ドライスーツ

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汚染水域等での潜水時に着用される、加硫ゴム生地を用いたフード一体型のシェルドライスーツ

ドライスーツとは、内部に水が浸入しない保護スーツである(内部に水が浸入するものは、ウェットスーツと言う)。着用者の身体が外部の水に触れることがないため、気温や水温が低い時期や、汚染された水域での着用に適している。型は全身一体のワンピース型で、特に潜水用のものではブーツ、時にはフードやグローブまでもが一体となっている。生地の接合部は各種の方法で水密に仕上げる。身体とスーツの間に何らかのアンダーウェアを着用することが多いため、ウエットスーツよりもルーズフィットに仕立てる場合が多い。着脱は防水ファスナー等の水密構造を有する開口部を通じて行い、さらに柔らかいゴムでできた防水性シールにより首、手首、足首からの水の浸入を防いでいる。スクーバダイビングに用いられるドライスーツは、レギュレータから供給された空気を、スーツに設けたバルブから内部に送り込むことで、水圧下での締め付け(スーツスクイズ)を回避するとともに、浮力の調整ができるようになっている。逆に言えば、スーツ内に空気を送り込むことができないスキンダイビングでは、スーツスクイズの問題を解決できず、また潜行するにしたがって浮力が失われ、最悪の場合浮上が不可能になることから、スキンダイビングでドライスーツを着用することはできない。ヘルメット潜水で使用される潜水服も、ドライスーツの一種である。 なお、セミドライスーツと呼ばれる保護スーツもあるが、これはドライスーツというよりもウェットスーツの一形態である。詳しくは、当該記事参照。

目次

[編集] 形態

スクーバダイビング用のドライスーツは、以下の2種に大別される。

[編集] ネオプレンスーツ

ウェットスーツに用いられるのと同様の発泡クロロプレン生地[1]を用い、身体に対しタイトフィットに仕立てたスーツである(ルーズフィットに仕立てることも不可能ではないが、この場合、ネオプレンスーツとシェルスーツ、両者の欠点を併せ持つスーツになってしまう)。生地がある程度の保温性を有するためアンダーウェアは必要ないか、薄いものでよく、また、内部に水が浸入してしまった場合(俗に水没という)でも、セミドライスーツ同等の保温性が確保できる。反面、タイトフィットに仕立てる関係上あまり厚いアンダーウェアを着用することは不可能であるため、あまりに冷たい水中での使用には制約があり、また保温性を落とすことはできないため、水温が高い場合の使用には向いていない。発泡ネオプレン固有の欠点として、生地の中に気泡を有するため周囲の水圧により保温性が変化し、またピンホールが生じやすく耐久性に劣る欠点がある。タイトフィットなため、水中での運動性に優れる利点があるが、反面陸上での運動性は制約される。また、スクイズ防止のためにスーツ内部に供給する空気が比較的少量で済むことから浮力調整が容易であり、初心者でも比較的取り扱いやすい利点もある。

[編集] シェルスーツ

生地に防水性の布地を用い、身体に対し比較的ルーズフィットに仕立てたスーツである。生地自体の保温性はほとんどなく、別途スキーウェア状のアンダーウェアを着用して必要な保温性を確保する。アンダーウェアの選択次第で、アイスダイビング等の極寒環境から、水温が高い場合[2]まで対応できる。ルーズフィットのため、水中での運動性はネオプレンスーツと比較するとやや劣るが、陸上での運動性は一般に優れる。また、生地の伸縮性は必須ではないため、強度や耐久性に優れた素材を使用でき、さらに水圧による保温性や浮力の変化がない利点がある。スーツ内部に供給する空気は比較的多量に必要であり、その分浮力調整が難しい。


