八端十字架

八端十字架の最新ニュースをまとめて検索!

八端十字架
ノヴォシビルスクでの十字行。先導する八端十字架とイコン。先頭の少年が持つのは至聖三者のイコン。

八端十字架(はったんじゅうじか)は、ロシア正教会ウクライナ正教会で頻繁に用いられ、ブルガリア正教会セルビア正教会などのスラヴ系正教会でよく用いられる十字十字架である。日本正教会でも広く用いられている。また、古儀式派でも頻繁に用いられる。ただし、ギリシャ正教会をはじめとしたギリシャ系の正教会ではほとんど用いられない。ロシア十字などとも呼ばれるが、これはあまり精確な呼称ではない(後述)。

「八端十字架」の名称は8箇所の先端部分が存在することに由来する。

この十字のみが正教会の十字と言う訳ではなく、他にもギリシャ十字などが正教会で多用される。

以下、正教会に関わる本項では日本正教会の訳語を断りなく用いる場合がある。

目次

[編集] 形状の意味

上部と下部の2本の線がラテン十字と異なる形状上の特徴であり、これについて以下に詳述する。

上部の線はハリストスキリストギリシャ語ロシア語読み)の罪状書き(聖書に記述のある、「ユダヤ人の王・ナザレ人イエス」と書かれた札)を表している。

下部の斜めになった線は、足台を表している。正教会の伝承では十字架には足台があったとされており、磔刑を描いたイコンにもそのような描写がされる。

クレタのセオファニスによって16世紀に描かれた、ハリストス(キリスト)の磔刑とそれを見守る人々が描かれた正教会イコン。罪状書きと足台、そして二人の盗賊も描き込まれており、正教会における伝承を忠実に反映している。アトス山のスタヴロニキタ修道院所蔵。

下部の線が斜めになっているのは、聖書に記述のある、ハリストスとともに磔刑に処された2人の盗賊の死後を表現している。左側に磔刑にされた盗賊はハリストスを罵って地獄に落ち、右側に磔刑にされた盗賊はハリストス(キリスト)を救世主と認めて天国に行ったという伝承に基づき、棒の左が下げられ、棒の右側が上げられた形になっている。なお、「左右」については、磔刑に処せられたハリストスから見ての「左右」となる。

[編集] 聖歌:「ラズボイニカ」

この盗賊(日本正教会では「右盗(うとう)」[1]と呼ばれる)についての伝承は正教会で大事にされている。聖大金曜日奉神礼(聖大金曜日の早課)で、「善智なる盗賊」(聖大金曜日の早課の差遣詞)という聖歌が歌われるが、この祈祷文は盗賊についてのこの伝承をよく要約しているとされる。教会スラヴ語ではこの聖歌は冒頭の語句をとって「Разбойника(ラズボイニカ・『盗賊』の意)」と呼ばれ、パヴェル・チェスノコフアレクサンドル・グレチャニノフをはじめとした様々な作曲家がこの祈祷文に作曲した聖歌が、ロシアやブルガリアの正教会で愛唱されている。

[編集] 名称

[編集] 誤解を呼びやすい通称について

ブルガリア正教会アレクサンドル・ネフスキー大聖堂 (ソフィア)。聖堂の入り口上部左右に八端十字架が彫り込まれている。
ウクライナ正教会キエフ・ペチェールシク大修道院の食堂屋根にみられる八端十字架

「八端十字架」の他にも様々な通称がこの十字・十字架には用いられている。むしろ「八端十字架」よりもこれらの通称の方が通用性は高く、またいずれの通称も完全な誤りとは言いがたい。しかし誤解を呼びやすい呼び名となっているものも少なくない。以下ではそうした通称について解説する。また、日本語で呼ばれるもののみならず、英語等の各国語での通称についても列挙する。

[編集] 「ロシア十字」

日本のみならず各国語でも「ロシア十字」「ロシア十字架」「ロシア正教会の十字架」などとも呼ばれることがあるが、確かにロシア正教会で頻繁に使われる十字ではあるものの、以下の要因からあまり正確な表現ではない。

[編集] 「正教会の十字」

日本語ではあまり見られない表現であるが、各国語でこの呼び名は見られる(英語 Orthodox Cross, スペイン語 Cruz ortodoxa)。確かに正教会で頻繁に用いられる十字ではあるが、以下の要因からあまり精確な表現ではない。

  • この十字架のみが正教会の正式な十字架というわけではなく、他にもギリシャ十字架ラテン十字架などが正教会で多用される。
  • ギリシャ系の正教会ではほとんど用いられない。

[編集] その他の誤解を呼びやすい通称

東方十字(Eastern cross)
  • 先述の通り、スラヴ系の正教会で多用されるものを東方正教会全体で多用されるものと錯覚させかねない表現である。
ビザンティン十字(Byzantine cross)
  • 先述の通り、八端十字架はスラヴ系の正教会で多用されるものであり、ビザンティンに歴史的に連なるギリシャ系正教会ではほとんど用いられないため、これは誤解を招きかねない表現というよりはむしろ誤りに近い。

[編集] ギャラリー

[編集] 脚注

  1. ^ 聖金口イオアン聖体礼儀(主日)から「領聖祝文」(領聖:聖体拝領前に詠まれる祈祷文)の一部を引用:「…神の子や,今我を爾が機密の宴に与る者として容れ給え。蓋,我爾の仇に機密を告げざらん,また爾にイウダの如き接吻をなさざらん,すなわち右盗の如く爾を承け認めて言う。主や,爾の国において我を記憶せよと。主や,祈る,爾の聖なる機密をうくるは,我がため審案あるいは定罪とならず,すなわち霊体の医とならんことを。」

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

ウィキメディア・コモンズ

最終更新 2009年11月7日 (土) 06:51 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
【八端十字架】変更履歴

ご利用上の注意

もっと調べる!