スピーカー
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スピーカー(Speaker)は電気信号を物理振動に変えて、音楽や音声などの音を生み出す機械である。ラウドスピーカー(Loudspeaker)とも呼ばれる。
目次 |
[編集] 概説
電気によって音を出す機器には、スピーカー以外にチャイムやブザーやベルなども含まれるが、これらは電気を動力源に用いて特定の大きな音を発生させることを目的としており、物体の共鳴を利用して固有の音を発生させている。それに対してスピーカーは、音声として発せられた空気の振動を忠実に拾うマイクロホンなどで変換した電気信号の波を、再び元の音の波となる空気の振動へ戻すことを目的としている。したがって、入力された電気信号の波形を忠実に音の波形へ変換することが目的となるため、生成される音に共鳴や雑音などによる固有の音ができるだけ加わらないように作られている。
スピーカーは、肉声や音楽をその場で大音響にして遠くまで伝えるための拡声器(メガホン)、電波で受信された音声電気信号を音に変える携帯電話機やラジオ・テレビ受信機、そして、音楽などをより原音に忠実な良い音で再生するための高級オーディオ機器など、様々な音響製品に組み込まれ、それぞれの目的やグレードに適応したピンからキリの素材価格を有する多くの形式がある。
[編集] ダイナミック型スピーカーの基本構造
ラジオやステレオなど一般的な音響機器に組み込まれているスピーカーのほとんどが、この方式を採用している。1924年にチェスターW.ライスとエドワードW.ケロッグによって発明されてから現在まで、その基本構造が変わっていないのは、この方式の原理が簡単忠実、無駄の少ないシンプルな構造で極めて優れていることに他ならない。
ダイナミックスピーカーの磁気回路には一般的に永久磁石が用いられ、鉄製のヨークを介してスピーカーの軸方向に円筒形の溝となる磁気ギャップ(磁場で満たされたすき間)が空いている。そこに細い導線を円筒状の空芯ボビンに巻いたボイスコイルが挿入されており、導線に音声電流が流れるとフレミング左手の法則により、ボイスコイルに前後方向の力が発生し、ボビンが前後に振動する。ボイスコイルのボビンに取り付けられた振動板が前後に振動すると、音声信号に等しい波形の音が空気中に放射される。
磁気回路はフレームと呼ばれるスピーカユニット全体を支える部品に取り付けられており、ボイスコイルのボビンはダンパーを介してフレームに接合され、振動板の外周は「エッジ」と呼ばれる柔らかな構造の支持材でフレームに接合されている。ダンパーとエッジは振動板をフレームに柔軟に固定するサスペンション(懸架装置)の役割を持つが、前後方向の動きを妨げないような構造になっており、ダンパーは振動板の慣性質量による余計な動きを抑える役割もしている。なお、ダンパーやエッジが省略されたものもある。
磁気回路に使われる永久磁石には耐久性と強力な磁束密度を持つことが求められ、コスト・性能バランスが良いフェライト磁石が一般的であるが、高価となるが交流磁気抵抗が少なく音質に有利とされるアルニコ磁石や、小片でも極端に磁力の大きいサマリウムコバルト磁石、ネオジウム磁石などがある。
なお、ダイナミックスピーカーはリニアモーターの一種である。
[編集] 振動板の構造
一般的な使いみちのスピーカーから発せられる音の理想は、原音に忠実で歪みがなく、点音源となり四方八方に同一音圧、音質の音波が放射されることとされる。これらを実現するために振動板の形状や大きさ、取り付け方法が工夫されている。音の指向特性の優劣は、特にステレオ(立体音)再生時には重要な要素となる。
振動板の形状には、最もポピュラーな円錐状をしたコーン型や半球状のドーム型、特殊なものとして平面型やリボン型などがある。音の放射を力学的に均等とするため、正面から見て真円形のものが殆んどであるが、取付勝手や固有共振を逃がす目的で楕円形や、四角形のものもある。また、ボイスコイルの駆動点を中心位置から意図的にオフセットした「オブリコーンスピーカー」もある。
なお、振動板から放射される音をラッパ形状のホーンで音響インピーダンスを整合させたホーン型スピーカーは、指向性をコントロールでき能率に優れているため、コンサート用の大音響スピーカーや、高級オーディオ装置などに多く利用されている。
ダブルコーンスピーカーは、大きなコーン紙の中央に小さいコーン紙を取り付けたもので、大きなコーン紙が中低音域、小さいコーン紙が高音帯域を別々に受け持つことで広い帯域の再生を可能にしている。
[編集] 振動板の材質
