中東の笛

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中東の笛(ちゅうとうのふえ、英語: Whistle of the Middle East)とは、主に国際規模のスポーツイベントにおいて試合日程や判定が著しくアラブ諸国に有利になる事象である。

特に2007年および2008年に行われた北京オリンピックにおけるハンドボール競技の予選を通じて、この語が日本国内に広く知れ渡ることとなった。

目次

[編集] 概要

アラブ諸国の多くの国が産油国であり、それらの国々は潤沢なオイルマネーによって王族や国営企業が莫大な資産を有している。そういった王侯貴族や企業は有り余った資金を株式為替などの経済的活動のほかに、国際スポーツのスポンサー活動などに投入する場合がある。またアジアハンドボール連盟のように、スポーツ関連の国際団体に活動資金を供給する見返りとして、その役職を産油国の王侯が占める場合もある。

こうした場合、スポンサーの場合はイベントそのものに資金を提供している立場上から、連盟首脳の場合は権力や地位などパワーバランスの問題が発生し、スポーツにおいて大会運営・日程・試合カード・会場(場合によっては宿泊施設・移動日程)がアラブ諸国に対して有利なものとなる事態が発生している他、とりわけ問題視されるものとして、アラブ諸国に有利な判定を作為的に行い得る人物が試合審判などの判定要員として配置され、実際にそのような偏った判定が行われる事態までもが見られている。

「中東の笛」という語は主に「スポーツ競技は全ての参加者にとって競技規則に則って公平でなくてはならない」とする立場の者、あるいはこれら作為的な判定や日程の設定によって不利を被った側の代表選手の関係者、競技のファン、マスコミなどが大会運営や判定を揶揄する目的で使うのが一般的である。その特性から、基本的に非アラブ圏で使用されている用語であり、逆にアラブ諸国で、とりわけこの様な判定が問題となったスポーツの関係者の大多数は『中東の笛』の存在そのものを否定する。

「中東の笛」の名付け親は、国内唯一のハンドボール専門誌「スポーツイベント ハンドボール」の野村彰洋編集長。1995年クウェートで行われたアトランタオリンピック予選を取材した際に中東寄りの判定を実感し、「中東の笛」と名付け誌面で不正を訴えている。

また「中東の笛」の始まりに関しては1982 FIFAワールドカップにおけるゴール取り消し(後述)が映像化された初めての事象である、という報道が日本ではしばしば行われるが、映像化以前では更に昔から中東の笛が行われていたという意見もあり、また「中東の笛」は中継放送などが行われない大会で秘密裏に行われているという指摘もあるため、端緒に関してははっきりしていない。

なお、スポーツイベントにおいて判定が欧米寄り・日本寄りなどになる場合もしばしば見受けられるが、こうした事象に関しては、「欧米の笛」「日本の笛」などという用語を基本的に用いない。

[編集] 「中東の笛」が及ぼすリスク

「中東の笛」が問題視されるという事は、その競技のアラブ圏が含まれる地域の大会では作為的で不公正とも言える試合運営が罷り通っているという事を意味する様なものであるが、これが存在し、国際大会、とりわけオリンピックの予選などで繰り返される事によって競技全体に生じるリスクは、そのスポーツに対するイメージの悪化に繋がるというそれだけではない。「中東の笛」がなぜ様々な競技で問題視されるかは、国際大会、とりわけオリンピックの現状が背景として見逃す事はできない。

世界最大級のスポーツイベントであるオリンピックには、競技の国際的な普及を意図して新規開催・正式種目化を希望したり、既存の競技でも女子競技の新規開催を要望するなど、実際にその様な推進運動を国際団体として展開しているスポーツが世界中で数多く存在する。だが、現在ではオリンピック自体の規模が極限まで肥大化している事などから、既存の競技でも多くは大陸予選や参加標準記録を設けて出場希望選手の大幅な数的絞り込みをしなければならない程の状況で、当然ながら競技の新規追加も難しくなっている。また規模があまりに大きくなり過ぎているため、オリンピックのスリム化論議と平行して競技数の絞り込みの是非がIOCなどでも事ある毎に議題になっている状況がある。この際、オリンピックの規模をコンパクトにせよという主張を行っている者たちを中心に、「審判の公正確保が困難な競技を除外するべし」「国際大会・オリンピック予選で杜撰な運営が行われている競技を除外するべし」という論調が一部に存在しているのである。また、オリンピックの組織内部にも、オリンピックの権威維持という観点から、同様の主張をしている者が存在する。

理由こそ異なるとはいえ、近年にも実際に野球ソフトボールについてオリンピックからの除外が決定したという事実があり、既存五輪競技の関係者には自らが関わるスポーツについて、オリンピックでの存続に関わる様な議論が発生する可能性それ自体に対して、危機感を抱いている者が少なくない。多くの競技関係者は、自らの関わる競技がオリンピックから除外される事は、『金メダル』や『オリンピック出場』という大目標を奪われた選手や関係者のモチベーション維持を困難にするだけではなく、競技の普及拡大にとっても大きなマイナス要因になると考えている。

