三歳児神話
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三歳児神話(さんさいじしんわ)とは、子供は三歳頃まで母親自身の手元で育てないとその子供に悪い影響があるという考えを指す。[1]
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[編集] その他の定義
- 3歳ごろまでの脳の成長は重要である、という命題のこと。平成十年版厚生白書、国会議事録の一部は定義2の意味で使われている。日本赤ちゃん学会ではこの定義も並行して扱われた[2]。
- 三歳児神話、という用語が持つ、悪影響があるとする考えを否定的にみなすニュアンスそのもの、つまり悪影響があるというのは疑わしい、といった意味合い。[2]
[編集] 概要
大日向雅美によると以下のような要素からなるという。
- 子供の成長にとって幼少期が重要である。
- この大切な時期は生みの母親が養育に専念しなければならない、なぜならお腹を痛めたわが子に対する母の愛情は子供にとって最善だからである。
- 母親が就労などの理由で育児に専念しないと、将来子供の発達に悪い影響を残す場合がある。
[編集] 三歳児神話の科学的当否に関する研究動向
下は定義1または2、保育などとの関係についての三歳児神話に関するもの。
- アメリカにおける研究動向についてはwikipedia英語版Day careも参照。
[編集] 肯定
- 脳科学者の澤口俊之(認知神経科学、脳進化学、霊長類学)は、8歳まで母親が家で子育てを行うべき、と主張した。(幼児教育と脳、文春新書、1999)
- 一方、現状のフェミニズムのあり方を批判する林道義(経済学、深層心理学、とくにユング心理学)は、著書『母性の復権』において反証となる研究を複数挙げており、その旨を平成15年4月2日の国会で参考人として証言している。
[編集] 否定
- 菅原ますみ(発達心理学)によると、National Longitudinal Survey of Youthによる縦断研究[3](126000名の女性から生まれた2095名を12歳まで追跡)において早期の就労復帰と後の子どもの問題行動の発達には関係がないとされた。(日本赤ちゃん学会)
- 菅原らは、生後15年間にわたり何回か追跡調査らをもとにして、衝動エネルギーが強くてコントロールが下手で割と回りに迷惑がかかりがちな問題行動、抑うつ傾向、母子関係の良好さの三つについて母親の就労復帰にもとづく悪影響が見られない、としている。(出典同上)
- 大日向雅美(発達心理学)によるとGottfriedら(約10年、130家庭の追跡調査、佐々木保行訳『母親の就労と子どもの発達』ブレーン出版、1996など参照)や、アメリカ国立小児保健・人間発達研究所(NICHD)(約10年1364人を乳児から追跡)の調査の結果、「子どもの発達は、母親が働くか育児に専念するかという形だけでは議論できない」、と結論づけられたという。(さらに両研究とも家族、保育の環境等との関係も詳細に調べられたという)(同)
- 日本赤ちゃん学会学会第一回学術集会のシンポジウム「3歳児神話を検証するII~育児の立場から~」においては「否定的に議論された。」[4]
- 安梅勅江(発達保健学)ら厚生労働省研究班は認可保育園約80カ所の園児3000人前後と親の5年間の追跡調査を行い、保育園での時間の長さは子供の発達にほとんど影響せず、家族で食事をしているか、親に育児相談をする相手がいるかなどの要因が発達を左右する、とした。[5]
- 三歳児神話には否定的なメタ分析が存在する(網野武博、保育が子どもの発達に及ぼす影響に関する研究、内閣府より)
[編集] 社会的位置づけ
これらは家庭教育の面で母親が母性を発揮して子の庇護を行うという観点に立ってのもので、こういった環境が3歳までの幼児の情緒の発達に重要であると考えられてのことである。スウェーデンでもこうした考え方から、親が子を直接に3歳まで世話が出来るようなシステムが整っている[3] 。
この観点では幼少期の父親の役割は軽視されがちであるし、非行など、子供の問題行動が社会問題視されると、その原因が幼少期の母親の就労にあるとする論調が根強く、またそのようなイメージが社会にあるため、出産した女性の就労継続・再就労を断念させる要因のひとつとなっているという見解が存在する。(国会議事録など) 一方三歳児神話批判に対し平等のいぎすぎを懸念する声もある。(同議事録など)
