スーパーコンピュータ
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スーパーコンピュータ(Supercomputer、略称:スパコン)とは、内部の演算処理速度がその時代の一般的なコンピュータより極めて高速な計算機(コンピュータ)のこと。HPCサーバ(High Performance Computing Server)とも呼ばれる。
膨大な計算処理が目的であり、それを実現するための大規模なハードウェアやソフトウェアを備える。有限要素法や境界要素法などに基づく構造解析、気象予測、分子動力学、シミュレーション天文学、最適化問題、金融工学のような大規模数値解析に基づくシミュレーションに利用される。計算機による大規模シミュレーションを前提とした科学は特に計算科学と呼ばれ、スーパーコンピュータの設計に大きい影響を与えている。 そのような計算科学の成果を元に、工業製品の設計や評価を行うCAEの分野でも広く利用されている。
目次 |
[編集] 定義
スーパーコンピュータの定義は時代によって大きく変化するが、一般的にはその時代の最新技術が投入された最高性能の計算機を指す。現時点では一般的に使用されるサーバ機よりも浮動小数点演算が1,000倍以上速いコンピュータを「スーパーコンピュータ」と呼ぶことが多い。
日本の文部科学省の科学技術・学術審議会では2005年現在、1.5TFLOPS以上の演算性能を持つコンピュータを政府調達における「スーパーコンピュータ」と位置付けている[1]。
[編集] 構成要素
スーパーコンピュータといえども、プロセッサ、メモリ、ストレージ、ネットワーク等のハードウェアと、その上で動くオペレーティングシステムやアプリケーションなどのソフトウェアから構成される点では一般的なコンピュータと同じである。しかし、それら各要素には高性能計算を実現するためにさまざまな新技術が投入されている。その新技術の中には後に一般的なコンピュータに導入されたものも多数ある。なおスーパーコンピュータのユーザは、本体とは別に用意された端末や、SSH・telnet経由で操作を行う。
[編集] プロセッサ
スーパーコンピュータに搭載されるプロセッサの役割も、普通のコンピュータ同様に計算処理を行うことである。
一般的なコンピュータとスーパーコンピュータの大きな違いは、処理を並列に実行する点にある。通常の単純なプロセッサは、一命令あたり一つの演算だけを行うスカラープロセッサで、一般的なパーソナルコンピュータ (PC) に搭載されるプロセッサ数も1つかごく少数である。スーパーコンピュータでは、1クロックで複数の演算を一度に行うベクトル演算などを備えたプロセッサの採用や、システムの中に数十個から数十万のプロセッサを搭載し計算を同時に実行することで高いスループットを実現する構造となっている。
ベクトル演算が1970年代に実装された後も、1980年代には並列処理、パイプライン処理、投機的実行、対称型マルチプロセッシング、1990年代にはVLIW、SIMDなどがスーパーコンピュータに導入され、並列度の向上を実現した。
スーパーコンピュータで新たに採用された技術の多くは、その後サーバやPCにフィードバックされ、その性能向上に寄与した。またその逆に、それまでPC向けであったx86プロセッサが21世紀に入ってから、価格性能比の向上と超並列技術の向上により、スーパーコンピュータに広く採用されるようになった。
[編集] 採用プロセッサの変化
1980年代から90年代までは、高性能計算に特化した専用のベクトルプロセッサを各スーパーコンピュータメーカーが独自に開発し、システムに採用していた。
1990年代前半から、i860、Alpha、POWER、MIPS、SPARC、IA-64などのワークステーションやサーバ向けの汎用プロセッサが徐々にスーパーコンピュータにも導入され始め、90年代後半では一部のハイエンドなものを除いて汎用プロセッサベースのシステムが主流となった。そのようなシステムはコンピュータ・クラスターとも呼ばれ、プロセッサを多数搭載することで高いスループットを狙っている。
さらに、21世紀からのx86プロセッサの価格性能比の向上に合わせ、IntelやAMDのCPUを採用するメーカーが増加している。x86の流れをくむx86-64アーキテクチャを含めると2008年11月に発表された第32回TOP500ランキングでは500台中438台がx86プロセッサを採用しており[2]、PowerPCを含むPOWERベースのシステムと共に市場を二分しつつある。
汎用プロセッサが主流となった90年代後半以降になっても、特に高性能なシステムではベクトルプロセッサによるものが多かったが、それも21世紀に入り変化した。2002年に運用が開始され以降2年半に渡ってTOP500の首位を占めた地球シミュレータのような例外はあるものの、ハイエンドな分野でも置き換えが進行し、2008年11月のランキングにおけるベクトル計算機は500台のうち1台のみ[3]となっている。
