不確定性原理

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不確定性原理(ふかくていせいげんり、: Unschärferelation 英語:Uncertainty principle)とは、ある2つの物理量の組み合わせにおいては、測定値にばらつきを持たせずに2つの物理量を測定することはできない、という理論のことである。具体的には、以下のようなバリエーションがある。

目次

[編集] 定性的な関係式

物理量\hat{A}, \hat{B}の期待値からのずれをそれぞれ\Delta\hat{A}\Delta\hat{B}とする。このとき、任意の量子状態に対し、

\sqrt{\left\langle(\Delta\hat{A})^2\right\rangle\left\langle(\Delta\hat{B})^2\right\rangle} \ge \frac{1}{2}\left|\langle [\hat{A},\hat{B}] \rangle\right|

という不等式ロバートソンの不等式)が成り立つ。ここで左辺は\hat{A}, \hat{B}の標準偏差の積、右辺は交換子である。

量子力学で記述される粒子の位置\hat{q}運動量\hat{p}の間には、交換関係

[\hat{q},\hat{p}]=i\hbar

が成り立つので、上記の不等式は

\sqrt{\left\langle(\Delta\hat{q})^2\right\rangle\left\langle(\Delta\hat{p})^2\right\rangle} \ge \frac{\hbar}{2}

となる。

[編集] 証明

証明の手法はいくつかあるが、ここでは最も簡潔なものを紹介する。

\Delta\hat{A}=\hat{A}-\langle A\rangle, \Delta\hat{B}=\hat{B}-\langle B\rangle

である。任意の状態ベクトル|ψ>に対してこれらの分散の期待値は

\left\langle(\Delta\hat{A})^2\right\rangle = \left\langle\psi\left|(\Delta\hat{A})^2\right|\psi\right\rangle

Bも同様)と表せるが、コーシー・シュヴァルツの不等式により、

\left(\langle\psi|\Delta\hat{A}\right)\left(\Delta\hat{A}|\psi\rangle\right)\left(\langle\psi\Delta\hat{B}\right)\left(\Delta \hat{B}|\psi\rangle\right) \ge \langle\psi|\Delta\hat{A}\Delta\hat{B}|\psi\rangle^2

が成立する。

ここで、任意の演算子\hat{X},\hat{Y}について\hat{X}\hat{Y}=\frac{1}{2}[\hat{X},\hat{Y}]+\frac{1}{2}\{\hat{X},\hat{Y}\}が成立し、かつ交換子は歪エルミートであるので固有値は純虚数、反交換子はエルミートであるので固有値は実数になるから、物理量の積の期待値は交換子の期待値と反交換子の期待値の絶対値の平方和で表され、

\begin{align}
\langle\psi|\Delta\hat{A}\Delta\hat{B}|\psi\rangle^2&
= \left(\frac{1}{2}\langle\psi|[\Delta\hat{A},\Delta\hat{B}]|\psi\rangle + \frac{1}{2}\langle\psi|\{\Delta\hat{A},\Delta\hat{B}\}|\psi\rangle\right)^2\\
& \ge \left|\frac{1}{2}\langle\psi|[\Delta\hat{A},\Delta\hat{B}]|\psi\rangle\right|^2
\end{align}

である。[\Delta\hat{A},\Delta\hat{B}]=[\hat{A},\hat{B}]であるため、

\left\langle(\Delta\hat{A})^2\right\rangle\left\langle(\Delta\hat{B})^2\right\rangle \ge \left|\frac{1}{2}\langle[\hat{A},\hat{B}]\rangle\right|^2

が成立する。

[編集] 測定精度と測定の反作用

例として、ハイゼンベルクが行った思考実験、つまり量子力学で記述される粒子の位置と運動量について考えることにする。この粒子の位置を正確に測ろうとするほど対象の運動量が正確に測れなくなり、運動量を正確に測ろうとすれば逆に位置があいまいになってしまい、両者の値を同時に完全に正確に測る事は絶対に出来ない。なぜなら、位置をより正確に観測する為にはより正確に「見る」必要があるが、極微の世界でより正確に見る為には、波長の短いが必要であり、波長の短い光はエネルギーが大きいので観測対象へ与える影響が大きくなる為、観測対象の運動量へ影響を与えてしまうからである。ただし、この種の議論は前述の証明とは異なる種類のものであることには注意されたい。前述の証明は、量子論の性質そのものから導かれる物であり(量子力学の数学的基礎も参照)、測定器の誤差、あるいは測定による反作用とは区別して考えなければならない[1]。これに関する議論は量子測定理論も参照されたい。

[編集] 不確定性原理をめぐる議論

不確定性原理は1927年にハイゼンベルクによって提唱された。量子力学の基礎原理の一つとされ、その発展に大いに寄与した。 ただし、量子力学の基礎が整備された現在は、他のより基礎的な原理から導かれる「定理」となっている(「意見」や「仮説」ではない)。

粒子の運動量と位置を同時に正確には測ることができないという事実に対し、それは元々決まっていないからだと考えるのが、ボーアなどが提唱したコペンハーゲン解釈であるが、アルベルト・アインシュタインは決まってはいるが人間にはわからないだけだと考えた。この考え方は「隠れた変数理論」と呼ばれている。なお、1926年12月にアインシュタインからマックス・ボルンに送られた手紙の中で、彼は反論に神はサイコロを振らない(: Der Alte würfelt nicht. 直訳:神は賽を投げない)という言葉を用いた[2]

この他にも不確定性原理の解釈には多数の解釈がある。これを観測問題という。どの解釈が正しいのかは現在はっきりしていない。ただし、ベルの定理により現在アインシュタインの考えを支持する人はごく僅かである。

不確定性原理が顕在化する現象の例としては、原子(格子)の零点振動(このためヘリウムは、常圧下では絶対零度まで冷却しても固化しない)、その他量子的なゆらぎ(例:遍歴電子系におけるスピン揺らぎ)などが挙げられる。

[編集] 関連項目

[編集] 関連図書

  • 都筑卓司『新装版 不確定性原理―運命への挑戦』(講談社ブルーバックス、2002年ISBN 9784062573856

[編集] 参考文献

  1. ^ 清水明 『新版 量子論の基礎―その本質のやさしい理解のために―』 サイエンス社、2003年、pp85-86。ISBN 4-7819-1062-9
  2. ^ マックス・ボルン宛の1926年12月4日付の手紙 原文:: Die Quantenmechanik ist sehr achtunggebietend. Aber eine innere Stimme sagt mir, daß das noch nicht der wahre Jakob ist. Die Theorie liefert viel, aber dem Geheimnis des Alten bringt sie uns kaum näher. Jedenfalls bin ich überzeugt, daß der Alte nicht würfelt.(直訳:量子力学にはとても尊敬の念を抱いています。しかし内なる声が私に、その理論はまだ完璧ではないと言っています。量子力学はとても有益なものではありますが、神の秘密にはほとんど迫っていません。少なくとも私には、神はサイコロを振らないという確信があるのです。)

[編集] 外部リンク

最終更新 2009年10月19日 (月) 23:43 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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