トライアル (オートバイ)
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トライアル (Observed trials, Motorcycle trials) は、設定されたコース(セクションと呼ぶ)を、いかに足をつかずにオートバイで走り抜けるかを競う競技。
現在は、ヨーロッパ(特にイギリスとスペイン)において盛んである。発祥は定かでないが、20世紀初頭のオートバイ出現と同時に、イギリス貴族の遊びとして始まった説がある。
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[編集] ルール
予め定められた競技時間(コースや大会によって異なるが、世界選手権で5時間から6時間)の間に、セクションと呼ばれる採点区間(通常10~15のセクションを2~3回走行する)を走行し、セクション毎の減点方式によって進行する。セクション通過中に足を1回つくと1点減点、2回つくと2点減点、3回以上は3点減点になる。指定されたセクションのエリアを飛び出したり転倒した場合、足をついた状態でエンジンを停止させた場合、各セクション通過持ち時間(世界選手権1分30秒、全日本選手権1分等)以内に通過出来なかった場合、セクション内で車両がバックした場合は5点減点となる。セクション通過を放棄した場合も5点減点となる。セクションを減点0で通過することを「クリーン」と呼ぶ。また、定められた競技時間内に全セクションを通過できなかった場合、ゴールした時点での超過時間に応じたタイムペナルティが減点に加算される。こうして全セクション終了時の減点合計のいちばん少ない者が勝者となる。
セクションは自然の地形を利用するものから人工的なものまでさまざまであり、コースの右側に赤いマークを、左側に青いマークを置く。オートバイの前輪が、複数の赤と青のマークの間を通らなければならない。セクションのエリアを明確にするため、補助的にコーステープを敷設する場合もある。
また、セクション内には原則として競技者であるライダー以外の立ち入りは禁止であるが、例外としてマインダーと呼ばれる競技補助者が1名立ち入ることが許される。マインダーはライダーの走行するルートをライダーと共に考えたり、走行ルートに先回りをして路面状況などの情報やセクション内での時間経過をライダーに伝えたり、転倒などの際にライダーの身に危険が及びそうな場所では万一の際にバイクを支えられるように用意したりするなど、ライダーのセクション走破を陰から支える役割を担う。
なお、トライアルは他のモーターサイクルレースとは異なり、基本的に排気量によるクラス分けがない[1]。そのため、競技においては250〜300ccを中心として様々な排気量のバイクが同じセクションを走行する。
[編集] 競技会
- 世界選手権は1964年に始まったヘンリー・ゴーターズ(初代王者はドン・スミス)からヨーロッパ選手権を経て、1975年から歴史を刻んだ。初代世界チャンピオンはマーチン・ランプキン(イングランド)。息子のドギー・ランプキンも世界チャンピオン(1997~2003・7年連続)で、世界選手権最多勝利数(99勝・2006年終了時)を誇る。また、世界選手権と並行して、1984年からは国別対抗戦としてトライアル・デ・ナシオンが、2001年からはインドアトライアル世界選手権が開催されている。
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- ヨーロッパでは絶大な人気を誇るトライアル世界選手権も、マシンの進化やライダーのテクニックの向上により、近年ではますますセクション難易度が高まる傾向にある。観客動員増を目論んだ2日間制競技も、転戦するファクトリーやライダーへの負担が大きく、より巨大なチームに有利な状況を作り出してしまい、若手やプライベーターが好成績を望む事が難しくなってしまった。それによって現在では世界選手権への参加台数が減少する傾向が顕著になってきた。事態を憂慮したFIMでは、2000年度より若手の登竜門クラスとして世界選手権にジュニアクラスを、2004年度よりユース125クラスを新設、さらにコスト削減を目的に2006年度からは、ヨーロッパ地域での世界選手権は1日制大会に戻した(ヨーロッパを離れる日本・北米大会等は変わらず2日制)。また、セクション難易度の上昇による参加者減少に対処する為、ノーストップ・ルールの再導入(1998~2003に導入されていたが、停止減点の判定で混乱が多く2004年よりルール改正となった)も検討されている。
