リンク機構

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4つの節と1つの自由度を持つプライヤの例。調整用のねじを考慮すれば5つの節と2つの自由度を持つ。

リンク機構(リンクきこう)とは複数のリンクを組み合わせて構成した機械機構のことである。

目次

[編集] 概要

リンク機構は複数のリンクで構成されている。リンクとは形の変化しない構造物のことで、漢字では節と表す。リンクとリンク可動部分をジョイント、もしくは関節という。ジョイントには回転するものとスライドするものがある。それぞれのジョイントはリンクの間に様々な動きを許容する自由度(degree of freedom)を持っている。1つの固定したリンクに対して複数のリンクが可動する時、全体を指してリンク機構と呼ぶ。リンク機構は通常、入力を異なる動作、速度加速度に変換して出力することで、機械的倍率を得るように設計されている。

固定物として設計されたリンク要素は構造物と呼ばれる。

リンク機構を含む伝達機構全般に関することを扱う学問を機構学と言う。

[編集] 歴史

流速制御用の遠心調速機発電用水車が調速機を回転させ、調速機が水流を制御し、水流がタービンを駆動することで、調速機構を実現している。

リンク機構は機械の設計において基本的なものであるが、多くの単純なリンク機構は19世紀に入るまで発明されなかった。例えば単純な棒を考えると、座標として3つ、回転方向に3つの合計で6つの自由度を持っている。この棒が岩と支点を与えられると、てことして岩を動かす動作をする。より多くのリンクを様々な方法で接続すると、それを合成した動作は様々になる。非常に複雑で正確な動作がわずかな部品のみで設計できるようになる。

産業革命がリンク機構の黄金期であった。数学的、工学的、および工作技術の進歩が新しい機構の必要性と、それを製作する技術を提供した。現在では当たり前と思われている多くの単純なリンク機構が、この時代の英才の発明によるものである。レオンハルト・オイラー(Leonhard Euler)は、リンク機構の仕組みの研究を行った最初の数学者であり、ジェームズ・ワット(James Watt)は蒸気機関ピストンのためのワット・リンク(Watt linkage)を苦労して発明している。パフヌティ・チェビシェフ(Pafnuty Chebyshev)は、リンク機構について30年以上の研究を重ね、チェビシェフ多項式を生み出した。必要に応じて生み出された新しいリンク機構は、動力織機において力の変換や速度の制御に有用であった。ガイドを用いずに正確な直線運動をする機構を発明するのにも数年が必要とされている。

主にドイツロシアイギリスの科学者は、この領域を200年以上に渡って研究してきた。これにより今日では多くの古典的な研究や組み立ての問題(例えば2次元の動き)は解決されている(外部リンクを参照)。今日ではより複雑な構造が研究対象となっている。

電子技術は今日では多くのリンク機構の用途、例えば機械的な計算機タイプライターミシンなどを代替している。しかし、現代においてもリンク機構の設計は進歩し続けると共に、かつて技術者が数日がかりで設計していたものをコンピュータにより数秒で設計できるように短縮している。

現在ではデジタル制御によるサーボ機構が一般的で扱いやすいが、特にすばやく正確な動作をするという目的では、多くの動作が現在でもリンク機構とカムによってのみ実現可能なものである。

[編集] 理論

もっとも一般的なリンク機構は、1自由度を持っている。これは入力動作に対して単一の出力動作をするということである。ほとんどのリンク機構は2次元で、動作が1つの平面上に限定されている。空間的な(2次元ではない)リンク機構は、設計するのが難しいため一般的ではない。

クッツバッハ・グルーブラー方程式(Kutzbach-Gruebler's equation)がリンク機構の自由度を計算するために用いられる。リンク機構の自由度の数は可動度(mobility)とも呼ばれる。

2次元でのリンク機構に対する簡素化したクッツバッハ・グルーブラー方程式は、以下の通りである。

m = 3(n-1)-2j \,
m \, = 可動度 = 自由度
n  \, = リンクの数(地面のリンクを1つ含めて)
j \, = 1自由度の動作の数(ピンやスライダージョイントの数)
Linkage mobility


クッツバッハ・グルーブラー方程式で、2次元平面でより複雑なジョイントを含んだより一般的な形式は以下の通りである。

m = 3(n-j-1)+ \sum_{n=1}^j\ f_i,

3次元の動作をする空間的なリンク要素に対しては以下の通りである。

m = 6(n-j-1)+ \sum_{n=1}^j\ f_i,
m \, = 可動度(自由度)
n  \, = リンクの数(地面のリンクを1つ含めて)
j \, = ジョイントの数(接続方法や自由度によらず)
\sum_{n=1}^j\ f_i= 各ジョイントの自由度の合計

