今昔物語集

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今昔物語集(こんじゃくものがたりしゅう)とは平安時代末期に成立したと見られる説話集である。全31巻。ただし8巻・18巻・21巻は欠けている。編纂当時には存在したものが後に失われたのではなく、未編纂に終わり、当初から存在しなかったと考えられている。また、欠話・欠文も多く見られる。

今昔物語』と略称されることもあるが、本来は「集」が付く。

インド中国日本の三国の約1000余りの説話が収録されている。

『今昔物語集』という名前は、各説話の全てが「今ハ昔」という書き出しから始まっている事から由来している。

目次

[編集] 成立

『今昔物語集』の成立年代と作者は不明である。

[編集] 年代

11世紀後半に起こった大規模な戦乱である前九年の役後三年の役に関する説話を収録しようとした形跡が見られる(説話名のみ残されており、本文は伝わっていない)事から、1120年代以降の成立であることが推測されている。一方、『今昔物語集』が他の資料で見られるようになるのは1449年のことである。

成立時期はこの1120年代~1449年の間ということになるが、保元の乱平治の乱治承・寿永の内乱など、12世紀半ば以降の年代に生きた人ならば驚天動地の重大事だったはずの歴史的事件を背景とする説話がいっさい収録されていないことから、上限の1120年代からあまり遠くない白河法皇鳥羽法皇による院政期に成立したものと見られている。

このため、『今昔物語集』は編纂後約300年間にわたって死蔵状態だったと考えられている。

[編集] 作者

作者についてはっきり誰が書いたものであるかは分かっていない。『今昔物語集』を『宇治大納言物語』を改訂増補強したものと考える場合、作者は宇治大納言源隆国と考えられる。だが、その説はほぼ否定されている。他にも、南都北嶺といったところに所属していた僧侶が作者という説がある。また、この説についても一介の僧侶が個人的な理由で書いたのか、またはその時代の天皇である白河天皇の庇護下にあった何名かの僧侶によって書かれたのかなど様々分かれている。奇説としては『俊頼髄脳』を著した源俊頼とする説もある。

だが、どの説も想像の範囲を超えず決定打に欠けている。

[編集] 伝本

京都大学付属図書館に所蔵されている、鈴鹿家旧蔵本(国宝)通称「鈴鹿本」が最古の伝本である。ただし鈴鹿本は一部の巻のみを伝えるにとどまる。紙の年代が成立時期に重なることから、これが『今昔物語集』として最初に書かれた原本そのものである可能性もある。その他の本は鈴鹿本から書写され、流布されていったものだと考えられている。

[編集] 内容

[編集] 形式

天竺(インド)、震旦(中国)、本朝(日本)の3つに分かれ、それぞれ先に仏教説話(因果応報譚を含む)、あとに仏教説話以外の説話を並べる構成になっている。各部の先頭はおおよそ年代的に最初の説話で始められている。

原則として各話は「今昔」(今ハ昔)という書き出しで始められ、「トナム語リ伝エタルトヤ」で結ばれ終わる(一部例外あり)。なお近世以前は「こんじゃくものがたり」とは読まず、「いまはむかしのものがたり」と読まれていたらしい。

似た話が2つ(ときに3つ)並べて配置されている(2話一類様式)。

[編集] 原話

『今昔物語集』の話はすべて創作ではなく、他の本からの引き写しであると考えられている。元となった本は『日本霊異記』、『三宝絵』、『本朝法華験記』などが挙げられる。また、平安時代の最初の仮名の物語といわれる『竹取物語』なども取り込まれている。

本朝世俗部の話には典拠の明らかでない説話も多く含まれる。伝聞資料に基づき構成されたものがあったかもしれない。

[編集] 文体

原文(鈴鹿本)は平易な漢字仮名交じり文(和漢混淆文)(ただし、ひらがなではなくカタカナである)で書かれ、その文体はあまり修辞に凝らないものである。そのため、古文としては比較的読みやすい部類に入る。一方、擬態語の多様などにより、臨場感を備える。芥川龍之介は「美しいなまなましさ」「野蛮に輝いている」と評している。話のテンポも軽妙で口語といった語りもふんだんに用いられ、典型的な平安文学とは一線を画している仕様になっている。

