ホウ酸

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ホウ酸
IUPAC名 ホウ酸
別名 オルトホウ酸
サッソライト
識別情報
CAS 10043-35-3
SMILES OB(O)O
InChI InChI=1/BH3O3/c2-1(3)4/h2-4H
特性
化学式 B(OH)3
モル質量 61.833 g mol−1
外見 White crystalline solid
密度 1.435 g cm−3, 固体
融点

169°C (分解)

への溶解度 5.7 g/100 cm3 (25°C)
酸解離定数 pKa 9.24
構造
分子の形 平面三角形
双極子モーメント 0
熱化学
標準生成熱 ΔfHo −1094.33 kJ mol−1
標準モルエントロピー So 88.83 J mol−1K−1
標準定圧モル比熱, Cpo 81.38 J mol−1K−1
危険性
NFPA 704
0
1
0
関連する物質
特記なき場合、データは常温(25 ℃)・常圧(100 kPa)におけるものである。

ホウ酸(Boric acid)はホウ素オキソ酸であり、殺菌剤殺虫剤難燃剤原子力発電におけるウラン核分裂反応の制御、そして他の化合物の合成に使われる弱酸の無機化合物である。化学式はH3BO3だが、ときどきB(OH)3とも書かれる。常温常圧では無色の結晶または白色粉末で、水溶液では弱い酸性を示す。硼酸の鉱物は硼酸石(サッソライト)と呼ばれる。

目次

[編集] 合成

ホウ酸は主にホウ酸塩鉱物に硫酸を反応させて作られる。世界最大のホウ酸塩の産出地はトルコのEti Mine Worksである[1]

Na2B4O7・10H2O + H2SO4 → 4 H3BO3 + Na2SO4 + 5H2O

酸性酸化物である三酸化二ホウ素(B2O3)を水に溶解しても生成する。

B2O3 + 3 H2O → 2 H3BO3

[編集] 化学的性質

無色の結晶であり、水に対する溶解熱は吸熱で[2]、温度上昇と伴に溶解度が急増するのはこのためである。

\rm H_3BO_3(s) \ \overrightarrow\longleftarrow \ H_3BO_3(aq),    \mathit{\Delta} H^\circ = 22.01 \mbox{kJ mol}^{-1}

加熱により順次水を失い、まず130℃付近からメタホウ酸(HBO2)を生成し、更なる加熱により三酸化二ホウ素となる。メタホウ酸は単純なHBO2分子ではなく、BO4四面体を酸素原子が架橋したポリ酸である[3]


\rm H_3BO_3 \ \overset{\Delta}{\longrightarrow} \ HBO_2 + H_2O

\rm 2 HBO_2 \ \overset{\Delta}{\longrightarrow} \ B_2O_3 + H_2O

化学式からは3価の酸と予想されるが、水溶液中ではそのような酸解離は認められず、ルイス酸として働き水酸化物イオンを受け取り、4配位となる平衡が存在する[3]

\rm H_3BO_3(aq) + H_2O(l) \ \overrightarrow\longleftarrow \ H^+(aq) + B(OH)_4^-(aq), \mbox{p}K_{a} = 9.24 \,

酸解離に関する標準エンタルピー変化、ギブス自由エネルギー変化、エントロピー変化の値が報告されており[2]、解離に伴いエントロピーの減少がおこるのは、電荷の増加に伴いイオンの水和の程度が増加し、電縮が起こり分子の水素結合による秩序化の度合いが増加するからである[4]

\mathit{\Delta} H^\circ \mathit{\Delta} G^\circ \mathit{\Delta} S^\circ  \mathit{\Delta} Cp^\circ
14.12 kJ mol−1 52.71 kJ mol−1 −129.7 J mol−1K−1 −192 J mol−1K−1
水酸化ナトリウム水溶液による中和滴定曲線


酸解離定数が小さいため、中和滴定曲線において当量点は不明瞭となり、塩基による中和滴定は困難であるが、エチレングリコールなどを加えるとエステルを形成し酸解離定数が大きくなり、中和滴定が可能となる[3]

\rm H_3BO_3 + 2 (CH_2OH)_2 \ \overrightarrow\longleftarrow \ H^+ + BO_4(CH_2CH_2)_2^- + 3 H_2O

またホウ酸を純硫酸に溶解すると硫酸水素イオン錯体を形成し、このものは硫酸中で強酸としてはたらく数少ない物質である[3]

\rm H_3BO_3 + 6 H_2SO_4 \ \overrightarrow\longleftarrow \ 3 H_3O^+ + B(HSO_4)_4^- + 2 HSO_4^-

[編集] 毒性

ホウ酸を吸い込んだりすると、吐き気嘔吐下痢などを引き起こす。

[編集] 用途

水酸化カリウム水溶液の中和剤としても用いられる。工業用メーカーは、アメリカ、トルコ、ロシア、チリ、ペルー、アルゼンチン。日本は全量を輸入に依存。用途はホウ酸塩ガラスガラス繊維、ホウ素系合金鉄。

ホウ素の高い中性子吸収能力を利用して、原子炉冷却材にホウ酸を溶かして、原子炉出力の制御に用いられている。

小学校5年の理科の実験(物の溶け方)で溶解度の実験を行なう際、食塩(塩化ナトリウム)と並ぶ代表的な試薬。

この他、ゴキブリ駆除にほう酸ダンゴが使用される場合がある。米ぬかやじゃがいもにほう酸を混入させることで自作することも可能だが、市販品も存在する。

[編集] 結晶構造

ホウ酸の結晶は水素結合による層状構造からなる。層同士の距離は318ピコメートルである。

ホウ酸の結晶構造
ホウ酸同士の水素結合

[編集] 脚注

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  1. ^ http://www.etimaden.gov.tr/en/0_sayfa_ortakSayfa.asp?hangisayfa=4_sayfa_a_1
  2. ^ a b D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982)
  3. ^ a b c d FA コットン, G. ウィルキンソン著, 中原 勝儼訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年、原書:F. ALBERT COTTON and GEOFFREY WILKINSON, Cotton and Wilkinson ADVANCED INORGANIC CHEMISTRY A COMPREHENSIVE TEXT Fourth Edition, INTERSCIENCE, 1980.
  4. ^ 田中元治 『基礎化学選書8 酸と塩基』 裳華房、1971年

[編集] 関連項目

  • メタホウ酸 (HBO2)n
  • 過ホウ酸 HBO3
  • 次ホウ酸 H4B2O4
  • ボロン酸 H3BO2
  • ボリン酸 H3BO


最終更新 2009年8月31日 (月) 12:51 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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