[編集] 特定用途向けプロセッサの活用
特定の計算を支援するコプロセッサや本来画像処理のために開発されたGraphics Processing Unit (GPU) を汎用的な計算に利用するGPGPU (General Purpose GPU) など、ある用途に特化したプロセッサをスーパーコンピュータに活用する動きがある。汎用プロセッサに比べ、価格性能比が非常に高くまた消費電力が小さいという利点によって、特に2005年以降動きが活発になってきている。
GRAPEプロジェクトでは、1989年から多体問題に特化したプロセッサを製作し、天文学や分子動力学シミュレーションにおいて非常に価格性能比の良い専用計算機を開発している。 東京工業大学のTSUBAMEにはOpteronによる約1万個のCPUコアの他に、ClearSpeed[4]による高性能計算専用アクセラレータCSX600が搭載されている。2005年11月のランキングでCSX600を利用することで、6月に発表されたCPUのみの結果に比べ約10TFLOPS性能が向上した[5]。 また、高性能GPUを手がけるAMD、NVIDIAは両社とも2007年に汎用計算を念頭に置いたGPUベースのアクセラレータを発表している[6][7]。
「ストリーム・プロセッシング」も参照
また、このGRAPEの流れを受け、経済指標予測・リスク計量などの膨大なシミュレートと計算が必要である経済予測分野において、多くの経済研究機関・シンクタンクに向け、アメリカや台湾の複数のベンチャー企業がGPGPUベースの高速予測システムを提供しつつあり、経済分野での貢献も始まっている。
[編集] インターコネクト
スーパーコンピュータはノードと呼ばれる計算機の集合によって構成され、その計算機はコンピュータネットワークによって接続される。そのコンピュータネットワークのことを特にインターコネクトと呼ぶ。超並列マシンでは、ユーザの実行させたい処理を各ノードに分割して実行し、MPI等のAPIを使ったノード間通信で同期や計算結果の集約などを行う。そのため、高い性能を得るには広帯域かつ低遅延なインターコネクトが必要とされる。
[編集] インタフェース
旧来のスーパーコンピュータの多くでは独自のインターコネクト方式を採用しており、2007年現在でもCrayはRapidArray[8]と呼ばれる独自方式を自社のシステムに採用している。コンピュータ・クラスターでは、イーサネットやInfiniBand、Myrinetなど、最大数十Gbps程度の帯域を持つインターコネクトが利用されている。
研究レベルにおける通信速度は2005年11月にIBMの研究所による14GB/chが最高速であったが、2006年3月現在、NECおよび理化学研究所による次世代HPC構想の研究にて25GB/chが記録されている[9]。
[編集] ネットワークトポロジ
スーパーコンピュータにおけるインターコネクトでは、そのトポロジも性能に大きい影響を与える。よく用いられるネットワークトポロジとして、メッシュ、クロスバ、トーラスなどがある。構築にかかるコストやアプリケーションの性質によって、システムに適切なネットワークトポロジは大きく異なる。
[編集] 基盤ソフトウェア
[編集] オペレーティングシステム
1970年代前半のCrayによるスーパーコンピュータ黎明期から、オペレーティングシステムにはUNIXおよびUnix系が広く使用されている。この理由には、当初はライセンスフリーなオープンソース的なOSであったこと、主にC言語で書かれており機種間の移植が容易なこと、大学や研究所で広く使われており科学技術計算用のライブラリやツールが充実していること、などが挙げられる。
2000年頃よりUnix系であるLinuxの比率が急増し、2009年現在では約9割である。
なお、x86プロセッサの急激な価格性能比の向上を踏まえ、マイクロソフトはWindows Serverをベースとしたスーパーコンピュータ向けOSWindows Compute Cluster Server(Windows CCS)を2006年6月にリリースした。採用例には東京工業大学があるが、全体では依然としてUNIXおよびUnix系が大多数である。
[編集] プロセス・スケジューリング
通常のUNIXにおけるラウンドロビン方式だけでなく、優先度の高い計算処理にCPU資源を強制的に割り当てるギャングスケジューリング方式もサポートしたものが多い。
[編集] ソフトウェア開発環境
スーパーコンピュータの性能を引き出すためには、それらハードウェアの特性に合わせたアプリケーションを開発する必要がある。スーパーコンピュータ向けアプリケーション開発で利用される技術・手法を以下に示す。
