交直流電車

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交直流電車(こうちょくりゅうでんしゃ)とは、電車のうち、直流電化区間と交流電化区間の双方を直通できる構造を持つものを指す用語である。「交流直流両用電車」「交直両用電車」「交直流電車」とも称する。

なお、電気機関車にも同じように「交直流電気機関車」が存在する。電気機関車を参照。

目次

[編集] 概要

鉄道の電化は、地域ごとの事情や電化した事業者に方式が異なることがままあるため、それらの路線を路線側の電化方式を変更せずに直通する目的で製造された車両である。

[編集] 交直流電車の構造

交直両用電車はパンタグラフの周りに多数の碍子をそなえるなど、どちらか専用の電車(下の写真参照)に比してものものしい。
直流専用電車のパンタグラフ

ファイル:JRE E531@panta1.jpg ファイル:JRE E231@panta1.jpg

回路の設計は直流型電車に準じているが、他に変圧器整流器を搭載している。交流電化区間直通時には交流電源を変圧器により降圧し、整流器により直流電源に変換して使用するものである。直流電化区間では変圧器・整流器を通さず電源をそのまま用いる。

交流専用車両に見られるタップ制御やサイリスタ位相制御は通常用いられない。それらは制御の過程が交流と不可分で、交流電化区間でしか使用できないからである。従って制御方式は直流専用車両と同様な方式となる。ほとんどは直並列抵抗制御界磁添加励磁制御VVVFインバータ制御のいずれかである。

直流型電車を基本にしているため、後述の通り交直流電車の変圧器・整流器を撤去して直流型電車に改造した例もあれば、直流専用電車に変圧器・整流器を付加して交直流電車に改造した例もある。

走行中に交直流の切り替えが正常にできるよう遮断器真空遮断器空気遮断器など)を取り付けている。また誤操作により冒進した場合に機器を焼損しないようヒューズを取り付けている。その他機器も多数設置されている関係で、パンタグラフ周りはものものしくなっている。 また実際のダイヤで交直流転換が予定されている場合、始発駅停車中に運転士が遮断機が正常に作動するか確認することがある。その際、遮断器から音がしたり、車内の照明が消え、空調設備などが一時的に止まることがある。

日本の交直両用車両はこのパンタグラフを、極端に異なる電源で共用していることが特筆される。異なる電源ではそれぞれに設計された集電装置を搭載した方が設計上は簡単だが、整備、重量の点で難が残る。また日本の交直両用車両が標準的に行う車上切替にも対応しにくい。しかし、海外には後者の例も多く見られる。

[編集] 日本における実例

2006年現在の日本では、東日本旅客鉄道(JR東日本)・西日本旅客鉄道(JR西日本)・九州旅客鉄道(JR九州)・北越急行首都圏新都市鉄道の各社が保有している。

交直流電車は直流電動機を用いた時代は前述の通り構造が複雑となるため、直流型電車と比べてのみならず交流専用の電車と比べても、車両の製造コストが高額となった。現在は交流電車も、交直流電車も同じVVVFインバーター制御になるため交流電車、交直流電車のコスト差は交直切り替え機器程度のわずかな物である。

日本国有鉄道(国鉄)時代は、交流区間でのみの運用であっても北海道を除いて交直流両用の車両を製造することが多かった。当初は交流専用電車のメリットが少なかったこと、製造されるようになった後も技術的な理由で一時製造が見合わせられたこと、全国的な車両の配置転換があったこと等が大きいが、結果的に機器コストのかかる車両を大量に造らざるを得なくなり、交流電化のメリットも生かしにくかった。

国鉄分割民営化後は、JRグループ各社で運用が局地化し、全国的な配置転換もなくなったため、北海道旅客鉄道(JR北海道)やJR九州は専ら交流電車を導入し、交直流電車は常磐線日本海縦貫線など、交流と直流区間をまたがって運用される区間で導入するのが一般的になった。なお、コスト面などから羽越本線のように交流区間と直流区間をまたがる列車には、気動車を使用する例も存在する。また、運行区間が直流区間のみとなったために交流対応の機器を撤去して直流専用に改造されたものもあり、交直流電車は減少しつつある。

[編集] 交直流電車の形式

国鉄・JRの交直流電車は、形式番号(3ケタの場合)の百位が4・5・6のいずれかで表される。規定上は4 - 8のいずれかだが、慣例的に7, 8は交流専用電車用とされている。

