トラ

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ベンガルトラ
ベンガルトラ Panthera tigris tigris
保全状態評価
ENDANGERED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
ファイル:Status iucn3.1 EN.svg


ワシントン条約附属書I類

分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: ネコ目 Carnivora
: ネコ科 Felidae
亜科 : ヒョウ亜科 Pantherinae
: ヒョウ属 Panthera
: トラ P. tigris
学名
Panthera tigris (Linnaeus, 1758)
和名
トラ
英名
Tiger

トラ(虎、Panthera tigris)は、動物界脊索動物門哺乳綱ネコ目(食肉目)ネコ科ヒョウ属に分類される食肉類。

目次

[編集] 分布

  • P. t. altaica シベリアトラ

中華人民共和国北東部、ロシアウスリー東部)。朝鮮民主主義人民共和国に分布する可能性もあり。

  • P. t. amoyensis アモイトラ

中華人民共和国南部および西部

  • P. t. tigris ベンガルトラ

インド、中華人民共和国南部、ネパールバングラデシュブータンミャンマー

  • P. t. sumatrae スマトラトラ

インドネシアスマトラ島

[編集] 形態

亜種によって全長・体重は異なり、北に分布する亜種の方が大型になる傾向がある(ベルクマンの法則)。メスよりもオスの方が大型になる。背面は赤みがかった黄色や赤褐色の体毛に、黒い横縞模様が入る。縞模様は藪等では周囲に溶けこみ輪郭を不明瞭にし、獲物に気付かれずに忍び寄ることに適している。

端は太短く、の力は強い。四肢筋肉は発達する。前肢は獲物を押さえつけることに、後肢は跳躍に適している。

出産直後の幼獣は体重0.8-1.6kg。

分布域北部の亜種は体色が薄く、分布域南部の亜種はオレンジ色がかかる傾向がある。

  • P. t. altaica シベリアトラ

全長オス270-370cm、メス240-275cm。体重オス180-306kg、メス100-167kgと最大亜種。体毛は長く、密生する。腹面は脇腹も含めて白い体毛で覆われる。尾は白と黒の体毛で覆われる。

  • P. t. amoyensis アモイトラ

全長オス230-265cm、メス220-240cm。体重オス130-175kg、メス100-115kg。腹面は白色がかった体毛で覆われるが白色部は狭い。縞は太くて短く、縞の数は少ない。

  • P. t. corbetti インドシナトラ

全長オス255-285cm、メス230-255cm。体重オス150-195kg、メス100-130kg。背面は赤褐色、腹面は白色がかった体毛で覆われる。縞は細くて短く、縞の数は多い。

  • P. t. tigris ベンガルトラ

全長オス270-310cm、メス240-265cm。体重オス180-258kg、メス110-160kg。体毛は短い。背面はオレンジや赤褐色、腹面、頬、耳介の内側は白色がかった体毛で覆われる。縞は少なく、肩部や胸部に縞のない個体もいる。

  • P. t. sumatrae スマトラトラ

全長オス220-255cm、メス215-230cm。体重オス100-140kg、メス75-110kgと現生亜種では最小亜種。背面は赤褐色。側頭部の体毛が長いが、頸部の鬣は短い。縞は太くて、縞の数は多い。

[編集] 白化型(ホワイトタイガー)

ホワイトタイガー
ホワイトタイガーはアルビノとは異なり、基亜種の白化型である。ホワイトタイガーは、普通のトラでは黄色になる部分の毛が白く、かつ黒縞の色が薄い。元々本種は北方の寒冷地で誕生した(トラの北方起源説)とされ、保護色として体毛が白くなる遺伝子を持っていることは、特に驚くべきことではない。
なお、白化型の遺伝にはメンデルの法則が当てはまるとされる。
ホワイトタイガーはインドでは神聖なものとされ、中国(および、その影響で日本)でも白虎(びゃっこ)として崇められた。また近年はサーカスの目玉として脚光を浴びた。現在も各地の動物園で飼育されている。トラ自体の個体数が少ないため、野生で見られるのは稀である。

[編集] 分類

  • Panthera tigris altaica Temminck, 1844 シベリアトラ、チョウセントラ Siberian tiger
  • Panthera tigris amoyensis Hilzheimer, 1905 アモイトラ(絶滅?) South China tiger
  • Panthera tigris corbetti Mazák, 1968 インドシナトラ、マレートラ 
  • Panthera tigris jacksoni Mazák, 1968
  • Panthera tigris sumatrae Pocock, 1929 スマトラトラ Sumatran tiger
  • Panthera tigris tigris (Linnaeus, 1758) ベンガルトラ、インドトラ

[編集] 絶滅亜種

  • Panthera tigris balica (Schwartz, 1912) バリトラ Bali tiger
  • Panthera tigris sondaica (Temminck, 1844) ジャワトラ Java tiger
  • Panthera tigris virgata (Illiger, 1815) カスピトラ Caspian tiger

