ニシボリック・サスペンション

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ニシボリック・サスペンションとは、いすゞ自動車が開発・採用した4WSのこと。自社生産最後の3代目ジェミニ(開発コード;JT760シリーズ)で採用された。

機械的な制御を行わない、世界的でも珍しいナチュラル4WSシステムである。なお、名称の「ニシボリック」は、開発者である西堀稔の名前から命名された。

目次

[編集] 機構

コーナーリング時、後輪に発生する横力によってブッシュが撓み、後輪を前輪と逆位相方向(トーアウト)に向けることにより、一瞬、弱オーバーステア状態を作り出し、クルマをコーナーのイン側に向ける。また、その後の姿勢安定のための同位相方向(トーイン)への切り替えは、後輪が縮み側に移動することで行っており、元の位置(1G状態)以外(伸び側も)ではトーイン方向へ動く設定となっている。

[編集] 利点

車両の旋回運動性能は、簡単に言うと横加速度とヨーイングの応答(フェイズ)と増加量(ゲイン)をどう設定するか?にかかっている。通常のクルマでは操舵後まず横加速度が発生し、その後ジリジリとヨーイングが発生する。 ニシボリックサスでは操舵初期に立ち上がる横加速度を利用して後輪を前輪と逆相に操舵し、ヨーイングの立ち上がりを助ける。その後車両のローリングの増加につれて後輪の舵角を前輪と同相に切り、ヨーイングを収斂させ安定した定常旋回に入る。

[編集] 欠点

ニシボリックサスはその狙いから考えると未完成なまま市販された[要出典]様で、致命的とも言える幾つかの欠点があった。それが評論家や初期オーナの酷評へとつながったと思われる。

またニシボリックサス自体の開発車両がクーペ(ジオ・ストーム)だったとの情報もあり、前後の重量配分の異なるセダンへそのまま流用したことが未完成との評価につながったとの説もある。つまりJT760の総販売台数中の大多数を占めるセダンと販売台数の少ないクーペでは、4WSの効果の違いがでる可能性も存在する。

[編集] 後輪の操舵をゴムブッシュの変形に頼っている

これはつまり明確なばね系にヨーイングの応答を委ねてしまっていることになり、単純にばねマス系を考えると、ヨーイングが発振(発散)する傾向が強まると言える。 実際、JT760発売当時、モーターファン誌(現在は廃刊。実車の運動関連の計測データを掲載することで有名)が、ヨーイング共振周波数のレベルが余り高くない事を指摘、いすゞ自動車にて再度計測し直すという事件もあった。その後の経緯は今日に至るまで発表されていないが、モーターファン誌のデータ計測は、車両運動研究に於いて学会(自動車技術会)で有名な某大学教授監修の元に実施されており、信憑性が高いと考えられる。 このヨーイングが発散したがる傾向は、ヨーイングの確実な収斂が要求される自動車競技の世界では完全に拒絶され、一部で[アンチニシボリックサス](通称:ニシボリ殺シ)という逆相成分を殺したサスキットまで流通した。 尚、さまざまな4WSが登場する以前のサスペンション研究で、ヨーイングは前輪で発生/後輪で収斂させるのが好ましいという事が判っていた。ヨーイングは決して後輪で出してはいけないという事であるが、JT760の前のジェミニであるJT750の最終年次変更では、後輪のネガティブキャンバとトーインを強めたチューニングが施され、これは明らかに後輪によるヨーイングの収斂を狙った変更であった。このチューニングを施したいすゞ自動車が、次世代車にニシボリックサスを装着したのは理解に苦しむ。

[編集] フィーリングに合わない

一部の自動車評論家は、「コーナーリングでオーバーステアになってしまうということである。一般ドライバーならば恐怖心を感じるのではないか」と述べた。

車両旋回運動を考えると・・・ハンドル操舵後まず仮想旋回中心はリヤアクスルの延長線上に発現し、横滑り角βの増加と共に旋回中心が前輪方向に移動する。 この一連のプロセスはドライバが車両挙動を把握する為の重要なインフォメーションであるが、後輪を逆相に切ると、仮想旋回中心は後輪より前方に発現し、その後後輪が同相になるに従って仮想旋回中心も後輪に下がる事になり、著しくフィーリングと乖離する。 この話はニシボリックサスに限らず、ニッサン・スーパーハイキャスやマツダのトーコントロールハブなど、後輪が逆相から同相に切れ変わる4WSシステム全てに言える事であるが、JT760シリーズ中、特にスポーティなグレードの後輪実舵角は、車両のロール角が少ない為に逆相に切れっ放しとなっている事が判明しており、過渡領域を越え、定常円旋回状態に入ってもドライバーの感覚とのずれがあった。

だがこれはあくまで一般ドライバーでの話であり、車両限界を一杯まで使って走行するレースドライバーからは「FF車でありながらFR車的な挙動」には評価する声もある。

[編集] バランスの悪さ

JT760のカタログには、ステアリングギアボックスを高剛性のサブフレームに搭載してフィーリングを改善した、とあるが実際にはそのサブフレームが車体フロアの変形の大きい部位に固定されており、決して操舵効率が高い設計とは言えない。 本質的な操舵応答性が決して高くない車両に対し、収斂し難いリヤサスペンションの組み合わせでは、操舵に対するフェイズは低いがゲインが高い、バランスの悪いクルマに仕上がってしまっている。 ヨーイングと横加速度を分離出来ない一般ユーザの中には、ゲインの大きさだけを強調し、前例の無いクイックなクルマと感じる向きもあるが、同年代にハンドリングで評判のよかったクルマと計測データを比較すると、JT760の応答の低さとアンバランスなゲインの極端な高さに驚かされる。

[編集] JT760が不人気だった理由

しかし、JT760の不人気の理由を、未完成だったニシボリックサスペンションのみの責任には出来ない。市販車では、操縦安定性能の優劣は次の買換えに影響する事があっても、そのクルマの不人気には直接はつながらない。 JT760は販売初期から、GM主導のグリルレスの特異なデザインや、ディーゼルAT車の極端な高燃費(燃料消費が多い)など、開発時の志の高さとは裏腹に、ユーザに買い控えさせる要素が満載だったといえる。 いすゞ自動車が乗用車生産から撤退せず、JT760が順当に年次変更を続けていけば、ニシボリックサスペンションも当初の思惑通りに働く機構として完成させることが出来たかもしれない。

[編集] ニシボリック・サスペンション以外の後輪受動操舵

前述のマツダ・サバンナRX-7(FC3S)のほか、GM傘下となったサーブ・オートモービル各車にも採用例がある。 なお、マツダは現在のRX-8ロードスターにもトーコントロールハブを採用している為、ナチュラル4WSの系譜は間接的ながらも生き残り続けているとも言える。

[編集] 外部リンク

最終更新 2009年9月12日 (土) 00:45 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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