マサイ族

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マサイ族

マサイ族(―ぞく、より正式にはマーサイ)は、ケニア南部からタンザニア北部一帯の先住民である。ナイル系のマー語(マサイ語)を話す。「マサイ」とは、「マー語を話す人」という意味だという[1]。伝統的な生活を守って暮らしている民族である。人口は推定20 - 30万人程度と推測されている。「伝統信仰」はキリマンジャロ山の頂上に座するエン=カイという神を信奉する一神教。これはキクユ族の神であるンガイと同じものであると思われる。

非常に勇敢でプライドが高く、草原の貴族と呼ばれる。

目次

[編集] 歴史

ケニアにおける「民族/言語」分布。南西の濃いピンクの部分がマサイの居住地、赤系はナイル系。青系はバントゥー系。ただしこれらの民族/部族はイギリスが支配のために固定化して作り出したものである[2]

近代・現代に入ってから、古くはヨーロッパ植民地主義者(ドイツ及びイギリス)や、イギリスに原住地を逐われたキクユ族などによって、マサイ族の土地が強制的に収奪され続けてきた。マサイ族が遊牧を行なっていた土地の多くは動物保護区や国立公園などに指定され、法的に彼らが遊牧を行なうことができなくなってしまった(アンボセリ・ナイロビマサイマラ・サンブル・ナクル・マニャラ・セレンゲティ・ツァボなどの地域)。

現在、ケニア・タンザニアの両政府が進めるマサイ族の定住化政策に対して、遊牧民である彼らは一貫して抵抗を続けており、両国内にある国立公園内での遊牧権と、季節ごとに家畜の移動を行なう際に両国の国境を超えて自由に移動する権利を要求し続けている。だが、現実的にはいまだに両国政府の定住化政策は進んでおり、彼らの中でも農耕や、現金収入を得られる観光ガイドなどの職業に付く者が少しずつ増え、遊牧生活を続けてゆくことは年々難しくなってきている。

[編集] 生活・文化・習慣

本来は定住せず、狩猟およびヤギ等の家畜の遊牧で生計を立てる遊牧民であった。しかし現在では都市に住み、サバンナ観光ガイドや密猟監視員(彼らは有能なハンターであり、監視員は彼らの天職である)などの定職を持って暮らしているマサイ族も多い。以下は伝統的マサイ族に関する記述である。

マサイ族伝統の住居は牛糞をこねて作った掘っ立て小屋である。この掘っ立て小屋をサークル状に配置し、外側をさらに木の柵で囲うのが村の伝統的なスタイルである。この村全体を彼らはボマと呼ぶ。夜になると、彼らは放牧していた家畜をこのサークルの内側に入れてしまう。猛獣などの外敵から家畜を守るための知恵である。

はマサイ族にとって最も重要な動物であり、貨幣の代わりでもある。賠償・結納相続なども牛の受け渡しによって行われる。男性において牛を持たないということは、それだけで恋愛対象にならないというほど、牛は重視される。

基本的に一夫多妻制である。財産を多く持つ(つまり牛を多く持つ)男は二人以上の妻をめとることができる。またマサイ族の家族制度では男は普通働かない。牛を襲うライオンなどの猛獣を退治するための狩りや牛の放牧をするだけで、普通の仕事は全て女や子供が行う。外部の人間が仕事を与えても「自分たちの文化ではない」として受け入れないことが多い。

主食は牛乳ウガリ。牛乳をギブユという瓢箪に入れて作った原始的なヨーグルトや、牛のを抜いてそれを牛乳と混ぜ合わせたカラバッシュという飲み物もある。また牛の血そのものも飲用する。客人が来たときのお祝い事などでは動物を殺して肉食をすることもあるが、家畜を潰してしまうことになるためごくまれである。牛肉は非常に固いものをよく噛んで食べ、日本人や西洋人のように熟成させた柔らかい肉は好まない。このほか後述とも関連するが、魚食は全くせず、野菜を食べることもごく少ない。

政治的にはそれぞれの村ごとに長老がいて物事を決定する原始的な長老制をとる。戦士階級であるモランはこの長老の下に属し、未だ修行中の身分とされる。マサイ族の男性は生涯に必ず一度はモランとなる。モランは槍で武装し、独自の槍術をよくする。このほか相撲に似た格闘技も存在し、彼らはこれらを駆使してライオン、豹をはじめとする猛獣とも渡り合う。かつては他部族からの略奪もモランの仕事であったが、現在では行われていないという。

マサイ族の伝統的な色は赤であり、衣服や化粧にはほとんど赤が使われる。本来靴は履かず裸足であったが、最近では自ら作ったサンダルを履くようになった。このサンダルの底には自動車の古タイヤを流用していることが多い。

マサイの男性が大人になる儀式に割礼がある。男性、女性とも、性器に切り痕を入れる。特に女性に関しては、性行為の快感をなくす作用があるので、人権活動家の非難の対象にもなっている。