[編集] プログラミング言語
科学技術計算分野ではFortranが古くから使われ、コンパイラ最適化技術が成熟していることやアプリケーション・数値演算ライブラリなどのソフトウェア資産の蓄積が大きいことから2008年現在でも利用される。実行効率と開発効率の面から、C言語およびC++もよく用いられる。
開発効率の改善とハードウェアの並列度向上に対応するため、新たなプログラミング言語が提案されている。サン・マイクロシステムズは、2007年1月に科学技術計算向けプログラミング言語Fortressを発表し、オープンソースとして公開している[11]。
[編集] 並列化API、フレームワーク
高い性能を求められるスーパーコンピュータ向けアプリケーションでは、ベクトルプロセッサのベクトル演算命令やSIMDなどの並列演算命令を活用し、並列度を高めることで性能向上を図っている。具体的な手法として、最適化コンパイラが並列実行可能な箇所を発見し自動並列化を行うベクトル化や、プロセッサの並列演算命令をプログラミング言語の拡張機能やアセンブラを使い、プログラム内で明示的に呼び出す方法などがある。
2008年現在主流であるコンピュータ・クラスター型のスーパーコンピュータでは、MPIを用いて、プログラマがプロセス間の通信や同期をプログラムに記述することで大規模な並列計算を行う方法が一般的である。スーパーコンピュータ向けベンチマークLINPACKの一実装であるHPL[12]や、遺伝子の相同性検索を行うBLASTなど多くの科学技術計算アプリケーションでは、MPIを用いた並列化に対応している。
[編集] グリッド・コンピューティング
分散コンピューティングの発展系として、遠隔地のスーパーコンピュータを含めたネットワーク上の多数のコンピュータを統一的に利用する手段として、グリッドコンピューティングの技術開発が世界的に進められており、日本でもNAREGIが国家プロジェクトとして採択を受け、研究と構築が行われている。また、国内の学校を含む、研究・教育機関に教育用に導入されているPCにグリッド基盤パッケージを導入し、現時点では利用されていないCPU資産をグリッドコンピュータの一部として活用する計画への参加を呼びかけている。グリッドコンピューティングの走りとして世界中のPCが参加しているSETIやグリッドによる分散処理に向いた研究素材を集めて、共通のグリッド基盤で処理を進めるBOINCといったプロジェクトが軌道に乗っており、世界各国のプロジェクトが相乗りして成果を挙げている。
[編集] 歴史
詳細は「スーパーコンピュータ産業史」、「スーパーコンピュータ技術史」をそれぞれ参照
歴史的には、その時点で最高速のコンピュータ、特に科学技術計算で必要な浮動少数点演算が重視されたコンピュータが、「スーパーコンピュータ」と呼ばれ、主に軍事用に使われる事が多かった。1960年代にはCDC、1970年代にはクレイが、ベクトル演算を中心としたスーパーコンピュータでシェアを伸ばし、また各種シミュレーションなどで民間の需要も拡大した。1980年代にはNECなどの国産メーカーが海外にも進出し、1990年代には日米スパコン貿易摩擦に発展した。しかし1990年代後半からは従来のベクトル演算ではなく、安価なx86やPOWERなどの汎用プロセッサを大量に使用したスカラー型の性能が向上し、TOP500でもIBMやSunなどが上位を占めるようになった。
現時点でのスーパーコンピュータベンダは、日本の3社(NEC/日立/富士通)とアメリカのIBM/HP/SGI/Cray/SUN及び、それらの派生品を扱う欧州ベンダである Bullと、市場規模に対して数が多い過当競争の時代に突入している。なおSGIは2006年5月に連邦倒産法第11章の適用を申請し受理された。その後、財務面での整理が行われ、2006年11月に第11章適用対象から外れ、再生を果たした。
日本のベンダに関しては、作成するスーパーコンピュータの台数は少ないが、50位以内の台数で見ると必ず自社での検証機とNLS用スーパーコンピュータが登場している。
[編集] 主なスーパーコンピュータ
[編集] 世界
[編集] TOP500
詳細は「TOP500」を参照
世界で最も高速なコンピュータシステム(すなわちスーパーコンピュータ)のランク付けは、TOP500プロジェクトが有名であり、広く参照されている。
[編集] TOP500内のベンダ単位占有比較
| ベンダ名 | 台数 | 占有率 | 100位以内の台数 |
|---|---|---|---|
| IBM | 233 | 46.6% | 71 |
| HP | 218 | 43.6% | 8 |
| SUN | 2 | 0.2% | 0 |
| SGI | 13 | 2.6% | 6 |
| 日立 | 5 | 1% | 1 |
