亜鉛

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- 亜鉛 - ガリウム
Zn
Cd  
 
 
ファイル:Zn-TableImage.png
一般特性
名称, 記号, 番号 亜鉛, Zn, 30
分類 典型元素
, 周期, ブロック 12 (IIB), 4 , d
密度, 硬度 7140 kg/m3, 2.5
単体の色 青みがかった灰色
亜鉛
原子特性
原子量 65.38(2) u
原子半径 (計測値) 135 (142) pm
共有結合半径 131 pm
VDW半径 139 pm
電子配置 [Ar]3d104s2
電子殻 2, 8, 18, 2
酸化数酸化物 2(両性酸化物
結晶構造 六方最密構造
物理特性
固体 (反磁性)
融点 692.68 K (419.53 )
沸点 1180 K (907 ℃)
モル体積 9.16 ×10-3 m3/mol
気化熱 115.3 kJ/mol
融解熱 7.322 kJ/mol
蒸気圧 192.2 Pa (692.73 K)
音の伝わる速さ 3700 m/s (293.15 K)
その他
クラーク数 0.004 %
電気陰性度 1.65 (ポーリング)
比熱容量 390 J/(kg*K)
導電率 16.6 106/m Ω
熱伝導率 116 W/(m*K)
第1イオン化エネルギー 906.4 kJ/mol
第2イオン化エネルギー 1733.3 kJ/mol
第3イオン化エネルギー 3833 kJ/mol
第4イオン化エネルギー 5731 kJ/mol
(比較的)安定同位体
同位体 NA 半減期 DM DE MeV DP
64Zn 48.6% 中性子34個で安定
65Zn {syn.} 244.26 日 ε 1.352 65Cu
66Zn 27.9% 中性子36個で安定
67Zn 4.1% 中性子37個で安定
68Zn 18.8% 中性子38個で安定
72Zn {syn.} 46.5 時間 β- 0.458 72Ga
注記がない限り国際単位系使用及び標準状態下。

亜鉛(あえん、Zincum Zinc)は原子番号 30の金属元素元素記号Zn亜鉛族元素の一つ。安定な結晶構造は、六方最密充填構造 (HCP) の金属

目次

[編集] 性質

青味を帯びた銀白色の金属であるが、湿った空気中で錆び易く、灰白色の塩基性炭酸亜鉛で覆われる。 融点は 419.5℃、沸点は 907℃。常温では脆いが、約 110℃~150℃の範囲のみで展性、延性に富むようになる。

単体金属の格子定数はa = 265.9pm、c = 493.7pm (25℃)で、理想的な六方最密充填構造よりもややc軸方向に伸びている。c軸方向の熱膨張率はa軸方向の約3.5倍と異方性が強く現れ、線膨張率はa軸方向(c軸と垂直)は1.50×10−5K−1、c軸方向では5.30×10−5K−1である[1]

に容易く水素を発生して溶けるが、希硝酸に溶解させた場合は濃度により、亜酸化窒素窒素ヒドロキシルアミンあるいはアンモニウムイオンを生成する[2]

Zn + 2 H+(aq) → Zn2+(aq) + H2
4 Zn + 10 H+(aq) + NO3(aq) → 4 Zn2+(aq) + NH4+(aq) + 3 H2O

両性元素であり、熱濃アルカリにも徐々に溶ける。

Zn + 2 OH(aq) + 2 H2O → [Zn(OH)4]2−(aq) + H2

ハロゲンとは室温において乾燥状態では反応しにくいが、水分の存在下で室温でも激しく反応し、硫黄とは高温で硫化物をつくる。一方、水素、炭素および窒素とは高温でも直接は反応しない。

[編集] 天然における存在

天然には遊離状態で産出することはなく、地殻中の存在比は推定値で80ppm[3]とそれほど多くはないが、硫化亜鉛を主成分とする閃亜鉛鉱などが容易く採掘されるため金属は安価である。ほか、亜鉛はウルツ鉱、菱亜鉛鉱などの中に存在する。

亜鉛の沸点が同族のカドミウム水銀と同様に低いため、酸化亜鉛木炭などで還元して金属を得ようとしても昇華してしまい煙突の先端で空気中の酸素と反応し酸化物に戻る。この場合、鉱石を還元して生成した蒸気を空気を遮断して冷却しなければ単体は得られない。

[編集] 歴史

亜鉛は少なくとも紀元前4000年からとの合金である真鍮として用いられて来た。古代ギリシア人はキプロス産の亜鉛化合物について記述している。ローマ征服前のダキア人(現在のルーマニア)は紀元前から金属亜鉛精錬技術に通じていた。ダキア以前に金属亜鉛を得た民族は見つかっていない。ダキア以外のヨーロッパで金属亜鉛を精錬するようになったのは産業革命が始まってからである。

