トリスタン
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トリスタン(Tristan, トリストラム, トリシュトラム)は、『トリスタンとイゾルデ』やアーサー王物語』などに登場する伝説の人物。アーサー王伝説においては「円卓の騎士」の一人となっている。
「トリスタン」という名前がピクト系であり、またトリスタンの父親の名前もピクト系であることからトリスタンの起源はピクト人の伝承にあるのではないかと思われている。そして、この物語がコーンウォールを経て、ブルターニュへ、そして西洋の各地に移ったと見られる。
中世ヨーロッパの散文『トリスタンとイゾルデ』、または『トリスタン物語』の主要人物である。もともと『アーサー王伝説』とは別の伝説であったが、『散文のトリスタン』以後、アーサー王物語にも組み込まれた。マロリー版では中盤においてランスロット卿とともに実質的な主人公として活躍する。
リヒャルト・ワーグナーの歌劇『トリスタンとイゾルテ』に拠り、トリスタンの名前で有名であるが、トリスタンはフランス語やドイツ語での呼称であり、英語ではトリストラムと呼称される。
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[編集] 一般的なあらすじ
[編集] 生い立ち
トリスタンの伝説は各地で伝えられているため、版によって一致しないことが多い。多くの版で共通するのは、トリスタンはリオネスの王子という点と、トリスタンの出生前に父親を失った(ゴットフリート版など)、あるいは父親が母親以外の女性と関係を持ち、家庭に帰ってこなくなった(マロリー版)という悲しみから母親に「トリスタン(悲しみの子)」と名づけられた点である。
以下において粗筋を紹介するが、これは多くの版で共通するところを紹介するものであり、細部が異なるバージョンは無数に存在する。
ゴットフリート版では、両親の名前は、リオネス(ライオネス)の王メリオダスと王妃ブランシュフルール。これが、マロリー版では母の名前がエリザベスとなっていたりする。また、マルク王にしても、マロリー版やゴットフリート版では母方の叔父であるが、父方の叔父となっている版もある。
いずれにしろ、トリスタン伝説において両親は物語の出だしのみに登場するだけであり、中盤以降は登場しなくなる。そのため、トリスタンは叔父であるコーンウォールのマルク王の下に身を寄せることになる。
[編集] イゾルデとの関係
アイルランドの使者として、モルオルトが、コーンウォールに貢物を要求するが、マルク王はこれを拒絶。事態がこじれたので、モルオルトとトリスタンが決闘することになるが、トリスタンはモルオルトに勝利する。敗北し、重傷を負ったモルオルトはやっとのことでアイルランドに帰還したが、直後に死亡。このモルオルトがアイルランドの王族であったため、のちの愛人・イゾルデとのあいだに確執が生じることになる。
一方、モルオルトが剣に毒を塗っていたため、トリスタンも傷口が腐敗するという重傷を負う。これを治療できるのは、この世にアイルランドのイゾルテのみであるという(イゾルテの母親であるアイルランド王妃とする版もあり)。当然、モルオルトを殺したトリスタンはアイルランドの仇となっているので、トリスタンは名前をもじって「タントリス」(名前が英語版のように名前がトリストラムとなっている場合は「トラムトリスト」)との偽名を名乗ってアイルランドに渡る。そこで、身分を隠して治療を受けるかたわら、イゾルデ姫と心を通わせあう。しかし、治療が終わると、トリスタンはコーンウォールに帰国する。
コーンウォール帰国後、たびたびトリスタンがイゾルデの美しさを口にすると、いまだに独身であったマルク王が興味を持ち、トリスタンに対しイゾルデを妻としたいから連れて来るように、との命令を出す。よりにもよってトリスタンにこのような命令を出すあたり、マルク王の正気が疑われるが、版によってトリスタンの功績を羨んだ廷臣が口を出した、あるいはマルク王自身がトリスタンを嫌っていたとの説明が入ることが一般的である。
再度のアイルランド入国を果たしたトリスタンは、竜を退治したり、正体がバレたせいでモルオルト殺しの責任を追及されたりもするが、なんとかアイルランド王から許しを得てイゾルデをコーンウォールに連れ帰る。このとき、帰りの船でトリスタンとイゾルデが過って惚れ薬をのんでしまい、お互いを愛し合うといったアクシデントが発生し、のちの不幸の伏線となってしまう。
[編集] マルク王との確執
無事にイゾルデとマルク王を結婚させたが、これからトリスタンはマルク王との確執に苦しむことになる。版によっては、この結婚以前にトリスタンがイゾルデの処女を奪ってしまっていたため、マルク王との初夜においてイゾルデの代理として侍女をよこすエピソードや、不倫をしていると疑われ(まぎれもない事実なのだが)、これを晴らすために時には策略すら用いたりするエピソードが存在する。
