ラム酒
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ラム酒(ラムしゅ rum)は、サトウキビを原料として作られる、西インド諸島原産の蒸留酒。サトウキビに含まれる糖を醗酵・蒸留して作られる。スペイン語ではロン ( ron ) と呼ぶ。またブラジルのカシャッサは同じサトウキビを原料とする同類系統の蒸留酒である。
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[編集] 歴史
発祥はバルバドス島とされる。島の住民たちがこの酒を飲んで騒いでいる様子を、イギリス人が rumbullion (デボンシャー方言で「興奮」の意)と表現したのが名の由来という。発祥はプエルトリコ島とする説もあるが、いずれにしてもカリブ海原産ではあるようだ(カリブ海の海賊たちの物語の中に登場するお酒といえば、これである)。 その後、サトウキビ栽培地域の拡大に伴いラム酒も広まっていき、南北アメリカやアフリカでも作られるようになった。
18世紀になるとラムはイギリス海軍の支給品となった。しかしラムは強い酒だったため、エドワード・バーノンという提督は水割りラムを支給することにした。部下たちはこの薄いラムのことを、グログラムという生地でできたコートを着ていた提督のあだ名からグロッグと呼ぶようになった。現在でも水割りラムはグロッグと呼ばれ、泥酔することはグロッギーという。日本で使われるグロッキーという言葉は、このグロッギーがなまったものである。
1805年のトラファルガー海戦で戦死したホレーショ・ネルソン提督の遺体は、腐敗を防ぐためラム酒の樽に漬けて本国に運ばれた(と伝承されている)。このためラムは「ネルソンの血」と呼ばれることもある。ちなみにそのネルソンを漬けたラム酒を水兵たちが盗み飲みしてしまったため、帰国の際には樽は空っぽになっていたという逸話がある。これには偉大なネルソンにあやかろうとした行動だったという説もある。
ラム酒は中南米では非常に多く飲まれている。特に、コーラで割ったものは、キューバ・リブレ(Cuba libre, スペイン語ではクーバ・リブレ)と呼ばれ、最も一般的な飲み方である。その他の利用としてケーキ、タルトなど焼き菓子の風味づけに多用される。紅茶の香り付けに少量加えることもある。
日本では明治頃から小笠原で飲まれており、1992年に東京都小笠原村の役場・農協・商工会が小笠原ラム・リキュールという会社を設立し母島で国産のラム酒が生産されている。
英サンデー・ミラー紙によると、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズの大ブームのおかげで、英国ではラム酒が飛ぶように売れ、バーでもモヒート、ピニャコラーダ、マイタイ、キューバリブレといったラムベースのカクテルが好んで飲まれ、ダークラムの消費量は前年比31%増という驚くべき数字を叩き出したという。
[編集] 分類
ラム酒には色による分類と、香りの強さによる分類と、原料による分類が有る。
- 色による分類
- ホワイトラム(無色)、ゴールドラム(薄い褐色)、ダークラム(濃い褐色)
- 風味による分類
- ライトラム(軽い芳香)、ミディアムラム(中間的な香)、ヘビーラム(強い芳香)
- 原料による分類
なお、香辛料などで香り付けを行った、スパイスドラムと言うものもある。
[編集] 製法
[編集] 原料別の製法の違い
「インダストリアル・ラム」(工業ラム) は、サトウキビの絞り汁から砂糖をとった後に残る廃糖蜜を醗酵させてできた醸造酒を蒸留し、エタノールの濃度を高めてから熟成させることによって作られるもので、こちらの製法が一般的である。なお、廃糖蜜のことをモラセズ(Molasses)と呼ぶため、モラセズ・スピリットとも呼ばれる。
対して「アグリコール・ラム」(農業ラム) は、サトウキビの搾り汁を、そのまま醗酵させてできた醸造酒を蒸留し、エタノールの濃度を高めてから熟成させることによって作られるものである。
なお、サトウキビから精製された糖蜜を原料とすることもある。
いずれの方法においても、エタノールの濃度を、製造段階で一旦80%程度に濃縮することが多い。ただし最高でもエタノールは95%未満にまでしか濃縮しない。(もしここで95%以上にまでエタノールを濃縮してしまうと、中性スピリッツになってしまう。)蒸留による濃縮後、熟成させる前に加水することもある。
熟成後は通常加水され、だいたいエタノールの濃度が40~50%くらいになるようにして出荷される。高いものでは75.5%で出荷されるものも存在する。
[編集] 風味別の製法の違い
「ライト・ラム」と「ミディアム・ラム」と「ヘビー・ラム」では、製法が異なる。
「ライト・ラム」は、糖蜜と水を混ぜ純粋酵母醗酵させて醸造酒を作り、それを連続式蒸留器で蒸留したもので、比較的高濃度にまでエタノールを濃縮することで雑味を減らしてゆく。その後、内側を焦がしていないオークの樽で短期間熟成される。樽熟成のままだとゴールドラムに、熟成後に活性炭で濾過するとホワイトラムになる。