ダキア人とは独立にインドでも亜鉛精錬技術が発見されている。12世紀にウールを還元剤として金属亜鉛を得ていた。12世紀から16世紀までに100万トン以上の亜鉛を製造したと考えられている。インドの技術は中国に渡り、16世紀には中国でも亜鉛生産が始まっている。

ヨーロッパ人として金属亜鉛に初めて接したのはポルトガル人だった。ポルトガル人は亜鉛の重要性に気づいておらず、ポルトガル商船を拿捕したオランダ人によってヨーロッパに金属亜鉛が持ち込まれた。1620年にはヨーロッパで東洋起源の金属亜鉛の販売が始まった。1737年に、中国から亜鉛精錬技術がイギリスに伝わる。1743年、ヨーロッパ初の亜鉛工場が港湾都市ブリストルに建設された。年間生産量は200トンである。同年スウェーデン人のアントン・フォン・シュワープが炭酸亜鉛から亜鉛を蒸留分離することに成功、硫化亜鉛からも抽出できた。これはイギリス人の製法とは独立である。1746年、ドイツ人アンドレアス・マルクグラーフは他の2国とは独立に金属亜鉛を得る。コークスと酸化亜鉛を加熱する際、空気を断つことが成功につながった。結局、マルクグラーフの手法が金属亜鉛の大規模生産へとつながっていく。このため、マルクグラーフこそが亜鉛の発見者であると位置づけられることがある

日本では真鍮を意味する鍮石という言葉は天平年間から記録があり、文禄年間には真鍮という名称に変化している。その当時すなわち16世紀終わり頃、亜鉛は中国名で倭鉛と呼ばれ、ポルトガルではツタンナガ(Tutanaga)といったが、これを日本ではトタン(吐丹)と呼んだ。また亜鉛という言葉は正徳3年(1713年)に『倭漢三才図会』に記録されたのが最初であるとされる[4]

日本国内における金属亜鉛の製錬は明治22年(1889年)に黒鉱の処理から開始された。蒸留亜鉛が商業ベースで生産され、電気亜鉛の生産が神岡鉱山で開始されたのは共に明治43年(1910年)頃である[4]

[編集] 製錬

亜鉛鉱としては閃亜鉛鉱 (ZnS) や菱亜鉛鉱 (ZnCO3) が主要であり、日本の亜鉛鉱山は閃亜鉛鉱が主である。細かく破砕された鉱石から浮遊選鉱などで脈石・銅鉱物・鉛鉱物などを分離したものは亜鉛精鉱と呼ばれる(亜鉛含量 50 - 58 %)。亜鉛精鉱は焼結により団塊とされることが多い。亜鉛精鉱は焙焼により酸化亜鉛(亜鉛焼鉱)とされた後に、乾式製錬法もしくは湿式製錬法(電解精錬)により金属亜鉛に製錬される。

\rm ZnS + \frac{3}{2}O_2 \longrightarrow ZnO + SO_2

閃亜鉛鉱にはカドミウムが、菱亜鉛鉱にはが随伴するため、亜鉛精錬においてはこれらの有害金属が環境放出されないように制御される。

[編集] 乾式法

乾式製錬法は、炭素(コークスまたは無煙炭)により酸化亜鉛の焼鉱を還元し、生成した金属亜鉛を揮発回収して蒸留亜鉛を作る方法である。還元炉の形式により、水平レトルト蒸留法・立形レトルト蒸留法(竪型レトルト法・New Jersey 法)・電熱蒸留法・ISP 法などに大別される[5]

\rm ZnO  + C \longrightarrow Zn(g) + CO

蒸留亜鉛は耐火粘土製コンデンサー(受け皿)に導いて冷却し液状亜鉛として捕集されるが、鉛 (bp. 1744 ℃)、カドミウム(bp. 765 ℃)を含む。これらの不純物はダイカスト用亜鉛において粒界腐食を起こす原因ともなるので、分別蒸留によりさらに高純度に精製される[6]

電熱蒸留法では、亜鉛焼鉱とコークス粒の混合物に直接電流を通し加熱する円筒電気炉を使用する。この方法では亜鉛 1 t 当たり 3000 kWh の電力と 500 kg のコークスを必要とする。ISP 法は鎔鉱炉製錬法とも呼ばれ、炉内で生成する亜鉛蒸気を鎔融鉛のシャワーに吸収させ、この亜鉛を 4.6 % 含む 560 ℃ の鎔融金属を 440 ℃ まで冷却すると鎔融鉛に対する亜鉛の溶解度が 2.1 % まで低下し、ほぼ純粋な鎔融亜鉛が分離して浮き上がるため、これを回収する[4]

