ボケ (写真)

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曖昧さ回避 この項目では、写真の表現技法としてのボケについて記述しています。ピントが合っていない「ピンボケ」については「被写界深度」をご覧ください。
焦点距離85mm-70mm 絞りF1.2の時に生じたボケ

写真のボケ(ボケ:Bokeh)とはレンズの効果によって意図的にぼかした部分のこと。主たる被写体にはピントが合っていることを前提としており、特殊なレンズ等で滲みの効果を得る「ソフトフォーカス」や、主たる被写体にピントがあっておらず、ことによると写っているもの全部がぼけている「ピンボケ」とはまったく異なるものである。

一般に、閲覧者に注目させたい部分(主役)を浮き立たせる目的で利用されるテクニックである。たとえば右記の写真では少女のみにピントが合っており、背景はぼけているが、この状態では多くの閲覧者は背景に注目しない。これは心理的な要因によるものであり、これによって、写真内に写った余計なものから、閲覧者の目をそらすことができる。映画撮影では「シャロー・フォーカス」(Shallow focus)と呼ばれる。

パンフォーカスが対義的な語である。

目次

[編集] ボケをつくる方法

焦点距離300mm、絞りf4の時に生じたボケ。望遠レンズ。

ボケの作り方には大きく分けて三つの方法がある。

1. 絞りをおおきく開く(F値を小さくする)と被写界深度が浅くなり、主たる対象以外の前後部分がぼける。
2. 望遠レンズを用いるとやはり被写界深度が浅くなるのでボケを作るのに用いられる。この方法は前記1.と併用してポートレート(人物写真)に多く用いられる。右の写真はこの二つの方法を併用している。
焦点距離90mm、絞りf/9.5の時に生じたボケ
3.被写体に近接して撮影するほど、背景がぼけやすくなる。この方法は花の写真などに用いられる。マクロレンズ接写リングの利用なども有効で、絞り開放と併用すると、幻想的な写真ができる。右の蝶の写真は中望遠レンズと近接によるボケの効果がよく出ている。逆に、近接して背景も写しこもうとすると、大きく絞り込まねばならない。

旧来、ボケ表現を上達させるためには、長い時間が必要といわれてきた。他の撮影技法と同じく、撮影の後現像プロセスにかかる時間のためフィードバックを得て学習するのが難しいことの他に、ファインダーでは効果が読み取れない (レフレックスカメラでも難しい) ことも挙げられる。昨今のデジタルカメラの発展普及により、スキルの習得に必要な練習時間は大幅に短縮されている。

[編集] ボケによる芸術表現

ボケによる芸術表現は、いくつかの種類に分類できる。(ただし、下記のテクニック名は本編執筆時に便宜的に名付けたものであり、本来は画一された名称は存在しない)

後ろボケ
もっともオーソドックスで多用されるボケ表現。主となる被写体(主役)を引き立たせるため、その背景をぼかしてしまうやり方である。ポートレートでは常套手段として使われる。冒頭の少女の写真はじめ上の3枚の写真は典型的な後ろボケ表現である。
前ボケの例 焦点距離50ミリ、F1.4
前ボケ
被写体の斜め前などに存在する物体をぼかす表現方法。花畑の写真において、メインとなる花の手前にボケた花が存在することによって群生感が増す、などの効果がある。また、被写体の手前にボケが存在することによってソフトフォーカス効果を生じ、写真全体が柔らかい印象となる。平凡な被写体に変化をつける手法としても用いられる。ぼかす対象には十分に近接する必要がある。カメラの前に、手で葉などをかざして前ボケを作る人もいる。
前後ボケの例。焦点距離50ミリ、F1.4 接写リング使用。
前後ボケ
被写界深度を極端に浅くし、前も後ろもぼかし、ソフトフォーカス的な幻想的な雰囲気を作る。近接と、絞りの開放を併用する。
半ボケ
背景を少しだけぼかす表現方法。絞り値をF7~11など、比較的大きな値にした状態で撮影する。その芸術写真のテーマを明示すると同時に、被写体と背景とを並列比較させたり(をメインに据えて背景の河川をぼかす等)、もしくは撮影場所を明示させる(神社に咲いていたものであることを明示する等)ことができる。
被写体ボケ
主として表現したい被写体そのものをぼかし、その周囲にあるものにピントを合わせる表現方法。写真全体に古めかしい雰囲気を与える効果があり、そのインパクトは絶大である。ただし撮影する写真のテーマが比較的はっきりしている必要があり、高い構図構成技術も要するため、ここに記した中では、もっとも高度なボケ表現である。
狩野内膳「南蛮屏風」雲により背景を省略

