ミツバチ

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ミツバチ属 Apis

セイヨウミツバチ Apis mellifera
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: ハチ目(膜翅目) Hymenoptera
亜目 : ハチ亜目(細腰亜目) Apocrita
上科 : ミツバチ上科 Apoidea
: ミツバチ科 Apidae
亜科 : ミツバチ亜科 Apidae
: ミツバチ族 Apinini
: ミツバチ属 Apis
Linnaeus, 1758
英名
Honey bee

(本文参照)

ミツバチ(蜜蜂)とはハチ目(膜翅目)・ミツバチ科(Apidae)・ミツバチ属Apis)に属する昆虫の一群で、に加工して蓄え蜂蜜とすることで知られている。世界に9が知られ、とくにセイヨウミツバチは全世界で養蜂に使われており24の亜種が知られている。日本には、3属12種が生息する[1]

セイヨウミツバチ成虫寿命:女王蜂1-3年(最長8年)、働き蜂・最盛期15-38日、中間期30-60日、越冬期140日、雄蜂21-32日[2]

目次

[編集] 種類

  • セイヨウミツバチ(学名:Apis mellifera) - ヨーロッパアフリカに分布。
  • トウヨウミツバチ(学名:Apis cerana) - アジア全域に分布。
    • ニホンミツバチApis cerana japonica Rad)はトウヨウミツバチの亜種であり韓国に生息するトウヨウミツバチと近縁[3]
  • サバミツバチ(学名:Apis koschevnikovi) - インドネシアボルネオ島に分布。
  • キナバルヤマミツバチ(学名:Apis nuluensisi) - インドネシアのカリマンタン(ボルネオ)島に分布。
  • クロオビミツバチ(学名:Apis nigrocincta) - インドネシアのスラウェシ島に分布。
  • オオミツバチ(学名:Apis dorsata) - 東南アジアアジアに分布。
  • ヒマラヤオオミツバチ(学名:Apis laboriosa) - ヒマラヤ地域に分布。
  • コミツバチ(学名:Apis florea) - 東南アジアから西アジアに分布。
  • クロコミツバチ(学名:Apis andreniformis) - 東南アジアに分布。

[編集] 概要

飛行中のミツバチ
ハナアブ

日本ではニホンミツバチ、セイヨウミツバチの2種が飼育(養蜂)され蜜の採取に使われる。また作物受粉にも用いられるが、蜜を出さず特殊な振動採粉をするナス科果菜類の受粉には役に立たない。そのため、トマトピーマンなどの受粉用にはミツバチではなくマルハナバチ(ミツバチ科マルハナバチ属)が使われる。

ニホンミツバチの野生集団を人工巣に誘導して蜂蜜を取ることも行なわれている。

新たな女王蜂が誕生した巣では5〜7月に巣分かれ(分蜂)が起こり、女王蜂は働き蜂を引き連れ巣を出て新しい巣を探しに出る。この際、女王蜂を護って働き蜂が塊のようになる分蜂蜂球を作る。

ミツバチのオスを指す英語「drone」は「なまけもの」を意味する。これはメスである働きバチが花粉や蜜を集めに出かけたり、巣の中を掃除したり、幼虫の世話をしたりと非常によく働くことと対比してこのように呼んでいると考えられる。ミツバチのオスは羽化から1週間ほど経つと、女王バチ交尾するため、晴天の日を選んで外に飛び立つ。

ある一定の範囲の空中にたくさんのオスバチが集まって飛んでいると、その群れの中へ女王バチが飛び込んできて交尾を行う。巣の中で死んだハチは働き蜂により、巣の外に捨てられる。

毒物への耐性は弱く、ショウジョウバエの半分程度という[4]

尚頻繁に間違われる事だが、右の写真は双翅目ハナアブの仲間なのでミツバチとは遺伝子的に全く違う種である。

[編集] 蜜の採集

詳細は「ミツバチのダンス」を参照

ミツバチは蜜源を見つけると巣内の垂直な巣板の上でダンスを行い、仲間に蜜源の方向と距離を伝える。これは本能行動の例としてたびたび使われる。ミツバチのダンスは蜜源の場所という具体的な情報をダンスという抽象的な情報に変換して伝達が行われるため、記号的コミュニケーションであると考えられている。ミツバチのダンスコミュニケーションを発見したカール・フォン・フリッシュは高次なコミュニケーション能力が昆虫にもあるという発見が評価され、ニコ・ティンバーゲンコンラート・ローレンツと共に1973年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。