「ヘビー・ラム」は、糖蜜や廃糖蜜などを自然発酵させ、その後サトウキビの搾りかすや前回の蒸留後に残った蒸留残液などを加えてさらに醗酵させて醸造酒を作り、それを単式蒸留器を使い蒸留したもので、内側を焦がしたオークの樽 (バーボン・ウイスキーを熟成させた樽を用いる事も有る) などで熟成させる。3年以上熟成されダークラムになる。
「ミディアム・ラム」は、糖蜜を自然発酵させて醸造酒を作った後に、場合によってはサトウキビの搾りかすなども加え、それを連続式蒸留器か単式蒸留器で蒸留した後に熟成させるという中間的な製法と、ヘビーラムとライトラムをブレンドする方法がある。したがって色は様々である。
なお、ヘビーラムやミディアムラムでは、琥珀色を出す為に着色料(カラメル)を添加して作られる製品もある。特にヘビーラムでは色が濃い方が質が良いと誤解されている地域もあるため、過度の着色をされる場合がある。
エタノール濃度に関しては、『原料別の製法の違い』の項と同様である。
[編集] その他の製法
「スパイスド・ラム」と言って、バニラなどの香辛料で香り付けを行ったものもある。スパイスドラムは比較的出荷時のエタノール濃度が低いものがあり、30%台のものもある。なお、スパイスドラムはフレーバーラムとも呼ばれる。
また、他のタイプのラムにも何らかの香りを付けることもある。
[編集] 主なブランド
- アプルトン (Appleton)(ジャマイカ)
- エル・ドラド (El Dorado)(ガイアナ)
- オールド・オーク (Old Oak)(トリニダード・トバゴ)
- クルーザン (Cruzan)(アメリカ領ヴァージン諸島)
- コイーバ (Cohiba)(キューバ)
- コックスパー (Cockspur)(バルバドス)
- サンタ・テレサ (Santa Teresa)(ベネズエラ)
- タンドゥアイ (Tanduay)(フィリピン)
- デメララ (Demerara)(主なブランドに、Van DijkやLemon Hart等)(ガイアナ)
- ネグリタ (Negrita)(フランス)
- バカルディ (Bacardi)(1862年キューバで創業、現在はプエルトリコ、他。)
- ハバナ・クラブ (Havana Club)(キューバ)
- バーバンコート (Barbancourt)(ハイチ)(日本ではバルバンクールと表記されることもある)
- バローズ (Barrow's)(トリニダード・トバゴ)
- バンダバーグ (Bundaberg)(オーストラリア)
- パンペロ (Pampero)(ベネズエラ)
- マイヤーズ (Myers's)(ジャマイカ)
- マンダレー (Mandalay)(ミャンマー)
- レモンハート (Lemon Hart)(ガイアナ)
- ロンリコ (Ronrico)(プエルトリコ)
- JMラム(Rhum J.M) (フランス海外県マルティニック島)
[編集] 日本のラム酒
小笠原では、開拓初期(1830年頃)の欧米系定住者が捕鯨船とラム酒の取引を行っていた。1876年に日本領土に確定してからは、亜熱帯の気候を生かし、サトウキビの栽培による製糖業が盛んになり、その過程で生じた副産物を発酵・蒸留してつくった酒を、島民は「泡酒」や「蜜酒」などと呼び、飲むようになった。以後、太平洋戦争中に島民が強制的に内地へ疎開させられるまで、永く愛飲されることになる。戦後、小笠原はアメリカが統治し、1968年にようやく日本に返還された。返還後、疎開先から徐々に小笠原に戻ってきた旧島民にとって、疎開前に愛飲していた地ラム酒の味は忘れがたいものであったという。こうした独自の歴史背景と、バブル期の空前の地ビールブームの中、村おこしの一環として小笠原ラム・リキュール株式会社が設立され、小笠原の地酒としてのラム酒が復活した。1992年より製品化され、現在はインターネットでも広く販売をしている。
ちなみに戦後のラム酒製造としては、徳之島にある高岡醸造が1979年から作っている、ルリカケスが国産ラム酒の第一号である。
- 小笠原ラム・リキュール(東京都小笠原村 小笠原ラム・リキュール株式会社)
- ルリカケス(鹿児島県徳之島町 高岡醸造株式会社)
- コルコル(沖縄県島尻郡南大東村 株式会社グレイスラム)
- ヘリオスラム(沖縄県名護市 ヘリオス酒造)
[編集] その他
- ベイラム - ラム酒にベイツリーをはじめとする各種薬草・香草・香油・等を配合したローション(主にアフターシェーブローション)。飲用ではないが、カートゥーンでは、これを飲んで酔っ払う場面が登場するものがある。
[編集] 主な参考文献
橋口 孝司『スピリッツ銘酒事典』 新星出版社 2003年5月15日発行 ISBN 4-405-09064-5 C2077
[編集] 関連項目
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