ヴォイニッチ手稿

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ヴォイニッチ手稿の内容。生物について書かれているように見える。パイプのような挿絵もある。

ヴォイニッチ手稿(ヴォイニッチしゅこう、または-写本英語: Voynich Manuscript)とは、暗号とおぼしき未知の文字で記され、多数の彩色挿し絵が付いた230ページほどの古文書14世紀から16世紀頃に作成されたと考えられているが、暗号が解読できないので、何語で書かれているのか、内容が何なのか不明である。また、多数の挿し絵も本文とは無関係であるとの説もある。

手稿の名称は発見者であるポーランド系アメリカ人の古書商、ウィルフリッド・ヴォイニッチen)にちなむ。彼は1912年に、イタリアローマ近郊のモンドラゴーネ寺院で同書を発見した。現在はイェール大学付属バイネキー稀書手稿ライブラリが所蔵する。

目次

[編集] 手稿の内容

手稿には、記号システムが確認されている特殊な人工文字によって何かの詳細な説明らしい文章が多数並んでおり、ページの上部や左右にはかなり詳細で緻密な、植物の彩色画が描かれている。植物の絵が多いが、それ以外にも、銀河星雲に見える絵や、精子のように見える絵、複雑な給水配管のような絵、プール浴槽に浸かった女性の絵などの不可解な挿し絵が多数描かれている。

暗号が解読できないので、豊富で意味ありげな挿し絵の分析から内容を推測する試みもなされたが、成功していない。描かれている植物の絵などは、実在する植物の精緻なスケッチのようにも見えるが、詳細に調べても、描かれているような植物は実在せず、何のためにこのような詳細な架空(と考えられる)植物の挿し絵が入っているのかも理解できない。

文字部分の拡大図。単語反復が異常に多いこと、冠詞名詞のように対になって現れる単語がほとんどないことは分かっている

挿し絵のなかに、浴槽に浸った女性の絵があり、この絵についてレヴィトフは、中世南フランスで12世紀から13世紀ごろ栄えた、キリスト教異端教派とされるカタリ派の「臨終(または宗教的な自殺)」の儀式のさまを現していると主張した。手稿全体も、カタリ派の教義書か関連文書であると主張したが、仮説に留まり確認できないだけでなく、反論もある。また描かれた女性は全裸であり、このことから服飾に基く執筆当時の時代判定をより困難にしている。

暗号文言語学統計的手法で解析した結果では、本文はでたらめな文字列ではなく、自然言語人工言語のように確かに意味を持つ文章列であると判断されたが、なお解読されていない。

発見当初と、初期の暗号解読研究では、画期的な内容が記されている可能性が考えられ、解読に対し大きな期待がかけられた。しかし、今日では、どのような暗号なのかという知的興味と、解読することへの知的挑戦において魅力があるが、内容は、もし解読できたとして、それほど特筆するような驚くべきものではないだろうという意見が大勢を占めている。また、後述のように全くのでたらめであるとの説も有力である。

[編集] 歴史

歴史的に、この手稿は、ロジャー・ベーコンが著者であるとして、1582年ボヘミアルドルフ2世によって購入されたことが分かっている。錬金術関連の著作であると考えられた。他方、ベーコンは、英国の時代を先取りした実証的科学者天文学者・思想家であり、挿し絵から見て、薬草学に関する何かの知識か見解を宗教的迫害から守るため、非常に特殊な暗号を使って記載したのではとも推定される。

「偽造」の犯人候補の一人、エドワード・ケリー

ヴォイニッチ手稿は暗号で書かれた貴重な研究書などではなく、単なるでっち上げだという説も唱えられている。犯人として最も有力視されているのが、ボヘミアの錬金術師エドワード・ケリーである。ルドルフ2世から金を詐取するため、もしくはライバルだった英国の著名な魔術師・錬金術師として知られるジョン・ディーをかつぐために偽造したというものである。ジョン・ディーは手稿入手の背景にいた人物である。偽造ではないとすると、ジョン・ディーの経歴から「薔薇十字団運動」と何かの関係があるかも知れない。 1945年、暗号の天才と呼ばれ、第二次世界大戦時、数々の暗号を解読(日本の暗号パープルコードを解読したことでも知られる)ウィリアム・フリードマンが解読に挑戦したが成功しなかった。フリードマンは暗号というよりも人工言語の類ではないかとの示唆を残している。 1987年出版の本でレオ・レヴィトフ博士が解読に成功したと発表したが、非常に不自然な解読法で、恣意的に原文を再構成できるような解読法であり、解読に成功したというのは、誤りに過ぎなかったということが確認された。

[編集] 付記

発見者のヴォイニッチは、ポーランド人で、Wilfrid Michael Voynich がフルネームである。ポーランド語ではWilfryd Michał Habdank-Wojniczと綴り、「ヴィルフリト・ミハウ・ハブダンク=ヴォイニチ」と発音する。 彼はロシアからイギリス、そしてアメリカに渡ったので、"Voynich Manuscript" は、英語読みして「ヴォイニッチ手稿」となる。

また、この手稿は一種のアウトサイダー・アートであり、「解読」しようとする試みそのものが無意味であるとの意見も存在するが、これも仮説の域を出るものではない(ASIOS『謎解き超常現象』彩図社、2009年・94-98頁参照)。

[編集] フィクション上のヴォイニッチ手稿

英国の作家・評論家のコリン・ウィルソンの小説『賢者の石』『ロイガーの復活』等は、怪奇小説作家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの「クトゥルー神話」の系譜に属する。ウィルソンはそこで、ヴォイニッチ手稿は、ラブクラフトが創作した想像上の文書である『ネクロノミコン』の写本であったという架空の設定を記している。

ウィルソンの小説のなかでは、暗号に使われた文字はアラビア文字であり、しかし言語はアラビア語ではなくラテン語であったとされる。アラビア文字は右から左へと綴るが、現実のヴォイニッチ手稿は記述されている言語こそ不明ではあるが左から右へと綴られていることはまず間違いない。

作家ダン・シモンズの長編SF小説『イリアム』(Ilium)とその続編『オリュンポス』(Olympos)ではヴォイニッチ手稿が重要な役割を果たす。小説中でヴォイニッチ手稿は偽作という設定になっているが、手稿の真偽を確かめるために行なわれた時間旅行実験が大災害を引き起こす。またヴォイニッチにちなんで命名されたVoynixという人工生物が登場する。

[編集] 外部リンク

[編集] 関連項目


[編集] 関連書

  • 『 ヴォイニッチ写本の謎』ゲリー・ケネディ、ロブ・チャーチル 松田和也訳 (青土社、2005年12月) ISBN 4-7917-6248-7


最終更新 2009年10月25日 (日) 13:31 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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