ブラン (オービタ)

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ブランOK-TVA(試験機)
ブラン初飛行を記念する切手

ブラン [1](ロシア語:Буранブラーンラテン文字転写の例: Buran) は、ソ連ツポレフ設計局が開発した宇宙船(宇宙往還機)、ないしは同機を初代オービタとする打ち上げ計画 (w:Buran program) である。「ブラン」とは「吹雪」特に「ステップの猛吹雪」を意味するロシア語の男性名詞

目次

[編集] ソ連版スペースシャトル

「ソ連版スペースシャトル」と言われることが多いブランだが、この言葉は必ずしも正確ではない。確かに初飛行はアメリカ合衆国のスペースシャトルより大分遅れたが、ソ連はそれ以前からこれらに似た形状をした有翼宇宙往還機の構想を持っていた。

この構想の宇宙船模型と、ソ連宇宙飛行士第一期生だったユーリイ・ガガーリンらが一緒に写っている写真があり、初飛行の40年近く前(1960年代頃)から考えられていた宇宙船であるといえる。

その模型の形は、スペースシャトル、ブランの両方に大変良く似ている。ブラン初飛行時に、「アメリカのもののコピーだ」という批判に対する「理想的な形を追い求めた結果である」「今の技術ではどこの国が設計しても同じようにしかならない」という反論は真実といえる。

そもそも宇宙往還機の構想は、アメリカにしろソ連にしろ、ドイツのオイゲン・ゼンガーが考え出し、大戦中は極秘文章扱いだったゼンガー計画の計画書を占領後それぞれの国に持ち帰ったことが源流であり、シャトルの発想はアメリカでもソ連でもなく、ナチス政権下のドイツが発祥だと言うことも出来る。

TsAGIや各設計局、ソ連空軍などの研究機関により、小型の無人宇宙往還機「BOR」(ボル)や、一人乗りの宇宙往還機MiG-105「スピラーリ」(Спираль)が製造され、各種試験が行われた。

[編集] スペースシャトルとの違い

ブランの後部姿勢制御・逆噴射エンジン。主に大気圏再突入時の逆噴射に使うだけなので、スペースシャトルのメインエンジンよりずっと小型である。

オービタの形状こそ似ているものの、スペースシャトルとブランの打ち上げシステムは全く異なっている。

スペースシャトルは、最終的に地球周回軌道に乗るオービタ自身が液体燃料ロケットエンジン (SSME) を備えており、このエンジンに対する燃料はオービタが腹に抱えている茶色の外部燃料タンクから供給される。SSMEは3基あるがこれらのみでは離昇(リフトオフ)時の推力が足りず、2本の固体ロケットブースタを外部タンクの両脇に装備している。

一方のブランは、オービタは大きなエンジンを備えていない。 同時に開発された大型ロケット「エネルギア」に軌道まで運んでもらい、その間は自ら推力を発生することなく、ぶら下がっているだけである。後部についているのはメインエンジンではなく、他の宇宙船にもある逆噴射ロケットであり、大きな出力はない。

このシステムでは、大型のロケットエンジン(スペースシャトルのメインエンジンにあたる)を装備しない分、ロケットエンジン自身の重量と燃料タンクがなくなるのでオービタの自量が軽くなり、積載量が多くなるほか、着陸時の速度を下げることができるのでスペースシャトルより安全に大気圏再突入ができる。その一方で、高価なメインエンジンを再使用できないという欠点もある。

[編集] 計画のその後

ブランは1988年11月15日午前3時(協定世界時)にバイコヌール宇宙基地から発射され、206分間にわたり無人で地球軌道を周回し、発射場所であるバイコヌール宇宙基地の滑走路に自動着陸を成功させた。

予定では1992年に有人飛行を行うはずであったが、1991年のソ連崩壊と共にこの計画は消滅してしまい、1号機ブランは2002年5月12日暴風に遭い、ハンガーもろともエネルギアとともに破壊され現存しない。また、2号機「プチーチュカ(小鳥)」3号機「バイカル(バイカル湖より)」など、いくつものブラン型派生モデル開発・製造途中であったが、これらも全て中止となった。

船で輸送されている途中のブランOK-GLI

実験モデルや試験機の内の一つは、オーストラリアの博物館に引き取られ、保管・展示がされている。またブランの試験機であるBuran OK-GLIが2002年バーレーンに引き取られた後しばらくの間放置されていたが、2004年にバーレーンからドイツのシュパイアーにあるシュパイアー技術博物館(ドイツ語:Technik Museum Speyer・英語:Speyer Technical Museum)に引き取られることが決定し、2008年3月6日から同年4月12日にかけて船で輸送された[2]

