高揚力装置
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高揚力装置(こうようりょくそうち)とは、飛行機の揚力を増大させるための装置である。必要時に主翼から展開させるタイプのものが多い。
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[編集] 概要
飛行機は、巡航時には高速、離着陸時には低速であることが求められる。これはより早く目的地に到達するため、また滑走距離をできるだけ短くするためである。
しかしながら飛行機の翼に発生する揚力は速度の2乗に比例するため、低速の離着陸時には揚力が不足してしまう。この不足した揚力を補うための装置が高揚力装置である。高揚力装置は以下のような方法を用いて揚力を増大させる。
- キャンバー(翼の湾曲)を増やす
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- 翼は気流を曲げることによって揚力を得ているため、より大きく曲げれば揚力も大きくなる。
- 翼面積を大きくする
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- 曲げられる気流の量を増やすことにつながる。
- 剥離を抑え、失速を遅らせる
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- より大きな迎角を取れる、すなわち気流をより大きく曲げることができる。
[編集] フラップ
翼の前部(前縁)についているものは前縁フラップ、翼の後部(後縁)についているものは後縁フラップ、と呼ばれる。両方を備える機体の場合は組み合わせて使用することが多い。
[編集] 後縁フラップ
後縁フラップは、プロペラ推進の小型飛行機からジェット推進の大型旅客機や戦闘機に至るまで多くの飛行機に装備されている。角度はふつう何段階かに設定でき、離陸時は中程度の、着陸時は最大の角度にすることが多い。
副次的に抗力が増大するため、着陸時の滑走距離を短縮する作用もある。
操縦士が2名乗務する民間機の場合、通常は副操縦士がフラップの操作を行う。このため、フラップを操作するレバーは操縦席の右席側に取り付けられる。
[編集] 種類
後縁フラップには以下のような種類がある:
- 単純フラップ
- 主翼後縁を単に下げキャンバーを増加させるもの。構造は簡単であるが、あまり大きな最大揚力係数は得られない。
- スプリットフラップ
- 主翼後縁の下面のみを下げる。これにより後縁の静圧を低くして揚力を増すもの。構造が簡単な割に揚力係数の増加は大きいが、抗力も著しく増えるのが欠点である。
- スロッテッドフラップ
- 隙間フラップや間隙フラップとも呼ばれる。キャンバの増加も行い、主翼とフラップの間に隙間を空けてやることにより、翼上面に翼下面の気流を流し剥離を遅らせる。より効果を高めるよう隙間を2つに増やしたダブルスロッテッドフラップや3つに増やしたトリプルスロッテッドフラップもある。
- ザップフラップ
- スプリットフラップのように翼下面が動き、さらに可動部分が後ろに下がることにより、キャンバーの増加・主翼面積の増大を狙ったもの。構造が複雑なうえに、フラップ効果も低いことから、現在では使用されていない形式である。
- ファウラーフラップ
- スプリットフラップのように翼下面が動き、さらに可動部分がスロテッドフラップのように翼と隙間を空けて後ろに下がることにより、キャンバーの増加・主翼面積の増大・剥離の抑制、のすべての効果を得る。
[編集] 前縁フラップ
前縁フラップとは、その名の通り主翼の前縁に格納された高揚力装置である。巡航中は主翼前縁に格納されており、離着陸時などの迎角の大きな時に前方に引き出し、気流の早期剥離を防止する事で、揚力係数を高めるものである。
- スラット
- 主翼前縁の一部分を前方に稼動させることで主翼との間にすき間を作るもの。翼下面側の気流の一部を上面に流すことで、上面の層流境界層にエネルギーを供給し、剥離を遅らせるものである。これにより、より高い迎角まで失速せずに揚力を増大させることができる。
- クルーガーフラップ
- クリューガーフラップとも。主翼前縁からフラップが前下方へ突き出すことで主翼面積を増加させるもの。
- バリアブルキャンバーフラップ
- 繊維強化プラスチックなどでできた外板をたわませることでフラップ自身のキャンバーも増加させつつせり出すもの。
[編集] 空戦フラップ
戦闘機においては、戦闘時の旋回性能向上のためにもフラップを利用する。最初はその目的で開発されたものではないフラップを、パイロットが自分で操作していたが、飛行状態に応じて最適なフラップ角を選択する必要があるため、熟練パイロット以外には操作が困難であった。やがて旋回時の使用を前提にした、最適な角度を取る空戦フラップが開発されたが、手動操作では空戦時など切迫した時には操作を行う余裕がなかった。
そこで、空戦フラップの動作を自動化した、自動空戦フラップが開発された。構造そのものはファウラーフラップと同じだが、速度を測るためのピトー管からくる動圧と、gを計るために水銀を入れた容器とを組み合わせることにより、旋回時に必要なフラップの自動稼働を可能とした。太平洋戦争時の日本海軍機の紫電改や烈風に搭載された。
詳細は「自動空戦フラップ」を参照
[編集] ジェットフラップ
ジェットエンジンの推力方向を下に傾けることにより上向きの力を発生させるもの。
[編集] フラップの操作速度
高速でフラップを展開すると、フラップ自体の破損のほか、主翼付け根部分に過大な応力を生じ危険であるため速度上限(フラップ操作速度)が設けられる。
[編集] フラッペロン
フラップとエルロンを兼ねたもの。代表的な機種としてコンコルドが使用していた。
[編集] 境界層制御
(Boundary Layer Control; 境界層制御) 進行方向に対して翼の角度が大きすぎるとき、翼の表面の空気の流れは空気の粘性の影響で運動エネルギーを失い翼に沿いきれずに剥がれてしまい(境界層剥離)、翼表面の圧力が下がらず揚力が発生できなくなってしまう。 これを境界層に運動エネルギーを人工的に与えることにより防ぐ方法が境界層制御である。前述のスロッテッドフラップやファウラーフラップも境界層制御をしている。
[編集] 種類
種類として以下のものがある。
- 層流制御 (Laminar Flow Control) 翼
- 主翼表面に設置された吸い込み穴(スロット)から、翼表面の運動エネルギーを失った層流を吸い込み、離れたところを流れる運動エネルギーを失っていない流れを翼表面に流す方法。アメリカ航空宇宙局がX-21A実験機により実現させたが経済的な理由から実用化はされていない。
- インターナリーブロウンフラップ (Internally Blown Flap)
- エンジンで圧縮した空気を翼上面に吹き出して、吹き出した空気の速度で層流を作り出し境界層に運動エネルギーを与える方法。F-104やF-4などのように主エンジンから抽気することもあれば、US-1などのように専用のエンジンを設けるものもある。
- エクスターナリーブロウンフラップ (Extarnally Blown Flap)
- エンジンからの排気ガスを多重スロッテッドフラップにあて、フラップの隙間から排気の一部を翼上面に流す方法。原理はスロッテッドフラップと同じ。C-17などに用いられている。
- アッパーサーフェスブローイング (Upper Surface Blowing)
- エンジンの排気を翼上面に沿って吹き出し、伸ばしたフラップへ気流を付着させることにより揚力を得る方法。エンジンの排気は周囲の空気の速度に比べ速度が高いのでより大きな揚力を得られる。気体が曲面に沿って流れるコアンダ効果を利用したもの。実用機としてはAn-72で用いられている。また旧西側諸国でもYC-14や飛鳥など、これを用いた実験機が製作された。
[編集] 関連項目
最終更新 2009年7月21日 (火) 13:54 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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