ハムレット
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『ハムレット』(Hamlet)は、シェイクスピア作の悲劇。5幕で、1600年から02年のころに書かれたとされる。正式名称は、「デンマークの王子、ハムレットの悲劇」(The Tragedy of Hamlet,Prince of Denmark)。4000行を超える、シェイクスピア作品中、最大規模の戯曲である。
デンマーク王子ハムレットが、父を殺し母を奪い王位を簒奪した叔父を討ち復讐を果たす。シェイクスピアの四大悲劇の一つ。コールリッジによる「悩める知識人」像が一般的だが、近年では「行動人ハムレット」という解釈も有力。
ハムレットの話は、同時代にトマス・キッドが『スペインの悲劇』という似た話を書いており、少なからずその影響を受けたといわれている。また、この話は北欧伝説が下敷きになっており、12世紀末にサクソ・グラマティクスが編纂した『デンマーク人の事績』(Gesta Danorum)に、モデルになったアムレート(Amleth)の武勇が伝えられている。
目次 |
[編集] 登場人物
- ハムレット(Hamlet):デンマーク王国の王子。
- ガートルード(Gertrude):ハムレットの母。クローディアスと再婚。
- クローディアス(Claudius):ハムレットの叔父。ハムレットの父の急死後に、デンマーク王に。
- 先王ハムレットの亡霊(King Hamlet, the Ghost):ハムレットの父。クローディアスの兄。
- ポローニアス(Polonius):デンマーク王国の内大臣。王の右腕。
- レアティーズ(Laertes):ポローニアスの息子。オフィーリアの兄。
- オフィーリア(Ophelia):ハムレットの恋人。ポローニアスの娘。
- ホレイショー(Horatio):ハムレットの親友。
- ローゼンクランツとギルデンスターン(Rosenkrantz and Guildenstern):ハムレットの学友。
- フォーティンブラス(Fortinbras):ノルウェー王国の王子。
[編集] あらすじ
注意:以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。
デンマーク王が急死する。王の弟クローディアスは王妃と結婚し、跡を継いでデンマーク王の座に就く。父王の死と母の早い再婚とで憂いに沈む王子ハムレットは、従臣から父の亡霊が夜な夜な城壁に現れることを知る。亡霊に会ったハムレットは、実は父の死はクローディアスによる毒殺だったと告げられる。
復讐を誓ったハムレットは狂気を装う。王と王妃はその変貌ぶりに憂慮するが、宰相ポローニアスは、その原因を娘オフィーリアへの実らぬ恋ゆえだと察する。父の命令で探りを入れるオフィーリアをハムレットは無下に扱う。やがて王が父を暗殺したという確かな証拠を掴んだハムレットだが、王と誤ってポローニアスを殺害する。オフィーリアは度重なる悲しみのあまり狂い、やがて溺死する。ポローニアスの息子レアティーズは父と妹の仇をとろうと怒りを燃やす。
ハムレットの存在に危険を感じた王はレアティーズと結託し、毒剣と毒入りの酒を用意してハムレットを剣術試合に招き、秘かに殺そうとする。しかし王妃が毒入りとは知らずに酒を飲んで死に、ハムレットとレアティーズ両者とも試合中に毒剣で傷を負う。死にゆくレアティーズから真相を聞かされたハムレットは、王を殺して復讐を果たした後、事の顛末を語り伝えてくれるよう親友ホレイショーに言い残し、死んでいく。
以上で物語・作品・登場人物に関する核心部分の記述は終わりです。
[編集] 構成
- 第一幕
- 第一場 - エルシノア城。その前の防壁の上。
- 第二場 - 城内。国務の間。
- 第三場 - ポローニアスの館。その一室。
- 第四場 - 防壁の上。
- 第五場 - 防壁の上、別の場所。
- 第二幕
- 第一場 - ポローニアスの館。その一室
- 第二場 - 城内の一室。
- 第三幕
- 第一場 - 城内の一室。
- 第二場 - 城内の大広間。
- 第三場 - 城内の一室。
- 第四場 - ガートルード妃の部屋。
- 第四幕
- 第一場 - ガートルード妃の部屋。
- 第二場 - 城内の一室。
- 第三場 - 城内の、別の一室。
- 第四場 - ガートルード妃の部屋。
- 第五場 - 城内の一室。
- 第六場 - 城内の、別の一室。
- 第七場 - 城内の、別の一室。
