パンデミック
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パンデミック(pandemic または pandemia、汎発流行、世界流行[1]、パンデミア)とは、ある感染症(特に伝染病)が世界的に流行することを表す用語である[2][3][4]。
語源はギリシア語のπανδημία (pandemia) で、παν(pan, 全て)+ δήμος(demos, 人々)を意味する[5]。
目次 |
[編集] 概説
ヒト(あるいは他の生物)の感染症は、その原因となる病原体を含むもの(感染源)と接触し、感染することによって発生する。多くのヒトが集団で生活する社会では、同じ地域、同じ時期に、多くの人が同時にその感染源(水源、飲食物など)と接触することで、同じ感染症が集団発生することがある。それまでその地域で発生が見られなかった、あるいは低い頻度で発生していた感染症が、あるとき急に集団で発生した場合、これを特にアウトブレイクと呼ぶ。
ヒトからヒトにうつる伝染病の場合、最初に感染した患者が感染源となって別のヒトに伝染するため、しばしば規模が大きく、長期に亘る集団発生が起きる場合がある。このようなものを特に流行と呼ぶ。流行は、その規模に応じて、(1)エンデミック、(2)エピデミック、(3)パンデミックに分類される[6][7]。このうち最も規模が大きいものがパンデミックである。
- エンデミック(地域流行)
- 地域的に狭い範囲に限定され、患者数も比較的少なく、拡大のスピードも比較的遅い状態。この段階ではまだ、いわゆる「流行」とは見なされないこともあり、風土病もエンデミックの一種に当たる。
- エピデミック(流行)
- 感染範囲や患者数の規模が拡大(アウトブレイク)したもの。比較的広い(国内〜数カ国を含む)一定の範囲で、多くの患者が発生する。
- パンデミック(汎発流行)
- さらに流行の規模が大きくなり、複数の国や地域に亘って(=世界的、汎発的に)、さらに多くの患者が発生するもの。
これまでヒトの世界でパンデミックを起こした感染症には、天然痘[8]、インフルエンザ、AIDSなどのウイルス感染症、ペスト、梅毒、コレラ、結核、発疹チフスなどの細菌感染症、原虫感染症であるマラリアなど、さまざまな病原体によるものが存在する。現在も、AIDS、結核、マラリア、コレラなど複数の感染症において、世界的な流行が見られるパンデミックの状態にあり、また毎年見られる季節性インフルエンザ(A/ソ連、A/香港、B型)の流行も、パンデミックの一種と言える。
ただし、これらの感染症の中でも特に、新興感染症あるいは再興感染症が集団発生するケースでは、しばしば流行規模が大きく、重篤度(死亡率など)が高くなるものが見られるため、医学的に重要視されている。これらの新興(再興)感染症によるパンデミックは、しばしば一般社会からも大きく注目されるため、一般に「パンデミック」と呼ぶ場合、これらのケースを指すことも多い。このような歴史的なパンデミックの例としては、14世紀にヨーロッパで流行した黒死病(ペスト)、19世紀から20世紀にかけて地域を変えながら7回の大流行を起こしたコレラ、1918年から1919年にかけて全世界で2500万人(4000~5000万人という説もあり)が死亡したスペインかぜ(インフルエンザ)などがある。また一方、1997年からの高病原性トリインフルエンザ、2002年のSARSについてはパンデミックには至らなかったものの、その一歩手前の状態になった。
詳細は「感染症の歴史」を参照
現在の世界は、航空機などの輸送機関の発達によりパンデミックが起こりやすい状況になっているため、検疫を行うなどして感染症の流入を防ぐ対策がとられている。
近年東南アジア諸国で発生している高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1型によるトリインフルエンザにより、現在でもパンデミックが起こる恐れがあり、世界保健機関(WHO)が途上国を中心に対策を立てている。日本では、厚生労働省を中心に地方自治体が対策をとっているが、患者が急増した際の医療機関の混乱や、交通機関のまひ、食料の供給不足などを懸念する専門家の指摘もある。
[編集] 警戒区分と対策
パンデミックは人類にとって共通の、世界的な脅威である。WHOはパンデミックへの取り組みとして、警戒すべき感染症の感染力や流行の状況に応じて、警戒区分を作成しいくつかのフェイズ(phase、段階、期の意)に分類している。その分類に応じてWHO、各国政府、自治体、産業は行動計画をそれぞれ作成することによって、パンデミックへの対策を行う。この警戒区分は、対象となる感染症の原因となる病原体の病原性の強さや、流行の程度を考慮して総合的にWHOが判断して警戒を呼びかけるものである。パンデミックの有無と警戒区分は1:1に対応するものではない点に注意が必要である。
[編集] 警戒区分の例
[編集] インフルエンザ
WHOでは、パンデミック・インフルエンザの各フェイズを以下のように切り分けて公衆衛生学的な対策を行う。
- 前パンデミック期:フェイズ 1-2
- パンデミック・アラート期:フェイズ 3-4-5
- パンデミック期:フェイズ 6
- インフルエンザ・パンデミックに関する外部リンク
