スピルオーバー

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スピルオーバー (spill-over=余剰・余波) とは、テレビラジオにおいて、行政が放送免許で設定した放送対象地域外まで、放送局が放送電波を必要以上に送出してしまうことを指す。そのため「おこぼれ」とも呼ばれている。

目次

[編集] 概説

スピルオーバーが発生するのは、放送局は放送エリア内へ滞りなく送信させる目的で、高出力の送信施設や標高の高いところに送信所をつくるため、やむを得ず圏外に電波が飛ぶ場合が生じるためである。

スピルオーバーで飛ぶ電波が多数あり、スピルオーバーの恩恵を多大に受ける地域を「電波銀座」、スピルオーバーの恩恵がわたらず、少数の地上波民放テレビ局しか視聴できない地域を「電波過疎地」と呼ぶことがある。

しかし、UHF局地上デジタル放送では、送信方向別に出力を設定できることからスピルオーバーを抑えている局がほとんどである。

一方、電離層により遠隔地まで電波が飛ぶことがあるが、夜間に恒常的に遠隔地に電波が飛ぶAMラジオと比べ、FMラジオやVHFのローチャンネルではスポラディックE層発生時の夏季に限られ、VHFのハイチャンネルやUHFでは、電離層による遠隔地への電波到達は殆どない。

衛星放送では、その性質上、本来のサービスエリアの周辺国に衛星からの電波が届いてしまうことによる政治的・文化的影響を考慮する必要があり、例えば、日本の放送衛星では極力スピルオーバーを防ぐような設計がなされている。しかし、それでも、韓国台湾など日本の周辺諸国に日本の放送衛星の電波が届いてしまうことを完全に防ぐことはできず、特に、韓国からは一時「日本の文化侵略」だとして強い拒否反応が示された(現在は沈静化している)。

[編集] ラジオのスピルオーバーの実情と課題

[編集] AMラジオ

テレビ局では原則として、後述のようなケースを除き、別の都道府県で系列局を受信することはあまりないが、AMラジオでは特定の周波数にチューニングすることで昼間でも地方局を聞くことができる地域がある。

[編集] 関東地方でも夜間良好に聞ける地方ラジオ局

[編集] 日本国内で聞ける外国ラジオ局

  • ロシア内のラジオ局
  • 韓国系ラジオ局の2局
  • 平壌放送をはじめとする北朝鮮系ラジオ局
  • 中国内のラジオ局

[編集] FMラジオ

FMラジオのスピルオーバーはテレビとほぼ同じ実情である。また、周波数が低いため、テレビ波と同一条件の場合、テレビ波よりも広いエリアをカバーする。草創期のFM大阪生駒山に送信所を設けていたが、スピルオーバー抑制のため、飯盛山に送信所を移してエリアを縮小したのは著名。

一方、radio cube FM三重FM群馬のように、別番組系統(Bライン)を設けたり、FMヨコハマα-STATIONなどのように独自編成をとったりすることで、放送対象区域外の聴取者に対応した放送局もある。

[編集] テレビ草創期のスピルオーバー

テレビ草創期は、VHF帯のテレビのチャンネルが12しかなく、しかも3ch~4ch間を除いて周波数を隣接できないため最大7までであり資源が限られた状態だったため、地形条件などから、やむをえず行政区域と相違したエリア設定となったケースも見られた(もっとも、当初のテレビ局は都道府県ごとの割り当てではなく都市圏単位での割り当てであった)。

反面、テレビ普及率もさほどではなかったため、スピルオーバーの概念も現在より希薄で、視聴者も大らかだったと思われる。

[編集] テレビ(アナログ波)のスピルオーバーの実情と課題

スピルオーバーの関係で、隣接している放送局へ配慮した番組編成にすることもある。

東名阪ネット6の6局は日本三大都市(東京都区部名古屋市大阪市)へのスピルオーバーが大きいことから、地元の府県向けの番組・CMの他、三大都市向けの番組やCMが放送されている。

サンテレビジョン兵庫県が放送対象地域だが、大阪府全域(豊能郡は除く)も放送エリアになっているため、テレビ大阪開局後の1982年以降、テレビ東京のレギュラー番組が放送されなくなった。

