代替医療
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代替医療(だいたいいりょう、alternative medicine) とは「通常医療の代わりに用いられる医療」という意味が込められた用語である。代替医療は「補完医療」、「相補医療」とも呼ばれる。medicineは医療とも医学とも訳されることがあるので「代替医学」とも。米国でも日本でも学会等正式の場では「補完代替医療」(Complementary and Alternative Medicine:CAM)の名称が使われることが多いようである。通常医療と代替医療の2つを統合した医療は「統合医療」と呼ばれる。
目次 |
[編集] 代替医療の大分類
代替医療を全て分類しきることは困難であるが、以下の4つのタイプに大まかに分類できるであろう[1]とも言われている。
- 伝統医学
- 伝統中国医学、韓医学[2]、アーユルヴェーダ(インド医学)、ユナニ医学(イスラム医学)等、数百年以上の長きに渡り、それぞれの国家において多くの伝統医師により研究・継承されてきた歴史・伝統があって、奥深さや広がりを伴った体系を持っており、各国の国民の健康を長らく支えてきた実績のあるもの。近代以降、“西洋医学”が前面に出てくるまでは、むしろこちらが主流であったもの。
- 民間療法
- 国家的な広がりまではなく、小集団によるもの。歴史があるものも、最近登場したものもある。アメリカで発祥したカイロプラクティック[3]、オステオパシー、大正時代に日本で発祥し、欧米で先に普及したレイキなど。
- 栄養にまつわる療法
- 食餌療法の延長として、効果を期待するもの。特定の食事、食事法のこともあれば、食事成分のこともある。食事成分の場合、完全に同一成分の錠剤を摂取しても保険制度を利用すれば通常医療という位置づけである。
- 最先端治療法
- 西洋医学の医師によって研究され、一部では用いられた例はあったとしても、その時点ではまだ大半の医師からは標準的な治療としては認知されていないもの[4]。
[編集] 各国での代替医療
欧米人は、ほんの数十年前まで、中国医学の鍼灸など彼らにとって身近ではないものについて、全く調査もせず頭ごなしに迷信と決め付ける過ちを犯していた[5]。だが近年、(鍼灸も含めて)いくつかの代替医療の効果が医学的に証明されるに至って、その一部が病院での医療に取り込まれだしている。
欧米の先進国において代替医療の利用頻度が急速に増加している[6]。1990年代以降に代替医療への関心が高まっており、さらに代替医療の科学的研究に大きく予算が配分され政策として実行されてきた。
[編集] アメリカ合衆国
[編集] 利用状況
1993年、デービッド・アイゼンバーグ博士(ハーバード大学代替医学研究センター所長)はアメリカ合衆国国民の代替医療の利用状況についての調査報告を発表した。この調査は、この研究センターが研究している16種類の代替医療に関してのみを調査対象にしていた[7]。 16種類に限定していたにもかかわらず、利用状況は医師らの予想をはるかに超えていた[8]。
1990年時点で、これら16種類の代替医療を受けたアメリカ国民は全国民の34%に達していた。代替医療の機関(治療院、ルームなど)への外来回数はのべ4億2700万回に達していた。この数はかかりつけ開業医への外来3億3800万回を超えていた[9]。
この調査で、学歴が高い人、収入の多い人、知識人層など時代を先導してゆく人たちほど、代替療法のほうを評価し、積極的に利用している、ということも明らかになった[10]
1997年の調査では代替医療への外来回数は6億2900万回になり、1990年の調査時のおよそ1.5倍に増加した[11]。
[編集] 代替医療の研究と教育体制
日本、韓国、中国などでは正規の病院で漢方薬が処方される。アメリカでも10を超える州で医学的に効果の証明されたものには保険が適用されている。ただし、ホメオパシーなど現在でもその効用が実証されていないものは除外されている。
