ラテン人

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ラティウム王に謁見するアエネアス

ラテン人は元来インド・ヨーロッパ語族系統に属し、南欧のイタリア半島中西部に居住していた民族を指す。古代ローマ文明を築いた主要な民族であり、その言語ラテン語)は古代ローマ公用語としてヨーロッパ各地の言語に多大な影響を及ぼした。

現代においてはイタリアフランススペインポルトガルルーマニアモルドバに住む人々がラテン人の系譜を引く末裔と呼べるが、長い年月を経て異民族・他民族との混血が行われてきたため、古代のラテン人と同一の存在ではない。

また中南米に居住する、スペインポルトガルなどのラテン系民族の植民者と混血した人々は、ネイティブアメリカンアングロ・アメリカ人と区別するために、ラテン人あるいはラテンアメリカ人と呼ばれることがある。

目次

[編集] 起源

ラテン人は、ラティウム・ベトゥス(古代ラティウム)に住まう古代イタリア人で、ウンブリア人やオスク人と同じイタリック人の一派だった。彼らはラテン神話に基づいた緊密な同族意識を有し、同じラテン語を用いて意思疎通を行っていた。

その起源は多くの古代民族同様、謎に包まれている。古代ギリシャの文献は彼らを小アジアに起源を持つ、自分達と同じ地中海の民と主張するが、近年の考古学的研究では中央ヨーロッパからイタリアに移住した民族であるとする学説も唱えられている。これは民族的な議論だけでなく、ラテン人がアルプス系白人なのか地中海系白人なのかといった、人種論的側面からも議論の対象となっている。

[編集] 歴史

[編集] 先史

滅び行くトロイアとアエネアス
ローマの象徴であるファスケス

ラテン神話によれば、ラウレンス人とも呼ばれていたラテン人達は民族神にして全ラテン人の父、ラティヌス王によってラティウム・ベトゥスに導かれた。

時同じくして、古代ギリシャ(より正確にはギリシャ神話)に存在したトロイア王国がアカイア人に滅ぼされる。アカイアとの和睦を主張していた英雄アエネアスは助命され、滅んだ祖国を後にして諸国を放浪し、最後にラティウムに辿り着いた。アエネアスの英雄伝を聞き及んでいたラティヌスは彼を歓待し、娘の王女ラヴィニアをアイネアスに嫁がせる事にした。これに元々の婚約者である隣国のルトゥリ人の王トゥルヌスが激怒し、力ずくでラヴィニアを奪い返そうと軍を進めた。

ラティヌス王とアイネアス率いるラテン軍はこれを破ったが、戦いの中でラティヌス王は戦死してしまった。父の死後、ラヴィニアはアイネアスに娶られ、王族の継承者となる一子シルウィウスを儲けた。しかし依然としてラヴィニアを諦めなかったトゥルヌスは異民族であるエトルリア人の力を借りて再び侵攻、アイネアスは自ら軍を率いてトゥルヌスを破ったが自らも命を落とした。

その後、成長したシルウィウスはアルバ・ロンガに居城を構えてラティウムを統治する事になり、以降も代々に渡ってシルウィウス家の末裔達がその役目を担っていった。またラティヌスは、(後にはローマ人を含む)全てのラテン人が参加する毎年の祝祭の間、アルバヌス山(en:Monte Cavo)のユピテルとして崇拝された。

[編集] 古代

ラテン人の諸国家は小競り合いと和平を繰り返していたが、その一つであったローマ共和制ローマ)が急速に力を伸ばし始める。ローマの領土的野心は紀元前341年に他のラテン人を結束させたが、紀元前338年には全ラテン人勢力がローマの元で統合された。ローマ市は本来、その市の出身者にしか与えられない権利(市民権)を他のラテン人の多くに与え、また与えられなかったラテン人にも同盟者としての地位により一定の特権を享受させた。こうして「ローマ人」と「ラテン人」はほぼ同一の概念となり、「ローマ人」が民族的な用語として用いられたのに対し「ラテン人」は法律的な用語として用いられるようになる。ラテン人(ローマ人)によるローマはイタリア全土を統一し、その言語的・文化的特徴を広めていく。

その後もローマの力は拡大を続け、帝政期を経て現在の西欧の殆どを征服下に置いた。その過程でガリア人イベリア人ゲルマン人同様、単一の民族を指す言葉ではない事に注意)など異なる文化圏の住民への同化・混血も進められ、ラテン人の言語と文化は更に広がりを見せる。現代においてラテン人の本拠であるイタリアのみならず、フランススペインなども「ラテン」の範疇に含まれる事が多いのはこうした理由に起因している。

[編集] 中世・近世

ローマが滅んだ後も、西欧の諸勢力はローマの後裔やその官職の保持者を自称し、公用語にラテン語を用いた。またイタリアフランススペインルーマニアポルトガルなどローマ支配による文化的・言語的影響を大きく受けた地域では、言語や文化にラテン人文化の影響が深く見られた。

ギリシャ文明の影響が強く持つ中世ローマ帝国(東ローマ)は、自身と西欧人を区別する際に「ラテン人」「ラテン」という用語を使った。

[編集] 近現代

現代では「ラテン人」「ラテン」という用語は、イタリアを初めとして、ラテン語に起源を持つロマンス諸語を用いる国々を指して使われる事が多い。またイタリア人フランス人スペイン人ポルトガル人もそのローマ(ラテン)文明のルーツにより、他の文化圏のヨーロッパ人からポピュラーに「ラテン人」と呼称される。

アメリカでは、フランス語を話すケベック州ハイチラテンアメリカの一部とみなされないように、この傾向は続いている。キプロスでは、「ラテン」は、ローマ・カトリック教徒をギリシア教会の信徒から区別するために使われる。

アメリカでは、ラテン・ヒスパニック・ラティーノは、ラテンアメリカ出身の人々をいうときに同義語として使われている。「ラテンアメリカ」の略語としての「ラテン」は、ラテンアメリカの先住民あるいは居住者をさし、はっきり限定してラテン民族の構成員を表わすものではない。この意味では、「ラテン」は、「ヨーロッパの」、「アフリカの」、「アジアの」そして「中東の」のような用語に相当する語句として使われている。それで、ラテン女性は「ラティーナ」と、ラテン男性は「ラティーノ」となる。

[編集] 関連項目

最終更新 2009年11月21日 (土) 10:48 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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