ディーゼル自動車

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ディーゼル自動車(ディーゼルじどうしゃ)とは、ディーゼル機関動力とする自動車である。

目次

[編集] 概要

特徴として、ピストンスピードが低い状況でも大きなトルクが得られ、回転数を上げる必要が無いため(構造上ガソリンエンジンほど回転数が上げられない)、機械的な損耗を抑えられ、特に巡航時の空燃比は20:1から60:1程度となるため、熱効率が高いことが挙げられる。

寒冷環境下ではシリンダー内の温度が上がりづらく、始動性が悪化するため、副室式ではグロープラグ、直噴式ではインテークヒーターを使い、数秒から数十秒のプレヒートと、始動直後の安定燃焼のためのアフターヒートが必要となる。以前は予熱時間の長いものが多く、ガソリンエンジンと比べると不便を感じたが、現在ではほとんど意識する必要の無いほどに改良されている。キャブレター式のガソリンエンジンが始動できないような極低温時でも、ディーゼルエンジンは予熱さえ行えば、確実に始動させることができる。

日本国内では、特に大都市周辺での大気汚染への関心が高く、ディーゼル車は好感されない。他方、ヨーロッパでは乗用車の過半数をディーゼル車が占めている国もある。同地では、硫黄分の少ない軽油が使用され、酸化触媒とパティキュレートフィルターが普及している[要出典]。もともとは経済性での有利からシェアを伸ばした西ヨーロッパでのディーゼル車であるが、近年は日本の自動車メーカーが得意とするハイブリッド車に対峙する選択肢としての低公害車として宣伝されるようになっている。また、アメリカでは車の燃料と言えばガソリンで、ディーゼル車はほとんど普及していない。このように、ディーゼル車に対するイメージは、日本、ヨーロッパ、アメリカで全く異なったものとなっている。特に日本とヨーロッパでのディーゼル車の環境に対するイメージは現在のところ正反対である。

[編集] 歴史

ディーゼルエンジンは、機械的に堅牢であること、着火に電気が不要なこと、熱効率が良い結果、燃費に優れ、また排気ガスも比較的安全(当時は触媒が無く、ガソリン車の排気はそれこそ有毒ガスであった)な事から、自動車への適用が開発の初期から期待された。しかしながら、初期のディーゼルエンジンは燃料噴射に圧縮空気を用いており、そのために空気圧縮機を備えなければならず、車載に適した小型ディーゼルエンジンの開発は困難であった。

結果、実際にディーゼル自動車が市販されたのはガソリン自動車よりも遅く1920年代で、無気噴射式の高速ディーゼルエンジンの実用化がキーとなった。

1924年ドイツのメーカー2社がそれぞれ別の方式で実用化したのが最初である。ベンツ(後のダイムラー・ベンツ、現ダイムラー)が予燃焼室式エンジンを、またMANが渦流室式エンジンをそれぞれ実用化して発表。これらはトラックやバス用の動力として利用され、その経済性によって市場の支持を集めて行くことになる。

乗用車への搭載試作も1920年代から始まっていたが、振動の激しさと小型化の困難さがネックとなって市販されるに至らず、市場に出た最初は1936年発売のメルセデス・ベンツ「260D」であった。ガバナー付きの燃料噴射ポンプを採用したことにより、低回転でのトルク特性が向上し従来のディーゼルエンジンよりも扱いやすくなった。4気筒2550cc・45HP/3,000rpmの予燃焼室式ディーゼルで、ガソリン車に比べ走行性能が劣り、やや振動が大きいことからタクシーやバンなどへの利用を想定されていたにも関わらず、省燃費性能の優秀さからオーナードライバーの支持をも得て、予想外の人気モデルとなった。

第二次世界大戦前後を通じて、主要各国はトラック・バスを中心にディーゼルエンジンの導入を積極的に推進し、大型化が容易で経済性に優れることから、1960年代までに大型商用車においてディーゼルエンジンは世界的主流となった。現在までその傾向は続いており、現状の技術では代替可能な動力機関が存在しないことから今後もディーゼル自動車主流の情勢は動かないと考えられるが、大排気量高速ディーゼル機関の排気ガスは環境悪化の一因であることが指摘されており、各国で程度の差はあるものの排気ガス浄化対策が進められている。