KBS京都京都府が対象地域だが、滋賀県や大阪府などでも視聴できるため、テレビ東京の番組に制限がかけられている(ただし、『ポケットモンスター ダイヤモンド&パール』などは放送)。 三重テレビ放送もテレビ東京系番組の時差放送が多く、テレビ東京系の報道レギュラー番組(ただし、三重県内のニュース素材はテレビ東京系に提供している)がない。

南関東独立UHF局TOKYO MXテレビ神奈川チバテレビテレビ埼玉)の各局は広い関東平野に主幹送信所があるため、隣接都県(地域によっては非隣接都県でも)で受信できる。

[編集] 埼玉県・栃木県

埼玉県北部の深谷市本庄市付近や栃木県西部の足利市付近で、群馬テレビエリア図)が広く視聴されている。これは榛名山前橋中継局(足利市は茶臼山桐生中継局)がNHK関東広域圏を放送対象地域とするキー局中継局と同じ位置にあるためである。

逆に、埼玉県内の上記地域ではテレビ埼玉の児玉中継局垂直偏波のため、前橋中継局向けの水平偏波のアンテナで全く受信できず視聴していない世帯も多い。これは児玉局の開局が前橋局よりも遅かったためである。

[編集] 静岡県

静岡県東部ではキー5局の東京親局東京タワー)が、西部の浜松市及び周辺地域では中京広域圏豊橋中継局が広く受信されている。

デジタル放送では、静岡各局の親局や中継局が同一、隣接chにあるため、多くの地域で受信困難に陥っている。特に、豊橋中継局は浜松市中心部へのスピルオーバーを防止しているため、送信所が目視できるようなロケーションでも、受信できない地域が多い(西区北区などでは受信可能)。アナログ放送終了後は本来のエリアである静岡各局しか受信できなくなる可能性が高い。

[編集] 愛知県

愛知県では三重テレビがほぼ全域で受信されている他、浜松中継局の電波を通じて静岡県のテレビも受信可能[1]。また、稲沢市一宮市愛西市(北部)及び受信状態はかんばしくないながらも、小牧市名古屋市内・西三河(中津川中継所)の一部地域ではぎふチャンを見ている家庭もある他、長野県美ヶ原からの電波で長野県のテレビや、知多半島や同県西部の一部などでは関西地方のテレビ(毎日放送ABC朝日放送関西テレビ読売テレビびわ湖放送KBS京都)が受信できることもある。

[編集] 三重県

三重県の近隣の山に電波が遮られない地域では近畿広域圏各局の生駒山大阪主幹送信所の電波が受信できる。特に、中継局受信地域で本来のエリアの局がUHFのみである場合、別途VHFアンテナを生駒山の方に向けて設置し、受信している世帯も存在する。

デジタル放送では朝熊山の伊勢中継局が大阪主幹送信所と同じchで100Wという大出力(本来ならアナログの1/10の10Wになるはずである。スピルオーバー潰しの為、このような大出力になったとしか考えられない。)で送信されているため、津市など伊勢湾沿岸地域では受信不能に陥っている。西部の伊賀市名張市の高台などでは中継局が異なったchを使用するため受信できる。

鳥羽市など志摩半島の沿岸部の一部地域では浜松中継局の電波を通じて静岡県のテレビが受信できる。

[編集] 中国・四国地方

瀬戸内海地方では県境が海であるために、沿岸においては対岸の他県放送を視聴できる。

県内に本社を置く民放テレビ局が四国放送しかない徳島県の多くの地域では近畿広域圏各局の生駒山主幹送信所または御坊中継局が受信できる。生駒山主幹局受信地域では大阪府域のテレビ大阪、御坊中継局を受信している地域では和歌山県域のテレビ和歌山も受信できる。サンテレビの摩耶山主幹送信所を受信できる地域も多い。逆に、和歌山県の紀伊水道沿岸部や兵庫県南あわじ市では四国放送が受信できる。

徳島県の県西部の三好市、三好郡、美馬郡、美馬市では岡山・香川準広域愛媛県域の放送が受信できる。

香川県東部の沿岸地域では、在阪準キー5局の生駒主幹送信所と、兵庫県域のサンテレビジョンの摩耶山主幹送信所の電波が受信できる。 本来の放送エリアの受信であればVHFアンテナは必要ないが、平野部のほぼ全ての家庭が生駒向けのVHFアンテナを上げている。また、建物影で関西広域局の受信が出来ない世帯に対しても関西波の受信が出来るよう電障対策のアンテナが上げられている。神戸UHFの受信に関してはアンテナを設置していない家庭もたまにある。TVOは前田山と混信するため、高性能アンテナが必要であり設置している家庭は少数である。