なお、このマルク王は版によっては性格がかなり異なっており、トリスタンを羨む廷臣に讒言され、心ならずもイゾルデとの仲を疑うというトリスタンに好意的な人物に描かれることもあれば、トリスタンを嫌いぬく悪人とされる版もある。いずれにせよ、トリスタンは宮廷内の確執に耐えられず、コーンウォールを出ることになる。
[編集] トリスタンの最期
コーンウォールを出たトリスタンは、旅の途中、これまた版によって出自は異なるのだが、かつての恋人と同名である「イゾルデ」という女性と出会う。なお、これ以降は区別のため姫は「金髪のイゾルデ」あるいは「美しいイゾルデ」と呼ばれ、ここで登場した女性は「白い手のイゾルデ」と呼ばれる。
名前がどうにも気になったとか、単純に「白い手のイゾルデ」に惚れた、あるいは「白い手のイゾルデ」の兄と友人になったから、などの説明が入り、トリスタンは「白い手のイゾルデ」と結婚する。しかし、「金髪のイゾルデ」を忘れられなかったトリスタンは、この「白い手のイゾルデ」と床を同じにすることはなかった、と説明が入ることが多い。
そんなある日、ふとしたきっかけからトリスタンは瀕死の重傷を負ってしまう。これを治療できるのは「金髪のイゾルデ」しかいない、ということで使者がアイルランドに派遣される。このとき、トリスタンは、帰りの船にイゾルデが乗っているなら白い帆を、乗っていないなら黒い帆を掲げてくれるように依頼する。はたして、「金髪のイゾルデ」を乗せたアイルランドの船がやってきた。もはや動きもままならないトリスタンは妻である「白い手のイゾルデ」に帆の色を尋ねるのだが、彼女は嫉妬から「黒い帆です」と答えてしまう。この答えに絶望し、気力をなくしたトリスタンは、「金髪のイゾルデ」の到着を待たず死亡した。
[編集] アーサー王物語での活躍
マロリー版などにおいては、トリスタン卿はマルク王の確執により、主にコーンウォールを出てから円卓の騎士として数々の活躍をするエピソードが追加されている。ただし、もともと「トリスタンとイゾルデ」と「アーサー王物語」は別系統の物語なので、色々とつじつまの合わない点が見られる。例えば、マルク王はコーンウォールの王という設定になっているが、「アーサー王物語」の初期においてはコーンウォールはアーサー王の母、イグレーヌの前夫であるコーンウォール公ゴルロイスの領地であったはずである。そして、物語初期のブリテンの統一戦争、ラストのカムランの戦いなどにもいっさい登場しないが、トリスタン卿にかかわる中盤のみにおいて突如としてマルク王が領主として登場する。
また、マロリー版ではトリスタン卿はイゾルデ一筋というわけではなく、イゾルデの登場前にセグワリデス婦人と恋仲に会ったとするエピソードも挿入されている。さらに、叔父であるマルク王もセグワリデス婦人に懸想しており、この時からマルク王はトリスタン卿は対立関係に立つようになる。
武勇において、トリスタン卿は円卓最高の騎士であるランスロット卿とならぶ騎士であり、数々の武勲を残している。交友関係としては、ランスロット卿、ラモラック卿やディナダン卿らと仲がよい。また、イゾルデに恋心を抱くパロミデス卿と対立し、後には友人となるエピソードが比較的よく語られる。
ある槍試合では「アーサー王の敵方について、優れた円卓の騎士を打ち負かす方が名誉が得られるだろう」というパロミデス卿の提案に乗り、変装したうえでパロミデス卿、ガレス卿、ディナダン卿の4人でガウェイン卿らを始めとする円卓の騎士の多くを打ち倒したりもしている。
マロリー版においては、「白い手のイゾルデ」と結婚するものの、「金髪のイゾルデ」を愛し続け、ついには「金髪のイゾルデ」に駆け落ちを持ちかけたりもする。これに対し、おなじく人妻との不倫関係にあったランスロット卿が「喜びの城」を二人の住まいとして提供し、幸せな日々を送ることとなる。ただ、パロミデス卿をキリスト教に改宗させた後はトリスタン卿は物語に登場しなくなる。
その後、ランスロット卿らの口から世間話ののひとつとして「マルク王と和解して、イゾルデは結局アイルランドへ返された。だが、マルク王はトリスタン卿を酷く恨み、イゾルデの前で竪琴を弾いているトリスタン卿の背後から心臓を一突きにして殺害した」と語られる。
また、マロリー版には登場しないが、イタリア・スペインの騎士物語にはトリスタン卿は「金髪のイゾルデ」との間に男女一人ずつの子供をもうけるとするものもある。なお、このトリスタン卿と同名の息子・トリスタン2世はコーンウォールの王となり、カスティリャ王の妹と結婚するなどのエピソードを持っている[1]。
[編集] 脚注
- ^ 『図説アーサー王伝説事典』、の「トリスタン」、および「トリスタン2世」の項目を参照。
最終更新 2009年10月12日 (月) 10:54 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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