平成10年(1998年)版「厚生白書」が「少なくとも合理的な根拠は認められない」と初めてこの問題に絡む記載をしたが、厚生労働省はその後の国会答弁で「三歳児神話というのは、明確にそれを肯定する根拠も否定する根拠も見当たらないというのが事実」とした。[4]なお、大野由利子政務次官は、(前略)「厚生白書の作成の際にも調査、検討を行ったわけでございますが、少なくとも合理的な根拠はないと、こういうふうに厚生白書の中でも検討結果が示されているところでございます。ただ、乳幼児期は、非常に特定の者との深い愛情関係、愛着関係を通して大変人間としての成長があるということで、人間に対する基本的信頼感を形成する大事な時期であることは事実でございます。」と答弁している。[5]
大日向雅美は三歳児神話をどう認識するかは男女ともにキャリア、家庭との関係において、人生を大きく左右する深刻な問題だとしている。その一方で、この問題はイデオロギーが深く関係しているとした。[6]
一方で、三歳児神話が一人親家庭や幼少時に親と死別した子への差別や偏見、過度の同情に影響しているという見解もある。例えば「少年期に荒んでいた」・「犯罪を犯した」のは、当人自身の問題というよりも、幼少期に親がいなかった環境に問題があったのだとすることで、当人の責任回避に用いられたりするケースが挙げられよう。[要出典]
[編集] 通時的関連事項
- 1905年、羽仁もと子は教育では母親が子供に慕われることが大切であり、慕われるためには「昼も夜も手塩にかけて保護を与える」ことだと説いた[7]
- 1951年、ジョン・ボウルビィは母親から引き離されて、乳児院などに預けられた子供の発達不良に関して論文を発表した。(母性的養育の剥奪)
- 1985年、日本大百科事典の「育児」の項においては「三歳児未満は、親子間の情緒的な関係を緊密にする時期」とされ、三歳までに十分な母子間の緊密な情緒的関係が形成されない場合は「情緒の発達が遅れ、情緒の不安定は次第に強くなる」との記述がある。
- 1998年、「厚生白書」において「自立した個人の生き方を尊重し、お互いを支え合える家族を」との省の主張が掲げられ、「これらのことを踏まえれば、三歳児神話には、少なくとも合理的な根拠は認められない。」と記述された。
- 2001年、日本赤ちゃん学会において「三歳児神話」は二つの定義が論じられた。ひとつは「子どもは3歳までは常時家庭において母親の手で育てないと、その後の成長に悪影響を及ぼす」であり、懐疑的に見られた。いまひとつは「3歳までの脳の成熟は極めて重要であって、その間に正しい刺激を与えなければ、健常な発達が臨めないことがある」という定義である。
- 2005年、文部科学省の「情動の科学的解明と教育等への応用に関する検討会」は、「適切な情動の発達については、3歳くらいまでに母親をはじめとした家族からの愛情を受け、安定した情緒を育て、その上に発展させていくことが望ましいと思われる」と報告。[6]
[編集] 注釈
- ^ 大辞林(goo辞書で2009.06.28確認)、 平成10年版厚生白書の概要
- ^ 林道義著『主婦の復権』226p(講談社)
- ^ 木村慶子, 高橋愛子『頭がいい親の13歳からの子育て』 2002年
- ^ 坂口力 国会答弁、2002年7月10日
- ^ 参議院、国民生活・経済に関する調査会、2000年04月03日
- ^ [1]
- ^ 羽仁 『育児之栞』 1905
[編集] 関連文献
- 『育児日記―誕生から3歳まで』婦人之友社 (1992/04)ISBN 4829201398
- 『初めてママの母乳育児安心BOOK―妊娠中から卒乳まで』ベネッセコーポレーション (2004/01)ISBN 4828856765
- 『幼稚園では遅すぎる―人生は三歳までにつくられる!』サンマーク出版 (2003/08)ISBN 4763195344
- 『母親の就労と子どもの発達―縦断的研究』ブレーン出版 (1996/04) ISBN 4892425540
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 国会議事録 三歳児神話をめぐる国会での発言を検索できる。平成10年から議事録に登場。
- 幼児を持つ母親の親役割満足感を規定する要因
最終更新 2009年10月18日 (日) 15:23 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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