このため、この種の問題が表面化すると、「判定などで不透明な点があると評価されれば、将来的にオリンピックから競技が除外されてしまう議論の俎上に上げられかねない」という危惧の声が、その競技の先進地と言われる地域(主に欧米)の競技関係者などから上がる事がよく見られる。実際、後述するがハンドボールではオリンピックのアジア予選が国際ハンドボール連盟により無効とされる異常事態が発生したが、これについても競技先進国である欧米の関係者たちの「この種の問題の存在はオリンピックの競技除外論議へと結びつけられかねない」という強い不安感が根底に存在している。

この様な観点から、これらの「中東の笛」やこれに類似する競技・審判の公正を巡る問題に対して、危機感や不安感を抱いている競技関係者は、国際組織のレベルで見渡せば、少なからぬスポーツで存在している。

[編集] サッカーにおける中東の笛

1982年FIFAワールドカップの一次リーグで行われたフランスクウェート戦で、フランスが3対1でリードしている状態で「中東の笛」が行われている。このときフランスの選手が放ったシュートは明らかにゴールネットを揺らしたが、クウェートの選手側から「スタンドの笛の音で試合を止めてしまった」という趣旨の抗議が行われた。誰もがこの抗議は聞き入れられないと思ったが、客席で観戦していたクウェートのファハド王子(Fahad Al-Ahmed Al-Jaber Al-Sabah)が突如スタンドからピッチに乱入し、審判に何事かを告げたところ、当初は得点を認めていた審判が突如ゴールの取り消しを宣告した。サッカーワールドカップの歴史において、一度認められたゴールが取り消された唯一の事例である。試合結果はフランスが4対1で勝利している。

ファハド王子が何を告げたのかなど、この事件の真相については現在も一切明らかになっていない。ファハド本人はこの件について完全に公言を拒否したまま、1991年湾岸戦争時、イラク軍との戦闘により戦死。また審判も真相を語らぬまま自殺したため、永遠の謎となっている。

[編集] ハンドボールにおける中東の笛

ハンドボールにおいては、アジアハンドボール連盟(以下AHF)が事実上クウェートの王族によって組織が支配され、また、産油国の王族たちが大きなスポンサーとなっていることから、アラブ諸国の関係者によって要職が占められる状況が続いている。アジアにおいて行われる大会の日程、審判についてはAHFの意向が反映される事から、アラブ諸国のチームに有利な運営がなされている。何よりも審判の選定やその試合中の判定において顕著であり、不可解な判定は『中東の笛』と呼ばれている。

[編集] 北京オリンピックアジア予選での事例

中東の笛は主に東アジア圏において大きく問題視されており、北京オリンピックハンドボールアジア予選においても見られた。2007年9月に愛知県豊田市で行われた男子予選においてクウェート-韓国戦では、当初国際ハンドボール連盟(IHF)の指示によりドイツ人の審判団が裁く予定であったが、AHFの指示により、急遽中東のヨルダンの審判に変更となった。この試合では開始2分で韓国選手が退場になるなど、あまりにもひどい判定に対して、観客席からコート内にペットボトルが投げこまれるような状況が発生した。クウェート-日本戦においても、同様にドイツからイラン人へ審判団の変更がなされ、勝負どころでは不可解な判定が頻発し問題視された。また、試合後にはクウェート-韓国戦を裁いたヨルダン人の審判が国際審判員の資格を持っていなかった事が明らかになり、後述するこのアジア予選が無効とされる一因となるなど、AHFが杜撰な運営や試合管理を行っていた事も明らかとなった。

こうした事態に日本と韓国はIHFに対し改善を求めた結果、IHFの中にもこの状況を問題視した者は多く、欧米の関係者からは将来的なオリンピックからの競技の除外を危惧する声さえ上がった事から、2007年12月17日に行われたパリでの理事会において、アジア予選を無効とし、女子は2008年1月29日に、男子は2008年1月30日東京でやり直すことを決定した。AHFはこのやり直しの五輪予選に参加した地域には制裁を課すなどとした、脅迫をAHF加盟国に行った(日本ハンドボール協会はAHFから、除名勧告を受けている)。さらにはやり直し五輪予選のタイミングに合わせてのAHF緊急理事会開催を通告するなど、妨害工作とも取れる行動を行っている。

ただし、日本や韓国など極東では『中東の笛』とは呼ばれているが、この問題については宗教的な繋がりから結束が特に固いと言われる中東地域においても決して完全な一枚岩ではないという見方もある。実際、このクウェートの王族によるAHF支配によって不可解な判定を被ったと感じている地域としては中東でもバーレーンがある。1月16日付のバーレーン紙アル・ワサットでは、元GCCハンドボール協会会長であるモハメド・アリ・アップル(現バーレーンオリンピック協会会員)の、AHFを批判しIHFによるやり直し予選を支持する旨の談話が掲載されている。

[編集] 中東の笛における問題点

中東の笛において大きな問題となっているのは映像資料の存在の有無である。中東が主体となって行われる試合においては、撮影が禁止されることが多く不正の実態を知るのは現場にいた人だけであったということがほとんどである。それゆえに実態は外部には漏れることはなかった。又、試合内容が決定的になったあとに勝つべきチームにファウルをとりスコアを見る限りにおいては公平なジャッジが行われたかのような工作も行われている。男子アジア予選においては韓国チームが映像を各所に渡すことによってIHFも動かざるを得ない情況に陥ったが、女子アジア予選は映像が存在せず情況証拠のみだったため再予選の結果は認められていない。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

最終更新 2009年11月15日 (日) 19:40 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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