[編集] 湿式法

湿式製錬法では、酸化亜鉛の焼鉱を硫酸に溶かした硫酸亜鉛の水溶液とし電解して金属を得る。

ZnO + H2SO4 → ZnSO4 + H2O
( ZnO + 2 H+ → Zn2+ + H2O )

この硫酸亜鉛溶液は不純物を含むため、まず少量の二酸化マンガンを加えて鉄イオンを2価から3価へ酸化した後、鉄・ヒ素アンチモンを沈殿させる。続いて少量の亜鉛末を加えてニッケルコバルトおよびカドミウムを単体をして析出除去する[5]。 この精製した硫酸亜鉛水溶液に希硫酸を加えて酸性とし、陰極にアルミニウム電極、陽極に不溶性の含銀鉛電極を用いて電解精錬する。陽極からは酸素、陰極からは亜鉛が析出し、純度 99.99 % 以上の金属亜鉛が得られる[7][8]。亜鉛はイオン化傾向が水素よりも大きく電位的に還元されにくい金属であるが、水素過電圧が高いため水溶液中であっても陰極に析出させることができる(亜鉛めっきの節も参照のこと)。

Zn2+ + 2 e → Zn (陰極、E°= −0.7626 V)

消費電力は亜鉛 1 t あたり 3000 - 4000 kWh である[2]

[編集] 用途

亜鉛めっき鋼板として鋼材の防食に用いる。特に、薄い鉄板に亜鉛めっきを施したものはトタンと呼ばれ屋根材などに使われる(→トタン板)。犠牲電極としての亜鉛めっきの他、真鍮洋銀などの合金材料、乾電池の陰極板などに利用される。ダイカスト地金には亜鉛合金が広く用いられている。また、亜鉛の蒸気を酸素と反応させることにより、亜鉛華と呼ばれる白色粉末が得られ、これを顔料、医薬品、化粧品などとして用いる。亜鉛を原料としたおしろいが生まれる以前は水銀を原料としており、しばしば中毒を引き起こしたため、安全な亜鉛のおしろいの登場は画期的な事であった。また、近年においては透明薄膜トランジスタの伝導膜として酸化亜鉛が注目を集めている[1]

[編集] 亜鉛めっき

亜鉛を鋼板へめっきする方法としては、溶融した亜鉛に鋼材を浸して行なう溶融亜鉛めっきと、電気分解を利用する電気めっきがある。電気めっきの場合には、めっき後かなり時間がたってからウィスカーと呼ばれるひげ状の細長い亜鉛結晶が成長してくることが知られており、これが電気製品の故障原因となる場合がある。近年でも、サーバーに障害を発生させる原因となるとして注意喚起が行なわれている[9]

また、亜鉛は水銀などと同様に水素過電圧の大きな電極であり(約0.7V ;1N H2SO4)相対的に水素分子を発生しにくい電極である。つまり水素過電圧は電極の表面状態,電流密度,温度などで変化するので条件によっては水素よりも標準酸化還元電位が大である亜鉛が水溶液から析出したり電解めっきすることが可能になる。すなわち、亜鉛の表面では水素イオンが電子により還元されてから水素分子が生成する多段階反応が律速となるため、低電流領域では陰極電位がZn の平衡電位に到達せず水素が発生するものの、高電流領域では二水素生成が飽和することで陰極電位が上昇し(水素過電圧)亜鉛が析出する現象が見られる。また陰極上に生成吸着したZn(OH)2 が水素析出抑制剤 として作用するとも考えられている。[10]

[編集] 人体における亜鉛

生体ではの次に多い必須微量元素で、体重70kgのヒトに平均2.3g含まれる。100種類を超える酵素の活性に関与し、主に酵素の構造形成および維持に必須である。それらの酵素の生理的役割は、免疫機構の補助、創傷治癒、精子形成、味覚感知、胎発生、小児の成長など多岐にわたる。炭酸脱水酵素が最も重要だろう。その他、加水分解酵素の活性に関わり、DNARNAリン酸エステル加水分解によって切断するので細胞分裂に大きく関わる。

人体に入る亜鉛はすべて食品に由来する。人体中では骨に多く、次いで体組織である。最も少ないのが血液であり、7ppmに過ぎない。体組織中では、眼球肝臓筋肉腎臓前立腺脾臓である。体液としては精液に多い。このうち、亜鉛の貯蔵器官はと脾臓である。亜鉛の排出経路は消化器が9割を占め、残りが尿である。