ネオプレンスーツ、シェルスーツそれぞれの利点を活かした、ネオプレンスーツの下半身と、シェルスーツの上半身を組み合わせた製品もある。 日本では、スキューバダイビング用としてはネオプレンスーツが圧倒的に多く使われているが、欧米、特に米国ではシェルスーツが使用される場合も多い。 スキューバダイビング以外の用途には、ネオプレンスーツが使われる場合とシェルスーツが使われる場合がある。例えばサーフィンではネオプレンスーツが主として使われ、セーリング水上オートバイではシェルスーツが使われる場合が多い。水上での活動に使われる場合、水圧の影響が無いため潜水用スーツよりも簡易な構造で十分な浸水防止が可能であり、潜水用としてはセミドライスーツとして扱われる程度の構造のものもドライスーツとして扱われている。

[編集] 素材

[編集] ネオプレンスーツ用の素材

[編集] 発泡クロロプレンゴム

ウェットスーツに用いるものと同様の生地である。ドライスーツ用としては、ピンホールの発生を極力避けるため、比較的硬いグレードが選択される。低水温での着用が前提となることから、ウェットスーツの場合と比較して裂けの発生は深刻な問題であり、強度面で劣るスキン地は使用できない。外面はジャージタイプ、内面はジャージまたは起毛タイプのものを用いことがほとんどである。

[編集] ラジアルコーティング

発泡クロロプレンゴム生地の外面に、(気泡を含まない)ゴムなどの非吸水性素材をコーティングしたものである。内面は通常のクロロプレン生地と同様である。表面の吸水性が非常に低いため、汚染物質の除去が容易なこと、浮上後気化熱により冷やされることがないこと等の利点があり、日本のコマーシャルダイビングにおいては主流の素材になっている。通常の発泡クロロプレン生地と比較すると若干伸縮性すなわち運動性に劣ること、また生地が重くなることが欠点として挙げられる。

[編集] シェルスーツ用の素材

[編集] 圧縮ネオプレン

硬度の高い発泡クロロプレン生地であり、また内部の気泡の圧力を高めている。通常の発泡ネオプレンの欠点である、圧力による体積変化と、それに伴う浮力、保温性の変化を抑制した素材であるが、反面伸縮性が犠牲になっているため、これを用いたスーツはあまりタイトフィットにできず、シェルスーツ用の素材である。

[編集] バイラミネート

ゴム、プラスチック等の防水性フイルムの片面に、繊維質の布帛を貼り合わせた素材である。軽量なスーツを製造できるが、強度面では他の素材と比べ劣る。

[編集] トリラミネート

ゴム、プラスチック等の防水性フイルムの両面に、ナイロン、ポリエステル等の繊維質布帛を貼り合わせた素材である。防水層が外部に露出していないため、防水層の損傷による浸水が発生しにくく、また強度面でも優れるなど特性のバランスが取れていることから、レクリエーショナルダイビング用シェルスーツの高級モデルには、この素材を使用したスーツが多い。

[編集] 加硫ゴム

ポリエステル織物などの基材に、天然ゴム/EPDMゴムブレンド、水素添加ニトリルゴム等のエラストマーをコーティングした素材である。近代的な加硫ゴム製ドライスーツは、この素材の生地を未加硫の状態で一体に接合した後、金属製のマネキンに被せ、大きな加硫釜に入れて熱加硫することで製造される。この工法によれば、部材が完全に接合するので、防水性や防水信頼性に非常に優れたドライスーツが出来上がる。表面の吸水性が非常に低いため(実質的にゼロ)、汚染物質の除去が容易であり、素材に吸収された水分の気化熱による浮上後の体温損失がない。また、ピンホールの修理をタイヤチューブのパンク修理同様の方法で容易かつ迅速に行うことができる。これらの利点により、欧米のコマーシャルダイビングや、南極等極寒地[3]でのダイビングにおいては主流の素材となっている。生地が重く嵩張ること、また製造に使用するマネキンをサイズ毎に準備する必要があることから小刻みなサイズ設定ができないことが欠点である。 ヘルメット潜水に用いられる伝統的な潜水服もこの素材でできているが、上記とは異なり、生地の状態であらかじめ加硫した部材を接着剤で接合することで製作される。表面の吸水性が低い等の特徴は同じであるが、防水信頼性の点では上記の方法で製作されたものと比較すると劣る。

