債権
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債権(さいけん:独Schuldrecht)とは、主に大陸法の法律用語であり、ある者(債権者:独Gläubiger)が特定の相手方(債務者:独Schuldner)に対して一定の行為(給付)をするよう要求できる権利をいう。債務者の側から見た場合はこれは債権者に対する義務であり、債務(さいむ:英仏obligation、独Schuld(独・墺))と呼ばれる。また、債権者と債務者のこのような法律関係のことを、債権債務関係(英仏obligation、独Schuldverhältnis、独Obligation(スイス法))という。いずれも視点が異なるのみで、内容を異にするものではない。日本では、「債権」という言い方が通常で、「債権債務関係」はあまり用いられないが、欧米では「債権債務関係」に相当する表現(obligationやSchuldverhältnis)がむしろ通常である。
冒頭に述べたような債権の概念そのものはローマ法に由来する。日本においては明治期においてヨーロッパ法(特にドイツ法、フランス法)を継受した際にローマ法由来の債権概念が導入され、現在の解釈学においてもその影響は強い。なお、導入当初においては債権は「人権」と表記されていた。
現在の日本の民法においては、民法第3編債権において、その発生原因として、契約、事務管理、不当利得及び不法行為の4つを規定している。 当事者間の合意により発生する債権を約定債権といい、契約による債権がこれに属する。一方、法律の規定によって生じる債権を法定債権といい、事務管理、不当利得、不法行為による債権がこれに属する。
- 民法について以下では、条数のみ記載する。
目次 |
[編集] 債権の特質
債権は物権と同じ財産権ではあるが、以下の点で物権とは異なる。
- 物権は物の支配を目的とする権利である(物権の直接性・物権の対世性)が、債権は債務者の行為(給付)を目的とするものである(債権の対人性)。
- 債権の対人性のコロラリーとして「売買は賃貸を破る」がある。すなわち、例えば、所有者によって目的物が譲渡された場合を比べると、地上権者は新所有者に対しても地上権を主張できる(継続して利用できる。)が、賃借人は新所有者に対して賃借権を主張できない(継続して利用できない。)。もっとも、不動産賃借権や船舶賃借権については民法・商法及び借地借家法においてこの重大な例外が規定されており、一定の対抗要件を具備することにより新所有者にも対抗することができるようになっている。いわゆる「債権の物権化」と呼ばれる現象である。
- 相互に矛盾する同内容の物権は併存しえないが(物権の排他性)、相互に矛盾する同内容の債権は併存しうる。
- 例えば、同じ土地について建物所有目的の地上権を二重に設定することはできないが、建物所有目的の賃借権を二重に設定することは可能である(後者は債務不履行責任によって解決される。)。
[編集] 債権の目的
債権の目的(対象)は債務者の特定の行為であり、これを「給付」という。債権は目的に応じていくつかの下位概念があり、第3編第1章総則第1節において、具体的には以下のものが規定されている。
[編集] 特定物債権
特定物債権(とくていぶつさいけん)とは、物の個性を重視した特定物の給付を内容とする債権をいう。例えば土地の引渡し債務や中古品の引渡し債務などである。
- 特定物債権の主な特徴
[編集] 種類債権
種類債権(しゅるいさいけん)とは、目的物(不特定物)を種類と数量だけで指示した債権をいう。
- 種類債権の特徴
[編集] 制限種類債権
制限種類債権(せいげんしゅるいさいけん)とは、目的物の範囲に限定のある種類債権をいう。 例えば特定タンク内のタール5000トンのうち2000トンの引渡債務などである。この場合に特定タンク内のタールの全てが滅失すれば履行不能となる。品質は問題にならず、債務者は、特定タンク内のタールを給付すればよい。債権者が「タールの品質が悪い」と受け取らなければ受領遅滞が生じる。 この点で通常の種類債権と異なる。その他は種類債権に準じる。
[編集] 金銭債権