また乗用車分野でも、先駆的なダイムラー・ベンツやプジョーに影響され、ヨーロッパや日本でディーゼルエンジン乗用車の開発が進んだ。そして1970年代のオイルショックは燃料消費の経済性の見地から、乗用車へのディーゼルエンジン普及を著しく促した。ヨーロッパではこの流れが二酸化炭素排出の少なさと相まって、21世紀に至っても長く続いており、新技術の導入によってガソリンエンジン車に比した場合の性能的劣位が克服されつつある。他方、アメリカ合衆国ではその普及は限定的なものに終わり、日本でも排気ガス浄化の困難さから、1990年代以降、国内市場ではほぼ淘汰されてしまっている。

大型自動車と乗用車に共通する課題は排気ガスの環境影響であり、各国のメーカーが取り組みを続けているが、根本的な解決にまでは至っていない。

[編集] エンジンの特徴

自動車用エンジンは負荷変動が大きく、それに追従できることが必要である。そのために自然吸気エンジンが広く用いられた。過給エンジンも存在したが、過給圧は他の用途のディーゼルエンジンと比較して低く抑えられていた。自然吸気エンジンの場合、同排気量のガソリンエンジンと比較して、トルクが低いため(約7割[1])により大排気量のエンジンが用いられていた。ターボ過給技術の発達と排ガス規制の強化、より低燃費、エンジンの小型化等の要請によりターボの採用、高性能化が進められた。窒素酸化物の低減のために排気ガス再循環(EGR)が行われている。EGRを行うことにより燃焼温度が下げられ燃焼室内での窒素酸化物の発生量が抑えられる。しかし、EGRを行うと吸気中の酸素が減るために出力維持のためには過給が必須となる。窒素酸化物の低減には圧縮比を下げることも有効である。単純に圧縮比を下げただけでは始動性が悪化するので、バルブタイミングの変更が必要である。通常、ディーゼルエンジンでもガソリンエンジンと同様に、吸気バルブは下死点後に閉じる。これは吸気には慣性があるために下死点で閉じるよりも下死点を過ぎてから閉じる方が充填効率を高めることが出来るからである。だが、低回転では吸気を押し戻すことで実効圧縮比が低下することになり始動性は悪くなり、圧縮比自体を高くしなければならない。現在では吸気バルブを閉じるタイミングを下死点に近づけ、低回転での実効圧縮比を高めている。圧縮比自体を低くすることにより窒素酸化物の生成量を抑えられ、EGR量を減らすことが可能になり高出力化にも繋がっている。また、三菱自動車のように可変バルブ機構を用い、低回転でのバルブタイミングを変更することにより、圧縮比を下げるという試みもされる様になっている。

[編集] 問題点

エンジン製造コストがガソリンのそれに比べ一般として高く、自動車の販売価格も高くなりがちである。

エンジン自体の重量がガソリンエンジンと比べて一般に重くなりやすい。

機関の運転音や振動が大きく、排出ガス中に「スス」などの粒子状物質 (PM) が多く、いわゆる「黒煙」となる。 PM をDPF等で捕捉しても、常に酸素過多の状態(リーンバーン)で運転される特性上、ガソリンエンジンのように三元触媒を使えないため有害排出ガスの浄化が難しく、 熱効率を追求し完全燃焼させると排気ガス中の窒素酸化物 (NOx) が増えるという点ではガソリンエンジンと同じだが、触媒での浄化が難しいため、結果として比較的多くのNOxを排出してしまう現状がある。(次世代ディーゼルエンジンへの過渡期にあり、ディーゼル自動車の構造的欠点とは言いにくい) ガソリン車に比べ、悪臭がするイメージがあるのは、このためである。

軽油のワックス分は比較的高温で固化する。そのため、冬季の寒冷地では、低温でも固化しないようにする為に専用のものを使う必要がある。

また、軽油取引税を脱税するために軽油に他の物質を混合させた不正軽油を使う事業所や運転手がいる。

[編集] 環境対応

粒子状物質(PM)と窒素酸化物(NOx)は燃焼状態により発生状況が異なるので、現状では片方を減らそうとすれば、もう片方が増加してしまう。

PMは大量のEGRと噴射を数回に分けることで燃焼時の急激な温度と圧力の上昇を防ぎ、NOxの発生を抑え、さらに、DPFでPMを捕捉して燃焼させるのは乗用車・トラックで実用化されている。
NOxは排気に尿素水を噴射し、一旦アンモニアを生成し、それを触媒によって窒素と水に還元し、無毒化する、尿素SCR還元システムがトラックで実用化されている。