[編集] 防水透湿生地

ゴアテックス等の、水蒸気は通すが液体は通さない生地を用いたドライスーツがある。激しい運動をしても蒸れにくい利点があるが、水中ではその利点を得ることができないばかりか、むしろ徐々に水が内部に浸入することになるため、潜水用のスーツに用いられることはほとんど無く、ヨット、セイルボード、水上オートバイ用等、主として水上での活動になる用途のスーツにのみ用いられる。

[編集] 部品

[編集] 防水ファスナー

2枚の弾性シートをエレメントで締め付けることで水の浸入を防ぐようにしたファスナーである。耐水性によりライトデューティータイプ、ミディアムデューティータイプ、ヘビーデューティータイプの3種に大別される。後者の方が耐水性、耐久性とも高いが、価格が高価になるのみならず、柔軟性が犠牲になる欠点がある。水面での活動にのみ用いられるドライスーツではライトデューティータイプのファスナーを使ったものがあり、作業潜水等に用いられるドライスーツにはヘビーデューティータイプのファスナーを使ったものもあるが、一般にはミディアムデューティータイプのものが多く用いられている。

[編集] シール

首、手首あるいは足首などの開口部に設けられる。表面は平滑で、着用者の皮膚に密着することで水の浸入を防ぐようになっている。素材としては発泡クロロプレンのうち、特に伸縮性の高いタイプのもの、あるいはラテックスが通常用いられる。後者の方が水密性や快適性に優れるとされるが、経年劣化しやすく、定期的な交換が必要になる欠点がある。

[編集] ブーツ

上述したように、潜水用のスーツでは他の部分と接着し一体化したものも多い。別部材として製作した長靴状のものが多く用いられる。フィンキックに伴う繰り返し応力により、特に甲の部分に劣化とそれに伴う浸水が生じやすく、シールと並び交換が必要になる頻度が高い。

[編集] 使用方法

本稿ではスクーバダイビングにおける使用方法について記述する。なおここでの記述はスクーバダイビングの指導団体が行う講習を代替するものではなく、また代替できるものでもない。安全上の見地から、実際に潜水を行う際は、ドライスーツでの潜水についての高度な知識と経験を有する指導者の指導を受けることが強く推奨される。

[編集] 準備

ウェットスーツよりも浮力が大きいため、ウェイト量を増やす必要がある。着用者の体格、ドライスーツ・アンダースーツの厚みや構造によっても異なるが、最大で20kg程度のウェイトが必要になる。初めて着用するスーツの場合には、ネックシール、リストシールの開口部の径を、着用者の体格にあわせ調整する必要がある。開口部を大きくするのは、ラテックス製のシールの場合は適切な大きさまで切断することで行い、ネオプレン製のシールの場合には大きめの円筒に被せて伸ばすことで行う。開口部を小さくするためにはシールの交換が必要である。着用前にシールの内側にタルクや専用ローション等の潤滑剤を付与する。また防水ファスナーのエレメントにパラフィンワックスを付与して開閉を容易にする。

[編集] 着用

適切なアンダーウェアを着用したのち、全開にしたファスナーから大腿部までの部分を片脚ずつ着用する。両脚の着用が終わったらスーツを腰まで引き上げる。サスペンダーの付いたスーツの場合にはここでサスペンダーを肩にかける。次に頭部をネックシールに通し、ネックシールを内側に折り込む。さらに手首を留守とシールに通す。なお、頭部と腕の着用順序は逆になっても良い。最後に防水ファスナーを閉じると着用は完了である。防水ファスナーが背中にあるスーツの場合は、無理な力が加わることによるファスナーの破損、またアンダーウェアの巻き込みによる浸水やファスナーの破損を防ぐため、ファスナーの開閉は着用者以外が行うべきである。着用後他のダイビング器材を装着する。吸気バルブにレギュレーターからの吸気ホースを接続する。

[編集] 潜行

排気バルブより内部の空気を放出する。これにより浮力が減少し自然に潜行が行われる。ある程度の水深に達したところで吸気バルブより少量の空気を内部に供給し、スクイズを軽減、および浮力の調整[4]を行う。