ブランには、アントーノフ設計局が設計・製造したAn-225 ムリーヤという世界最大の航空機が専用機として輸送の任にあたっていた。こちらは世界最大の貨物機として現役で活躍中である。

また、一時は放置状態だったAn-225が現役復帰する際にブランを商用衛星打ち上げ用として復帰させる計画もあった。実際には実現しなかったものの、ロシア政府はプロトンロケットの限界を超える要求が今後増加した場合に備えて、本気でブランを現役に復帰させる計画を持っているといわれており、計画も「現時点で凍結」に改められている。

2005年に日本で行われた愛・地球博のロシア館でもクリーペルと言う有翼の宇宙船の模型が出品されており、ロシアはこのタイプの宇宙飛行船を諦めてはいないと考えられる。ただし、この展示の意図としては、有翼宇宙往還機の計画を持っていたESAJAXAの興味を引き、自国の計画に引き入れたい思惑からと分析されたが、一方でロシアはソユーズ同様使い捨ての新型機開発も進めており、日欧を開発に参加させる為の「おとり」だったとする見方もある。

[編集] 試験機・フリート・派生型

[編集] 試験機

6機のフルスケールモデルと多くのミニスケールモデルが製造された。

  • OK-GLI:飛行テスト用試験機。上の画像で輸送船に運搬されているモデルがOK-GLIである。1984年にロールアウトし、ランディングテスト(時速45キロ〜230キロ)、飛行テストを行った。4基のジェットエンジン自動操縦装置を持ち、無人でタッチアンドゴーを行う姿が確認されている。ジェットエンジンを持っているためアメリカのエンタープライズと異なり自力で離陸できる。飛行中にエンジンをシャットダウンし滑空できた。ブランのパイロット訓練用としても活躍した。もちろん大気圏内専用。
  • OK-TVA:力学(振動)試験機。宇宙飛行状態での機体へのストレスについて、また力学的なテストが研究された機体。現在、モスクワゴーリキイ公園に展示されている。
  • OK-TVI:環境耐久試験機。0気圧での実験や、2500℃〜−150℃の加熱冷却試験が行われ、機体や耐熱タイルにかかるストレスについて実験された。
  • OK-KS:電気試験機。

[編集] フリート

  • ブラン:ブランの1号機(1.01)。生命維持装置は準備工事のみで実際には装着されなかった。
  • ピチカ:ブランの2号機(1.02)。ブランと同様生命維持装置が装着されていない。
  • バイカル:ブランの実質3号機(2.01)。生命維持装置付のブランとしては1号機。

[編集] 派生型

  • MAKS-OS:4人乗りの小型の宇宙往還機。ブランと異なり二基のロケットエンジンを持ち、燃料タンクを機腹に装着してアメリカのスペースシャトル方式で発射されるもの。発射は地上の射場ではなくAn-225から発射される。またエネルギアの小型版「エネルギア-M」の頂部にも搭載可能。実際には製造されなかったが、模型は実在する。「モルニヤ」「ブリヤ」などのフリートが予定されていた。
  • OS-120:1975年に計画されたオービター。システム、基本構想としては米スペースシャトルと全く同じである。ロケットエンジンを3基装備し、機腹に「グロム」というエネルギアにそっくりな燃料タンクを装着している。ただ、ロケットブースターとしてゼニットを4機備えている点が異なる。
  • OK-92:1976年に計画されたオービター。ジェットエンジンを2基装備していて、「ブラーン」ロケット(エネルギアのロケットエンジン3基版)で打ち上げられる予定だった。

[編集] 関連項目

[編集] ブランを扱った作品

[編集] 脚注

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  1. ^ ブランまたはブラーンと表記される。これは、ロシア語のカタカナ転写の方式の違いによる表記バリエーションである。一般にロシア語には長音の概念がないとされるが、アクセント音が約2倍の長さで発音されるという特質を持っている。これは実質的に日本語の概念における長音に相当すると考えられ、そのためロシア語のカタカナ転写ではアクセント位置に長音符を使用してもよいことになっている。Бура́н[buraˈn]のアクセント位置は第2音節にある。従って、この単語はブラーンとカタカナ表記することが可能である。逆に、しばしば日本語文献で用いられるブーランという表記は前述の転写原則に反しており、表記としては誤りということになる。
  2. ^ http://www.sorae.jp/030611/2320.html

[編集] 外部リンク

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最終更新 2009年11月6日 (金) 02:26 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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