1992年、国民の利用関心を背景としてアメリカ国立衛生研究所(NIH)にアメリカ国立補完代替医療センター(NCCAM)が設置された。
当初の年間予算は200万ドルであったが、現在では1億ドル以上の予算が割り当てられている[6]。全米の医科大学・医学ラボなどでの代替医療研究を振り分け、政府予算も割り当てられている。2000年にはホワイトハウスに補完代替医療政策委員会が設置された。代替医療の教育について、全米の医学生が少なくともひとつの代替医療を並行して学べる体制を各医学部が備えていることが望ましいとして、国立衛生研究所では公式に推奨している。そのような代替医療教育体制は全米の医科大学の50%以上で既に実施されている。1998年の段階でも、全米125医学校中75校が非西洋医療の講座・単位を持つようになっていた。医学生の側も80%余りが代替医療を身に着けたいとアンケートに答えている。
ジョージタウン大学は代替医療教育において初めて正規課程(修士課程)を定めた学校であり、国立衛生研究所が目と鼻の先にあることもあり、多くの代替医学研究がされている。また、アリゾナ大学の医学教授アンドルー・ワイルにより西洋医学による医療と代替医療とをあわせた統合医療が教育実践されている。
食事療法や健康食品の使用については特定の疾患では注意した上で容認するというガイドラインがある[6]。食事療法や健康食品のような分野は代替医療の中でも研究が行われにくいために、エビデンスが少ないと報告されている[12]
[編集] イギリス
1983年、王室基金の援助で代替医療などの研究を行う、The Research Council for Complementary Medicine:RCCM が設置される。
1991年、イギリス保健省は医師が効用が医学研究者によって科学的に証明された代替医療の場合は治療家を雇用することが保険適用できることにした。
ウェールズ公チャールズの案で、5か年計画で国家レベルでの代替医療の研究が進められている[6]。
2004年3月、西洋医学や中医学による鍼灸とハーブ療法の治療について資格制度ができることになった[13]。これは英国保健省とチャールズ皇太子のThe Prince of Wales's Foundation for Integrated Health が制度化に向けてすすめてきた[13]。
[編集] ドイツ
日本補完代替医療学会によって、主要先進国では最も代替医療が活用されていると報告された[6]。
[編集] 日本
[編集] 具体例
「代替医療一覧」も参照
具体的には、中国の漢方薬や鍼灸、日本の指圧や柔道整復、インドのアーユルヴェーダのような伝統医学、また、ホメオパシー、マッサージ、オステオパシー、アロマセラピーやカイロプラクティックのような欧米にルーツをもつ手技療法、さらに、各種療術、民間療法や宗教的なヒーリングまで、基本的に薬品投与や外科手術に頼らず、自然治癒力を促進させるような体系のありとあらゆる治療法が含まれる。
[編集] その他
正規の伝統医学のほうは大丈夫であるが、突然流行するような食品の中には、あくまで一部ではあるが、害があってもそのまま流通してしまうものがある。例えば、かつて日本で中国製ダイエット茶などで死亡事件が発生した例がある[14][15]。そのほか、ごくごく一部にすぎないが、一部のカルト集団が勧誘の手段として代替医療を行っている例もある[16]。
[編集] 代替医療とエビデンス
代替医療の中には、鍼灸・推拿・漢方のように長い歴史を持ち、経験的に医療効果の見込め、最近では科学的実験・調査にとってその効用が確認された療法もある。
通常医療の療法と同様に、代替医療内でも臨床試験によって効果が証明されたものとされないものの区分けが存在する。針灸などは効果に関してエビデンスがある。
米国政府は補完代替医療の有用性を検証研究するため、米国NIHの下部組織として国立補完代替医療センター(NCCAM)を設立した。
