プライメイトシティ

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プライメイトシティ: primate city)は、地域の中で最も大きく、二番目の都市を規模で引き離している都市を指す。一極集中型となっているため、影響力も大きい。首位都市首座都市と訳される。

目次

[編集] 分類

人口が集中する都市は、人口を涵養できる産業の立地と関係がある。

[編集] 税に起因する立地

農業が産業の主体である国は、産業の中心である農村の方が人口を涵養できるため、都市への人口の集積は少ない。但し、余剰農産物の発生によって交易拠点が都市化したり、を集める首都や地方政府所在地が都市化する。この時、首都がプライメイトシティとなる。

例として、日本の平安京や、第二次大戦前の東京がある(江戸は、天領+旗本領の計700万石、および参勤交代で集まった大名や家来の支出に頼っており、中央集権的な税制ではないという意見もある)。

しかし、国全体の人口分布を見ると、首都がプライメイトシティであっても、農村の人口の方が多い。1888年の日本の都府県別人口を見ても、東京府は第4位であり、広大な稲作地を持つ新潟県が第1位となっている。この時期、行政市としては東京市の人口が多かったが、畿内の方が都市化が進んで都市人口が多かった。

なお、「国家単位で見ると、発展途上国にプライメイトシティが多く見られる」という分析は、このような背景に因るが、首都がプライメイトシティになるのは、何も農業国とは限らない。

[編集] 鉱業や原料立地型工業に起因する立地

原料立地型工業鉱業が発展すると、工業原料の産出地や工場周辺に人口が集中して都市化する。日本では江戸時代までは金鉱・銀鉱の産地、明治以降は炭鉱や鉄鉱の産地がそれに当り、夕張炭鉱筑豊炭田釜石(鉄鉱)が有名である。

海外では、鉄鉱・金鉱・ダイヤモンド産地・油田など様々ある。発展途上国の内、産油国やダイヤモンド・産出国では、これらの鉱業に関連した都市やその輸出港がある都市がプライメイトシティになる事が多いが、鉱物の輸出で得た富が必ずしも産出地や輸出港のみが独占するわけではなく、富を集めるのは金融が発達した都市(首都や国際空港がある都市)となる例も多いため、そちらがプライメイトシティとなる事もある。

鉱物の富を首都に集めている国家は、アフリカ中東の産油国に多い。ただし、アラブ首長国連邦の場合は、首都(政治)と金融(経済)が分離され、別々の都市に機能分担されている。

[編集] 発展途上地域の金融センターに起因する立地

その他の資源の乏しい発展途上国では、海外からの援助金や投資を元に産業が発展する例が多い。この場合、先進国から遠い国では国際空港がある首都、及び首都周辺に産業が集中する傾向が大きい。即ち、交通の利便性が大きい都市(主に首都)が国内や地方内の金融の窓口となり、そのお金に引き寄せられて人口や産業が集まって、プライメイトシティとなる。ASEAN諸国の内、資源の乏しい国はこの傾向が大きい。

日本では、都道府県別GDP比率で、本土の2倍程度の公共事業の資金が経由する札幌札幌都市圏)や那覇那覇都市圏)が、この代表例である。

道州制が導入されると、州都は公金の集まる金融センターとなり、札幌や東京のような一極集中と過密化が起きる可能性が高い。そのため、将来の道州制の施行に向けて、それぞれの地方内で州都の綱引きが既に始まっている。

[編集] 内需の発達に起因する立地

産業発展によって国民の所得が増加すると、工業製品やサービスの内需が拡大する。その際、国内交通が発達していない場合は、販売やサービスの拠点は無数につくられる。交通インフラストラクチャーや物流が発達してくると、それらが集約されてプライメイトシティとなる例が見られる。

詳細は「支店経済都市」を参照すること。

[編集] 先進国のプライメイトシティ

一方、日本フランスイギリスなど、資源が乏しい、又は国内産業に必要な量ほどの資源が無い先進国では、中央集権体制を敷いてプライメイトシティが形成される傾向がある。同様の傾向はタイ韓国など、上位の発展途上国にも見られる。また、人口の少ない国や、面積の小さい国(連邦国家である場合は例外)は、国内投資に回せる資金が少ないために「都市国家」の様相を呈し、自然とプライメイトシティを形成する。ただし、歴史との関係も有るため、一律にはいえない。

日本の現在の状況は、IT産業の発達と同時に産業の「金融化」が進み、企業の収益体制が実業部門となどの金融部門の二本立て傾向が強まったため、内需・外需双方の金融の中心である東京にヒト・モノ・カネ・情報が集まり、企業の本社も東京一極集中傾向にある。そのため、バブル経済期まで企業の本社が多く存在した大阪から東京へ本社が移転したり、本社機能が移転する傾向が強まり、東京と大阪との差が大きく開いてきている。なお、名古屋はトヨタを始めとする工業部門が海外市場(外需)で好調であるため、海外からのお金の還流があり、国内事情(内需)と関係なく好景気を続けている。日本全体として見た場合は、第2位の大阪の後退によって金融部門の強い東京がプライメイト・シティとして突出しているが、名古屋を始めとした実業部門が強い地域も多い。

