣る企業・事業を買収する事例が世界的に進行している。経済のグローバル化の結果として、アメリカ資本の企業が一方的に利益を獲得し、非アメリカ資本の企業が一方的に利益を収奪されるという訳ではない。各種の産業分野の企業の買収・合併の状況については1990年以後の企業の買収・合併の実績を参照。

[編集] アメリカ資本の企業が外国資本の企業に買収された事例

冷戦時代末期
  • 1984年、三菱銀行がバンク・オブ・カリフォルニアを買収。
  • 1988年、東京銀行がユニオンバンクを買収。
冷戦終結後
  • 1989年、三菱地所がニューヨークのロックフェラーセンターを買収。
  • 1989年、ソニーがコロンビア・ピクチャーズ(現在のソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント)を買収。
  • 1989年、アセア・ブラウン・ボベリがウエスチングハウス・エレクトリックの送電・変電事業を買収。
  • 1989年、シンドラーがウエスチングハウス・エレクトリックのエレベーター事業を買収。
  • 1990年、松下電器がMusic Corporation of America(現在のユニバーサル・スタジオ)を買収。
  • 1991年、イトーヨーカドーがサウスランドを買収。
  • 1996年、NECがパッカードベルを買収。
  • 1998年、ダイムラーがクライスラーを買収。
  • 1998年、イギリス原子燃料会社(BNFL)がウエスチングハウス・エレクトリックの商業用原子力発電事業を買収。
  • 2000年、日立製作所がIBMのハードディスク事業を買収。
  • 2004年、連想集団がIBMのパソコン事業を買収。
  • 2005年、BAEシステムズがユナイテッド・ディフェンスを買収。
  • 2004年、ソニーがMetro-Goldwyn-Mayerを買収。
  • 2006年、東芝がウエスチングハウス・エレクトリックをイギリス原子燃料会社(BNFL)から買収。
  • 2007年、リコーがIBMのデジタル印刷事業を買収。
  • 2007年、エイサー(宏基電脳)がゲートウェイを買収。
  • 2007年、富士通がOkereを買収。
  • 2007年、トロント・ドミニオン・バンクがコマース・バンコープを買収。

[編集] 脚注


[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

[編集] 経済学

  • 金森久雄、森口親司、荒憲治郎『経済辞典』有斐閣
  • 多賀出版編集部『英和経済学用語辞典』多賀出版
  • 伊藤元重『入門 経済学』日本評論社
  • 岩田規久男『経済学を学ぶ』筑摩書房
  • 野口旭『ゼロからわかる経済の基本』講談社
  • ポール・クルーグマン『クルーグマン教授の経済入門』メディアワークス
  • ジョセフ・スティグリッツ『スティグリッツ入門経済学』東洋経済新報社
  • 伊藤元重『ゼミナール国際経済入門』日本経済新聞社
  • 西村和雄『ミクロ経済学入門』岩波書店
  • 西村和雄『ミクロ経済学 現代経済学入門』岩波書店
  • ハル・ヴァリアン『入門ミクロ経済学』勁草書房
  • 武隈慎一『ミクロ経済学の基礎理論 新経済学ライブラリ』新世社
  • ハル・ヴァリアン『ミクロ経済分析 経済と経済学の明日』勁草書房
  • ジョセフ・スティグリッツ『スティグリッツ ミクロ経済学』東洋経済新報社
  • 中谷巌『入門マクロ経済学』日本評論社
  • 大竹文雄『スタディガイド 入門マクロ経済学』日本評論社
  • デビッド・ローマー『上級マクロ経済学』日本評論社
  • 伊藤元重『マクロ経済学』日本評論社
  • 吉川洋『マクロ経済学 現代経済学入門』岩波書店
  • 武隈慎一『マクロ経済学の基礎理論 新経済学ライブラリ』新世社
  • オリヴィエ・ブランシャール『マクロ経済学』東洋経済新報社
  • ジョセフ・スティグリッツ『スティグリッツ マクロ経済学』東洋経済新報社
  • 岩本康志、斉藤誠、大竹文雄『経済政策とマクロ経済学 改革への新しい提言』日本経済新聞社