極力、どの地域の、何という人の話かということを明記する方針で書かれ、それらが明らかでない場合には意識的な空欄を設け、他日の補充を期す形で文章が構成されている。例えば、典拠となった文献で「昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがいました」という書き出しから始まる説話があり、その人名が具体的には伝わっていない場合であっても、その話を『今昔物語集』に収録する際には「今ハ昔、  ノ国ニ  トイフ人アリケリ」との形で記述され、後日それらの情報が明らかになった場合には直ちに加筆できる仕様になっている。このような編纂意図から発生した意識的な欠落部分が非常に多いのが、本説話集の大きな特徴である。

[編集] 各巻の内容

[編集] 天竺部

巻第一から巻第四までは仏教説話。巻第五は非仏教説話や釈迦の前世譚を含む。

  • 巻第一 天竺(釈迦降誕と神話化された生涯)
  • 巻第二 天竺(釈迦を説いた説法)
  • 巻第三 天竺(釈迦の衆生教化と入滅)
  • 巻第四 天竺付仏後(釈迦入滅後の仏弟子の活動)
  • 巻第五 天竺付仏前(釈迦の本生譚・過去世に関わる説話)

[編集] 震旦部

巻第六から巻第九までが仏教説話。

  • 巻第六 震旦付仏法(中国への仏教渡来、流布史)
  • 巻第七 震旦付仏法(大般若経、法華経の功徳、霊験譚)
  • 巻第八 欠巻
  • 巻第九 震旦付孝養(孝子譚)
  • 巻第十 震旦付国史(中国の史書、小説に見られる奇異譚)

[編集] 本朝(日本)仏法部

  • 巻第十一 本朝付仏法(日本への仏教渡来、流布史)
  • 巻第十二 本朝付仏法(法会の縁起と功徳)
  • 巻第十三 本朝付仏法(法華経読誦の功徳)
  • 巻第十四 本朝付仏法(法華経の霊験譚)
  • 巻第十五 本朝付仏法(僧侶の往生譚)
  • 巻第十六 本朝付仏法(観世音菩薩の霊験譚)
  • 巻第十七 本朝付仏法(地蔵菩薩の霊験譚)
  • 巻第十八 欠巻
  • 巻第十九 本朝付仏法(俗人の出家往生、奇異譚)
  • 巻第二十 本朝付仏法(天狗、冥界の往還、因果応報)

[編集] 本朝世俗部

巻第二十一は欠巻であるが、配列順からここには天皇家に関する説話が入る予定であったと考えられている。

  • 巻第二十一 欠巻
  • 巻第二十二 本朝(藤原氏の列伝)
  • 巻第二十三 本朝(強力譚)
  • 巻第二十四 本朝付世俗(芸能譚)
  • 巻第二十五 本朝付世俗(合戦、武勇譚)
  • 巻第二十六 本朝付宿報(宿報譚)
  • 巻第二十七 本朝付霊鬼(変化、怪異譚)
  • 巻第二十八 本朝付世俗(滑稽譚)
  • 巻第二十九 本朝付悪行(盗賊譚、動物譚)
  • 巻第三十 本朝付雑事(歌物語、恋愛譚)
  • 巻第三十一 本朝付雑事(奇異、怪異譚の追加拾遺)

[編集] 影響

死蔵期間が長期に渡っていたため、後の説話文学の代表格といえる『宇治拾遺物語』など中世の説話文学に何らかの影響を与えたとは言いがたい。

『今昔物語集』に想を採った近代作家は多い。中でも大正時代の芥川龍之介による『羅生門』と『』は有名。

[編集] 外部リンク

最終更新 2009年6月24日 (水) 15:33 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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