[編集] 連邦国家のプライメイトシティ

アメリカ合衆国ロシアブラジルなどの連邦国家においては、交通・産業の拠点が分散し、地域の拠点都市が多く造られやすい。この場合は国土の広さとは関係が無く、ドイツスイスアラブ首長国連邦などでも同様である。また、連邦国家ではないが、中華人民共和国インドにもこのような傾向が見られる。これらの国では国家的なプライメイトシティは成立しがたい。しかし、州(省・自治共和国)ごとや地域ごとの、より小さい単位でのプライメイトシティが多数存在する。

例えばニューヨーク市はアメリカ合衆国最大の都市であり、大都市圏では2000万人近い人口を抱え、世界経済に与える影響も大きいが、一方で同国内の太平洋岸や南部に与える影響は大きくなく、また国内政治面での影響は小さい(首都どころかニューヨーク州州都ですらない)など、ニューヨーク州や大西洋岸北部のプライメイトシティとは言えても、国家的なプライメイトシティとは言えない。一方で、アリゾナ州の州都フェニックスは全米規模では(人口こそ全米6位と多いものの)地方都市の一つに過ぎないが、その都市圏には州の総人口の約7割が集中し、州の政治・経済・産業・交通の中心地としての役割を担う、アリゾナ州のプライメイトシティと言うことができる。西部ではハイテク産業とエンターテイメント産業の中枢であるカリフォルニアのロサンゼルスサンフランシスコ、北西部では航空産業のシアトル、中西部では自動車産業のデトロイトや穀物取引・食品加工のシカゴ、南部では商業・通信産業のアトランタや金融産業のシャーロット、南西部では石油産業のヒューストンダラスと、規模だけでなく産業も分散している。マスメディアも地方紙が多い。

[編集] 問題点

過密と社会資本不足
プライメイトシティは更なる巨大化に拍車を乗けるため、インフラに対して人口が過剰になり易い。この結果、交通渋滞汚染、住宅不足などの都市問題が発生する。
集中の脆弱性
都市への集中は効率性をもたらす可能性が高いが、自然災害などに際しては脆い。周辺に機能が代替可能な都市が無いため、大規模な自然災害が起こると、地域全体が機能不全に陥る。
均衡ある発展の阻害
プライメイトシティ化は放置しても解消し難く、地域内の他都市や村落の疲弊を招く場合がある。

[編集] 世界のプライメイトシティの例

(「都市国家(又は)」の順に掲載する。)


[編集] 日本のプライメイトシティの例

[編集] (参考)プライメイトシティが存在しない都道府県

分類の仕方は諸説あるが、ここでの基準は「同程度の人口や経済規模の都市が2つ以上存在する」を最低限の条件として、以下の2つの条件のうち1つまたは両方満たしている都道府県とする。