振動板の材質には、音響変換効率を上げ、経年劣化が少なく変形を防ぎ堅牢にする目的で、軽量でかつ機械的な強度が大きい(=高ヤング率)のものが求められる。分割振動や共鳴による固有振動を防ぐ目的で、内部損失が大きいものが求められる。普通、これらの要件は物性として背反するため、両方の条件を高い次元で満たす材料を求めるのは容易でない。
従来より振動板に最も多く利用されているのは紙で、適度な内部損失があり、比較的丈夫で軽量なため、廉価のものから超高級スピーカーまで幅広く使われている。この他に、パルプに種々の材料を混漉した紙、ポリエステル,絹,アラミド,炭素繊維などの繊維を編んだもの、特殊加工した木板、発泡スチロール,ポリプロピレンなどの高分子素材などがある。
ソフト系の振動板は、物体内部の音の伝搬速度が遅いため、より高い周波数の再生には不利がある。そのため近年では、高音用スピーカーに音の伝搬速度が速いハード系のアルミニウム,チタン,ボロン(ホウ素),ベリリウム,マグネシウムなどの金属や気相合成ダイヤモンド,カーボングラファイトなどの特殊人造の材料が多く使用されている。一般的に金属系振動板は薄く軽量化でき、質量を抑えてヤング率が高い反面、内部損失が小さいので共振周波数を持ちやすく、それらを可聴外に追いやることで共鳴が音色に与える影響を防ぐよう、主に高音域のスピーカーに利用されている。
[編集] 誤解
一般的なコーンスピーカはグラム単位の質量を有するコーン紙を動かすために、%オーダーの極めて大きな歪を発生するなどといわれるが、これは誤解である。ほとんどの歪みの原因は非線形部品によるものであり、主なものをあげれば、ダンパーやエッジは非線形なバネであり、設計が悪い磁気回路も非線形歪みを発生させる。なお、これらの非線形効果が顕著になるのは振幅が大きい低音域のときであり、すなわちコーンスピーカーの歪みは低音域で、かつ低音になるほど大きくなる。質量自体は非線形の要素がないので歪みとは直接関係しないが、能率を低下させるのと、振動板が停止する際の慣性質量による逆起電力(制動力)発生の原因にはなる。
[編集] 高音質への工夫
スピーカーの音質は「原音に忠実であること」「音楽再生において芸術性を持つこと」「人の感性に心地よいこと」などの要件が求められ良否として評価されるが、それらを決定づける要素として「周波数特性」「歪率」「過渡特性」「指向特性」などがあり、性能・音質の良し悪しとして問題になる。
「周波数特性」は、人間が可聴可能な周波数範囲の音程を全域再生でき、全域乱れなく一定のフラットな音圧が得られることが求められる。
「歪率」は、スピーカーに入力された音声信号の波形に相似する音声波が正確に出力され、特有の余分な音が加わらないことが求められる。
「過渡特性」は、スピーカーに入力された音声信号の位相に等しい音声波が正確に出力され、複合された音に時間的ズレを生じないことが求められる。
「指向特性」は、スピーカーを設置した位置から、点音源として全方向に均等な音圧が得られることが求められる。
これら要件を満たす工夫がされているスピーカーを「HiFiスピーカー」と呼んでいる。
[編集] エンクロージャー
スピーカーの振動板が振動するとき、その前面と裏面から出た音は逆位相になっている。このため、もし振動板の裏面から出た音が前面に回り込むと、音を打ち消し合ってしまう。音が回り込む回折効果は低音になるほど大きいので、低音を再生するためには振動板の裏面からでる音を遮断する必要がある。このためには、エンクロージャーと呼ばれる中空の丈夫な箱に、スピーカーを取り付けるのが最もポピュラーな方法である。なお平面バッフル式という、平板に孔を開けてそこにスピーカーを取り付けたものもあるが、十分な低音を再生させようとすると巨大になる欠点がある。
エンクロージャーは、スピーカーユニットの振動による反力および音圧によって振動を起こす。また、内部容積により音の反射が生じ定在波(特有の周波数に対する癖)が起きる。これらを抑えるため強固なつくりが求められ、内部には、補強材や隔壁、吸音材などが施されている。従って、エンクロージャーの作り方によってスピーカーシステム全体の音の響きが決定づけられ、それぞれが製品の個性となって現れる。
エンクロージャーの方式には「密閉型」と「位相反転型(バスレフ型)」とがある。 前者は箱の作り方を気密式にして内部を密封し、あたかも無限大のバッフルに等しく、振動板背面から発せられる音の影響を遮蔽する方式で、キャビティー(内部容積)を利用してエアサスペンション効果を狙い、癖の少ない素直な音質が得られる。反面、振動板が背圧の影響を受けるので発音の能率が悪くなる。 後者は、箱の前面や底面に筒状の貫通穴を設け、振動板背面から発せられる音の位相を反転させ、これを利用することにより見かけの音圧を増加させる方式で、特に低音域の音量を豊かにした音質が得られる。反面、極超低音再生には不利で、うまく設計しないと癖や風切り音が出やすい欠点がある。