油圧式動作の機械では、独立して制御される油圧シリンダーを数えることで自由度を容易に判定することができる。

複雑な動作を行える単純なリンク機構

[編集] 一般的なジョイントの種類

ピン
1つの自由度の回転ができる。軸受、ボルト継手、リベット蝶番など。
スライダー
直線運動の1または2の自由度。リニア軸受、油圧・水圧シリンダー、ローラー、ピストンなど。
ボールとソケット
3自由度。他のジョイントにより通常は1つの自由度に制限されている。

設計者は要求される出力動作、機械的倍率、速度と加速度からリンク機構を設計する。要求された性能を達成するために、リンク機構の種類が選択されて調整される。

各リンクはベクトルとして取り扱われ、リンクが1つのループを構成するのでそれらのベクトルは連立方程式として取り扱うことができる。機械的倍率やその他の重要な値も同様に取り扱える。動作の方程式は時間で微分することで構成要素の速度や加速度を得ることができる。

[編集] リンク機構の種類

4つのリンクを持つ機構は、最も単純な閉路を持つ動的リンク機構である。この機構は2-3の単純な部品で複雑な動作をできる。コンピューター登場以前の過去には、より複雑な機構に比べると計算が容易であるために、とてもよく用いられていた。

4つのリンクを持つ機構の種類、s = 最短のリンク、l = 最長のリンク


その他の有名なリンク機構の種類。

おおむね放物線の動作をするリンク機構
  • パンタグラフ(4リンク、2自由度)
  • クランク・スライダー(4リンク、1自由度)
  • Grashof(4リンク、1自由度)最低1つのリンクが360度回転できる。
  • 5つのリンクを持つ機構はしばしば2つのリンクのかみ合いギア(1自由度)を持つ。4リンクの機構に比べて設計の自由度が高くよりすぐれた力の伝達を可能にする。
  • 6つのリンクと1つの自由度を持つ機構は、4つのリンクの機構に比べてより自由度の高い設計ができるが、多くの部品を必要とし設計が難しい。
    • ワット連鎖(Watt kinematic chain)
    • ワット1、2(Watt I, II)
    • スチーブンソン連鎖(Stephenson kinematic chain)
    • スチーブンソン1、2、3(Stephenson I, II, III)
  • 並行・直線機構
    • ワットの並行動作とワットリンク機構
    • Peaucellier-Lipkinリンク機構、回転から直線運動を生成した最初のリンク機構。8リンク1自由度。
    • スコット・ラッセルリンク機構 直線運動を入力に対してほぼ直角の方向の直線運動に変換する。
    • チェビシェフリンク機構(Chebyshev linkage)
    • ホーキンスリンク機構(Hoekens linkage)
    • Sarrusリンク機構

[編集] 用途

ジョイスティックに用いられる3自由度の空間リンク機構

リンク機構はもともと機械要素道具に用いられていた。典型的な例はサスペンションやボルトカッターである。内燃機関のピストン、コンロッドクランクは古典的な4リンク1自由度のリンク機構である。リンク機構は複雑な動作を実現する最も単純で安く効率的な方法として用いられている。

よく目にする例はワイパーである。4リンクのリンク機構で、モーターの回転運動を振動に変換している。ワイパーの中にはリンク機構をもう1つ備えてワイパーのブレードを正しい方向に向けるようになっているものもある。他によく見かけるものとしては、4リンクまたは6リンクのリンク機構を広範に使用した建設機械がある。

3次元のリンク機構はCADにより一般的なものとなった。

4リンクのリンク機構は、自転車に用いられている。通常のサスペンションを備えた自転車では、後輪がとても硬い弦のように動いて、上り坂で力をロスする。4リンクのリンク機構を備えた自転車では、大きな弦のように車輪が動いて、力のロスを30パーセント程度減らすことができる。

[編集] 参考文献

  1. Erdman, Arthur G.; Sandor, George N. (1984). Mechanism Design: Analysis and Synthesis. Prentice-Hall. ISBN 0-13-572396-5. 
  2. How to Draw a Straight Line, historical discussion of linkage design (英語)
  3. What is a Watt I Linkage? (英語)

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

ウィキメディア・コモンズ

最終更新 2009年6月8日 (月) 07:04 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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