サービス残業
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サービス残業(サービスざんぎょう)とは、雇用主から正規の賃金(労働基準法が定める時間外労働手当[1])が払われない時間外労働の俗称であり、サビ残、賃金不払い残業とも言う。雇用主がその立場を用いて被用者に強制を強いる場合が一般化している。 近年は企業の効率化による人件費抑制と人減らしの中、かつて社員で補っていた業務を残業させられない非正規社員に置き換えられたことで(ただし、企業によっては時給制の非正規社員でもサービス残業を強いられる職場もある)、正社員が過剰に働かざるを得ない状況が発生している。特に、外資系より日本の企業がサービス残業を強いる傾向が強いと指摘される。
サービス残業は長時間労働を招くため、過労死や過労自殺、その前段階でうつ病などを発生させる原因となることもあり、サービス残業の存在を知りつつ放置する行為は刑事罰にあたる違法行為となっている。
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[編集] サービス残業の形態
サービス残業は以下のような形態で発生する。
[編集] 労働者に残業申請を行わせない
有形・無形の圧力により、残業申請を行わせない。タイムカードによる出退勤管理をしている企業では、定時に退勤処理を行わせたあとで働かせる場合もある。外部からは従業員が自主的に残って働いているように見える。「サービス」の語の由来でもある。
一例を挙げれば、「一日4時間以上/月30時間以上の残業をしてはならない」とする内規を作ったり、一つの課などで月に決められた一定時間まで、例えば180時間までの残業時間枠を設ける方法がある。
文字の上ではあくまでも「あまり残業をするな」という規定ではある。しかし、このような規定だけを設けても、実際には定められた時間内に仕事をこなすことが不可能な場合、従業員がやむを得ず「内規に反して」サービス残業を始めることがある。内規に反して働いているという状態になるため残業申請は行いにくく、記録上は規定内の残業時間で仕事がこなせているように見えてしまうので、人員を増やす理由も仕事量を減らす理由も記録上は見えなくなり、以後それが常態化してしまいやすい。そのような職場では、本来「あまり残業するな」という意味だったはずの内規が「残業してもいいが、残業賃金は払わない」という裏の意味をもってしまう。
この傾向は、むしろ労働組合がある会社において特に顕著である。規定の範囲外の残業申請を行うと、組合に対する報告書の作成などの煩雑な事務処理が発生することから労働者や管理職が残業申請をためらうケースが発生しやすいためである。また、近年の組合と経営のなれ合い傾向から、双方にとって責任問題となるサービス残業を隠蔽しようという圧力も加わる。逆に労働組合が無い会社の場合は、残業申請が青天井であり、サービス残業が発生し得ないようなケースも少なくない。[要出典]
財政事情が厳しいなどの口実で人件費に関して予算を限ってしまい、管理する側に予算を超過して残業を認める権限を与えないことで、残業を認めたくても無い袖は振れないのだとして残業申請を諦めさせようとする事業所もある。企業が任意に決めたにすぎない予算によって法的に義務のある残業賃金の支払いを免れるはずもない。袖がなければ作ってでも振らなくてはならないのは当然のことだが、厳しい現実などとしてこれを受け入れてしまう従業員もいる。
あるいはまた、「定時帰宅奨励日」や「ノー残業デー」などの自主的なキャンペーンを行っていたり、業績悪化から時間外労働を一律に禁止する企業もある。使用者側が「今日は残業をさせません。会社が残業指示をしていないのだから「自分で勝手に」定時以上働いても、時間外分の賃金は支払いません(から帰りなさい)」と明言しているため、残業代が支払われなくても使用者側に理があるように思わされている人も多い。しかし、厚生労働省は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」という労働基準局長から都道府県労働局長あての通達を、平成13年4月6日に出しており、「始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法」として「使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること」とされ、「自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置」について「労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと。また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること」とされており、単に時間外労働を指示していないということだけをもって、使用者に理があるなどといえないことは明らかである。[2]