マサイ族に属するアリアールという1万人ほどの(小さな)グループにおいては、割礼によって男性は年齢帯別のグループに分けられており、ひとつの年齢グループは12歳~15歳などといった上下幅を持っているという。つまり、割礼は毎年行われるのではなく、十数年おきに行われ、同じ時に割礼を受けた男性たちは10年以上歳が離れていても、日本語の「同期」にあたる、というわけである。一番新しく割礼を受けたグループが「イルムラン」と呼ばれ、村落の人々と家畜を守る戦士の役割を果たしている、という。戦士は結婚もできず、女性の前で食事をすることも禁じられている、という。ひとつの戦士のグループが戦士を卒業するのは、次のグループ(世代)が割礼を受けた時、つまり10数年後のことで、そうなると戦士のしるしである編んだ髪を切り、結婚し、長老グループの仲間入りをする、という[3]


[編集] 言語

独自の言語マー語(マサイ語)を話す。 以下に主要な単語を列挙する。

  • マーサイ:(マサイ族の自称、「マー語を話す人」の意[4]
  • オルパイヤン:男
  • エンキトク:女
  • エンカイオニ:少年
  • エンテイト:少女
  • モラン:戦士
  • エロ:友人
  • アシ・オレン:ありがとう
  • スパ・オレン:元気ですか?
  • イラ・スパ:元気ですか?
  • カジ・イングア:どこから来たのですか?
  • カジ・イロ?:どこへ行くのですか?
  • ナボ:1
  • アレ:2
  • ウニ:3
  • エワソ・ナイロビ:冷たい水、ケニアの首都ナイロビの地名の由来。

[編集] 肉体的特長

驚異的な視力を持つ。通常の方法では計測不能であるが3.0~8.0程度と推測されており、優れた暗視能力も併せ持つ。日本のテレビ番組で計測した結果、12.0の数値を出した者も存在する。彼らはこの視力のため、サバンナでも道に迷うことはない。彼らの驚異的な視力は生まれつきのものだと思われがちだが、これはサバンナで家畜を猛獣などの危険から守るために常時眺視(遠くを見つめること)を強いられる生活を送っていることが主な要因である。都市に住んでいるマサイ族が平均1.0程度の視力しか持っていないことから考えても、遺伝的な要因は薄い。

[編集] その他

1970年代以降さまざまなドキュメンタリー番組において取り上げられ、紹介されたことから、日本ではブッシュマンなどと並んで最も有名なアフリカの民族である。クイズ番組やバラエティ番組においてロケーション撮影を頻繁に行ったり、日本のタレントがマサイ族の居住地にホームステイしたり、マサイ族を日本に呼んで社会の違いを見せるといった企画も多数行われている。これらの番組においては、居住地で遭難したジョン・F・ケネディ大統領の息子を救助したことが取り上げられたこともあった。

しかしその社会・文化について広範な認知が得られているとは言いがたく、特に食生活に関する差異はマサイ族の友人を持つ者でもカルチャーショックを受けるほどに大きいが、一般的な日本人はほとんど知らないのが現状である。 他方マサイ族も日本についての理解は少なく、来日したマサイ族について都市、海、魚肉を知らず、都市では碌に出歩くこともできなかったり、海を恐れたり、魚肉を用いた料理を食べることができなかったりという事例が報告されている。

ナイル系の遊牧民は人種的な操作の対象となり易く、地中海人種に属する[要出典]とされたり、黒人とされたりし、ハム族神話により「黒人より高貴である」等として植民地支配の際に分断の道具にされた。

[編集] マサイ族と近年の文明

文明とはほど遠い印象が強いマサイ族だが、近年では携帯電話の普及が広まっている。ただし電気自体の普及が悪いので充電には手間がかかる。同様の理由でパソコンの普及は進んでいない。また、自転車を所有するマサイ族も存在する。自動車も存在するが、道路の舗装は皆無に等しいため、実用性はない。

[編集] 脚註

  1. ^ ジョゼフ・レマソライ レクトン 『ぼくはマサイ―ライオンの大地で育つ』さえら書房、2006 ISBN 4378034042, p.161 訳者あとがき
  2. ^ 松田素二「民族対立の社会理論」『現代アフリカの紛争を理解するために』アジア経済研究所 1998年
  3. ^ 『ぼくはマサイ―ライオンの大地で育つ』p.149-150
  4. ^ 『ぼくはマサイ―ライオンの大地で育つ』p.161

[編集] 関連項目

[編集] 関連書

  • ジョゼフ・レマソライ レクトン 『ぼくはマサイ―ライオンの大地で育つ』さえら書房、2006 ISBN 4378034042

(原題 Joseph Lemasolai Lekuton, Facing the Lion - Growing Up Maasai on the African Savanna, National Geographic Society, 2003. )

  • 永松 真紀『私の夫はマサイ戦士』新潮社、2006、ISBN 4103032715


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最終更新 2009年9月24日 (木) 17:50 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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