括弧内は対応している交流電源周波数を示す。

特急形電車
急行形電車
近郊形電車
新規設計製造
改造車
一般形電車
通勤形電車
事業用車両
試作車

[編集] 電源方式を改造した例

直流電車を交直流電車へ改造した例
  • JR西日本所属分415系電車 (50/60Hz)
113系電車からの改造。七尾線直流電化の際必要となる交直流電車調達のため後述する直流区間のみで使用されていた485系から取り外して捻出した交流用機器を113系に取り付けたもの。
交直流電車を直流電車へ改造した例
485系電車を改造。取り外した交流機器は上記の415系(800番台)に転用。このために485系とは併結運転が可能であるが、JR東日本所属の183系電車とは併結不可能。
交直流電車を交流電車へ改造した例
419系電車と同じ手法で581系電車を近郊形に改造したものが0番台 (60Hz) 、583系を改造したものが1000番台 (50/60Hz) 。運転区間が交流区間に限られるため、交直切り替えをなくしたもので、機構的には交直両用車のままである。

この他、改造により交直切替回路を使用不能にし、事実上交流専用となった車両もある。

[編集] 日本国外の例

日本国外では、国によって、或いは同じ国でも地域や路線によって電化方式が異なることがある。例えば、欧州諸国ではかねてより多くの国際列車が運行されていたが、機関車牽引の客車列車が中心だったため、交直両用機関車が各国で製造された。国境付近での異電化区間直通列車には、依然客車や気動車が充当されることが多いが、近年では高速鉄道網の発達もあり、交直両用電車が製造されることがある。また、欧州各都市で導入されているトラムトレインに充当されている車両も、路面区間と一般の鉄道路線を直通するために交直両用電車となっていることがある。

[編集] 国際列車を含む長距離列車用

ドイツでは、ドイツ鉄道の架空電車線方式路線は交流電化だが、隣国のベルギー・オランダの在来線は直流電化であるため、これらの国への直通運転に充当される。ベルギーやフランスの高速新線も走行するため、4電源対応(同型であるオランダ国鉄4650形も同様)。
2電源対応の交直両用電車。フランスでは、パリ以南の在来線は直流電化だが、後に電化されたパリ以北・国内東部・ブルターニュ地方・コートダジュール地方・アルプス地方と、TGV用の高速新線LGVは交流電化となっている。Sud-Estの一部はスイスに乗り入れるため3電源対応。
直流電化のベルギーやイタリアへ直通可能とするため、3電源対応。
ドイツへ直通可能とするため、3電源対応。
フランスから直流電化のベルギー・オランダへ直通可能とするため、3電源対応。
ベルギー・オランダに加えドイツへも直通可能とするため、4電源対応。
イギリスではロンドン南部の在来線が第三軌条方式直流電化だが、北部在来線と高速新線は架空電車線方式交流電化となっている。運行開始当初はイギリス国内の高速新線が未開業であったことと、ベルギーへ直通するため、3電源対応の交直両用電車となっている(一部はフランス国内在来線を走行するため、4電源対応)。
  • スイス国鉄 RAe TEE II形(RAe5065形)電車
フランス・イタリアへ直通するTEEに充当されるため、4電源対応の交直両用電車となっていた。
ドイツ・ドイツ・イタリアの三国を直通運転するため2電源対応。
イタリアでは、在来線とフィレンツェ - ローマ間の高速新線TAVは直流電化である。しかしその後開業したTAVが交流電化であることと、既存のTAVも高速化のため交流電化に切り替える予定があることから、ESユーロスターETR480とETR500は初期に製造された直流専用のものを除き、2電源対応(直流専用のETR480の一部は、交流25kV 50Hz対応に改造されETR485となった)。またETR500のうち、フランス・リヨン乗入れに使用される一部編成は、直流1.5kVも走行可能な3電源対応。
スペインでは、高速新線は標準軌で交流電化、在来線は広軌で直流電化となっている。S100電車は高速新線のみを、S101電車は在来線のみを走行するが共に交直両用電車である。
高速新線と在来線を直通運転するため、2電源対応の交直両用軌間可変電車となっている。
チェコは直流電化だが、交流電化であるオーストリアやスロバキアへ直通するため、3電源対応の交直両用電車となっている。