  • 県内の地域別に明確な拠点都市がある。
  • 商業・工業・行政・歴史等の機能を各都市で分け合っている。
ノートも参照
主な都市 中心都市の地域 人口 都市機能
青森県 青森市 津軽地方 30.2万人 行政(青森県の県庁所在地)
弘前市 津軽地方 18.3万人 歴史(城下町・青森県で最初に市制施行)・弘前大学
八戸市 南部地方 23.9万人 工業(製造品出荷額が県内一)・水産業(特定第三種漁港
山形県 山形市 村山地方 25.5万人 行政(山形県の県庁所在地)
米沢市 置賜地方 9万人 歴史(米沢藩の城下町・山形市と共に県内最初の市制施行)・山形大学工学部
鶴岡市 庄内地方南部 13.8万人 歴史(庄内藩の城下町)・山形大学農学部
酒田市 庄内地方北部 11.3万人 歴史(北前船交易で栄えた港湾都市)・都市圏人口が県内2位
福島県 福島市 中通り北部 29.4万人 行政(福島県の県庁所在地)・県域テレビ2局(福島テレビテレビユー福島)とAMラジオ局(ラジオ福島)が立地
会津若松市 会津地方 12.8万人 歴史(城下町・福島県で最初に市制施行)
郡山市 中通り中南部 33.9万人 商業・交通・県域テレビ局2局(福島中央テレビ福島放送)とFMラジオ局(ふくしまFM)が立地
いわき市 浜通り 34.5万人 工業・人口が県内一
茨城県 水戸市 県央地域 26.5万人 行政(茨城県の県庁所在地)・商業・茨城大学
日立市 県北地域 19.4万人 工業(電機産業)・茨城大学工学部
土浦市 県南地域 14.4万人 行政(地域の中心都市の1つとして業務核都市の指定)
つくば市 県南地域 21.2万人 行政(特例市と業務核都市の指定、都市圏の中心都市)・筑波研究学園都市筑波大学
筑西市 県西地域 10.9万人 地域の最大の都市は古河市だが、地域の行政機関のほとんどは筑西市にある。
群馬県 前橋市 中毛地域 33.9万人 行政(群馬県の県庁所在地)・群馬大学
高崎市 西毛地域 36.9万人 商業・交通
桐生市 東毛地域 12.2万人 歴史(桐生織に代表される江戸時代からの機業都市)・群馬大学工学部
太田市 東毛地域 21.5万人 工業(自動車産業)
伊勢崎市 中毛地域 20.5万人 地域の中心都市
埼玉県 さいたま市 中央部 121.1万人 浦和区の行政(埼玉県の県庁所在地)・大宮区の商業と交通・政令指定都市
川越市 西部 34.0万人 歴史(城下町・埼玉県で最初に市制施行)・商業・交通
秩父市 秩父地方 6.8万人 地域の中心都市・工業(セメント)
熊谷市 北部 20.4万人 歴史(宿場町)・商業・交通・地方気象台
春日部市 東部 23.6万人 東部地域における国の行政機関のほとんどは春日部市にあり、交通の中心となっている。
越谷市 東部 32.3万人 東部地域最大の都市で県の行政機関のほとんどがある。
長野県 長野市 北信地方 37.7万人 行政(長野県の県庁所在地)・歴史(善光寺の門前町)・信州大学教育学部と工学部
松本市 中信地方 22.7万人 歴史(城下町)・商業・交通(松本空港)・信州大学本部・日銀松本支店
上田市 東信地方 16.0万人 歴史(城下町)・工業(精密機械産業など)・信州大学繊維学部
諏訪市 南信地方 5.2万人 歴史(諏訪大社本社)・工業(精密機械産業など)・諏訪広域連合中心都市
静岡県 静岡市 中部 71.7万人 行政(静岡県の県庁所在地)・商業・歴史(駿府城)・政令指定都市
浜松市 西部 81.2万人 工業(自動車・オートバイ・楽器など)・静岡大学工学部・浜松医科大学・県内最大人口・政令指定都市
三重県 津市 中勢 28.8万人 行政(三重県の県庁所在地)・三重大学
四日市市 北勢 30.7万人 県内最大人口・工業(石油化学産業)
鈴鹿市 北勢 19.8万人 工業(自動車産業)
伊勢市 南勢 13.2万人 歴史(伊勢神宮の門前町)
松阪市 中勢 16.9万人 商業・交通
島根県 松江市 東部(出雲国 19.6万人 行政(島根県の県庁所在地)・島根大学
出雲市 東部(出雲国 14.6万人 歴史
浜田市 西部(石見国 6.3万人 西部の中心都市
鳥取県 鳥取市 東部(因幡国 19.8万人 行政(鳥取県の県庁所在地)・鳥取大学・特例市
米子市 西部(伯耆国 14.8万人 商業・交通・鳥取大学医学部
岡山県 岡山市 東部(備前国 70.4万人 行政(岡山県の県庁所在地)・商業・交通・政令指定都市
倉敷市 西部(備中国 47.4万人 工業(自動車・石油化学・鉄鋼業)
山口県 山口市 中部 19.2万人 行政(山口県の県庁所在地)・山口大学本部
下関市 西部 28.2万人 港湾都市・県内最大人口(県内唯一の中核市)・山口県で最初に市制施行・交通・日銀下関支店
宇部市 西部 17.4万人 工業(セメント)・山口大学工学部と医学部
周南市 東部 15.0万人 工業(石油化学産業)・山口放送
防府市 中部 11.6万人 歴史(周防国の国府・国分寺、防府天満宮)・工業(自動車・輸送関連産業)
岩国市 東部 14.7万人 工業(製紙産業など)
福岡県 福岡市 福岡地方 145.0万人 行政(福岡県の県庁所在地)・商業・政令指定都市
北九州市 北九州地方 98.3万人 工業(鉄鋼業)・港湾都市・交通・政令指定都市
長崎県 長崎市 南部 44.4万人 行政(長崎県の県庁所在地)・工業(造船業など)
佐世保市 北部 25.2万人 工業(造船業)・軍事都市・港湾都市・特例市
宮崎県 宮崎市 南部 37.0万人 行政(宮崎県の県庁所在地)・商業
都城市 南部 16.8万人 県内第2の都市
延岡市 北部 13.1万人 工業(繊維・化学産業)

[編集] 参考文献

  • 首座都市論と過剰都市化論の妥当性をめぐって 新津晃一(国際基督教大学学報)[1]
  • トルコの都市化と地域特性についてのノ-ト 加納弘勝(アジア経済)[2]

[編集] 関連項目

最終更新 2009年10月22日 (木) 15:47 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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