[編集] 職場外での仕事の強制
「職場での残業は認められないが仕事が完了することは求められている」場合に発生しやすい。いわゆる、仕事を持ち帰るケースである。就業時間外に働いているので厳密には残業ではない(「サービス労働」と言われることもある)が、実質的には残業である場合が多い。賃金の不払い以外にも、持ち帰った仕事をしている最中に事故にあった場合の労働災害や、情報漏洩があった場合の責任など問題が多く、近年ではあまり行われなくなりつつある。
[編集] 裁量労働制の違法利用
正規の手続きなしに使用者側が一方的に裁量労働制を導入したと称して運用する違法な例がある。裁量労働制を導入するための手続きとして、労使の合意(専門業務型では労使協定の締結・企画業務型では労使委員会の決議)と労働基準監督署への届け出とが必要である。また、裁量労働制のもとでは残業という概念自体が存在しないとの誤った解釈に基づいて一切の手当てを支払わない違法な例がある。現行の裁量労働制はみなし労働時間制の一種であるため、給与算定のために勤務時間管理を行う必要は基本的にはないが、深夜・法定休日勤務手当ては支給しなければ違法となる。また、みなし労働時間が法定労働時間(8時間)を超過する場合には、労使であらかじめ36協定(残業に関する協定)を締結して労働基準監督署に届け出るとともに、超過分の時間外労働手当(たとえばみなし労働時間が9時間であれば1時間分)を支給しなければ違法となる。
成果と報酬の関係が不明確(期待以上の成果をあげても給与に反映されないなど)なまま、サービス残業隠しに導入している企業も多い。
法律条文に明確に列挙されている職種以外にも使用者側の独自解釈の元に裁量労働制を適用する場合もあり、この場合も違法であるが、そのまま運用されていることがある。一例として、裁量労働制が適用できないプログラマーをシステムエンジニア扱いにして裁量労働制を適用してしまうケースが挙げられる。[1]
裁量労働制では出勤・退社の時間は自由に決められるのが建前である。しかし、遅刻・早退の給与控除のみを行う一方で残業代のみを都合よくカットすることがあり、違法であるにもかかわらずそのまま運用され、サービス残業と同じような時間外労働を行わせる場合がある。 また、マスコミのADや記者などは、部署によって休暇が年数日、一日15時間以上の労働の上に有給休暇も記録上での消化という悲惨な環境が常態化していると言われるが、労使双方の裁量労働制の解釈のあいまいさも手伝い、違法であるにもかかわらず表立たない傾向が強い。
近年では求人広告においても年俸制(月給表記の場合もあり)として募集し、時間外労働手当の支給を逃れようとする企業が増えてきており、転職・就職の際には注意が必要である。待遇項目等に時間外手当支給と表記されている場合があるが、表記の有無にかかわらず時間外労働手当が支給されなければ、違法となる。
[編集] 管理職に昇進させる
管理監督者(「監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」)は労働基準法に定める労働時間などの規定の適用を受けない(41条)。
- 第41条 この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
- (略)
- 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
- (略)
そこで、管理職を管理監督者とみなした上で、名目だけ管理職に昇進させ、少額の管理職手当と引き替えに残業手当をカットする方法が採られることがある。しかし、管理職が41条が規程する管理監督者に該当するとは限らない。管理監督者とは経営と一体的立場にある者を指し、管理監督者に該当するかどうかは勤務実態および処遇に照らして個別具体的に判断される。「課長」やチェーンストアの「直営店長」といった役職名によって自動的に管理監督者に該当するわけではない。自己の労務管理についても裁量権を与えられている必要があり、労働時間を長くする裁量だけが認められて短くする裁量が認められないような者は、管理監督者には該当しない。