パイプレンチ
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パイプレンチ (英語: pipe wrench) とは、ネジ部を締めたり緩めたりする場合等にパイプを挟んだり、回したりするための専用レンチのことである。パイプの径に応じてさまざまな大きさがある。「パイレン」と略される。
歯の部分は深い溝となっているため、丸いパイプをしっかりとくわえて回すことができる。パイプレンチでパイプをくわえて作業を行うとパイプに無数の傷が付くので注意が必要であり、主に蒸気管や水道管など傷が付いてもかまわないような目立たない箇所に使用することが多い。傷を付けてはいけない装飾管用途などは、歯が樹脂でカバーされたウォータポンププラィヤ、又はベルトレンチ等を使用する場合もある。
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[編集] 使用方法
- 調節丸ナットを回し、上アゴ歯と植え歯の幅をパイプの外径より少し狭めにしたのち、歯を押し込んでパイプをくわえる。
- ハンドルに力を加え、作業が出来る範囲の角度内で締め付けたら、ハンドルを戻しラチェット操作を繰返して継手の規定締め付けトルクまで締め付ける。(規定締め付けトルクについては、継手と使用するレンチのサイズによって継手メーカ推奨トルクが決まっている。)
- 上アゴ歯はスプリングによってパイプに押し付けられハンドルに力を加えると、上アゴ歯と植え歯とフレームの支点で出来る三角形がトグルの原理で歯がパイプに噛み込み、滑ることなくパイプをくわえることができる。
[編集] 構成方式による型式分類
パイプレンチのタイプとしては、揺動するフレーム部品を有する「スティルソン型」[1] [2]「トライモ型」と、フレーム部がハンドル本体と一体の「リッジ型」[3]に大きく分けられる。基本機構が異なるので、この項目には記述しないがヨーロッパでは、その他に「スウェーデン型」[4]レンチが使用されている。
[編集] 歯の設定角度「静的状態設計値」
レンチの上アゴ歯と植え歯は、通常レンチ本体を水平に持った時、約8°をなすとJIS規格[5]に表示されているが、実際には3°から5°となっている商品が多い。レンチは、パイプを上アゴ歯と植え歯の口先で丸ナットを回して幅をパイプ外径よりも少し小さめに調節した状態でパイプをレンチに押し込むと、フレームと共に上アゴが揺動する事により上アゴ歯が開き2つの歯のなす角度が大きくなり、パイプを上アゴ部の歯と植え歯の奥側において挟み込む事が出来る様になっている。「リッジ型」でも同じ事であるが、このタイプの場合はレンチ本体を水平にした状態でも上アゴは下側方向に可動するような特殊形状の板バネがレンチ本体に内蔵されている為、口幅の調節を歯のどの部分で行っても噛み込み易く、口幅の調節が行いやすい様に設計されている。
[編集] 噛み込みメカニズム「動的角度の設計値」
設計的には、上アゴ歯と植え歯のなす角度は揺動最大時で15°から18°までに設定する。それ以上の大きな角度(21°以上)になるとフレームを押し付けるバネの反発力だけでは歯がパイプに噛み込まず、レンチが滑ってしまう事になる。
パイプを噛むメカニズムは、上アゴ歯がハンドル本体に力を加える事によりパイプに噛み込み始め、植え歯がパイプを押し付けながら噛み込み、植え歯側を支点として上アゴ歯がその反力でパイプに噛み込み、ハンドルを押し付ける力を増していくと、上アゴ歯は揺動フレームと供に上アゴ歯と植え歯の幅を狭くする方向に(上アゴは反時計方向)に回転をする事によって、パイプに歯が噛み込んでいく。ハンドルに加える力によるトルクとパイプに噛み込んだ歯とパイプの回転トルクが釣り合った時、又は揺動フレームが本体のストッパに当たり揺動出来なくなった時にフレームの回転は停止し、レンチはパイプへの噛み込みが完了する。そしてパイプその物を回転する事が出来る様になる。この噛み込んだ歯が滑る事無くパイプを回転させる力(ベクトル解析)は、歯がパイプに食い込んだ深さ部分の剪断力だけでなく、歯とパイプの摩擦力も考慮しないと力学におけるトルクバランスの説明がつかない事になる。
[編集] 歯形状について
レンチの歯の形状については、単純にパイプに噛み込む先端部分が三角形になっているものより、歯が噛み込む方向に対して、後方がアール形状になっている歯形状の方がレンチを噛み込みから開放する方向に回転させる時に歯先端にパイプがあたる事無く、歯先のラチェット操作による歯の磨耗(寿命)に対して優位である事が解っている。