[編集] スピーカーユニット
理想的には、ひとつのスピーカーユニットで人間の可聴域(およそ20~20kHz)全体の音域を余すことなく再生できれば良いが、現実には製作が難しい。しかし、特定範囲の周波数だけなら発音可能な、特性の優れたスピーカーが設計可能なため、音程の各帯域に応じてパートごとのスピーカーユニットが開発されている。
これら単体をスピーカーユニットと呼び、普通は単体で使われない。一般に低音域用になるほど振動板の面積は大きくなり、コーン型が多くなる。また、高音域用になるほどドーム型やホーン型、かつ振動板は金属系素材が多くなり、振動板の発音のしくみが異なるリボン型スピーカーなども使われる。
[編集] スピーカーシステム
スピーカーユニットをエンクロージャーに組み込んだものはスピーカーシステム(または単にスピーカー)と呼ばれ、これで初めて音楽などをそれらしく聴けるようになる。
複数のスピーカーユニットで構成されたスピーカーをマルチウェイスピーカーシステムと称するが、帯域を2つに分割したものを2ウェイ(ツーウェイ)と呼び、中低域をウーファーが、高域をツイーターが受け持つ。帯域を3つに分割したものを3ウェイ(スリーウェイ)と呼び、低域をウーファーが、中域をスコーカーが、高域をツイーターが受け持つ。
こうした分割は理屈の上では4ウェイ、5ウェイと、それ以上も可能となるが、各帯域の音程が重複するクロスオーバー周波数が多く存在することとなり、やみくもに増やすのは音質上得策ではない。また、同時にスピーカーユニットに入力する電気信号の周波数を、各帯域に合わせてそれぞれ分割する機能が必要になる。このしくみはコンデンサー、コイル、抵抗などを組み合わせたフィルター回路で構成され、デバイディング・ネットワーク(または単にネットワーク)と呼ばれている。デバイディング・ネットワークは、エンクロージャーとともに設計が正しく行われないと、信号の位相を狂わせ歪みを増加させる要素となり、スピーカーユニット間の音色の不一致や、音像がぼやけるなどの問題が生じるため、設計・製作の際には測定と試聴をくり返して問題をクリアしている。
フルレンジのユニットのみを組み込んだものはフルレンジスピーカーと呼ばれ、デバイディング・ネットワークを必要としないので構造が単純になる。フルレンジスピーカーは、ボーカルなどの中音域の再生音が素直であり、位相特性に乱れがないことから、廉価な製品だけでなく中級クラスのスピーカーシステムにも用いられる。
2ウェイ以上のマルチウェイスピーカーでは、周波数帯域ごとに発音体の取付位置が上下左右・前後にずれ位相が乱れるため、単一楽器の音を聴いた場合、音像が不自然となり定位がぼやけるという意見がある。このため同軸型(コアキシャル)と呼ばれる、再生周波数域の異なる2組のスピーカーユニットを同一軸線上に包含して並べたものや、仮想同軸型と呼ばれるツイーターを中心にして上下対称にウーファー等を配置したスピーカーシステムが開発されている。
[編集] 技術
[編集] 指向性
音波を含めて波の物理的な性質として、波源である振動板の大きさと発生する波の波長との比で指向性が決まる。波長の数十倍程度の長さを持つ大きな振動板であれば低い周波数でも指向性が鋭くなるが、仮に少し高めの周波数である1,000ヘルツの音に指向性を持たせる場合でも、波長は34cmであるため、差し渡し数m以上の直径の振動板が必要となり、これだけの大きさを1,000ヘルツで歪み無く駆動することも含めれば非現実なものとなる。
音のエネルギーを特定の方向に絞るために、円錐形のホーンと呼ばれる先が広がった管を使ったホーン・スピーカーが学校教育現場の手持ち式のトランペット・マイクや交通機関の案内放送、街頭宣伝車に 使われている。
周波数が高ければ指向性が増すため、超音波を小さな振動部から指向性の強いビーム状で送り出し、音の歪みを利用して可聴音として人間が聞き取れるようにしたパラメトリック・スピーカーというものもある。[1]
[編集] 分類
[編集] 変換方式による分類
- ダイナミック型
- マグネティック型
- コンデンサ型(静電型)
- 圧電型
- リボン型
- 放電型
- イオン型
[編集] 振動板の形状による分類
- コーン型
- ドーム型
- 平面型
- ベンディングウェーブ型
- ウォルシュユニット
- マンガーユニット
- ハイルドライバー
- リニアムドライバー
[編集] 振動の放射方式による分類
- 密閉型
- 平面バッフル/後面開口型(ダイポール型)
- バスレフ型
- ダブルバスレフ型
- ダンプドバスレフ型