コナカ、日本マクドナルドの直営店長が起こした裁判では、裁判所は店長側の訴えを認め、コナカや日本マクドナルドにおける店長は管理監督者とはいえないとの判断を下した(管理職かどうかの判断はしていない)。これらの訴訟で名ばかり管理職という言葉が生まれ問題視されている。日本労働弁護団が2008年2月11日に設けた「名ばかり管理職110番」では、一番下っ端の社員の肩書きが「幹部候補生」「管理職(課長および店長)候補」(いずれも管理職扱い)であった例、3000人規模の会社で数百人の「課長」がいる例、高校を卒業して入社した金型工場で19歳でいきなり管理職扱いにされた極端な例などの報告がなされている。彼らはいずれも管理職でありながら部下はおらず、また「課長」「店長」であるにもかかわらず出退勤の時間が管理されていた。
[編集] 半端な業務時間を切り捨てる
会社によっては、15分、30分単位で労働時間を管理するが、その場合最小単位分の時間を切り上げて請求することができる。しかし実際には、10分程度の作業であったりすると請求することなく済ませてしまうことがある。また企業はこのサービス残業となる状態を避けるために給料付の休憩を与えることによって調整する場合がある。例として1時間の昼休憩とは別に10分程度のトイレ休憩に給料をつければ定時より仕事が5分程度遅くなった場合でもサービス残業にならない。
[編集] 帰宅拒否症候群
家庭内がうまく行っていない場合、早々に家に帰って家族からぞんざいに扱われるよりも、会社に残って仕事上の人間関係に依存したほうが気が楽という、いわゆる『帰宅拒否症候群』(精神的な症状ではあるが、正式の病名ではない)と呼ばれる状態に陥っている人もいる。また、単身赴任のため、一人暮らしの部屋に戻っても寂しいあるいはやることもないという理由で、定時になっても帰宅せず職場に残る人もいる。このような人達が先輩や上司として多く居る職場では新人や後輩が先に帰り辛く、特に急ぎの仕事も無いのに「ナアナア残業」と呼ばれる付き合い残業を強要されることにもつながりかねない。
[編集] サービス残業の実態と対応
サービス残業は労働基準法違反であるが、労働者は文句を言えば報復人事にあうおそれがあるため、いやおうなしに従っていることが多い。
2001年4月には厚生労働省からサービス残業を規制する趣旨の通達「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」(基発339号)が出され、労働基準監督署による調査、始業・終業時刻の記録・確認などの是正指導が強化された。
しかし、法令で残業時間を規制しても仕事の量は減らないという職場もあり、結局自宅へ仕事を持ち帰り「サービス労働」を行うことになるケースも少なくない。また、企業側が休暇の取得を奨励したものの、仕事は消化しなければならないため休暇の日に自宅で無給の「在宅勤務」を強いられるケースもある。こういったケースは労働基準監督署による摘発が非常に困難である。
[編集] 労働基準監督署による是正勧告など
複数の労働基準監督署が2004年9月以降に実施してきた立ち入り調査でサービス残業が発覚してきた。労働基準監督署の是正勧告を受けて社内調査をしてサービス残業代を支払った(2005年)。もっとも立ち入りが行われたのは一般にサービス残業が少ないとされる電力会社が中心で、これらは氷山の一角に過ぎないという指摘が多い。
- 関西電力 22億9700万円(約11,000人)
- 東京電力 69億4800万円(約25,900人)
- 中部電力 65億円(約12,000人)
- スタッフサービス大阪本部 約53億6500万円(全国の従業員と退職者計約3,400人)
- ヤマト運輸関西支社管内 金額は不明(大阪主管支店管内の従業員約22,000人)
- 富士火災海上保険 2億7400万円(約1,000人)
- ホテルグランヴィア京都 2億700万円(約400人)
- ミドリ電化JR尼崎駅前店 金額は不明(約5,100人)
- ミズノ 18億6,000万円(約2,000人)
- 近畿大学 約1億38万円(職員・退職者約563人)
- 名古屋港イタリア村 約700万円(外国人調理師3人)
- 大阪大学 金額は不明(教員の一部を含む職員約5,400人)
- 学校法人立命館 約900万円(大学・高校などの職員約460人)
- 神戸ポートピアホテル 約7,100万円(174人)
- 群馬大学 約2,500万円(付属病院を含む職員約900人)
- 北九州市立医療センター 金額は不明(医師約70人)
- 横浜銀行 約7,900万円(銀行員約1,100人)
- 大原簿記専門学校神戸校