| NEC | 6 | 1.1% | 2 |
| 富士通 | 5 | 1% | 4 |
| クレイ | 15 | 3% | 7 |
| インテル | 3 | 0.6% | 1 |
[編集] TOP100内の国産ベンダの台数の変遷
| ベンダ名 | 2005年06月 | 2005年11月 | 2006年06月 | 2006年11月 |
|---|---|---|---|---|
| 富士通 | 4台(全て国内のみ) | 4台(全て国内のみ) | 3台(全て国内のみ) | 2台(全て国内のみ) |
| 日立 | 0台 | 1台(全て国内のみ) | 3台(全て国内のみ) | 2台(全て国内のみ) |
| NEC | 2台(日本1台、ドイツ1台) | 2台(日本1台、ドイツ1台) | 3台(日本2台、ドイツ1台) | 2台(日本1台、ドイツ1台) |
| 日本設置台数 | 9台 | 10台 | 15台(日立と富士通の共同構築1台) | 8台(日立/富士通、NEC・SUNの共同構築それぞれ1台) |
[編集] TOP500の比較基準について
TOP500で使用されているベンチマーク基準のLINPACKは1970年代前半に確立されたもので、現在のスーパーコンピュータの性能を比較するために必ずしも適切ではないという議論があり、基準ベンチマークとしての見直し論議や、HPC Challenge Benchmarkという新しいベンチマークの提案などが行われている。しかし、同じ基準で過去から現在までの幅広いスーパーコンピュータシステムを比較するには便利であるため、TOP500は現在でも広く参照されている。
そもそも各コンピュータシステム(特にスーパーコンピュータと呼ばれるシステム)は、その目的とする業務や演算に特化して設計・構築されており、本来はその実稼働時の性能を基準とすべきである。一つのベンチマーク値でそのシステムの実効性能を表現する事は不可能であり、あくまで相対的な目安である。例えばスカラタイプとベクトルタイプでは計算する際のデータ投入性能が格段に差があると言われている。
例えば、汎用CPUにより構成されるスカラータイプのスーパーコンピュータは、そのままの形態で使用すると気象予測において広域予報や長期予報などを行う際、データの連続処理におけるデータ供給能力に限界があり、実効性能が極端に落ちる事が知られている。このため、データの供給方法にハードウェア的/ソフトウェア的に工夫を施し、多量のデータを連続投入できる環境を作り、少しでもベクトルチップの実効性能に近づける努力をしているものが多い。一方、ベクトルチップを採用したNECの地球シミュレータを代表とするベクトルタイプのスーパーコンピュータは、スカラータイプより高い実効性能を維持する特性がある。この方式による性能格差の主張には、既存の巨艦型ベクトル型スーパーコンピュータを使用していた研究者において、ベクトル処理を基本とした既存の処理方法からスカラ処理を基本とした現用の分散処理方法への移行教育や対応が遅れているという指摘もある。
通常スーパーコンピュータのアプリケーションは、そのシステムに最適化して設計・開発されるため、例えばベクトル型に最適化したアプリケーションをスカラ型へ移行するには多くの工数を要する場合がある。そのため、従来より自動並列化コンパイラなどの利用が進められている。
スーパーコンピュータの大部分がベクトル型からスカラ型へ移行してきている背景には、ベクトル型プロセッサの開発コストや消費電力の大きさの問題がある。また、バイオインフォマティクスなど、スカラ型のほうが適しているアプリケーションが増えていることも一因である。
[編集] 日本
日本の主なスーパーコンピュータは下表の通りである(2009年5月現在)。
| 設置場所・研究所 | 名 称 | アーキテクチャ | 理論演算性能 | CPU | OS | 提供ベンダ | 基本仕様作成先,設計元 | 備 考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 東京大学 | T2Kオープンスパコン東大版 | スカラ | 140TFLOPS | Opteron | Linux | 日立 | 筑波大学・東京大学・京都大学 | 筑波大学版は理論性能95TFLOPS、京都大学版は60TFLOPS |
| 東京工業大学 | TSUBAME | グリッド型スカラ | 85TFLOPS | Opteron | Linux | NEC, Sun |
東京工業大学学術国際情報センター | 約一万個のCPUコアの他に、演算アクセラレータを搭載している。 |