蜜源が近い場合には、体を振りながら左右に交互に円形を描く「円形ダンス」をおこなう。

蜜源が遠い場合(50m〜)は「尻を振りながら直進 - 右回りして元の位置へ - 尻を振りながら直進 - 左回りして元の位置へ」という、いわゆる「8の字ダンス(尻振りダンス)」を繰り返す。このとき尻を振りながら直進する角度が太陽と蜜源のなす角度を示しており、真上が太陽を示す。つまり巣板上で右手水平方向に向かって尻を振るような8の字を描いた場合、「太陽を左90°に見ながら飛べ」という合図になる。また、ダンスの時の尻を振る速度が蜜源までの距離を表す。すなわち尻振りの速度が大きいときは蜜源までの距離が近く、速度が低いときには距離が遠い。花粉や水の採集、分蜂時の新たな巣の場所決定に際しても、同様のダンスによるコミュニケーションが行われる。

蜜を持ち帰った働きバチは、貯蔵係のハチに蜜を渡すが、そのとき貯蔵係は糖度の高い蜜を優先して受け取り、糖度の低い蜜を持ったハチは待たされる。このことによって、よりよい蜜源へ働きバチを集中的に動員できる。

日本の坂上昭一のグループによるミツバチの巣の社会性行動研究は世界的にも有名で、坂上の著作はE.O.ウィルソンの『社会生物学』にも非常に多く引用されている。

[編集] 蜂の巣の構造

蜂の巣(巣板)

自然の状態では、ミツバチの巣は巣板と呼ばれる鉛直方向に伸びる平面状の構造のみからなる。ミツバチが利用した空間の形状によっては巣板が傾いていることもある。巣板の数はミツバチの種によって異なる。養蜂に用いるニホンミツバチやセイヨウミツバチは複数枚の巣板を形成し、自然の状態でも10枚以上にのぼることがある。コミツバチなどは巣板を1枚しか作らないため、養蜂には向かない。

ミツバチは巣板を防御する構造物を自ら作り出すことはせず家屋の隙間や床下、木のウロなどもともと存在する外壁を利用する。都市部では巣板がむき出しになった巣も存在する。

巣板は中空の六角柱が平面状に数千個接続した構造である。このような構造をハニカム構造(honeycomb、蜂の巣の意)と呼ぶ。強度に優れ、材料が最少で済むという特徴がある。六角柱は厚さ約0.1mmの壁でできており、奥行きは10〜15mmある。底部は三角錐である。巣板の材料はミツバチの腹部にある蝋腺から分泌された蜜蝋である。幼虫を育てるために使用する穴の奥行きは10〜15mmであるが、蜜を貯蔵するために使用する穴の奥行きはバラツキが大きく20mm程度に成る場合もある。

[編集] ミツバチによる生産物

人間は、主に下記の物をミツバチの生活環から得て利用をしている。

ハチミツ
花から得られる糖分と水分、ミツバチ体内の転化酵素が濃縮された物質。有史以前から甘味料として利用され現在では製菓原料、化粧品原料、栄養食品などにも利用される。
蜜蝋
ミツバチが体内で合成し分泌する物質。ワックス成分で巣の主要な構成材料となっている。中世ヨーロッパではろうそくの主原料であった。蜜蝋自体は食品とはならないがワックス油絵具などのメディウム(薄め液)、石鹸クリーム口紅蝋燭などの原料として利用される。
プロポリス
植物が芽等を保護目的で分泌した滲出物をミツバチが集めた物質。ミツバチは営巣空間の内面を内張りしたり隙間を埋めるのに使う物質である。抗菌性や抗酸化性などが注目され、健康食品として利用されている。
ローヤルゼリー
働き蜂が体内で合成し咽頭腺から分泌する物質。ローヤルゼリーを与えられたメスの幼虫だけが女王蜂として成長する。ゲノム解析により女王蜂と働き蜂のゲノムに違いがないことが明らかになっており、どのメスの幼虫も女王蜂になる可塑性を持っている。
花粉
働き蜂は花粉を幼虫の餌やローヤルゼリーの原料とするため、だんご状にして集めてくる。主に乾燥物が健康食品として利用されている。

[編集] 性決定の仕組み

詳細は「半倍数性#ミツバチにおける性決定」を参照

受精卵からはメス(女王蜂または働き蜂)が生まれるが、卵が受精せずに発生した場合はオスとして生まれる。オスはメスの半分の染色体数を持ち、それはすべて母親(女王蜂)に由来する。このためオスは母親の持つ遺伝情報の半分(ゲノムに相当)を受け継ぎ、メスは母親の持つ遺伝情報の半分と半数体の父親の遺伝情報すべてを受け継ぐことになる。