- ダイハツ工業 約5,000万円(社員約1,000人)
また、上記の大阪大学の他にも、一部の国立大学にも労働基準監督署が立ち入り検査を行っている。
このような是正勧告に対して、日本経済団体連合会は「企業の労使自治や企業の国際競争力の強化を阻害しかねないような動きが顕著」と非難している[2]。
なお、日本の事業者は500万強あり、その大半が多かれ少なかれサービス残業をさせているものと考えられるが、労働基準監督官の総数はわずかに3000人程度である。
[編集] アルバイト、パートのサービス残業
時給で給与を計算するパート、アルバイトでは、サービス残業は目に見える形で発生しやすい。
チェーン店などでは「IN/OUT作業」「上がり作業」と称して、勤務予定時間終了後にゴミ捨て、掃除などの雑用が課せられることがある。これは明らかに違法な行為であり、法律上労働基準法により1分単位での労働時間の報告ができるが、作業が10分ほどであること、パート、アルバイトの労働者の立場が弱いことが多いことなどから、雇用主の言うままに規定時刻に勤務終了したかのようにしてしまうことも多い。
[編集] 対策
以下に示す以外に、労働組合の力が強い企業では、勤怠登録と入退館の手続きを別にして、退勤と退館の時刻にあまりにも差がある場合“何をやらせていたのか”と管理職に質問する事・一定時刻以前の早朝入館は事前に届け出をさせ、通知がない場合は入場を認めないなどが行われている。
[編集] 労働基準監督署への申告
労働者は労働基準監督署へ賃金不払いの申告をすることができる[3]。申告は匿名でも可能である[4]。申告があると労働基準監督官は調査を行い、使用者に賃金支払いを勧告する。賃金不払いが悪質な場合、労働基準監督署は労基法違反の疑いで検察庁へ書類送検することがある。賃金不払い残業は犯罪であり刑事罰が科せられる行為である。
[編集] 労働基準監督署への告訴
[編集] 未払賃金請求訴訟
在勤中途では報復人事を受けるおそれがあるため実行は困難であるが、退職する場合には、退職後に時効消滅した部分を除き(請求時からさかのぼって2年間に限って請求できる)、不払いの残業を企業側に一括請求する訴訟を起こすことが有効である。実際に提起し勝訴して不払い残業代を勝ち取っている事例が多い。サービス残業を強いられている場合には、日々の勤務時間を逐一メモを取る(特に本人が毎日、残業時間を日記風に記録していた場合は十分に有効)、その他証明力のある記録または証拠(給料明細、可能ならばタイムカードのコピー、業務日報等)を残しておくことが肝要である。またタイムカードや時間管理の業務日報などがなくても、まず本人の記憶、陳述に基づき労働時間のコアタイムを計算して労働時間の主張をし、他の間接的な記録があればそれで補充するという方法でも残業時間の立証は十分可能である[5]。
賃金などが支払われなかった場合、本来支払われるべき日の翌日から遅延している期間の利息に相当する遅延損害金年利6%も含めて請求ができる(商法第514条)。なお退職した労働者の場合は、遅延損害金年利14.6%を請求できる(賃金の支払の確保等に関する法律6条1項、同法律施行令1条)。また裁判上、未払賃金と同額の付加金の支払を請求することができる(労基法114条)。
[編集] ホワイトカラー・エグゼンプション
日本経団連からの要望を受けた形で、2006年6月より「一定以上の年収の人を労働時間規制から外して残業代の適用対象外にする 自律的労働制度の創設」に向けた検討が厚労省で開始された。
日本経団連の要望は、年収400万以上のホワイトカラー労働者を労働時間の管理対象外とする、という内容のものであるが、「ホワイトカラー」の定義があいまいであることもあって、労働者団体からはサービス残業を合法化するものであるという危惧が表明されている。
詳細は「ホワイトカラーエグゼンプション」を参照
[編集] 脚注
- ^ 労働基準法-第37条
使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。 - ^ 連合 厚生労働省による監督指導
- ^ 賃金不払いの相談例 労基法違反申告書の雛形
- ^ 日本労働弁護団
- ^ 『季刊・労働者の権利』2003年10月「武富士残業代請求訴訟-残業時間立証の工夫」
[編集] 関連項目
最終更新 2009年12月6日 (日) 01:35 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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