| 海洋研究開発機構 | 地球シミュレータ | ベクトル | 131TFLOPS | 独自ベクトルチップ | SUPER-UX | NEC | 国立環境研究所,気象研究所,東京大学 | ベクトル型と最適化されたフレームワークによって生じる、実効性能が非常に高い計算機システム。システム更新により2009年3月より稼働開始。前システムは規模の大きさから超巨艦主義と批判されることも多かったが、SX-9を採用することによりノード数を1/4と大幅に減らし設置面積を半分以下、消費電力を3割ほど減らしながらこの性能を達成した。 |
| 気象庁 | COSMETS | 擬似ベクトル型スカラ | 21.5TFLOPS | POWER5 | AIX 5L | 日立 | 気象庁 | ViVA(Virtual Vector Architecture)による擬似ベクトル化。システムを構成する各CPUを各計算マトリックス毎に割り振る仕組みを活用することで、気象モデルへの適合性を高めたフレームワークを採用。 |
| 筑波大学 | PACS-CS | スカラ | 14.3TFLOPS | Xeon | Linux/SCore | 日立, NEC, 富士通 |
筑波大学 | マトリックス・グリッド型超並列専用計算機。帯域幅と省電力を重視。
(注)CSとはComputational Scienceの略 |
| 宇宙航空研究開発機構 | JSSシステム | スカラ | 120TFLOPS | SPARC64VII (富士通製) | Solaris | 富士通 | 宇宙航空研究開発機構 | |
| 東京大学/国立天文台 | GRAPE-6 | 専用計算機 | 64TFLOPS | 独自チップ | Linux/Unix | GRAPE-6ボード発売中 | 東京大学理学部 | 専用計算機。複数回ゴードン・ベル賞を受賞。 |
| 東京大学/国立天文台 | GRAPE-DR | 専用計算機 | 2PFLOPS (達成目標値) | 独自チップ | Linux/Unix | NTTコミュニケーションズ,富士通,日立製作所他 | 東京大学理学部 | 専用計算機。現在、データベースシステム(そもそも、DRがデータベースの意味)とGRAPEシステムを結合したシステムのデモ機を稼動中。先日のCERNとの間での高速インターネット実験でも活用した。今後は、GRAPEチップが、年度毎に予定通り納入されれば、2008年ごろにはPetaFLOPSの大台に乗る予定。ちなみに、現在は0.5PFLOPS(2006/10現在)。 |
| 理化学研究所横浜研究所 | Protein Explorer | 専用計算機(MDGRAPE-3超並列機) | 1PFLOPS (達成目標値は2PFLOPS) | 独自チップ+Xeon | Linux | 日本SGI ,Intel他 |
理研戎崎研究室 | 専用計算機。2006/06現在の演算性能。障害ノードの復旧後はさらに増速予定。
MDGRAPE-3 x 4808チップと Xeon x330コアの組み合わせにより構成。 |
[編集] アメリカ合衆国
アメリカ合衆国の主なスーパーコンピュータは下表の通りである。
| 設置場所・研究所 | 名 称 | アーキテクチャ | 理論演算性能 | CPU | OS | 提供ベンダ | 備 考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 国立ロス・アラモス研究所 | Roadrunner | スカラ | 1.7PFLOPS | PowerXCell + Opteron | Linux | IBM | Cell、Opteronノード間をInfiniBandで接続 |
| 国立ローレンス・リバモア研究所 | Blue Gene/L | スカラ | 280TFLOPS | PowerPC 440 | CNK/Linux | IBM | 組み込みプロセッサにFPUを付加 |
| NASA エイムズ研究センター | Columbia | スカラ | 51TFLOPS | Itanium 2 | Linux | SGI | AltixをInfiniBandで接続 |
| 国立サンディア研究所 | Red Storm | スカラ | 101.4TFLOPS | Opteron | Catamount/Linux | Cray | XT3として商用化。SC06にて世界2位に。 |
| バージニア工科大学 | System G | スカラ | 22.8TFLOPS | Xeon | Mac OS X | バージニア工科大学/Apple | Mac ProをQDR InfiniBandで接続 |
[編集] 主要国の動向
[編集] 世界
詳細は「スーパーコンピュータ技術史」を参照
世界各国でもスーパーコンピュータの導入は進んでおり、1990年代初頭のような日米を2極とした導入数の集中状況は解消しつつある。アメリカも日本もスーパーコンピュータによるシミュレーション能力が国際競争力の源泉であることに気が付き、次々と次世代スーパーコンピュータ構想の手を打っている(詳細は汎用京速計算機を参照)。さらに、日米両国はそれぞれの政府主導の下、各省単位でのHPC投資促進が続けられており、数十PFLOPSコンピュータを2010年までに構築する計画が複数進んでいる。