[編集] 生態系

蜂球
:巣口周辺を飛び回るキイロスズメバチと腹部を反り上げ翅を震わせるニホンミツバチ。
:ニホンミツバチによる蜂球。中では2匹のキイロスズメバチが蒸されている。
:「」の約1時間後。蜂球は解体され、蒸し殺されたキイロスズメバチの遺骸が見える。
(いずれも2005年7月 横浜市内)
巣の材料を食べる害虫のスムシの一種

ミツバチの天敵としてアジアだけに生息するオオスズメバチがいるが、アジアで進化したトウヨウミツバチはオオスズメバチへの対抗手段を獲得した。巣の中に侵入したスズメバチを大勢のミツバチが取り囲み蜂球(ほうきゅう)とよばれる塊をつくり、蜂球の中で約20分間の間に48前後のを発生させる。取り囲まれたスズメバチは上限致死温度が44~46℃であるために耐えられずに死んでしまうが、ミツバチは上限致死温度が48~50℃であるため死ぬことはない。布団蒸しと喩えられる。玉川大学の小野正人教授の研究グループにより発見された[5]

またスズメバチへの対抗手段を持っていないと思われているセイヨウミツバチも大群でスズメバチの腹の周りを圧迫して呼吸を不可能にし、約1時間かけてスズメバチを窒息させるという対抗手段を持っている。これをasphyxia-balling窒息スクラム)と呼ぶ[6][7]。なおセイヨウミツバチは上限致死温度がトウヨウミツバチよりも低いため、蜂球による方法でスズメバチに対抗することはできない。

古くから使われていたニホンミツバチに比べより多くの蜜を採集するセイヨウミツバチが1877年に導入された。セイヨウミツバチは繁殖力も旺盛なことから野生化しニホンミツバチを駆逐してしまうのではないかと言われ、実際に北米では養蜂のために導入した後、野生化している。しかし日本では天敵オオスズメバチの存在があり、オオスズメバチのいない地域で進化したセイヨウミツバチはトウヨウミツバチのように蜂球による攻撃という対抗手段を獲得していないため現在まで一部の地域を除いて野生化は確認されていない(オオスズメバチが生息していない小笠原諸島では、セイヨウミツバチが野生化して問題になっている)。

他には直接ミツバチを襲うわけではないが、養蜂家からスムシ(巣虫)と呼ばれ嫌われるハチノスツヅリガ等の幼虫は、蝋を原料とした巣を食べて成長する事から、多くのスムシに寄生された巣は全滅することもある[8]

[編集] 雑学

  • 日本で現在使用されている20切手のデザインのモデルにもなっている。
  • 小説『みつばちマーヤの冒険』(蜜蜂マアヤ。ボンゼルス著。アニメ化もされた)は擬人化したお話ではあるが、スズメバチがミツバチを襲うなど実際の観察に基づいた設定がなされている。
  • シャーロック・ホームズシリーズではホームズは探偵引退後の仕事として養蜂家となり、著作も残したことになっている。これは、この50年ほど前に近代養蜂に関する体系的な著書がアメリカ人・ラングストロス(Lorenzo Lorraine Langstroth)により発表されたことが反映されている。
  • 『青い鳥』で知られるノーベル賞作家、モーリス・メーテルリンクは観察眼の鋭い養蜂家でもあり『蜜蜂の生活』(工作舎 1991年/2000年 ISBN 978-4-87502-339-5)という名著を残している。
  • 現在、アメリカをはじめ世界的に激減しつつある。理由としてはCCD(蜂群崩壊症候群:Collony Collaps Disorder)、特定のダニ、電磁波、ネオニコチノイド系農薬、はては温暖化が疑われているがはっきりとはしていない。
  • シンビジウム(蘭)の一種である中国南部原産の金稜辺(キンリョウヘン)の花はニホンミツバチを引き寄せる匂いを出す。ニホンミツバチの分蜂を捕獲する時に利用される事もある。なおセイヨウミツバチには金稜辺の花の匂いに集まる習性は無い。

[編集] 脚注

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  1. ^ ミツバチ属の分類と系統についてPDF玉川大学 ミツバチ科学26巻4号 p.145-152(2006-8)
  2. ^ ミツバチデータ
  3. ^ ニホンミツバチとトウヨウミツバチの系統遺伝的解明
  4. ^ 大量死の次は不況 泣き面にハチ 2009/4/3
  5. ^ オオスズメバチの「警報フェロモン」の成分を突き止めた小野正人さん
  6. ^ Smothered to death. Hornets asphyxiated by honeybees
  7. ^ ミツバチ、必殺技「窒息スクラム」で天敵スズメバチを撃退
  8. ^ 蜂の病虫害について

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズ

[編集] 外部リンク

最終更新 2009年11月11日 (水) 02:46 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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