- ASW型(ケルトン方式/チューニングダクト方式)
- トランスミッションライン
- アイソバリック型
- ホーン型
- 共鳴管方式
- TQWT
- IR方式
- ドローンコーン型
[編集] 再生帯域による分類
- 1ウェイ(フルレンジ) - 低音から高音まで単一のスピーカーユニットで再生するもの。
- マルチウェイ - 帯域分割し、それぞれ別のスピーカーユニットで再生するもの。
- 2ウェイ - ウーファー + ツイーター
- 3ウェイ - ウーファー + スコーカー + ツイーター
- 4ウェイ - ウーファー + スコーカー + ツイーター + スーパーツイーター またはウーファー + ミッドバス + スコーカー + ツイーターなど
- 5ウエイ(以上)
- ※以上の構成に、超低音再生のため、サブウーファーを追加することもある。
[編集] スピーカーユニット
- フルレンジ - 低音域から高音域まで全帯域用
- スーパートウィーター(スーパーツイーター) - 超高音域(25kHz~100kHz)。
100000Hz(100kHz)程度の人間が聞こえない周波数まで再生できるものもある。
- トウィーター(ツイーター) - 高音域(5kHz~24kHz)
- ミッドハイ - 中高音域
- スコーカー(ミッドレンジ) - 中音域(500Hz~5kHz)
- ミッドバス - 中低音域
- ウーファー - 低音域(100Hz~5kHz)
- サブウーファー(スーパーウーファー) - 超低音専門(約100Hz以下)
(上述の通り、メインのスピーカーと別で追加される場合もある)。
[編集] 形状・サイズによる分類
[編集] 用途による分類
- 家庭用(オーディオ用)
- PA/SR/拡声用
- 楽器用
- 水中用
- 組み込み用(携帯電話など)
- 軍用(音響兵器他)
- その他 特殊用途
[編集] その他
- スピーカーはエレクトロニクス関係の業界用語では「ラッパ」と呼ばれることがある。なお、1950年代までの古いラジオ関連の技術文献では「高声器」(こうせいき)という標記がされている。
- 実用レベルではないものの、スピーカーをマイクロフォンとして使うこともできる。
- 人間の耳で聴き採りが可能な音の周波数は、年齢等で個人差はあるが単音で測定すると20~20000ヘルツである。しかしスピーカーから音楽等の複合音を再生する場合、可聴外と言われる超低音や超高音の有無が、音の自然さの再現に影響をもたらしていることが実験的に判っている。特に音の倍音成分の再現が重要で、近年では、20000ヘルツを超える音の再生を可能とするスピーカーが一般的になっている。また、音楽記録媒体でも従来よりダイナミックレンジを拡大し、さらに超音域の再生が可能な「SACD」や「DVD-Audio」が登場し市販されている。
[編集] 構成部品
システムの構成は駆動部、振動版、筐体、ネットワークと呼ばれるローパス/ミドルパス/ハイパス・フィルター、入力接続部、(防振材、電気的な補正保護回路、固定具又は脚部)よりなる。
[編集] 出典
- ^ ブルーバックス 「音のなんでも小事典」日本音響学会編 ISBN4-06-257150-1
[編集] 関連項目
- 消音スピーカー
- サラウンド
- 音響機器
- オーディオ
- マイクロホン
- ヘッドフォン
- イヤホン
- AMステレオ放送
- クロスオーバーネットワーク/フレケンシーディバイダ
- プロセッサ
- 寺垣スピーカー
- タイムドメイン・スピーカー
- 波動スピーカー
- ドンシャリ
- スイートスポット(リスニングポイント)
- 仮想スピーカー
- アクティブスピーカー
- 無指向性(ダイポール)スピーカー
- パラメトリック・スピーカー
- バイワイヤリング
- 定位感
[編集] 外部リンク
- ADAM (英語)
- ALTEC Lansing (英語)
- ATC (英語)
- BOSE (英語)
- Dynaudio Acoustics (英語)
- GENELEC (英語)
- JBL (英語)
- Kinoshita Monitor REY AUDIO (英語)
- KRK (英語)
- Martin Audio (英語)
- Meyer Sound Laboratories (英語)
- QUESTED (英語)
- TANNOY (英語)
- Turbosound (英語)
- Westlake Audio (英語)
- YAMAHA (英語)
最終更新 2009年12月6日 (日) 05:23 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
【スピーカー】変更履歴