[編集] 日本
詳細は「スーパーコンピュータ技術史」を参照
日本におけるスーパーコンピュータの流れは、官学主導による国策としての大型スーパーコンピュータ構想と、産業界及び産学協同のより実生活や一般的な産業面に近いスーパーコンピュータの利用や設置の流れがある。この2つの流れの間で産官学での調整が行われており、トップダウン型の(Web Client技術、ASIC、マイクロプロセッサ)、ボトムアップ型の通信インフラストラクチャー、プロトコル、規格化などがある。
文部科学省が推進する日本の科学技術政策では、国立大学や国立研究機関などへのスーパーコンピュータの導入に関してNLSとNISという位置付けがしばしば用いられる[13]。
- NLS (National Leadership Supercomputer)
- 日本国内のスーパーコンピュータリテラシーのリーダシップを取るスーパーコンピュータ(開発プロジェクトとして整備)
- NIS (National Infrastructure Supercomputer)
- 一般的な研究面/産業面での利用を念頭にスーパーコンピュータリテラシーの下支えをするスーパーコンピュータ(原則として市販商品を調達)
例えば、1993年時点で世界最速を競った航空宇宙技術研究所の数値風洞や筑波大学の CP-PACS はNLSとして使用が始まり、その後2年ほどでNISとして利用された。2004年まで2年半の長期に渡ってTOP500の第1位を占めた地球シミュレータもNLSとして開発され、2007年頃にはNISとして供用されると見られる。
2009年現在、地球シミュレータに代わる次期 NLS として汎用京速計算機が計画中で、その後も政府の国家戦略として、最先端の性能を持つスーパーコンピュータの研究開発を持続的に推進していくべきであるとする提言が文部科学省科学技術・学術審議会等に提出された[14]。
これらの国家・政府が国策として推進する巨大プロジェクトと、民間主導の各プロジェクトとの位置づけや関連には、従来より多数の議論が存在する。2007年にはメディア学者の池田信夫が京速計算機について「スパコンの名を借りた公共事業」、「時代錯誤の大艦巨砲プロジェクト」と批判した。
2009年11月13日、行政刷新会議の「事業仕分け」では、日本の次世代スーパーコンピュータ事業は「予算計上見送りに近い縮減」という判定が下された[15][16]。これは、開発が事実上凍結されるということである[17]。この件について、計算基礎科学コンソーシアム(代表:宇川彰筑波大学副学長)が緊急声明を出し、事業の継続を訴えた[18]。2009年11月22日、菅直人副総理兼国家戦略担当相は、NHKの番組で、事業仕分けの科学技術分野は見直すことになると発言した[19]。
なお2009年11月、ベクトル型を続けているNECは、インテルとのXeonを使用したスーパーコンピュータの共同開発計画を発表した[20]。
[編集] アメリカ合衆国
地球シミュレータによるコンピュートニクショックの後、その潜在的に大きな科学技術と国力・軍事研究の粋を挙げてHPC技術の更改と続伸を続けており、2006年8月現在、TOP500のランキングの上位50%以上をアメリカのスーパーコンピュータが占めている状況である。 近年の米国の計算機開発は、核兵器維持管理のためのコンピュータシミュレーションや高信頼性代替核弾頭など各種兵器の開発設計、作戦シミュレーションなど軍事利用の傾向が強い。そのため現在の技術開発は国防高等研究計画局とエネルギー省国家核安全保障局が中心となって進められている。国家プロジェクトに参加することで開発ベンダーに培われたHPC技術は、民間用スーパーコンピュータとして商品化され、生命科学、金融工学、VFX・コンピュータグラフィックスなど広範な分野で使用されている。
防衛高等研究計画局の方針では今後はハイブリッド型計算機の開発に取り組み、PFLOPS越えだけではなく、その先を見越した研究を展開するという。今後も、米国は世界最先端・最速のスーパーコンピュータの構築に挑戦し続けるであろう。
[編集] 欧州
欧州各国においては、元々1980年代からスーパーコンピュータのハードウェア分野には敢て手を出さず、シミュレーションソフトやコンパイラなどの開発に力を注いでいた。次世代スーパーコンピュータに関しても、アメリカや日本のより良い部分を選択・取得し、得意のソフトウェアに注力した発展と一般化したスーパーコンピュータの普及を目指して動いている。また近年の情報社会・メディア総局の方針では、ミドルウェア開発を念頭に置いたプロジェクトを中心とすることとなっている[21]。
