リーマン予想

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リーマンのゼータ関数ζ(1/2+ix)の実部(赤色)と虚部(青色)を表したもの。自明でない零点x=±14.135、±21.022、±25.011に現れる。

リーマン予想Riemann Hypothesisリーマン仮説、単にRHとも略される)とはドイツの数学者ベルンハルト・リーマンゼータ関数零点の分布に関する予想である。数学上の未解決問題のひとつであり、クレイ数学研究所ミレニアム懸賞問題の一つとしてリーマン予想の解決者に対して100万ドルの懸賞金を支払うことを約束している。

目次

[編集] 概要

リーマン素数の分布に関する研究を行っている際にオイラーが研究していた以下の級数をゼータ関数と名づけ、解析接続を用いて複素数全体への拡張を行った。

ゼータ関数を次のように定義する。

\zeta(s)=1 + \frac{1}{2^s} + \frac{1}{3^s} + \frac{1}{4^s} + ... = \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^s}

1859年にリーマンは自身の論文の中で、複素数全体 (s≠1) へゼータ関数を拡張した場合、

ζ(s) の自明でない零点sは、全て実部が1/2の直線上に存在する。

と予想した。ここに、自明な零点とは負の偶数(-2, -4, -6, …)のことである。自明でない零点は0 < Re(s) < 1[1]の範囲にしか存在しないことが知られており(下記の歴史を参照)、この範囲をクリティカル・ストリップという。

なお素数定理はリーマン予想と同値な近似公式[2]からの帰結であるが、素数定理自体はリーマン予想がなくとも証明できる。この注意は歴史的には重要なことで、実際リーマンがはっきりとは素数定理を証明できなかった理由はリーマン予想の正否にこだわっていたためであると思われている(素数分布とのゼータ関数との関係はゼータ関数素数定理リーマンの素数公式の項を参照のこと)。

現在もリーマン予想は解かれていない。数学における最も重要な未解決問題の一つである。リーマンのゼータ関数を特殊な場合に含むL関数に対しても同様の予想を考えることができ、これを一般化されたリーマン予想(Generalised Riemann Hypothesis:GRHと略される)と呼んでいる。

最近では、虚部が小さい方から約15億個までの複素零点はすべてリーマン予想を満たすことが計算されており、現在までにまだ反例は知られていない。現在では多くの数学者が(当然のことだが、はっきりした根拠を持たずに)リーマン予想は正しいと考えているようである。しかし無限にある零点からみればたかだか有限の数表などは零点分布の真の姿を反映するには至らないとして、この計算結果に対して慎重な数学者もいる。歴史上有名な数学者の中でもリーマン予想を疑っていた数学者はいる。

[編集] リーマン予想の歴史

  • 1859年にリーマンは論文「与えられた数より小さい素数の個数について」を発表し、その中でリーマン予想を提示した。リーマン自身はその証明を試みて成功しなかったことを認めているが中間的な結果としてゼータ関数の自明でない零点の実数部が1/2について対称であり、かつ0から1の間(境界を含む)にしか存在しないことを示していた。
  • 1896年にド・ラ・ヴァレ・プーサンとアダマールが独立に素数定理を証明したが、それはゼータ関数の自明でない零点の実数部が1になりえないことの証明によるものだった。よって自明でない零点の実数部の範囲は、境界を含まないところまで狭められた。
  • 1900年にパリで開かれた第2回国際数学者会議でヒルベルトは数学上の未解決の問題23題(ヒルベルトの23の問題)を提起した。リーマン予想はこの内、素数の分布に関する8番目の問題に含まれている。
  • 1914年ハーディは Re(s) = 1/2 上に零点が無限に存在することを示した。
  • 2000年にクレイ数学研究所 (Clay Mathematics Institute) はリーマン予想の証明を含む数学の未解決問題7問に対してそれぞれ100万ドルの賞金をかけた(ミレニアム懸賞問題)。
  • 2004年6月に米パデュー大学の数学者ルイ・ド・ブランジュ(: Louis de Branges de Bourcia)がリーマン予想を証明したと発表した[3]。しかし彼は既に幾度も証明を主張し反証されており[4]、今回も同様の手法をとっているため見込みは薄いと考えられている。

[編集] 同値命題

以下の各命題は、リーマン予想と同値である。

  • 十分大きな任意のxに対し、

    |\pi(x) - {\rm li}(x)| \leq C\,\sqrt x\,\ln(x)

    が成り立つような定数 C が存在すること[5]。ここに li(x) は対数積分を表す。これは

    \pi(x)={\rm li}(x)+O(x^{1/2+\epsilon})\,

    と表現しても同じことである。ただし、Oランダウの記号である。
  • 自然数 n の正の約数の和を σ(n)(約数関数)表すとき、n > 5040に対して

    \sigma(n) < e^\gamma n \ln \ln n \,

    が成り立つこと[6]。ここにγはオイラー定数を表す。
  • 任意の自然数nに対して

    \sigma(n) \le H_n + \ln(H_n)e^{H_n}

    が成り立つこと[7]。ここにHnn番目の調和数、すなわち

    H_n=\sum_{k=1}^n \frac{1}{k}

    で定義される有理数である。

[編集] 参考文献

[編集] 脚注

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  1. ^ Re()は複素数の実部を示す記号
  2. ^ 素数の個数関数π(x) の対数積分による近似公式を指す。同値命題の節の第一の命題を参照。リーマンの素数公式より、π(x) の対数積分による近似の誤差項はゼータ関数の零点がクリティカル・ストリップの両端から遠ければ遠いほど小さくなることが分かる。この距離が最大限に遠い即ち全てのゼータ零点がクリティカル・ストリップの中心線上に整列しており、近似の誤差がその方針で考え得る限り最も小さくなるだろうということがリーマン予想のそもそもの意味である。
  3. ^ Louis de Branges, "A proof of the Riemann Hypothesis". 論文のPDFファイル
  4. ^ Conrey, J. B. and Li, Xian-Jin, "A note on some positivity conditions related to zeta and $L$-functions". Internat. Math. Res. Notices 2000, no. 18, 929-940. プレプリント
  5. ^ Helge von Koch, "Sur la distribution des nombres premiers", Acta Mathematica 24 (1901), 159–182.
  6. ^ Robin, G., "Grandes valeurs de la fonction somme des diviseurs et hypothèse de Riemann." (French. English summary) [Large values of the sum-of-divisors function and the Riemann hypothesis], Journal de Mathématiques Pures et Appliquées, 63 (1984), no. 2, 187-213.
  7. ^ Lagarias, Jeffrey C., "An elementary problem equivalent to the Riemann hypothesis." American Mathematical Monthly 109 (2002), no. 6, 534-543.

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

最終更新 2009年11月15日 (日) 15:46 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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