[編集] 都市周辺の異電化区間直通用

Z20500形電車
  • フランス国鉄 Z8100形電車
  • フランス国鉄 Z8400形電車
  • フランス国鉄 Z1500形電車
  • フランス国鉄 Z8800形電車
  • フランス国鉄 Z20500形電車
  • フランス国鉄 Z20900形電車
  • フランス国鉄 Z92050形電車
  • フランス国鉄 Z22500形電車
パリは南北で電化方式が異なるため、直通するRERに充当されている車両は2電源対応。
Z27500形電車
  • フランス国鉄 Z9500形電車
  • フランス国鉄 Z9600形電車
  • フランス国鉄 Z21500形電車
  • フランス国鉄 Z23500形電車
  • フランス国鉄 Z24500形電車
  • フランス国鉄 Z26500形電車
  • フランス国鉄 Z27500形電車
  • フランス国鉄 B82500形電車
地方都市周辺の異電化区間直通用で、2電源対応。Z24500と同型の、ルクセンブルク国鉄 2200形電車も2電源対応。またB82500形は、Z27500形とほぼ同様の車体・機能を持ちながら発電用内燃機関を搭載し、非電化区間も走行可能。
class319電車
  • イギリス クラス313電車
  • イギリス クラス319電車
  • イギリス クラス365電車
テムズリンク系統の車両で、電化方式の異なるロンドン南北を直通するため、第三軌条直流750Vと架空線交流25kV 50Hzに対応。
  • イギリス クラス360電車
  • イギリス クラス375.6電車
  • イギリス クラス377.2電車
電化方式の異なる路線を直通するため、第三軌条直流750Vと架空線交流25kV 50Hzに対応。
441~490の50両は交流電化のルクセンブルクやフランス乗入れのため、2電源対応。
  • ドイツ鉄道474.3形電車
ハンブルクのS-Bahn用。300番台は、第三軌条直流1.2kVに加え、架空線交流15kV 16 2/3Hzにも対応する。
  • スイス国鉄 RABe 524形電車
Stadler社のFLIRTシリーズ。チチーノ・ロンバルディア地方においてスイス・イタリア間の国境を跨いで走行可能とするため、交流15kV 16 2/3Hzと直流3kVに対応。
Stadler社のFLIRTシリーズで、交流11kV 16 2/3Hzに加えベルニナ線の直流1kVにも対応する。2010年に登場予定。
  • Linzer Lokalbahn ET22形電車
151~158の8両は、交流15kV 16 2/3Hzと直流750Vに対応。
  • Linzer Lokalbahn ET24形電車104
  • Linzer Lokalbahn ET25形電車103
直流800Vと交流15kV 16 2/3Hzの2電源対応。ET25形と同型のオーストリア国鉄 4855形も同様。
  • スペイン国鉄 S140電車
高速新線と在来線を走行する軌間可変のレヒオナル用電車。
  • ポルトガル国鉄 3400形電車
シーメンス・ボンバルディア社のViriatusシリーズ。交流25kV 50Hzに加え直流1.5kVにも対応。
大韓民国首都圏電鉄用車両。国鉄は交流25kV 60Hz、地下鉄は直流1.5kVと電化方式が異なり、ソウルメトロ1号線京釜線京元線京仁線に乗り入れるため、2電源対応。
ソウルメトロ4号線果川線安山線に乗り入れるため2電源対応。

[編集] トラムトレイン

GT 8-100D/2S-M形電車
  • DUEWAG GT 8-100C/2S形電車
  • DUEWAG GT 8-100D/2S-M形電車
カールスルーエのLRTで、8軸3車体連節車。ドイツ鉄道へ乗り入れるため、直流750Vと交流15kV16 2/3Hzの2電源に対応する。VBK (Verkehrsbetriebe Karlsruhe GmbH) では、801形・821形・837形を保有する。ドイツ鉄道(DB Regio)も同型の450形を保有。
  • Saarbahn 1000形電車
ザールブリュッケンのLRTで、2電源対応の8軸3車体連節車。乗り入れ先のドイツ鉄道も、同型の451形電車を保有。
  • RBK(Regionalbahn Kassel GmbH) 701形電車
カッセルのLRTで、直流600Vと交流15kV16 2/3Hzの2電源に対応した8軸3車体連節車。乗り入れ先のドイツ鉄道も、同型の452形電車を保有。
  • フランス国鉄 U25500形電車
パリ郊外のT4線用のLRT。既開業区間は、旧フランス国鉄線からの引継ぎ路線であり全線交流電化であるが、将来の路面区間走行を念頭に2電源対応の交直両用となっている。
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[編集] ギャラリー

[編集] 関連項目

最終更新 2009年10月14日 (水) 10:00 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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