ニコチン

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曖昧さ回避 この項目では、化学物質としてのニコチンについて記述しています。同名のバンドについては「NICOTINE」をご覧ください。
ニコチン
ニコチンの構造式
一般情報
IUPAC名 (S)-3-(1-メチル-2-ピロリジル)ピリジン
分子式 C10H14N2
分子量 162.23 g/mol
形状 無色油状液体
CAS登録番号 54-11-5
SMILES C1=NC=CC=C1[C@@H]2CCCN2C
性質
密度 1.01 g/cm3, 液体
水への溶解度 混和する
融点 −80 ℃
沸点 247 ℃(分解)
粘度 2.7 mPa・s (25 ℃)
出典 ICSC

ニコチン (nicotine) はアルカロイドの一種であり毒物および劇物取締法に毒物として指定された物質である。揮発性がある無色の油状液体化学式は C10H14N2。主にタバコの葉に含まれる。

「ニコチン」の名前は1550年にタバコ種をパリに持ち帰ったフランスの駐ポルトガル大使ジャン・ニコ(Jean Nicot, 1530年1600年)に由来する。

目次

[編集] 合成経路

トリプトファンを出発物質として数段階の合成経路を経てニコチン酸がまず出来上がる。そして、ニコチン酸にオルニチン由来のピロリジン環が付加することでニコチンが合成される。また、ニコチン酸にリシン由来のピペリジン環が付加する事で、類縁化合物のアナバシン (anabasine) が合成される。

なお、ニコチンはタバコ葉内にリンゴ酸塩、またはクエン酸塩として存在する。ニコチンの類縁化合物はアナバシンを含めて30種類以上あり、ニコチン系アルカロイドと総称されている。

[編集] 薬理作用

ニコチンは主に中枢神経および末梢に存在するニコチン性アセチルコリン受容体 (nAChR) に作用することで薬理作用を表すと考えられている。中枢神経において nAChR は広範囲に分布しているため、ニコチンは脳の広い範囲に影響を与える。

そのうち、特に依存性の形成に関与する部位として中脳辺縁系のドパミン神経系が挙げられる。中脳の腹側被蓋野、側座核などの nAChR にニコチンが結合すると、直接的あるいはグルタミン酸の放出を介してドパミン系神経の脱抑制を起こす。このドパミン神経系は「報酬系回路」として知られており、快の感覚を個体に与えるため、強化行動をひき起こす。この中脳辺縁系のドパミン神経の興奮を介した依存性の形成メカニズムは他の依存性薬物(コカインヘロインアンフェタミンなど)と同じとされるが半数致死量の低さと他細胞系への薬理作用の点から、麻薬とはされておらず、毒物に指定されている。末梢においては、中枢神経からの間接的な作用と、末梢の nAChR に作用することで毛細血管を収縮させ血圧を上昇させる、縮瞳、悪心、嘔吐、下痢などをひきおこす。中毒性があり、通常量でも頭痛・心臓障害・不眠・苛立ちを感じるなどの症状、過量投与では嘔吐、振戦、痙攣、死亡を起こす。ニコチンは体内で急速に代謝され、コチニンとなって主に尿中から排泄される。ニコチンの血中半減期が20~30分であるのに対しコチニンの血中半減期は30時間以上と長いが、コチニン自体に毒性はない。(この長い半減期の差を利用して喫煙者(受動喫煙含む)・非喫煙者の判別テストなどが行われる)

その他、タバコにまつわることに関しては禁煙及び喫煙などを参考のこと

[編集] タバコの誤食によるニコチン中毒

誤食・誤飲によるニコチン中毒患者の多くは乳幼児である。誤食では、胃液酸性のためにニコチンの溶出が悪く吸収は遅い。しかし既に水に溶けたニコチンは吸収が早く症状も重いとされている。ちなみに、純なニコチンが含まれるのは灰であって葉や煙ではない。[要出典]

[編集] 致死量の目安

乳幼児ではニコチン量で10–20mg(タバコ0.5-1本)、成人は40–60mg(2-3本)を、直接、溶液で飲下した場合に急性中毒に達する(急性致死量[1][2]

毒物及び劇物取締法上での毒物は誤飲した場合の致死量が2g程度以下のものとされ、薬事法上の毒薬は経口投与で体重1kgあたり30mg以下、皮下注射で体重1kgあたり20mg以下のものをいう。このため、ニコチンは毒物及び劇物取締法上での毒物であり、薬事法上の毒薬ではないが、急性中毒による死亡リスクをとらえ、最小中毒量を最小致死量の目安とすれば、いずれの致死量に関する条件にも合致する。

また、タバコや禁煙補助薬はニコチンを含み、一般人でも簡単に購買可能であり、子供・老人による誤食事故が問題になることがある。

[編集] 症状

軽症では嘔気やめまい、脈拍上昇・呼吸促迫などの刺激・精神の脱抑制や興奮症状がみられる。重くなると、徐脈・痙攣意識障害・呼吸麻痺などの抑制症状が見られる。嘔吐は 10~60分以内、中毒症状は2~4時間の間にほとんど現われ、誤食による中毒症状の出現頻度は、軽い症状も含めて14%程度とされる[1]

[編集] 検査

低カリウム血症、低血糖白血球増加など。重症では、ショックに伴う臓器障害を起こしうるので、肝機能・腎機能・凝固線溶系の異常が見られることがある。動脈血ガス分析では、呼吸麻痺による低酸素血症や高 CO2 血症がみられる。

[編集] 治療

タバコを飲み込んだ場合は、他物の誤食と異なり、水やミルクを飲ませた後に吐かせる方法は、痙攣を突発的に誘発することがあるので勧められないが、ニコチン自身の作用によって自然に嘔吐することも多い。摂取1時間以内で、重い症状を示したり致死量を摂取していると思われる場合のみ胃洗浄をおこない、重症なら活性炭下剤排泄を促進する。 徐脈に対してはアトロピンを投与する。摂取後4時間経っても症状が出ない場合は、治療は不要である。

また、たばこ1本でニコチン量20mgとすれば、胃酸中では一時間に2.4mg(0.2%/分)人体に吸収されること[1]から、無理に吐かせようと水などを多く飲ませる処置が、胃酸を薄めニコチンの吸収を速めて重篤化を招くことを重くみて、米国では、乳幼児のタバコの中毒量はタバコ2本(吸いがら6本)以上[1]とされ、それ以下では処置しないと報告されており、摂取後4時間および24時間までの経過観察を、電話などで丁寧におこなう方法がとられる。(旅行などの際には、注意すること)

[編集] ほか用途

ニコチンを硝酸などにより酸化するとニコチン酸が得られる[3]。ニコチン酸はニコチン酸アミドとともにナイアシンの成分として知られる。

[編集] その他

しばしば未成年者にタバコに含まれるニコチンの有害性を示すために、少量のニコチンが含まれる水の中にイトミミズを入れる実験が行われるが、その死に方が非常にグロテスクなので年少者に見せる場合は注意が必要である。[要出典]

[編集] 参考文献

  1. ^ 日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 「タバコの誤飲に対する処置について」『日本小児科学会雑誌』102巻5号613、1998年。
  2. ^ 広島舟入こども救急室 こどもの事故 たばこの誤飲
  3. ^ McElvain, S. M. Organic Syntheses, Coll. Vol. 1, p.385 (1941); Vol. 4, p.49 (1925). オンライン版

[編集] 関連項目

最終更新 2009年11月6日 (金) 10:43 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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