ただし、金属亜鉛は人体に有害である。皮膚を刺激し、蒸気を吸入すると呼吸器に障害を起こし、全身、特に四肢の痙攣に至る。

[編集] 所要量

2005年版の「日本人の食事摂取基準」では、推定平均必要量:8(6)mg/日、推奨量:9(7)mg/日、上限量:30(30)mg/日(数値はいずれも成人男性、かっこ内は成人女性)である。ちなみにアメリカでは、男性で11 mg/日、女性で8 mg/日が推奨されている。

[編集] 欠乏症

亜鉛の欠乏は、亜鉛含量の少ない食事の摂取、亜鉛と結合し小腸での吸収を妨げる食物繊維の取りすぎ、さらにの過剰摂取などが原因となって起こることがある。亜鉛を最も含む食材は入手の容易さを考慮に入れるとレバーである。食物中にフィチン酸が含まれていると亜鉛の吸収が妨げられる。フィチン酸は穀物や豆類に多い。したがって、赤身の肉が少なく、穀物や豆類の摂取が多い国、例えば、FAOの統計によると、メキシコペルーなどに欠乏症の素地を満たす国民が多い。

症状は細胞分裂の頻繁な箇所に影響が現れる。

亜鉛欠乏時には、胃腸機能の減衰および免疫機能低下による下痢が見られ、亜鉛を含む栄養素の摂取不良を招き、欠乏がさらに悪化することがある。亜鉛はインシュリンの構造維持に必須でもあり、代謝にも関与する。さらに、ビタミンAの活性化にも関与するため、亜鉛の欠乏により、ビタミンA欠乏症が現れることがある。また、動物実験レベルでは、亜鉛欠乏により、活動性の低下、記憶や注意力の低下が見られる。医師による治療の際は、亜鉛含有製剤としてポラプレジンクなどが処方される[11]

[編集] 過剰症

亜鉛は過剰に摂取されると、膵液を通して過剰分が排泄されるが、大量に摂取されると過剰症を引き起こす。亜鉛の摂取過多は鉄や銅の欠乏を招く。また、善玉コレステロールとして知られる高比重リポタンパク質(HDL)の血液中の濃度を低下させる。

亜鉛を多く含む食品の例

[編集] サプリメントとしての亜鉛

時折、亜鉛の重要性をことさら誇張し「亜鉛を摂取すると精力が付く」とか「亜鉛は性のミネラル」とかいったような文句で亜鉛サプリメントの宣伝がなされることがあるが、亜鉛の多量摂取により男性機能が高まるということはない。

上記のような症状を強く感じたとしても、それらが亜鉛不足によるものと断定するのは好ましくない。特に皮膚や免疫という生命維持にとって重要性の高い要素に対する素人の判断は問題を拡大することにもつながる。これらの症状はほかの原因によって起きている可能性もあるため、安易に亜鉛サプリメントを摂取して間に合わせようとするのではなく、医師に相談し適切な処方を受ける方が確実である。

[編集] 摂取源

100g中に含まれる亜鉛の量 (mg) の比較。

[編集] 亜鉛の化合物

化合物中の原子価は唯一2価が安定であり、その他の1価 (Zn22+)は亜鉛および塩化亜鉛を融解状態で反応させると生成するものの極めて不安定で不均化しやすい[12]

2価の水和イオン Zn2+(aq)は無色であり、多少加水分解して弱酸性を示し、その酸解離定数はpKa = 9.0である。

[編集] 同位体

詳細は「亜鉛の同位体」を参照

[編集] 関連項目

[編集] 脚注

  1. ^ 日本化学会編 『化学便覧 基礎編 改訂4版』 丸善、1993年
  2. ^ 『化学大辞典』 共立出版、1993年
  3. ^ Taylor & McLennan, 1985
  4. ^ 西川精一 『新版金属工学入門』 アグネ技術センター、2001年
  5. ^ 『新実験化学講座8 無機化合物の合成(I)』 丸善、1976年
  6. ^ 鉛は揮発しない温度に保たれ、カドミウムは先に揮発させて分別する。
  7. ^ 増本健、2-5-1亜鉛、『金属なんでも小事典』、ブルーバックスB1188、講談社、pp128-130、1997。ISBN 4-06-257188-9
  8. ^ 後藤 佐吉、「亜鉛」、『世界大百科事典』、第二版CD-ROM版、平凡社、1998年。
  9. ^ http://it.jeita.or.jp/infosys/info/whisker/020115.html
  10. ^ 福島久哲、中野博昭、硫酸塩浴からの亜鉛および亜鉛合金の電析機構、表面科学Vol. 22, No. 2, pp. 107―112, 2001
  11. ^ 亜鉛含有製剤佐賀医科大学医学部附属病院 薬剤部
  12. ^ FA コットン, G. ウィルキンソン著, 中原 勝儼訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年

[編集] 外部リンク

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最終更新 2009年10月13日 (火) 15:42 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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