[編集] 浮上

浮上は排気バルブより余分の空気を排出しながら浮上する。

[編集] 脱衣

シールを手で拡げながら首や手首を抜き去る。このときに力が集中するとシールが破損するので、できるだけ面で力がかかるように注意する。

[編集] 保管

使用後のスーツは水で、必要があれば適切な洗剤を使用して外部を洗浄する。特にシールやファスナーの部分は汚れにより劣化する場合があるのでよく洗浄する。スーツの内側には、着用中にかいたが凝縮しているため、裏返した上よく乾燥させる。必要があれば内側も洗浄する。特にラテックス製のシールが使われている場合、乾燥後、シールの部分にタルクを付与しておくことが好ましい。防水ファスナーは完全に開け[5]、ファスナーにストレスがかからないようにスーツを丸めて保管する。

[編集] アクセサリ

[編集] グローブ

低水温の際に着用されるというドライスーツの性質から、保温性の高い発泡クロロプレン生地製のものが多く用いられる。また特に水温の低い場合、また汚染水域用として、水密性のリングを用い袖口に取り付けることでスーツ本体と一体化し、内部に水が浸入しないドライグローブと呼ばれるものもある。

[編集] フード

ドライスーツが用いられる程度の水温ではフードの着用は必須である。通常は、ウェットスーツ着用時に用いるものと同様の、スーツ本体とは別仕立ての発泡クロロプレン生地製のものが用いられるが、特に水温が低い場合や汚染水域用には、ドライスーツ本体に接合し、首元からの水の浸入をなくしたものも用いられる。汚染水域用としてはさらに、表面が平滑で汚染の除去が容易な、ラテックス製やゴム製のフードが用いられることもある。

[編集] ピーバルブ

ドライスーツを着用したまま尿を排泄するための装置である[6]。潜水時間の長いテクニカルダイビングでは良く用いられるが、リクエーショナルダイビングで用いられることはあまりない。スーツの内外を連絡するためのポートと、受尿器とポートを接続するためのホース、外部の水の逆流を防ぐための逆流防止バルブと、ホース内外の圧力を均等化し、ホースのスクイズを防ぐための一方通行バルブからなる。尿は受尿器→ホース→逆流防止バルブ→ポートを経てスーツの外部に放出される。受尿器としては、男性はコンドームカテーテルを、女性は陰裂を覆うように装着する専用のアダプタ[7]を用いる。なお、スーツへの加工が不要であり、また入手性に優れる点から、ピーバルブに代わり紙おむつが用いられることも多い。

[編集] 脚注

  1. ^ 素材の一般名はクロロプレンであるが、スーツの形態名としては専らデュポン社の登録商標であるネオプレンの語が用いられ、クロロプレンスーツと呼ばれることはまず無い。
  2. ^ 汚染水域等では、ウェットスーツで十分対応できる水温の場合でも、汚染からの身体保護を目的にドライスーツを着用する場合がある。
  3. ^ 気温が0℃付近以下の環境では、表面に吸収された水分が短時間で凍結・固化してしまい、その後の運動性を大きく妨げるため、表面に水分を吸収するドライスーツを使用することは勧められない。
  4. ^ ダイビング指導団体のテキストには、ドライスーツ着用時の浮力調整ではドライスーツへの給排気のみで行い、BCは水面での浮力確保のみに用いるように指導しているものが多いが、浮力調整については給排気が迅速に行えるBCで行い、ドライスーツへの吸気はスクイズ回避のための最小量にとどめるべきという意見もある。
  5. ^ 弾性材をエレメントで圧縮して防水性を発揮する構造になっているため、長時間閉じたままにすると弾性材が変形して防水性が失われる。
  6. ^ http://www.p-valve.com
  7. ^ 一例を挙げるとSHE-Pがある。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

  • YKK PROSEALファスナー…世界最大のシェアを持つYKK社(傘下の英BDMブランドを含む)による防水ファスナーの商品解説

最終更新 2009年10月11日 (日) 15:35 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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