トヨタのDPNRはDPFにNOx吸蔵還元触媒の機能を追加、NOxの浄化時にPMも同時還元出来る。欧州の乗用ディーゼルと国内のトラックに採用されている。
2006年9月、ホンダでは乗用車用に適した二層構造のNOx吸蔵還元触媒を発表した。アンモニアを触媒内部で生成し、従来の触媒より効率良くNOxを還元できる。
2007年8月、日産も二層構造のNOx吸蔵還元触媒を発表した。吸着したHCにO2を加えてNOxを還元する。
2008年4月、VWは高圧と低圧の2つのEGRを組み合わせたシステムにDPFやNOx吸蔵還元触媒を組み合わせて米国の排ガス規制をクリアするシステムを発表した。

トラックではNOxの発生を抑えてDPFかPMの発生を抑えて尿素SCR還元システムという方法で規制をクリアしているが、乗用ディーゼルはDPFとNOx後処理装置(NOx吸蔵還元触媒か尿素SCR還元システム)を欧州・日本・米国で規制値に合わせて組み合わせると思われる。

将来的には、バイオディーゼルとハイブリッド機構の組み合わせにより、現在のガソリンエンジンの1/4程度の環境負荷への低減[2]が予想されており、次世代駆動システムの有力候補となっている。

[編集] 法規制

日本では新長期規制(平成17年排出ガス基準)が施行されている。 [1]2008年以降、日米欧におけるディーゼル規制は一段と強化される予定である。

  • 欧州 ‐2008年導入 「ユーロ5(Euro 5)」規制 (欧州連合指令 European Union Directive)[2]
  • 米国 ‐2009年実施 「Tier II Bin5」規制 (環境保護庁(EPA)[3]
  • 日本 ‐2009年施行 「2009年規制[4]

規制値をまとめると、以下の通りである。

[編集] 排出ガス規制値の一覧

(小型ディーゼル乗用車の場合、g/km)

新車排出ガス規制 CO NMHC * NOx PM
新長期規制(日本)
2005年
0.63 0.024 0.14 0.13
ユーロ5(欧州)
2008年
0.50 0.068 0.18 0.005
Tier 2 Bin 5(米国)
2007年
0.003 制限無し 0.044 0.006
ポスト新長期規制(日本)
2009年
0.63 0.024 0.08 0.005

* NMHC = Non - Methane hydrocarbons ( 非メタン炭化水素 )

[編集] 日本における排出ガス規制

  1. 短期規制(1993年)
  2. →長期規制(1997年)
  3. →新短期規制(2002年)
  4. 新長期規制(平成17年排出ガス基準, 2005年)
  5. →(予定)2009年規制(2009年)

のように段階的な自動車排出ガス規制が実施されている。2002年施行の「新短期規制」を達成していないディーゼルエンジンを搭載した、用途が貨物かつ初度登録から7年を経過した車両は首都圏や兵庫県の一部に設定された特定地域に乗り入れができない(地域によって規制値は異なり、首都圏については、中量貨物車のPM値について、新短期規制の2分の1)。また、2009年1月より、下述の自動車NOx・PM法(通称車種規制)を達成しないディーゼル車について、大阪府でも着発規制が行われる。新短期規制は、規制物質によってはガソリン車のおよそ3倍が許容される内容であった。2009年規制において、ガソリン車に追いつくまでの水準となっている[要出典]

特定地域を対象にして1992年に制定された自動車NOx・PM法により、首都圏中京圏関西圏に指定された地域を使用の本拠とする車両は、上記の新短期規制と同程度の基準(車両総重量2.5t以下の貨物自動車および乗用車の場合(重量車では長期規制並みの基準となる)、ただし車両総重量2.5t以下の貨物自動車および乗用車のPM規制値については新短期規制値の2分の1)を達成していなければ、新規登録および初度登録から8–12年目(車種よって異なる)以降は車検継続ができない(使用継続できない)。

さらに、東京都が2003年10月から実施した環境確保条例では、国の規制を満たさないディーゼル車が島嶼部伊豆小笠原諸島)以外の都内全域で運行することを禁止している[5]。 それにより、公害の状況が改善された [6]

(関連制度)