- 第五幕
- 第一場 - 墓地。
- 第二場 - 城内の大広間。
[編集] 原書
ハムレットには三つの異なる印刷原本が存在しており、二つの四折版(quatro)をQ1とQ2、もう一つの二折版(folio)をF1と呼ぶ。
- Q1(1603年、約2150行):海賊版。短縮版を役者の記憶に基づき再現。(マーセラス役の俳優を買収したと考えられている)
- Q2(1604年 - 1605年、約3700行):草稿版。真正且つ完全なる原稿であり、海賊版に対抗して出版された。
- F1(1623年、Q2の230行を削り、80行追加):演出台本版。劇団保管の演出台本にQ2を参考にして制作された。
[編集] 有名な台詞
[編集] To be or Not to be
「To be, or not to be: that is the question.」(III.I line 56) は劇中の有名な台詞である。明治期に『ハムレット』が日本に紹介されて以来、この台詞は様々に訳されてきた。『ハムレット』は、読む者の視点によって多様に解釈できる戯曲だが、その特徴をこの現象は端的に現していると言える。
このセリフは有名であるが非常に訳すのに困難であるとされている。英語の「To be or not to be, that is the question」というのはこの劇全体からすれば、「(復讐を)するべきかするべきでないか」というようにもとれる。しかし近年の訳では「生きるべきか死ぬべきか」という訳が多い。
初期の邦訳の代表的なものには、坪内逍遙の「世にある、世にあらぬ、それが疑問じゃ」(1926年)などがある[1]。
[編集] Get thee to a nunnery!
「Get thee to a nunnery!」(尼寺に行け!)はハムレットがオフィーリアに向かって言った台詞であり、特に論議を呼ぶ場面を構成する。大きく分けて二つの解釈がある。
- 当時、尼寺では売春が行われており、隠語で淫売屋を現わす言葉だった。ハムレットはオフィーリアに単に「世を捨てろ」と言っただけでなく、「売春婦にでもなれ」と罵ったのである。
- 文字通りに俗世間を離れ女子修道院(尼僧院)に入ってほしいと願った。この場面ではポローニアスがハムレットを背後で伺っているが、オフィーリアには穢れた政治に関わらず昔のままに清らかな存在でいて欲しいと願った。
尼寺を単純に「売春宿」と解釈するかしないか、については研究者の間でも議論があり、決着がついているわけではない。ただし、「尼寺」を「売春宿」と解釈する研究者は少数派と言われている。
[編集] 映画
- 1948年版 - ローレンス・オリヴィエ監督
- ローレンス・オリヴィエが監督し、ハムレットを演じている。モノクロで重厚な雰囲気。不朽の名作と言われる。共演はジーン・シモンズ、ベイジル・シドニー、アイリーン・ハーリー、ピーター・カッシング、クリストファー・リー。
- 悪い奴ほどよく眠る(1960年) - 黒澤明監督
- 厳密には別の映画だが、ハムレットの内容を下地にしているのは明らかである。日本の昭和時代が舞台。
- 1964年版 - グレゴリー・コージンツェフ監督
- 1964年には、ソ連版が製作されている。ヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞し、イギリス版をしのぐと評判になった。日本では長い間見ることが難しかったが、現在はDVDが発売されている。音楽はドミートリイ・ショスタコーヴィチによる。
- 1990年版 - フランコ・ゼッフィレッリ監督
- フランコ・ゼッフィレッリ監督。ハムレットを演じたのはメル・ギブソン。ヘレナ・ボナム=カーター、グレン・クローズ、イアン・ホルム、ピート・ポスルスウェイト共演。
- 1996年版 - ケネス・ブラナー監督
- ケネス・ブラナーが監督し、ハムレットを演じている。舞台は中世ではなく19世紀のデンマーク王国に置き換えられ、劇中では産業革命の産物である蒸気機関車が出てくるシーンがあるものの、シェイクスピアの世界を豪華に、また台詞を1つもカットせずに4時間にわたって描き出した。共演はケイト・ウィンスレット他、豪華キャストが出演。
- 2000年版 - マイケル・アルメレイダ監督
- 舞台を現代のニューヨークに移し、デンマーク王国もマルチメディア企業に置き換えられているが、台詞はそのままなので、ややちぐはぐな印象を与える。ハムレットはイーサン・ホークが演じている。ジュリア・スタイルズ、カイル・マクラクラン共演。