[編集] 生態

トラのキバ(犬歯)

森林や藪地などに生息する。地表棲。夜行性だが、昼間でも活動することもある。群れは形成せず、繁殖期以外は単独で行動する。オスは数十平方キロメートル、メスは20平方キロメートルにもなる縄張り(縄張りの規模は獲物の量などで変動がある)を形成して生活し、オスの縄張りの中に複数のメスの縄張りが含まれることもある。縄張りの中を頻繁に徘徊し、跡を残す、尿を撒くなどして縄張りを主張する。温暖な地域に生息する個体は避暑のため水浴びを好み、泳ぎも上手く、泳いで獲物を追跡することもある。

食性は動物食で、主に哺乳類(小型から中型のシカイノシシ)などを食べるが、大型のシカやガウルアジアゾウサイの幼獣などの大型の獲物、昆虫類や果実種子を食べることもある。家畜人間を捕食することもある。縄張りを徘徊し獲物を探す。獲物を発見すると茂み等に身を隠し近距離まで忍び寄る。その後獲物に向かい跳躍して距離を詰め、獲物の側面や背面に肉薄した状態から前肢で獲物を押さえつける。小型の獲物に対しては咽頭部を噛み続けることにより窒息死させ、大型の獲物は頸部に噛みつき倒す。獲物は茂みの中等に運んでから食べる。大型の獲物は数日に分けて食べる。

繁殖形態は胎生妊娠期間は100-108日。1回に2-4頭の幼獣を産む。繁殖期は地域によっても異なる。(例として基亜種は周年繁殖し、亜種シベリアトラは11月から4月に繁殖する。)発情している2日ほどの期間に100回以上交尾する。メスのみで幼獣を育てる。授乳期間は3-6か月。幼獣は6-14日で眼が開き、4-8週間で巣から出るようになる。幼獣は生後18-24か月は母親と一緒に過ごし徐々に独立する。生後2年で幼獣の半数は命を落とすとされ、オスがメスを発情させるために幼獣を殺すことも多い。このため子を連れたメスはオスを怖がる。生後3-4年で性成熟する。寿命は約15年とされる。

[編集] 人間との関係

漢方薬になると信じられている。

開発による生息地の破壊、薬用や毛皮用の乱獲、害獣としての駆除などにより生息数は激減している。19世紀における生息数は約100,000頭と推定され、20世紀に入ると3亜種が絶滅し1970年代における生息数は約5,000頭と推定された。亜種ごとの生息数に関する調査では

  • 亜種シベリアトラの1998年における生息数は360-460頭(1994年における飼育個体は632頭)と推定
  • 亜種アモイトラの1999年における生息数は20-30頭と推定
  • 亜種インドシナトラの1999年における生息数は1,025-1,785頭と推定
  • 基亜種の1999年における生息数は2,797-4715頭と推定

本種のために自然保護区を指定したり、獲物も含めた生態に関する調査などの保護対策が行われている。

P. t. altaica シベリアトラ、P. t. corbetti インドシナトラ、P. t. jacksoniP. t. tigris ベンガルトラ

ENDANGEREDIUCN Red List Ver.3.1(2001)

ファイル:Status iucn3.1 EN.svg

P. t. amoyensis アモイトラ、P. t. sumatrae スマトラトラ

CRITICALLY ENDANGEREDIUCN Red List Ver.3.1(2001)

ファイル:Status iucn3.1 CR.svg

P. t. balica バリトラ、P. t. sondaica ジャワトラ、P. t. virgata カスピトラ

EXTINCTIUCN Red List Ver.3.1(2001)

ファイル:Status iucn3.1 EX.svg

[編集] 虎を用いたことわざ・慣用句

虎図(歌川国芳 筆)
大きな成果や利得を望むなら、大きな危険は避けてはいられないことの喩え。貴重な虎の子が欲しければ、怖ろしい虎の棲む穴に挑まなければ手に入れることは叶わない。
  • 「虎視眈々(こし-たんたん)」
虎が獲物を狙って身構え、鋭く見詰めている様子。転じて、静かに機会をうかがい、隙があれば付け入ろうとしている様子を言う。
  • 「前門の虎、後門の狼」 一つの禍(わざわい)を逃れても、さらにまた他の禍に遭うことの喩え。
  • 「虎に翼」 ただでさえ強い者が更に威力をつけること。「為虎添翼(いこ-てんよく)」も同じ。
  • 「虎になる」 酔って怖いもの知らずになること。酔って乱暴になること、暴れること。
  • 「虎の威を借る狐」 実力者の威光を借りていばること。中国の古典「戦国策」より。
  • 「虎の尾を踏む」 虎の尾を踏めば、ただでは済まない。非常な危険を冒すことの喩え。
  • 「虎の子」
虎は自分の子を非常に大事にすると伝えられる。そのことに因み、大事な物・貴重な物を喩えて言う。
  • 「虎の鬣(たてがみ)をひねる」
  • 「虎は死して皮を留め 人は死して名を残す」
虎は死後に立派な毛皮を残す。人が残せるのは名誉と功績であるから、それらを重んじて生きなければならない。
  • 「虎は千里往って千里還る」
勢いが盛んな様子。虎は一日の間に千里(約4,000km)の道を行き、また戻ってくることができると考えられていたことに由来する。
  • 「虎を野に放つ」
危険なものを放置すること。また、禍根(かこん)を絶つのを怠り、のちに起こる大事の原因を作ってしまうことを言う。
  • 「虎を養って虎に噛まる」
  • 「張子の虎」
虎をかたどった首の動く張り子の玩具。転じて、首を振り動かす癖のある人、虚勢を張る人、見かけ倒しの人などを軽蔑して言う言葉。
  • 「竜虎」「竜虎相打つ」
  • 「大虎になる」:普段小心の人間が、酒を飲むと人格が変わってしまうこと。