デジタル放送では、毎日放送と読売テレビは受信しやすいが、朝日放送と関西テレビと同じ物理チャンネルで前田山が電波を出しているため受信困難、テレビ大阪に至っては、岡山からも18chの電波が出ているために、さらに受信困難な状況である。上に記載の通りアナログでは当たり前のように受信されている在阪準キー4局がデジタル移行後は一部見られなくなる事から、総務省等に苦情が寄せられる事が予想される。

愛媛県では沿岸部を中心に広島県域の放送が受信できる地域があり、あいテレビ開局までの長い間、中国放送の放送でTBSの番組(『クイズダービー』など)を愛媛朝日テレビ開局までの長い間、広島ホームテレビの放送でテレビ朝日の番組を視聴していた愛媛県民が多い。この他にも、愛媛県では岡山・香川準広域や山口県大分県宮崎県高知県の放送局、TVQ九州放送が視聴可能な地域がある。逆に、大分県や宮崎県北部の豊後水道沿岸部では愛媛県の放送局が受信できる。

高知県では室戸岬以東では近畿広域圏各局の御坊中継局が受信でき、西部の宿毛市大月町では愛媛県域の南宇和中継局、宮崎県の放送が受信できる。

瀬戸内海上の島嶼部では自県放送を視聴できない地域が現在もあり、対岸からの他県電波を受信する。また、中国地方の山間部でも、地形の関係から自県放送を視聴できない地域が現在も存在し、山岳回折で飛んで来る他県電波を受信する。さらに、岡山県東部地域では自県放送が視聴可能である上で兵庫県のサンテレビが視聴可能な地域(特に、共聴アンテナで電波を受信している地区)が存在する。

岡山県香川県をエリアとするテレビせとうちは、テレビ東京系列局のない愛媛県東部や兵庫県姫路市周辺、鳥取県南部、広島県東部、徳島県北部、高知県の一部でも受信できる。

山口県の特に西部において、福岡など九州北部を中心として発信する系列外のテレビ西日本TVQ九州放送の番組が受信できる。この他にも、山口県北部では山陰地域の放送局、周防大島などでは愛媛県の放送局、岩国市では広島県の放送局が受信できる。

鳥取県東部の岩美町付近では兵庫県香美町にある香住中継局から近畿広域圏の電波を受信することができる。また、中部の琴浦町の海岸沿いの地域でも近畿広域圏の電波が受信可能である。香住中継局の近畿広域圏の電波は西部の米子市島根県東部の松江市でも受信可能である(主に、海岸沿い、山などの高台で受信可能である)。西部の米子市周辺では大山からの山岳回折電波によって岡山県のテレビ局が視聴可能な地域も存在する。逆に、兵庫県北部では山陰地域の電波が受信できる地域があり、これらの地域では兵庫県では放送されていない番組やテレビ東京系の一部の番組を視聴することができる。

[編集] 九州・沖縄地方

福岡県の各局が民放局の少ない隣県で視聴されている。佐賀県全域に久留米中継局の電波が届いている。熊本県荒尾市周辺では久留米中継局のほかに大牟田中継局の電波も届いている。大分県の周防灘沿岸地域に北九州中継局(送信所)行橋中継局の電波が届いている。

関門海峡と周防灘に面する北九州市では山口親局および下関中継局の電波が届いている他、福岡県東部には大分県の中津中継局の電波が届いている。

有明海沿岸の佐賀県や長崎県鹿児島県の一部では熊本県の各局が古くから日常的に視聴されている。

鹿児島県の東部などでは宮崎県の放送が視聴できる。

宮崎県の都城市やえびの市などでは、宮崎県に系列局がない鹿児島県の鹿児島放送(テレビ朝日系列)、鹿児島読売テレビ(日本テレビ系列)が視聴されている。

沖縄県の本島北部の一部地域では鹿児島県(鹿児島県奄美地方南部の一部地域は沖縄県)の放送が視聴できる。

[編集] 長野県

長野県のテレビ局主幹送信所は日本一標高が高い美ヶ原にあり、関東地方の一部にも電波が届いており、混信障害を起こすこともある。テレビ埼玉児玉中継局アナアナ変換で30chに変更されたため、テレビ信州と混信しやすくなり、スピルオーバーで受信している地域で良好に受信できなくなった。さらに、その後チバテレビがデジタル放送で30chを使用しているためさらに混信しやすくなった。また、埼玉本局のアナログ波も長野放送の電波と混信することがある。デジタル波も関東地方の一部に届いている。