- 世界選手権やデ・ナシオン以外の有名な競技会として、イギリスのスコットランドで行われるスコティッシュ6日間トライアル(Scottish Six-Days Trial:SSDT)がある。文字通り6日間という長期にわたって行われるこの競技会は、通常のトライアル競技会のように一定の敷地内にセクションを固めて設置せずに各所に分散してセクションを設置し、セクション間の移動は競技車が公道を自走して移動する形で行われる。このような競技形態をツーリングトライアルという。
- 日本では、1973年にMFJ主催の第1回全日本トライアル選手権が始まる。初代全日本チャンピオンは木村治男(ヤマハ)である。全日本選手権は全国を転戦し、現在では年間7~8戦開催されている。全日本選手権を頂点として、日本各地を8ブロック(全道・東北・関東・中部・近畿・四国・中国・九州)に区切った地方選手権も開催されている。地方選手権の下では各県大会が開催され、上位選手権への登竜門としての性格を持っているが、最近では楽しみとしてのトライアル大会を望む声が多く、岩手県で毎年行われる出光イーハトーブトライアルをはじめとして、気軽に楽しめる各地のツーリングトライアルや草トライアル大会が賑わいを見せている。
[編集] トライアルバイクについて
トライアル競技に用いられるオートバイは、俗にトライアラー[2]ともいう。モトクロッサーよりも更にオートバイの基本構造だけを残す形に簡略化・軽量化されている。燃料タンクは3〜4リットル程度の容量しかもたない。これは、コースを周回する間だけエンジンに燃料を供給すればよいからであり、転倒や落下で破損したときの被害を抑えるためでもある。また、座席もほとんど申し訳程度に簡略化され、もっぱらスタンディングポジション(ステップペダルに立った状態)での操作を前提とするので、立った状態で邪魔にならない小型のものが装備される。競技専用車に至っては、リアフェンダー部に座席の絵が描いてあるだけのものもある[3]。
タイヤはトライアル競技専用のトライアルパターンと呼ばれる、モトクロッサーに似た凹凸の激しいブロックパターンのタイヤが装着される。しかし、形状こそ似ているものの、トライアル用タイヤはあらゆる路面状況に対応するため、モトクロッサー用タイヤに比べてかなり柔らかい[4]。また、不整地でタイヤの接地面積を増やして大きなグリップ力を得るために、通常のバイクよりもかなり低い空気圧(簡単に指で押し込める程度)で装着される。
サスペンションは、モトクロッサーでは不整地走破性を重視してサスペンションのクッションダンパーのストロークが長めにとられているが、トライアルバイクでは微妙な操作によって車上でバランスをとり、操作を直接タイヤに伝えるようにするために、ストロークは短くセッティングも固めである。
エンデューロマシンと比較すると、航続性能の面でトライアルバイクは極めて低速重視かつ小容量燃料タンク(加えて座席はライダーが座ることを考慮していない)など、外見的な面でも顕著な違いが見られる。上記3車種が同じオフロードタイプに属しながらも、全く別の方向へと変化していった結果であることが伺える。
このほかの特徴として、以下のことが挙げられる。
- エンジン特性は特に低速域からの加速特性に特化して吹き上がりの良いもの
- エンジンは、かつては2ストロークエンジンが主流であったが、現在は4ストロークエンジンを搭載するバイクが主流になりつつある。低速・低回転時におけるトラクションの良さやエンジン技術の進化に加えて、2ストロークエンジン特有の排ガスの環境への影響などを考慮した結果である。
- 車体底面は岩などとの衝突に備えて大形のプロテクターを装備
- ギアのチェンジペダルは不用意にブーツが当たらないようステップから離して設置
またステップは、車高の高いモトクロッサーに比べても高い位置にあり、スタンディングポジションによってさらに高重心の状態となる。この高い重心に加えてライダー自身の重心移動によって、トライアル競技特有のトリッキーな走破性を発揮する。
競技用車種の常として保安部品は備えていず、そのままでは公道を走行することはできない。しかし、ヨーロッパでは前照灯や尾灯などの灯火類の装備を義務付けられている場合もある[2]。また、公道を自走して移動する必要があるツーリングトライアルでは、保安部品を装着して公道走行が可能なように登録を受けたトライアルバイクしか出走できない。
公道での使用を前提とする一般向けの乗用車では、かつて本田技研工業のTLM220やTL125がトライアルバイクとしての基本機能を備えており、特にTLM220Rは保安部品を取り外すことで競技専用車として通用する潜在的能力をもっていた[5]。