[編集] 雑学

  • ヨーロッパにその存在が知られるようになったのは、アレクサンドロス大王のインド遠征によるもので、ペルシア語のthigra(鋭い・尖った)から、ギリシア語でtigrisと呼ばれるようになり、英語ドイツ語のtigerへと変化した。ヨーロッパで最初にトラが持ち込まれたのは、紀元前19年ローマ皇帝アウグストゥスにインドの使者がトラを献上した時と言われている。
  • 一休宗純が元ねたの一休噺で屏風に描かれた虎を退治するよう言われ、「後ろから追い出してください」と答える頓智が有名である。アニメ一休さん」でも足利義満が同様のことを発言し、一休を困らせようとしたが、この言葉で切り崩す話がある。
  • 強い者、豪傑の代名詞としてよく用いられる。中国の小説『三国志演義』では蜀の劉備に仕えた武将のうち武勇に優れた五人を「五虎大将軍」と呼び、特に張飛はその立派な髯(ひげ)を「虎髯」と呼ぶなど勇猛ぶりを虎に喩えられた。日本でも戦国武将武田信玄上杉謙信はその武威をそれぞれ「甲斐の虎」「越後の虎」と、虎に喩えられた。ほかにも何人か虎に喩えられる人物が存在する。大日本帝国時代では山下奉文陸軍大将は「マレーの虎」という異名を取った。虎の骨や内臓は滋養強壮の漢方薬に使われ、「強い動物だからさぞ効き目があるのだろう」というイメージを持たれ、前述の乱獲・絶滅危機の原因の一つになっている。
  • ナチス・ドイツVI号重戦車の愛称にトラ(ティーガー)と名付け、さらにそれの上を行く重戦車を虎の王(ケーニヒス・ティーガー)と命名。その強さを虎に喩えた。
  • 豊臣秀吉の家臣加藤清正朝鮮出兵中に虎狩りをした逸話は良く知られている。これにあやかり、明治時代以降、多くの日本人が虎狩りを行っている。なかでも旧尾張藩主の徳川義親シンガポールで虎狩りを行い、「虎狩りの殿様」として知られている。
  • 2003年の「今年の漢字」は、阪神タイガースの18年ぶり優勝による全国フィーバーの影響で「」となった。
  • 「警戒ロープ」・「警戒用テープ」はその色(黄色と黒)から、「虎ロープ・虎ヒモ(トラロープ・トラヒモ)」・「トラテープ」と呼ばれることがある。同様にセーフティーコーン(パイロン)間を繋ぐ縞模様の棒も「トラバー」と呼ばれる(工事現場などで使用されている)。
  • 本文内でも記されているとおり、日本では虎の体色は「」と表わされるが、実物および写真を見ても厳密には黄色ではなく、ある程度誇張されたあるいは比喩的な表現である。アメリカでは虎の体色はオレンジと黒、とされる。虎をモチーフにしたスポーツチームのチームカラーもNFLシンシナティ・ベンガルズのようにオレンジと黒の2色となることが多い。日本での「黄と黒」の表現が何に由来するかは不明である。

[編集] 画像

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズ

[編集] 参考文献

  • 『原色ワイド図鑑3 動物』、学習研究社、1984年、32頁。
  • 今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編 『動物大百科1 食肉類』、平凡社1986年、44-47頁。
  • 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『レッド・データ・アニマルズ1 ユーラシア、北アメリカ』、講談社2000年、15、141頁。
  • 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『レッド・データ・アニマルズ4 インド、インドシナ』、講談社、2000年、12-17、130-131頁。
  • 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『レッド・データ・アニマルズ5 東南アジアの島々』、講談社、2000年、12-17、142-143頁。
  • 『小学館の図鑑NEO 動物』、小学館2002年、139頁。

[編集] 外部リンク


arz:نمر

最終更新 2009年8月13日 (木) 12:22 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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