- イギリス
- 富士通を中心としたスカラ型が軍に、NECが提供しているベクトル型が気象用に導入されている。自動車・航空機開発は、現在はフランス・ドイツの両国に頼っている現状があるため不明。
- フランス
- 航空機産業においては、Crayのシステムを導入して、衝突解析用アプリケーションソフトを開発して稼動していたことなどもある。軍事産業では、独自システムの開発が行われていた。現在は、アメリカのIBMを中心としたスカラ型が軍事用に、NECが提供するベクトル型が気象用などに導入されている。
- ドイツ
- NECを中心としたベクトル型の大規模スーパーコンピュータの導入と、IBMを中心としたスカラ型のスーパーコンピュータの導入を並列して進めており、バランスを重視した対応を取っている。
- スペイン
- IBMのPowerPC 970MP 2.3GHzを採用したMareNostrumを科学教育省に導入し、産官学での利用方法の検討と発展を図っている。
- ヨーロッパ全体
- イタリアもほぼスペインと同様で、産学での利用面において一般化したレベルのスーパーコンピュータの導入を促し、産業面では自動車産業や航空機産業での利用を進めている状況である。先鋭的なスーパーコンピュータより、汎用アプリケーションを中心とするスーパーコンピュータの導入に積極的であり、大きな予算を必要とする次世代スーパーコンピュータへの集中的な投資はあまり見えない。
[編集] アジア諸国(日本以外)
1990年代前半は非常に少なかったが、中華人民共和国・台湾・大韓民国・インド・マレーシアといった国々では、スーパーコンピュータ購入や自国での構築も行っており、TOP500 クラスの新規案件が増えている。
- 東アジア
- 中国
- 中国ではスカラ機をアメリカ製汎用プロセッサで構築したり、自国での汎用プロセッサの開発などの手を打ったりしつつある。上海超級計算センターに設置されている『曙光4000A』は10TFLOPSの計算性能を発揮したが、現在は50位ほどまで落ちている。
- また国産CPUの『龍芯』はMIPS系の設計盗用[2]が指摘されており、知的所有権の大幅な違反例として知られている。
- そのため、国産スーパーコンピュータの開発は順調とはいえず、日米との開発力の差は予想以上に大きいようだ。
- しかし、基礎研究段階ではめざましい猛追を見せており、実装面での急進の可能性も低くなく、未知数な状態となっている。
- また、導入数に関してはIBM製のスーパーコンピュータを購入したり、汎用PCをクラスタ化したりすることにより、急速に追い上げている。
- ただし、使用目的のほとんどが軍事面に傾いていると言われており、日本や欧州のような産業面の利用促進はほとんど見えないのが現状である。
- 韓国
- 韓国では、ソウル大において汎用PCとLinux及び日米製のクラスタソフトを用いた研究用スーパーコンピュータを作成していたが、導入時に150位程度であり、現在はTOP500圏外となっている。
- 実務面で使用するスーパーコンピュータにおいては、全てを日米ベンダ各社から購入して数を増やしつつあるが、あくまで利用者としての対応であり、元々の国力からの判断で自国での開発は行なっていない。
- なお、利用も気象や自動車などの民需系の利用が急速に増えたものの、軍事的な開発・設計に注力しているとの指摘もあり、先が全く見えない。また、肝心の気象予測においても、強化された計算能力を十分に生かしきる事ができず、一般国民においては、隣国の日本の気象庁の予測を確認する風潮が根付いている。
- 台湾
- 元々、スーパーコンピュータの発展に寄与したスティーブ・チェンの出身地でもあり、スーパーコンピュータと縁の深い台湾では、軍事的な側面でスーパーコンピュータを導入する動きは殆ど無い。基本的に民需系や公共サービス系を中心に産業界や科学分野においての導入が進められている。特に汎用PCを使用したLinuxのクラスタ系コンピュータが多く、半導体産業におけるCAE系や中央気象局などの他、台湾が生き残りを掛けて投資している遺伝解析系においては、世界でも有数のレベルでスーパーコンピュータが取り入れられ、使用されている。
- 例えば、日本産のメダカを遺伝子改造して、深海魚等から取り出した発光する遺伝子を組み込み、発光魚として世界各地に輸出しているが、この遺伝改造もスーパーコンピュータを使用して検証され、実際に行われている。
- このように台湾自体、韓国と同様にスーパーコンピュータの開発を行う事はないと思われるが、産業による貿易(ただし、輸出と輸入のバランスを取った)立国を続ける立場から、欧州と同様に一般的なスーパーコンピュータの利用とアプリケーションの提供という面で、日米欧と肩を並べる存在としての存在感を示しつつある。また、日本のGRAPEプロジェクト(GRAPE-DR)に対しても、複数企業が参加し、サポートを続けている。