歯の形状は、パイプ外周に樹脂を被覆した管がガス工事・水道工事で採用されるまでは一般配管用鋼管(SGP)を対象とした一種類であったが、1980年頃に鋼管の表面に防食対策として樹脂がコーティングされる改良がされる事によって、各パイプ専用の歯形状が開発され、パイプレンチも品種が増える事になった。塩ビ被覆とポリエチレン被覆専用の歯を取り付けたレンチが各社より開発され、この時期にレンチメーカの販売シェアの変化がおこっている。それまで不動の高い評価を受けていたMITSUBISHI社に代りその他のパイプレンチメーカ各社が大きく躍進した。外被覆鋼管の被覆は、レンチにより継手の規定トルク締付け作業をした場合、被覆の下の鋼管がレンチの歯によって露出する事があってはならない。レンチの歯はパイプ表面温度マイナス5℃から40℃において継手メーカ推奨締付けトルクの2倍のトルクを加えても被覆の割れや剥離・レンチのスベリが起こらない形状(ピッチと歯高さ)と歯幅をなしている。
- 塩ビ外被服管は、大阪ガス(株)とパイプメーカが最初に共同開発を行っている。塩ビ被覆は、硬度が高い事より通常の白管用PWの歯形状より歯と歯のピッチを少し狭める事によって被覆を破らない様に歯高さを低くし、相乗効果としてパイプに噛み込む歯数が増える事によって推奨締め付けトルクの2倍以上を白管用と同じ歯幅で保障する事が出来た。この事により上アゴ及び植え歯の鍛造素材をJIS規格白管用(SGP)と兼用する事ができ工具メーカとしてはコストメリットを得る事が出来た。市場での商品は、「白被覆兼用パイプレンチ」として販売されている[6]。
- ポリエチレン外被覆管は、東京ガス(株)とパイプメーカが塩ビ外被服管と同時期に共同開発を行っている。ポリエチレン被覆は、硬度が低いため歯と歯のピッチを非常に小さくしなおかつ歯幅を広くして、多くの細かい歯高さの低い幅の広い歯にする事によって1歯当たりの面圧を小さくし保障締め付けトルクを確保しています。「被覆鋼管専用パイプレンチ」の商品名で販売されている[7]。
- 市場での販売数は、白管専用パイプレンチ>白被覆兼用パイプレンチ>被覆鋼管専用パイプレンチとなっている[8]。
- どのパイプレンチにも言える事だが、歯が細かくなった分、歯と歯の間にシール剤が従来より詰り易くなったので、レンチが滑って思わぬ事故になるのを防ぐ為に、日常のワイヤブラシ等での歯のメンテナンスが必要である。
1990年頃には、工具の軽量化が進められ本体部分のアルミ鍛造化が進んだ。
[編集] 使用するレンチ選択のアドバイス
レンチを選択される場合、強度面からするとRIDGID社リッジ型レンチ>鋼鍛造本体のトライモ型JIS H級品>アルミ鍛造本体のトライモ型JIS H級相当品>鋳造本体のトライモ型JIS N級品の順となる。
国内のホームセンタでスティルソン型やスウェーデン型レンチを見かける事はまず無い。(輸入品で国内メーカは存在しない。)[9]
使い勝手では、軽さより新設工事にはアルミ鍛造本体品となるが、価格も考慮してか鋳造本体品と鋼鍛造品を持って、新設と解体で使い分けている工事業者を多く見かける。
その他に、パイプレンチの上アゴ方向がハンドルと同軸方向でない各種パイプレンチ(例えば縦型レンチ・コーナー型レンチ等)があるが、基本機構については同じと考えて良い。但し、レンチの操作時に、ハンドルに加える力の方向が少し異なる事(ハンドルをパイプのある方向に押し付け気味に回転力を加える)に注意が必要である。
余談となるが、HIT社のリッジ型本体は鍛造品であり、上アゴを挿入する角穴部分も鍛造加工にて抜いている(塑性加工)。鍛造技術能力の高さには、驚かされる。
尚、ホームセンタで見かけるTaiwan・China製のリッジ型パイプレンチの強度については、注意を要する。ダイキャスト本体製などもあり保障強度の表示してない場合が多いからである。安全のためパイプレンチ購入者は、必ず強度表示を確認する事。
[編集] 脚注
- ^ スティルソン型のサンプル画像(VBW)
- ^ アメリカ合衆国特許第95,744号
- ^ リッジ型のサンプル画像(RIDGID)
- ^ スウェーデン型のサンプル画像(VBW)
- ^ JISB4606
- ^ メーカ カタログ及びガス会社仕様書による
- ^ メーカ カタログ及びガス会社仕様書による
- ^ 全国作業工具工業組合平成18年度資料より
- ^ 全国作業工具工業組合平成18年度資料より
[編集] 外部リンク(主要生産メーカー)
最終更新 2009年11月11日 (水) 09:26 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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