[編集] ボケと文化

古くより、写真において、ボケによる表現をもっとも好むのは日本人であり、他の民族はそのようなテクニックをほとんど用いないといわれてきた。これは、伝統的な欧米芸術の多くが、風景そのものを写実的に、かつ隅々まで描写することが原則であった(空気遠近法という一種のボケ表現もあったが)のに対し、日本人は、たとえば、禅画における空白の効果や、狩野派などにおける「雲」による背景の省略など、西洋画とはまったく違った手法の絵画を描いてきた。ここには「ボケ」を表現として好む日本人の美意識と共通するものが感じられる。

英語で"Bokeh"という単語が用いられるようになったのは「遅くとも2000年から」と英語版(en:Bokeh)にあるので、きわめて新しい表現手法として受け止められていると考えられる。

また、アニメにおいても (たとえばドラえもんのようなコミカルな作品においても) ピントを順次、複数の対象に合わせて変えてゆくような、ボケを積極的に利用した表現が見られる。

[編集] レンズによるボケの違い (ボケ味)

反射式レンズによるリング状のボケ

ボケ表現を用いた場合の背景 (および前景) のボケの風合いは、撮影時の設定が同じであっても、使用されるレンズによって異なってくる。

ピントの合う範囲の前後において、被写体からの距離が遠のくに従っていかようにボケが増すか(範囲から外れた途端に急激にボケるのか、範囲から外れてもなかなかボケないのか)、というカタログスペック上の値のことをピント曲線と呼ぶ。このピント曲線は、初級者のカメラマンにとってあまり重要なものではないが、プロカメラマンにとっては、コントラスト曲線等と並ぶ重要な値の1つである。

ぼけた像が具体的にどのようになるかは、(背景にある)被写体の、ピントから外れた場所におけるある点像が、フィルムまたは撮像素子上にどのような広がりをもって写し出されるかによる。平面から平面に移るピントの合った像とは異なり、ボケの像はレンズの設計によって千差万別であり、レンズの個性ともとらえられる。個々のレンズのボケの風合いのことをボケ味と称する。

点像が、なだらかな広がりをもった像に移らないと、棒状の物体が2本に分かれたり(二線ボケ)、甚だしくは具合の違う複数のボケがゴースト状に重なって写りこむ。このような現象は、ある程度高解像度の映像を、拡大表示しなければ意識的に捉えられることはない。しかし、なんとなく「ガチャガチャとした感じ」になることから、特に芸術写真の場合には、かなり低解像度な状態でプリントした場合でも確実に閲覧者に心理的影響を与える。このようなレンズはボケ味が悪いと表現される。

一般にズームレンズなどでは良いボケ味を得るのが難しく、前述のような現象を嫌って単焦点レンズにこだわる人もいる。また、二線ボケなどの現象が発生していない状態をボケ味がなめらかであると称する。

過渡期に開発されたズームレンズの中には、内部にフレネルレンズを使用した製品がある。このようなレンズの場合、設定によっては、背景に同心円状の歪みが生じることがある。主には最望遠側でF値開放で撮影すると起こる。ぼけた像にさらに歪みが加わって起こる現象であるが、俗にグルグルボケと呼ばれる。

特異なボケが得られる例に、反射光学系がある。点像が反射鏡の形状を反映し明確なリング状になるため、リング状のボケが得られる。

[編集] デジタルカメラとボケ

ボケはフィルムまたは撮像素子の大きさにも影響される。同じ画角・同じ明るさで撮影しようとしたとき、光学的に、フィルムまたは撮像素子のサイズが小さいほどボケは小さくなる。近年普及したデジタルカメラは、35ミリフィルムよりも小さなサイズの撮像素子を使っていることが多く、得られるボケのぼけかたが小さくなっている。このことから、ボケ表現にデジタルカメラは不向きという評があり、大きな撮像素子を持つデジタルカメラが求められる一因ともなっている。

一方、モニタ映像によりその場でボケの効果を確認できることや、DPEの手間を経ずして結果を得られることから、逆にデジタルカメラによってボケの技法の習錬が容易になっているという面もある。

[編集] ボケを排する意見

白川義員は『山岳写真の技法』において、フレーム内にあるいかなる被写体にもピントが合っている (パンフォーカス) べきであり、写したくないものはフレームから外すべき、と述べている。山岳写真に限った主張ととらえるのが自然だと思われるが、このような意見もある。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

最終更新 2009年11月5日 (木) 18:49 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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