[編集] 脚注
- ^ 研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会 コンピュータ・ネットワークワーキンググループ(第9回)議事内容
- ^ Top500.org. "Processor Family share for 11/2008 TOP500 Supercomputing Sites". 2008年12月7日 閲覧。
- ^ Top500.org. "Processor Architecture share for 11/2008 TOP500 Supercomputing Sites". 2008年12月7日 閲覧。
- ^ ClearSpeed - Home
- ^ Clearspeed Technology. "47 TeraFLOP TSUBAME cluster sets new record as the first accelerated cluster in the Top500". 2008年3月12日 閲覧。
- ^ Advanced Micro Devices, Inc.. "AMD、倍精度浮動小数点テクノロジを備えた初のストリーム・プロセッサを発表". 2007年11月17日 閲覧。
- ^ NVIDIA Corporation. "NVIDIA Tesla - HPCのためのGPU コンピューティング ソリューション". 2007年11月17日 閲覧。
- ^ RapidArray高速インターコネクト
- ^ "高速インターコネクション向け1.1μm帯VCSELの25Gb/s動作". 電子情報通信学会 (2006). 2008年3月12日 閲覧。
- ^ Top500 OS chart
- ^ fortress
- ^ HPL - A Portable Implementation of the High-Performance Linpack Benchmark for Distributed-Memory Computers
- ^ ナショナル・リーダーシップ・スパコン(NLS)とナショナル・インフラストラクチャ・スパコン(NIS)の変遷 - 科学技術省
- ^ [1]
- ^ ITmedia News 2009年11月13日 15時47分 更新: 次世代スーパーコンピュータは「予算大幅削減」、凍結の可能性も
- ^ asahi.com 2009年11月13日13時23分: 次世代スパコン「予算削減」 事業仕分け3日目
- ^ 産経ニュース 2009.11.17 03:11: 【主張】次世代スパコン 戦略なき開発凍結に異議
- ^ asahi.com 2009年11月20日: スパコン開発の「見送り」に大クレーム、事業仕分け判断に科学者ら
- ^ 産経ニュース2009.11.22 12:33: 【事業仕分け】次世代スパコン予算維持へ 菅副総理
- ^ インテルとNEC、将来に向けたスーパーコンピューター技術の共同開発に合意 - NEC
- ^ ただし、半導体開発競争を中止したのみであり、基礎的分野における研究開発の継続は行われるはずである。また、アメリカ・日本を見習い、近年ではマイクロコンピュータ用のアプリケーション開発などにも力を入れている。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 坂村健,コンピュータアーキテクチャー -電脳構築学-,共立出版
- 日本電気,富士通,日立製作所, スーパーコンピュータ全書, パーソナルメディア
- 「情報処理」(情報処理学会誌)特集「知られざる計算機」2002年2月号(Vol.43 No.2)
- アンドリュー・S・タンネンバウム,ネットワークアーキテクチャー第4版,日経BP
- ディビット・G・ストークス(編著),HAL伝説-2001年コンピュータの夢と現実,早川書房
他
[編集] 外部リンク
- TOP500 Supercomputing Sites
- 富士通のスーパーコンピュータのページ
- 日立のスーパーコンピュータのページ
- NECのスーパーコンピュータのページ
- IBMのスーパーコンピュータのページ
- Cray社のページ
- PHASEプロジェクトホームページ、産業技術総合研究所
- 見直しに直面するスーパーコンピュータの評価方法
- スーパーコンピュータの将来
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最終更新 2009年11月25日 (水) 15:03 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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