鍼灸・漢方といったような代替医療にもエビデンスを主体にした考え方も出てきており、また、WHOが1996年、鍼灸における適応疾患を起草したり、1997年NIHの鍼治療の合意形成声明書が発表されたりし(このセンテンスはNCCAMの鍼治療レポート 英語を参照)、西洋医学の補完代替医療へのアプローチも進んできている。
イギリスにおけるリフレクソロジーのように、数年にわたる実データの蓄積を含む正規の科学的な検証を経たうえで、議会の承認を経て正規の保険医療に組み込まれ成果をあげているものもある(日本においてはまだ「代替医療」扱いである)。
[編集] 脚注
- ^ 林 義人『代替医療革命―医療ビッグバンの幕開け』廣済堂出版 1999 他
- ^ 林 義人『代替医療革命―医療ビッグバンの幕開け』廣済堂出版 1999
- ^ アメリカでは国家資格として扱われており、 資格を持つ者は doctor of chiropractic と呼ばれる。
- ^ 例えば、1990年の日本における腹腔鏡手術など
- ^ このような誤解・過ちの傾向は、米国の大統領とその一団が中国を訪問し、その際、鍼により麻酔無しで大掛かりな手術を行うのを彼ら自身が実際に眼のあたりにし驚き、それを帰国後報告し、その事実が米国の人々・医療関係者、西洋の人々に広く知られるまで続いていた。
- ^ い ろ は に ほ 「がんの補完代替医療ガイドブック-厚生労働省がん研究助成金研究」 日本補完代替医療学会、2006年4月。
- ^ 元の報告書自体。あるいは林 義人『代替医療革命―医療ビッグバンの幕開け』廣済堂出版 1999 など多数
- ^ 元の報告書自体。あるいは林 義人『代替医療革命―医療ビッグバンの幕開け』廣済堂出版 1999 など多数の書籍に記載されている
- ^ 元の報告書自体。あるいは林 義人『代替医療革命―医療ビッグバンの幕開け』廣済堂出版 1999 など多数に記載されている
- ^ アンドルー ワイル『ワイル博士の健康相談 (1) 自然治癒力』p.139-141
- ^ 元の報告書自体。あるいは林 義人『代替医療革命―医療ビッグバンの幕開け』廣済堂出版 1999 など多数に記載されている
- ^ ウェンディ ウェイガー『がんの代替療法―有効性と安全性がわかる本 ハーバード大学の研究グループによる最新報告』ISBN 978-4879545183。
- ^ い ろ 直本美知 「英国におけるCAMの現状と鍼およびハーブ療法の法律規制」『全日本鍼灸学会雑誌』、第54巻4号、2004年、636-641頁。
- ^ 日本政府は健康増進法改正などによって規制を強化し、状況はそれなりに変化した。
- ^ 食の安全
- ^ 山口広 (著), 紀藤正樹 , 滝本太郎 『Q&A 宗教トラブル110番―しのびよるカルト』p37-p38(民事法研究会; 全訂増補版版 2004年2月) ISBN 978-4896281866
[編集] 関連項目
- 日本補完代替医療学会
- NCCAM(アメリカ国立補完代替医療センター)
- 代替医療一覧
- 伝統医学/西洋医学/東洋医学
- 医業類似行為/医業/歯科医業
- 医学/歯学
- 偽医療、呪術的思考、疑似科学、バイブル商法
- 自己決定権
[編集] 参考文献
「がんの補完代替医療ガイドブック-厚生労働省がん研究助成金研究」 日本補完代替医療学会、2006年4月。
[編集] 外部リンク
- アメリカ国立補完代替医療センター(NCCAM) (英語) アメリカ国立衛生研究所-NIHの組織
- アメリカ国立癌研究所代替補完医学事務局(OCCAM)(英語) アメリカ国立衛生研究所-NIHの組織
- オックスフォード・ジャーナル(代替医療学術雑誌ECAM) (英語)
- 日本補完代替医療学会
- CAMUNet:代替医療利用者ネットワーク
- 代替医療に対する疑問と批判-The Skeptic's Dictionary 日本語版
最終更新 2009年11月14日 (土) 06:05 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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