[編集] グローバル経済に関する批判

  • マンフレッド・B・スティーガー『グローバリゼーション』岩波書店
  • ジョン・トムリンソン『グローバリゼーション 文化帝国主義を超えて』青土社
  • サスキア・サッセン『グローバリゼーションの時代 国家主権のゆくえ』平凡社
  • 伊豫谷登士翁『グローバリゼーションとは何か 液状化する世界を読み解く』平凡社
  • 伊豫谷登士翁『グローバリゼーションと移民』平凡社
  • ウェイン・エルウッド『グローバリゼーションとはなにか』こぶし書房
  • イグナシオ・ラモネ、ヤセク・ヴォズニアク、ラモン・チャオ『グローバリゼーション・新自由主義批判事典』作品社
  • デヴィッド・ハーヴェイ『新自由主義 その歴史的展開と現在』作品社
  • デヴィッド・ヘルド編『論争グローバリゼーション 新自由主義対社会民主主義』岩波書店
  • W・フィッシャー『もうひとつの世界は可能だ グローバル化へのオルタナティブ』日本経済評論社
  • ロバート・ギルピン『グローバル資本主義 危機か繁栄か』東洋経済新報社
  • 石見徹『グローバル資本主義を考える』ミネルヴァ書房
  • ナオミ・クライン『貧困と不正を生む資本主義を潰せ 企業によるグローバル化の悪を糾弾』はまの出版
  • スーザン・ジョージ『世界銀行は地球を救えるか 開発帝国五〇年の功罪』朝日新聞社
  • スーザン・ジョージ『債務ブーメラン 第三世界債務は地球を脅かす』朝日新聞社
  • スーザン・ジョージ『なぜ世界の半分が飢えるのか 食糧危機の構造』朝日新聞社
  • スーザン・ジョージ、マーティン・ウルフ『徹底討論 グローバリゼーション賛成・反対』作品社
  • スーザン・ジョージ『オルター・グローバリゼーション宣言 もうひとつの世界は可能だ』作品社
  • スーザン・ジョージ『WTO徹底批判』作品社
  • ロリー・ワラチ、ミッシェル・スフォーザ『誰のためのWTOか』緑風出版
  • 北沢洋子『利潤か人間か グローバル化の実態と新しい社会運動』コモンズ
  • アマルティア・セン『貧困と飢饉』岩波書店
  • アマルティア・セン『貧困の克服 アジア発展の鍵は何か』集英社
  • アマルティア・セン『不平等の再検討 潜在能力と自由』岩波書店
  • アマルティア・セン『集合的選択と社会的厚生』勁草書房
  • カール・ポランニー 『大転換 市場社会の形成と崩壊』 野口建彦・栖原学訳、東洋経済新報社
  • ムケシュ・エスワラン、アショク・コトワル『なぜ貧困はなくならないのか 開発経済学入門』日本評論社
  • 速水佑次郎『開発経済学 諸国民の貧困と富』創文社
  • 大野健一『途上国のグローバリゼーション 自立的発展は可能か』東洋経済新報社
  • 高橋伸彰『グローバル化と日本の課題』岩波書店
  • 樋口美雄『労働経済学』東洋経済新報社
  • 樋口美雄『雇用と失業の経済学』日本経済新聞社
  • 樋口美雄『日本の所得格差と社会階層』日本評論社
  • 橘木俊詔斎藤貴男苅谷剛彦『封印される不平等』東洋経済新報社

[編集] グローバル経済の推進と問題解決策

  • デヴィッド・ヘルド『グローバル化とは何か 文化・経済・政治』法律文化社
  • ウルリッヒ・ベック『グローバル化の社会学』国文社
  • ピーター・ホール、デヴィット・ソスキス『資本主義の多様性』ナカニシヤ出版
  • ブルーノ・アマーブル『五つの資本主義 グローバリズム時代における社会経済システムの多様性』藤原書店
  • ジョセフ・スティグリッツ『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』徳間書店
  • ジョセフ・スティグリッツ『世界に格差をばら撒いたグローバリズムを正す』徳間書店
  • アンソニー・ギデンズ『暴走する世界 グローバリゼーションは何をどう変えるのか』ダイヤモンド社
  • アンソニー・ギデンズ『第三の道 効率と公正の新たな同盟』日本経済新聞社
  • ゲスタ・アンデルセン『福祉資本主義の三つの世界』ミネルヴァ書房
  • トーマス・フリードマン『レクサスとオリーブの木 グローバリゼーションの正体』草思社
  • トーマス・フリードマン『フラット化する世界』日本経済新聞社
  • ジャグディッシュ・バグワティ『グローバリゼーションを擁護する』日本経済新聞社
  • 水野和夫『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』日本経済新聞社
  • 野口悠紀雄『資本開国論 新たなグローバル化時代の経済戦略』ダイヤモンド社
  • 園部哲史、大塚啓二郎『産業発展のルーツと戦略』知泉書館
  • 八代尚宏『規制改革 法と経済学からの提言』有斐閣
  • ジェフ・キングストン『国家再生 過保護から自己責任へ』早川書房
  • ポール・クルーグマン『経済発展と産業立地の理論 開発経済学と経済地理学の再評価』文真堂
  • アンソニー・ベナブルズ『空間経済学 都市・地域・国際貿易の新しい分析』東洋経済新報社
  • プラナブ・バーダン、クリストファー・ウドリー『開発のミクロ経済学』東洋経済新報社
  • 小島麗逸、幡谷則子『発展途上国の都市政策と社会資本建設』アジア経済研究所
  • 小島麗逸、幡谷則子『発展途上国の都市化と貧困層』アジア経済研究所
  • 西垣昭、辻一人、下村恭民『開発援助の経済学』有斐閣
  • 恩田守雄『開発社会学 理論と実践』ミネルヴァ書房
  • 渡辺利夫『国際開発学入門』弘文堂
  • 野口旭『経済対立は誰が起こすのか 国際経済学の正しい使い方』筑摩書房
  • 小宮隆太郎『貿易黒字・赤字の経済学 日米摩擦の愚かさ』東洋経済新報社
  • 田村次朗『WTOガイドブック』弘文堂
  • 高瀬保『WTO(世界貿易機関)とFTA(自由貿易協定)』東信堂
  • 村上直久『WTO 世界貿易のゆくえと日本の選択』平凡社
  • 松下満雄『WTOの諸相』南窓社
  • 浦田秀次郎『FTA(自由貿易協定)ガイドブック』ジェトロ
  • 浦田秀次郎『日本のFTA(自由貿易協定)戦略 新たな開国が競争力を生む』日本経済新聞社
  • 浦田秀次郎、日本経済研究センター『アジアFTAの時代』日本経済新聞社
  • 木村福成、鈴木厚『加速する東アジアFTA 現地リポートにみる経済統合の波』ジェトロ
  • 北原淳、西沢信善『アジア経済論』ミネルヴァ書房
  • 伊藤隆敏、財務省財務総合政策研究所編『ASEANの経済発展と日本』日本評論社
  • 渡辺利夫編『東アジア市場統合への道 FTAへの課題と挑戦』勁草書房
  • 猪口孝編『日本のアジア政策 アジアから見た不信と期待』NTT出版
  • 添谷芳秀田所昌幸編『日本の東アジア構想 現代東アジアと日本』慶應義塾大学出版会

最終更新 2009年11月10日 (火) 21:24 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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