- Current WHO phase of pandemic alert
- Levels of pandemic alert WHO
- インフルエンザ・パンデミックに関するQ&A 国立感染症研究所 感染症情報センター
- WHO global influenza preparedness plan (PDF)
- フェーズ邦訳/PDF 国立感染症研究所 感染症情報センター
- Federal Response Stages U.S. Department of Health & Human Services
[編集] パンデミックの推移
H5N1亜型などの致死性が高くパンデミックを起こすとされているインフルエンザを例に、パンデミックの発生から消退までの予想される経過を表で示した。
| 経過 | 解説 |
|---|---|
| 亜型ウイルスの確認 | 亜型ウイルスの存在が確認されている(例。動物のインフルエンザウイルス) ヒト感染のリスクは低い、またはヒト感染は報告されていない。 |
| ヒトへの感染の確認 | 亜型ウイルスの存在が確認されている(例。動物のインフルエンザウイルス) ヒトへの感染が報告されている パンデミックの潜在的脅威 |
| 限局したヒト-ヒト感染の確認 | ヒトからヒトへの感染はきわめて限定されている(家族や身近な接触者等) |
| 小規模の流行 | ヒトからヒトへの小規模感染(単独国家内での感染)を認めるだけの証拠が存在する パンデミックとなる可能性は中~高程度 |
| 大規模の流行 | ヒトからヒトへの相当数の感染(単一のWHO管区内における複数の国家での感染)を認めるだけの証拠が存在する。 パンデミックへと発展する可能性が高く、早急に大流行への計画的な対策を講じる必要性がある |
| 世界的な大規模流行 | グローバルパンデミック(世界流行)の状態。 上記の状態に加え、当初集団発生したWHO管区とは異なる管区で集団発生が確認される。 |
| 流行の消退 | 流行のピークは過ぎたものの、流行再燃の懸念が残る状態。 |
| 流行後 | パンデミックを起こしたウイルスが通常のインフルエンザウイルスと同等の状況となった状態。しかしパンデミックに対する警戒と備えは維持する必要がある。 |
[編集] パンデミックに発展する恐れのある疾病
世界保健機関の国際的感染症対策ネットワーク (2009) が警戒する感染症は、炭疽、鳥インフルエンザ、クリミア・コンゴ出血熱、デング熱、エボラ出血熱、ヘンドラウイルス感染症、肝炎、インフルエンザ、2009年のインフルエンザ(H1N1)、ラッサ熱、マールブルグ熱、髄膜炎症(en:Meningococcal disease)、ニパウイルス感染症、ペスト、リフトバレー熱、重症急性呼吸器症候群 (SARS)、天然痘、野兎病、黄熱病の19疾病である。
[編集] 関連項目
- 伝染病
- プレパンデミックワクチン
- ワクチン
- バイオハザード
- トリインフルエンザ
- ペスト
- スペインかぜ
- 2009年新型インフルエンザ
- クロスファイア (オンラインゲーム)ゲームモードで「パンデミックモード」がある。
[編集] 脚注
- ^ 武部, 豊 (2002), “[[1]]” (PDF), 感染症週報, 感染症の話 (国立感染症研究所) 4 (39): 16 2009-05-01T15:30Z 閲覧, “世界流行(pandemic)”
- ^ 吉田眞一、柳雄介編『戸田新細菌学』改訂32版 (2002)、p.14、南山堂
- ^ 林英生、岩本愛吉ほか監訳『ブラック微生物学』第2版(2007)、p.435、丸善
- ^ 山口惠三、松本哲哉監訳『イラストレイテッド微生物学』第2版(2008)、p.15、丸善
- ^ 植田一三 (2000), 発信型英語10000語レベルスーパーボキャビル, ベレ出版, p. 232, ISBN 9784939076329
- ^ Gordis, Leon (2007), Epidemiology (4th版), Elsevier Health Sciences, p. 22, ISBN 9781416040026
- ^ Krasner, Robert I. (2002), The microbial challenge: human-microbe interactions, ASM (アメリカ微生物学会), p. 124, ISBN 9781555812416
- ^ Hopkins, Donald R. (2002), The greatest killer: smallpox in history, with a new introduction, University of Chicago, pp. 34, 87, 89 and 91, ISBN 9780226351681
[編集] 参考文献
- 国際的感染症対策ネットワーク (2009), [covered by GAR], 世界保健機関 2009-07-30 閲覧。
[編集] 外部リンク
最終更新 2009年11月21日 (土) 06:03 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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