現在、国内メーカーでは本田技研工業およびヤマハ発動機から競技専用車は発売されているが、公道走行可能な車種は発売されていない。公道走行可能なトライアルバイクの新車は、モンテッサ(HRCが技術提携)、ガスガス、ベータ、シェルコ、スコルパ(ヤマハがエンジンを供給)といった外国車に限られる。これら乗用車としてのトライアルバイクは、舗装道路を走行することもあるので、一種のデュアルパーパスマシンともいえるが、トライアルバイクの常として座席が簡素であるほか、燃料タンクは6〜6.5リットルと少量であるなど、長距離を移動する手段としては適切とはいえない。また、ヤマハ発動機のトリッカーもトライアルバイク的な性格をもつが、プロテクターを装備しないなど、より公道・舗装道路での運用に重点を置いている。
[編集] 装具
トライアルはモトクロスやエンデューロと同じオフロードで行われる競技であるが、ライダーの装備はそれらとは大きく異なっている。
ヘルメットは、顎の部分を守るチンガードを廃した、いわゆるジェット型ヘルメットを用いる。これは、トライアルはモトクロスやエンデューロに比べて絶対的な競技速度域が低いためにチンガードはさして重要ではなく、それよりもチンガードを廃することによってより広い視界を確保したほうが良いためである。同様に前頭部にはバイザーが装備されているが、これも視界確保のために他のオフロード用ヘルメットに比べて短いものが装備される。そして、側頭部には外部の声や音を聞き取るために穴やスリットが開けられている。また、ゴーグルは視界の妨げになるために基本的には装着しない。
服装は、一般的にはモトクロスやエンデューロ用のジャージにレーシングパンツを装着することが多いが、生地により柔軟性を持たせて動きやすさに重点を置いたトライアル専用のジャージやパンツも発売されている。さらに全日本選手権スーパークラスや世界選手権クラスの選手の中には、より動きやすさを求めて、薄手の生地で作られた身体に密着するワンピースタイプのジャージを着用する選手も多い。グローブは、より繊細かつ微妙なクラッチ・ブレーキ操作を可能にするために薄手のものを用いる。動きやすさを重視するためプロテクターは基本的に装着せず、装着してもライダーの動きを妨げない小型のものをジャージの下から肘や膝に装備する程度である。
ブーツは、外見こそモトクロス用やエンデューロ用に酷似しているが、セクションの下見などで不整地を歩くことが多い関係上、プロテクション効果よりも歩きやすさを重視した柔軟性の高いものとなっている。
[編集] その他
- 世界選手権などでのプロフェッショナル・トップライダーの技は一般人の常識を超えるものであり、足をつかずにオートバイを長時間停止させたり、垂直な壁を登ったりする。技術的には、足を付かずにバックすることもできる。
- 特撮番組『仮面ライダークウガ』においては、トライアル選手の成田匠・亮兄弟がバイクスタントを担当した。クウガのバイク・トライチェイサー2000などの撮影用ベースになったのは、ガスガス社(スペイン)のバイク・パンペーラ250である。
- トライアルバイクを使ったシーンが印象的な瞬間接着剤のコマーシャルがあった。内容は前輪を持ち上げ(ウィリー走行)、前輪を柱に当てて停止すると前輪が柱に接着される為、ライダーが降りてもオートバイは倒れずそのまま立っている、というものであった(1985年東亞合成のTVCF。このCFは、東亞合成のウェブサイトで見ることが出来る)。なおこのとき実演していた国際A級ライダー(当時)の工藤やすゆきは、ウィリーによる連続走行距離の世界記録保持者である。
- 2004年のトライアル世界選手権では、藤波貴久(ホンダ)が日本人初の世界チャンピオンとなった。
[編集] 脚注
- ^ 世界選手権ユース125のように排気量が限定されている場合もある。
- ^ い ろ 加藤隆夫監修『ライダーのためのバイク用語辞典』CBSソニー出版。ISBN 4-7897-0040-2。
- ^ あくまでも省略されているだけであり、着座しても何ら問題はない。
- ^ そのため、アスファルトなどで舗装された道路を走行するとすぐに磨り減ってしまう。
- ^ アウトライダー編集部編『BIKE徹底比較テスト'91』アウトライダー、1991。
[編集] 外部リンク
最終更新 2009年11月8日 (日) 12:27 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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