- 女帝 [エンペラー](2006年) - 馮小剛監督
- 香港・中国の合作映画。チャン・ツィイー主演で中国王朝時代に置き換え、主人公をガートルート側に置いている。
[編集] オペラ化
- アンブロワーズ・トマ作曲 『ハムレット』(1868年)
[編集] 備考
- 英語で演技の下手な役者のことを「ハム」と呼ぶ。これには諸説あるが、そのうちの有力なものの幾つかは「ハムレット」に関係している。それは、1)下手でもハムレット役を演じれば人気が出るから、2)下手な役者はこの役を解釈しきれずオーバーに演じることから、3)下手な役者ほどハムレット役をやりたがる、などである。
- 毎年夏、デンマーク東端にあるクロンボー城内ではHAMLET SOMMER(ハムレット演劇)が上演されている。
- オリジナルの上演では、シェイクスピア自身が、亡霊(父ハムレット)を演じたといわれている。
[編集] 参考文献
[編集] 主要校訂本
- (アーデン版)、"Hamlet"(Third Series)、Ed. by Ann Thompson & Neil Taylor、2006年、ISBN 1904271332
- (オックスフォード版)、"Hamlet"、Ed. by G.R.Hibbard、Clarendon Pr.、1987年、 ISBN 0198129106
- (新ケンブリッジ版)、"Hamlet, Prince of Denmark"、 Ed, by Philip Edwads、Cambridge University Pr.、2003年、ISBN 0521532523
[編集] 註解書
- 久保井一雄、『ハムレット注釈』、近代文芸社、 1996年、ISBN 4773351527
- 高橋康也、河合祥一郎(編集)、『ハムレット』、大修館書店、2001年、ISBN 4469142522
- 大場建治、『ハムレット』、研究社、2004年、ISBN 4327180084
[編集] 日本語訳テキスト
題名は特記したもの以外は全て『ハムレット』
- 市河三喜、松浦 嘉一訳、岩波書店、1957年
- 小田島雄志訳、白水社、白水Uブックス、1983年、ISBN 4560070237
- 河合祥一郎訳、『新訳 ハムレット』、角川書店 角川文庫、2003年、ISBN 4042106145
- 木下順二訳、講談社 講談社文庫、1971年、ISBN 4061330012
- 坪内逍遥訳、『ザ・シェークスピア 愛蔵新版―全戯曲』、第三書館、2007年、ISBN 4807407104
- 永川玲二訳、集英社 集英社文庫、1998年、ISBN 408752051X
- 並河亮訳、建設社、1950年
- 野島秀勝訳、岩波書店 岩波文庫、2002年、ISBN 4003220498
- 福田恒存訳、新潮社 新潮文庫、1967年、ISBN 4102020039
- 本多顕彰訳、角川書店、1996年
- 松岡和子訳、筑摩書房 ちくま文庫、1996年、ISBN 4480033017
- 三神勲訳、河出書房、1953年
- 横山有策訳、大泉書店、1949年
[編集] 関連項目
- 復讐悲劇
- 原ハムレット
- ハムレット (チャイコフスキー)
- 新ハムレット
- ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ
- 藤村操
- 横内謙介(登場人物の一人フォーティンブラスの名を冠した作品の作者)
[編集] 脚注
- ^ 上記、河合祥一郎訳の角川文庫版巻末に添えられた解説にこの台詞の諸訳が年代順に40近く列挙されている。
[編集] 外部リンク
- http://www.shakespeare-literature.com/Hamlet/
- ハムレットの翻訳史
- HyperHamlet - research project at the University of Basel (English)
- 坪内逍遙訳 ハムレット - 物語倶楽部のインターネット・アーカイブ。
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最終更新 2009年11月17日 (火) 03:37 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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