[編集] 排出ガス規制と識別記号の一覧

国の新車排出ガス規制 識別記号-
短期規制以前
1993年以前
記号がない1979年頃までに製造された車
K-, N-, P-, S-, U-, W-, KA-, KB-, KC-, KD-
長期規制
1997年
KE-, KF-, KG-, KH-, KJ-, KK-, KL-
(ハイブリッド)HA-, HB-, HC-, HE-, HF-, HM-
新短期規制
2002年
KM-, KN-, KP-, KQ-, KR-, KS-
(超低PM排出車)PA-, PB-, PC-, PD-, PE-, PF-, PG-, PH-, PJ-, PK-, PL-, PM-, PN-, PP-, PQ-, PR-
(ハイブリッド)HW-, HX-, HY-, HZ-
(ハイブリッド・超低PM排出車)VA-, VB-, VC-, VD-, VE-, VF-, VG-, VH-, VJ-, VK-, VL-, VM-, VN-, VP-, VQ-, VR-
新長期規制
2005年
ADE-, ADF-, ADG-, BDE-, BDF-, BDG-, CDE-, CDF-, CDG-, DDE-, DDF-, DDG-
(ハイブリッド)ACE-, ACF-, ACG-, BCE-, BCF-, BCG-, CCE-, CCF-, CCG-, DCE-, DCF-, DCG-
平成17年排出ガス規制参照のこと。
重量車燃費基準
2015年
重量車燃費基準参照のこと。

参照外部リンク

国土交通省 自動車排出ガスの識別記号一覧PDF

[編集] 乗用車の状況

[編集] 日本

いすゞ自動車はかつて、ディーゼル自動車を販売の主力としていた。第二次オイルショック後には、国内販売される乗用車の多くにディーゼルエンジンが用意され、新車販売台数のうち5%程度をディーゼル車が占めた時期もあった。しかしながら、その後の需要はバブル期前後にブームとなったRV等に限られ、排気ガス規制の強化(上述)とともに1990年代後半以降には販売が急減した。

2007年9月、新長期規制(同)が継続生産車にも適用開始(当初は新規生産車のみが対象)された。それに先立つ同年7月、トヨタ・ランドクルーザープラド(ディーゼル仕様)の販売終了をもって、日本国内で販売される日本車(乗用車)のディーゼル乗用車は消滅した。その後1年あまり、新長期規制に適合したディーゼル乗用車は日本車には存在しておらず、輸入車を含めたすべての乗用車のうち、販売されているのはメルセデス・ベンツ Eクラス 320CDI(新長期規制適合)[3]のみとなり。トヨタ[7]、ホンダ[8]、マツダ[9]など各メーカーが規制に対応したディーゼル乗用車の開発を進めている状況であった。

2008年9月4日、日産自動車が、新長期規制を飛び越し、ポスト新長期規制をもクリアするエクストレイルのクリーンディーゼル車(日本仕様)を発表。同月18日より発売開始し、日本のディーゼル乗用車は復活を遂げた。

2008年10月1日、三菱自動車は現行の新長期規制に対応したディーゼルエンジンパジェロを発売した。

[編集] 米国

2005年の時点で、ディーゼル車の市場シェアは0.5%である[10]環境保護庁(EPA)による基準に加え、多くの州が独自の環境基準・排出ガス規制を設定している。

2009年頃からフォルクスワーゲンアウディBMWメルセデス・ベンツ等の欧州メーカーが相次いで米国基準に適合したディーゼル車の販売をはじめている。[4][5][6][7]

[編集] 西欧

西ヨーロッパ全体で、新車乗用車販売に占めるディーゼル車のシェアは53.3%(2007年) 42.7%(2006年)である。ドイツでは同15%(1995年)が、同42.7%(2005年)と過去10年間に急増した。西欧主要国における新車乗用車販売におけるディーゼル自動車のシェアは以下の通り(VDA2006年年次報告による)


これらディーゼル自動車の急増を背景として、大気汚染が深刻化している。[要出典]ドイツでは、EU(欧州連合)の環境基準値を大幅に超える都市が続出し、トラックなど自動車の走行制限を行う自治体も出ているという(2006年9月25日『毎日新聞』)。

環境規制(排出ガス規制)は、前述の「ユーロ5」が全新型車に適用されるのが2011年から、さらに次世代の規制である「ユーロ6」が2015年からとなっている。メルセデス・ベンツフォルクスワーゲンアウディBMWプジョーをはじめとした各社で、ユーロ5、ユーロ6に対応したディーゼル乗用車の開発を進めている。

[編集] 製造者

一覧は「ディーゼルエンジン」参照

[編集] 脚注

  1. ^ 鈴木孝著 『エンジンのロマン』ISBN 978-4833415149
  2. ^ 輸送用燃料のWell-to-Wheel評価 - 日本における輸送用燃料製造(Well-to-Tank)を中心とした温室効果ガス排出量に関する研究報告書
  3. ^ メルセデス・ベンツオフィシャルサイト Eクラス・ディーゼルエンジン
  4. ^ VW TDI
  5. ^ Audi TDI
  6. ^ BMW 335d
  7. ^ ML320 BlueTEC SUV

[編集] 外部リンク

最終更新 2009年11月7日 (土) 13:52 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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