金銭債権(きんせんさいけん)とは、金銭の支払を目的とする債権をいう。代金債権、貸金債権等、実際の取引における大部分の債権(金額債権)である。なお、特殊な金銭債権として金種債権と呼ばれるものがあり、これには特定の種類の金銭の一定量の給付を目的とする相対的金種債権と、骨董的あるいは記念的な貨幣の給付を目的とする絶対的金種債権があり、いずれも通常の金銭債権(金額債権)とは法的な扱いが異なる(金銭債権の項目参照)。
- 通常の金銭債権(金額債権)の特徴
[編集] 利息債権
[編集] 選択債権
選択債権(せんたくさいけん)とは、数個の給付の中から選択によって定まる債権をいい、その選択権は、原則として債務者に属する(406条)。
債権が弁済期にある場合において、相手方から相当の期間を定めて催告をしても、選択権を有する当事者がその期間内に選択をしないときは、その選択権は、相手方に移転する(408条)。
- 無権代理人の責任:履行又は損害賠償(117条)
[編集] 債権の効力
[編集] 債権の効力
債権には一般に以下のような効力があるとされる。
- 給付保持力:債権者の履行による給付を保持しても不当利得とはならない効力。債権の必要最小限の効力とされる。
- 訴求力:訴訟手続で債権を実体法上の権利として確認できる効力
- 執行力:確定判決を債務名義に執行しうる効力
| 債務の種類 | 給付保持力 | 訴求力 | 執行力 |
|---|---|---|---|
| 通常の債務 | 有 | 有 | 有 |
| 責任なき債務 | 有 | 有 | 無 |
| 自然債務 | 有 | 無 | 無 |
このほか以下のような概念も用いられる。
- 給付請求力
- 掴取力
- 貫徹力
[編集] 債権者代位権と詐害行為取消権
債務者の責任財産を保全するため、民法は債権者代位権と詐害行為取消権を認めた。第3編第1章総則第2節で規定された制度である。
[編集] 第三者による債権侵害
[編集] 多数当事者の債権及び債務
第3編第1章総則第3節で規定される。
- 分割債権及び分割債務(427条)
- 多数当事者の債権関係における原則的形態。
分割された債権や債務は相互に独立したものと扱われる。また、債権者や債務者の1人に生じた事由は他の債権者や債務者に影響しない。
なお、連帯債権についての規定は必要性が貧しいとして設けられていない。
[編集] 債権の譲渡
歴史的には、債権譲渡(債権者の変更)は債権の本質に反するという考え方も根強く存在していたものの、近代以降においては、債権譲渡自由の原則が強調されるようになった。日本においても、債権の自由譲渡を認めない慣例が存在したとされ、当初は債権譲渡自由の原則に対する抵抗が強かったものの(民法典論争)、特約により譲渡性を排除できる規定を設けるという形で妥協がなされ、現在に受け継がれている。
現在の日本民法においては、第3編第1章総則第4節で規定される。
詳細は「債権譲渡」を参照
[編集] 債権の消滅
第3編第1章総則第5節で規定される。
- 弁済
- 債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、弁済者は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも、同じである。
- 相殺
- 更改
- 免除
- 混同
[編集] 用語
- 協定債権
- 清算株式会社の債権者の債権で、一般の先取特権その他一般の優先権がある債権、特別清算の手続のために清算株式会社に対して生じた債権及び特別清算の手続に関する清算株式会社に対する費用請求権を除く債権をいう(b:会社法第515条)。
- 指名債権
- 債権者が特定している一般の債権。指図債権・無記名債権に対する。
- 例:預金通帳等。
- 指図債権
- 無記名債権
- 証券的債権
- 指図債権・無記名債権・記名式所持人払債権のこと。
- 記名式所持人払債権
- 例:記名式持参人払小切手
- 作為債権
- 不作為債権
- 求償債権
- 債権者主義
- 特定物についての物権の設定移転の場合に「債権者が危険を負担すべきである。」という考え。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 平井宜雄『債権総論(第2版)』(1994年、弘文堂)