逆に、長野県では、北佐久郡軽井沢町の一部地区で在京キー5局が、下伊那郡南西部町村などで中京広域圏のテレビ局が受信でき、同県ではかなり昔から多チャンネルの恩恵を受けている。

[編集] 福島県

福島県いわき市の一部の地域ではテレビ東京を含むキー5局の十王中継局が受信でき、さらに会津地方の一部では山形県の民放4局が、相馬市南相馬市の一部の地域では宮城県の民放4局が受信できる。また、独立UHF局のとちぎテレビは白河市周辺で受信でき、チバテレビはノイズが出るもののいわき市の一部の地域で受信ができる場合がある(テレビ東京デジタル放送十王局46ch放送休止時のみ)。逆に、茨城県北部や宮城県白石市の一部、山形県南部の一部では福島県の放送局が受信できる。

棚倉町では東京キー5局の東京タワー波が受信できるため、VHFアンテナを東京に向けている世帯が多い。

[編集] 秋田県

由利本荘市ではテレビユー山形が受信でき、大館市では青森テレビが受信できる。

[編集] 青森県

青森県の八戸市三沢市などの三八上北地方の広い範囲、さらにはここから約100kmほど離れたむつ市では岩手県域各局の二戸中継局の電波が受信できる。これは送信所が青森県境から約5kmと近く、標高が852mもある折爪岳に設置されて、出力も大きく、なおかつ無指向性で送信されているためである。特に、青森県にフジテレビ系列局がないため、その系列局である岩手めんこいテレビはこの地域で広く視聴されている。

大間町風間浦村の全域、佐井村のほぼ全域、東通村の一部では、北海道各局の函館中継局(送信所)が受信できる。青森市弘前市などでも受信できる場合があるが、UHF波では指向性がかけられているため、標高の高い場所以外では受信が困難な場合が多い。

青森県北津軽郡中泊町小泊地区、東津軽郡外ヶ浜町三厩地区、在青テレビ局が全部見られる東津軽郡今別町でも北海道各局の福島中継局が比較的良好に受信できる。また、鰺ヶ沢町から深浦町北部にかけての日本海沿岸部や弘前市などでも福島中継局を通じて北海道の民放テレビ局を受信している視聴者も存在する。

[編集] 北海道

渡島地方南部の函館市北斗市木古内町福島町など津軽海峡沿いに面する一部地域で青森親局(VHFは鷹森山。UHF・デジタルテレビは馬ノ神山)、今別中継局大間中継局などの電波が高性能アンテナにより受信できる場合がある。

[編集] 地上波デジタルテレビにおけるスピルオーバー潰しと課題

地上デジタル放送ではスピルオーバーへの技術的制御(スピルオーバー潰し)が容易となる。しかし、以下の課題で今後の対応(周波数リパッキング、地理的ホワイトスペース)が注目される。

  • スピルオーバー状態で視聴する現行放送視聴者を如何に納得させるか。
  • スピルオーバー潰しを徹底すると中継局数が増えることがあるので、放送局にとって中継局置局費用がかさむことになる。一方、スピルオーバーを大目に認めると、中継局数は少なくて済むため、中継局置局費用を抑えられる。そのため、費用の面で各放送局の経営事情と絡むことになる。
  • 瀬戸内海地方、特に、その島嶼部においてはスピルオーバーによる受信以外できない地域が存在している。スピルオーバー潰しが行われると、その地域では地上波のテレビ放送が一切受信できなくなるただ、これについては「いままで他県のおこぼれに預かって甘い汁を吸い続けてきたのだから当然だ」という冷ややかな意見もある。[要出典]

[編集] 脚注

  1. ^ 本来、浜松中継局の電波は愛知県等西方向へは指向性を抑えられているが、その割には愛知県内や三重県鳥羽市でも受信できるという報告もある。特に、静岡第一テレビでは地上デジタル放送の物理チャンネルが25chを使用しているせいか、愛知県東部での受信が比較的しやすい (尾張西三河はTVAアナログ波と重なる為受信は不可能)。

[編集] 関連項目

最終更新 2009年11月25日 (水) 02:19 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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