マルクス経済学

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マルクス経済学(マルクスけいざいがく)は、カール・マルクスの主著『資本論』において展開された、経済学の諸カテゴリー及び方法論に依拠した経済学の体系である。

マルクスは、アダム・スミスデヴィッド・リカードらのいわゆるイギリス古典派経済学の諸成果、殊にその労働価値説を批判的に継承し、「剰余価値」概念を確立するとともに、その剰余価値論によって資本の本質を分析し、同時に古典派経済学の視界を越えて、資本主義歴史的性格をその内的構成から解明しようとした。

目次

[編集] 『資本論』における方法論

『資本論』は、資本(自己増殖する価値の運動体)の分析において上向法と下向法という2つの方法を採用している。つまり、

  • まず資本の最小単位である、商品の分析を行い、次に貨幣の分析を行い、最後に資本の分析を行う方法
  • 逆に資本の分析から、利潤・利子・地代の分析を行うという方法

である。

[編集] 労働価値説

マルクスは、商品の価値はその生産に費された労働の量によって決まる、という古典派経済学労働価値説を継承した。その上で彼は労働力の概念を導入し、剰余価値説を打ちたてた。資本家と労働者の間で売買されるのは労働ではなくて労働力であり、資本家は労働力を使って賃金分を越える価値を生み出すこと、その超過分である剰余価値こそ資本の利潤の源泉であることを明らかにした。

労働価値説を前提とすれば、剰余価値は労働時間に比例して大きくなる。多くの労働力を使えば多くの剰余価値を得ることになる。しかし投下された資本に対する利潤の比率は市場における競争の結果として平均的な水準に落ち着く。同額の資本を、ある資本家は生産手段に多く投下し、他の資本家は労働力に多く投下したとしても、両者が得る利潤は同額となる。例えば、資本家Aは生産手段に60・労働力に40を投下してシャツを生産し、資本家Bは生産手段に80・労働力に20を投下して綿布を生産した場合、資本家Aの下で生み出される剰余価値は資本家Bの下で生み出される剰余価値の2倍になる。しかし資本家Aが2倍の利潤を得るということは明らかにありえない。これはリカードを悩ませた問題だが、マルクスによっても解決されたとは言いがたく、後に転形問題として議論されることになった。

[編集] その他のマルクス経済学の特徴

  • 資本の蓄積本能を生産過程と資本の循環から記述し、資本家もまた資本の運動法則を人格化したロボットにすぎないとしたこと。
  • 産業資本(商業資本)と金融資本(利子生み資本)の乖離が金融恐慌の原因となるとした。
  • 失業産業予備軍(= 労働者が搾取されるべき商品であるための必要悪、相対的過剰人口)として資本が準備しているという性格づけが行われたこと。
  • 再生産の可能性について、再生産表式を用いて検証したこと。
  • 古典派経済学の三位一体的定式(trinity formula)を退けたこと。
  • 資本構成の高度化に伴う利潤率の傾向的低下の法則による資本主義の全般的危機を唱え、恐慌独占資本主義の必然性について考察を加えたこと。

[編集] 歴史観

歴史観では、ヘーゲル弁証法フォイエルバッハ唯物論を採り入れた唯物史観を唱え、下部構造(経済的要因、つまり生産力と生産関係の矛盾)が上部構造政治体制など)を変化させる動因とした。資本主義の矛盾は、その延命のための帝国主義第三世界への搾取の激化(従属理論)、政府金融独占資本と協調して危機を管理する国家独占資本主義などを生むとした。現在(第一次世界大戦以降)の資本主義は国家独占資本主義であると規定される。

最終的に資本主義はその内在する矛盾によって社会主義革命を誘発し、労働者階級プロレタリア独裁を経て階級のない共産主義に必然的に至ると考えた。

しかし、現実の歴史上、資本主義の成熟した先進資本主義国で本格的な社会主義革命は起きていない。福祉の充実、ケインズ政策などによる失業の救済、議会制民主主義の下での社会民主主義の台頭などにより社会主義革命は回避されたと考えられている(ただし、近年では新自由主義の台頭により、社会民主主義的福祉政策が否定された結果として貧富の格差が増大しており、革命が回避されたと結論付けるのは早計である)。むしろ、後進資本主義国のロシア中国低開発国のインドシナ諸国などで社会主義革命が起きており、多くの議論を呼んでいる。

[編集] 2つの立場

マルクス経済学の2つの立場として、

  • 資本主義経済が次第に陳腐化し自ら社会主義革命の条件を準備するという歴史の弁証法を採用するマルクス主義の立場
  • 経済の好不況の循環メカニズムを学問的に解明するのに止める宇野弘蔵らの純粋経済学の立場(宇野経済学

がある。

[編集] 日本でのマルクス経済学

日本では、現在マルクス経済学の学派は、大きく分けて次の4つである。

  • 正統派
  • 宇野学派
  • 市民社会派(レギュラシオン派)
  • マルクス数理経済学派

日本の経済学界では戦後しばらく講座派労農派らによるマルクス経済学が主流であり、終戦直後の傾斜生産方式による戦後復興はマルクス経済学者(有沢広巳)による発案である。 また、日本の経済史の分野においては、経済の有機的類型化の把握手法と経済体制の発展と矛盾の弁証法的記述において、現在も研究が続けられている。

[編集] 関連分野一覧

[編集] 関連項目

最終更新 2009年11月10日 (火) 20:13 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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